【授業】臨床栄養学各論Ⅱ
【授業】臨床栄養学各論Ⅱ
Ⅰ はじめに
「臨床栄養学各論Ⅱ」は、管理栄養士になるための専門科目である。先に学んだ「臨床栄養学各論Ⅰ」、続けて学ぶ「病態栄養管理」の3科目で臨床栄養学分野を完結する。本講座では、栄養管理が複雑でかつ重要な循環器疾患や腎疾患について、解剖生理学を復習しながら疾患のメカニズムを考え、必要栄養量と制限の必要性、制限の方法および薬物療法との係わりを学修する。
Ⅱ 授業の目的・ねらい
循環器疾患や腎疾患の必要栄養量、栄養素制限の必要性をメカニズムから理解し、栄養食事療法の方法、薬物療法と食事療法の併用による栄養管理の方法を修得する。そして、傷病者の栄養状態の把握及び病状に応じた栄養ケアプランを立案できる基礎知識を修得することを目的にする。
Ⅲ 授業の教育目標
15回の授業教育目標を示し、各講に学修到達目標を設定し、個々に学修の到達を確認することができる。
第1講
1.何を学ぶか
リポたんぱくと脂質異常症の分類について学ぶ。
2.学習到達目標
・リポたんぱくの分類を説明できる。
・脂質異常症を説明できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.脂質異常症
2.脂質異常症診断基準(採血条件含む)
3.脂質異常症の分類(Ⅰ型~Ⅴ型)とそれぞれの特徴
4.アテローム硬化症が起こるメカニズム
5.HDL-コレステロールが善玉である理由
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第2講
1.何を学ぶか
脂質異常症の食事療法について学ぶ。
2.学習到達目標
・脂質異常症の食事療法のポイントを説明できる。
・脂質異常症で用いられる薬剤を挙げられる。
・リスク区分別脂質管理目標値を説明できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.脂質異常症における食事療法
2. 多価不飽和脂肪酸、ビタミンC,Eやポリフェノール類、食物繊維を摂るとよい理由とそれらを多く含む食品
3.脂質異常症の薬物療法
4.リスク区分別脂質管理目標値
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第3講
1.何を学ぶか
症例から問題を抽出し、栄養食事指導のプランを立案する。
2.学習到達目標
・演習症例の問題点を抽出し、食事療法を立案できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.合併症の危険因子を改善する食事
2.中鎖脂肪酸を活用する理由
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第4講
1.何を学ぶか
血圧上昇のしくみ、高血圧症の原因について学ぶ。
2.学習到達目標
・血圧が上昇するしくみを説明できる。
・高血圧の原因を説明できる。
・高血圧症の分類ができる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.収縮期血圧、拡張期血圧
2.高血圧の分類
3.高血圧の原因
4.RAA系
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第5講
1.何を学ぶか
二次性高血圧の原因、高血圧症の合併症について学ぶ。
2.学習到達目標
・二次性高血圧の原因を説明できる
・重症化した場合の高血圧症の症状を説明できる。
・高血圧症の合併症を説明できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1. 二次性高血圧の原因になる主な疾患と高血圧との関係
2. 高血圧症が重症化した場合の症状
3. 高血圧の合併症とその理由
4. 成人における血圧値の分類と様々な状況下での高血圧の基準
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第6講
1.何を学ぶか
高血圧症の予後と薬物療法について学ぶ。
2.学習到達目標
・高血圧症の予後を説明できる。
・高血圧症の薬物療法のうち、食事療法との相互作用がある薬剤を説明できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1. 診察室血圧に基づいた脳心血管病リスクの層別化
2. カルシウム拮抗薬、ACE-I,ARBの作用機序と特徴(注意点含む)
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第7講
1.何を学ぶか
高血圧症の食事療法について学ぶ。
2.学習到達目標
・高血圧治療ガイドラインに基づいた生活習慣の修正を説明できる。
・減塩の必要性と工夫を説明できる。
・降圧に有効な食品とその成分および作用を説明できる。
・外食の工夫を説明できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.収縮期血圧を降下させるための生活習慣の修正法
2.高血圧治療ガイドラインによる高血圧治療のための生活習慣の修正項目
3.減塩の必要性と工夫
4.降圧に有効な食品とその成分および作用
5.外食の選び方
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第8講
1.何を学ぶか
症例から問題を抽出し、栄養食事指導のプランを立案する。
2.学習到達目標
・演習症例の問題点を抽出し、問題を主観的情報と客観的情報に分類できる。
・演習症例の必要栄養量を提案できる。
・演習症例に対し栄養食事指導のプランを立案できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.演習症例の高血圧の分類
2.演習症例の必要栄養量
3.演習症例の食事プラン
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第9講
1.何を学ぶか
腎臓のしくみと働き、糸球体腎炎について学ぶ。
2.学習到達目標
・腎臓のしくみと働き、血圧との関係を説明できる。
・腎機能が低下した場合の障害を説明できる。
・糸球体腎炎の原因、分類および治療目的を説明できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.腎臓の働き
2.腎臓から分泌されるホルモンおよび酵素とその作用
3.腎機能障害
4.腎性貧血
5.基底膜、メサンギウム、IgA
6.糸球体腎炎の原因
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第10講
1.何を学ぶか
ネフローゼ症候群、腎不全について学ぶ。
2.学習到達目標
・ネフローゼ症候群の分類と症状を説明できる。
・ネフローゼ症候群の診断基準を説明できる。
・ネフローゼ症候群の合併症を説明できる。
・ネフローゼ症候群の食事療法を説明できる。
・腎不全の分類を説明できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.ネフローゼ症候群およびその分類
2.ネフローゼ症候群の診断基準,合併症とそのメカニズム
3.ネフローゼ症候群の栄養基準と食事療法のポイント
4.腎不全の定義および分類
5.腎不全の原因
6.腎不全の症状
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第11講
1.何を学ぶか
腎不全の栄養評価について学ぶ。
2.学習到達目標
・腎不全の栄養評価の必要性と評価項目を説明できる。
・腎不全患者の栄養教育を説明できる。
・腎不全患者の食事療法のポイントを説明できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.腎不全の栄養アセスメント
2.二次性副甲状腺機能亢進症のメカニズム
3.腎不全の栄養教育
4.腎不全の食事療法の必要性とその工夫(低たんぱく食、アミノ酸スコア含む)
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第12講
1.何を学ぶか
慢性腎臓病とその治療について学ぶ。
2.学習到達目標
・慢性腎臓病とその重症度分類を説明できる。
・透析療法の長所と短所を説明できる。
・慢性腎臓病の栄養アセスメントと栄養ケア(透析間体重増加を含む)を説明できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.慢性腎臓病とその原因
2.慢性腎臓病の重症度分類
3.透析療法の調書と短所
4.慢性腎臓病の栄養アセスメント(推定食塩摂取量、推定たんぱく質摂取量、ドライウェイトと透析間体重増加)
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第13講
1.何を学ぶか
慢性腎臓病の食事療法について学ぶ。
2.学習到達目標
・慢性腎臓病の食事療法基準を説明できる。
・慢性腎臓病患者の栄養教育内容を説明できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.慢性腎臓病の食事基準(図表が良い)
2.CKDステージ3b以降で低たんぱく食かつエネルギー確保が必要な理由と工夫
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第14講
1.何を学ぶか
慢性腎臓病の食事療法、糖尿病腎症の病態と食事療法について学ぶ。
2.学習到達目標
・慢性腎臓病で制限が必要な栄養成分を説明できる。
・糖尿病から糖尿病腎症になるしくみを説明できる。
・糖尿病腎症の病期分類を説明できる。
・糖尿病腎症の治療のポイントを説明できる。
3.研究課題
以下の課題取り組みなさい。
1.カリウムやリンを制限する理由とその方法
2.糖尿病から糖尿病腎症になるメカニズム
3.糖尿病腎症の病期分類(表)
4.CKD重症度分類と糖尿病腎症病期分類の関係(表)
5.糖尿病腎症の治療ポイント
6.CKDと糖尿病腎症の食事療法基準(表)
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第15講
1.何を学ぶか
症例から問題を抽出し、栄養食事指導のプランを立案する。
2.学習到達目標
・演習症例の入院時の問題点を抽出、主観的情報、客観的情報に分類できる。
・演習症例の必要栄養量を提案できる。
・演習症例の栄養食事指導のプランを立案できる。
3.研究課題
以下について説明しなさい。
1.演習症例の入院時の問題点
2.1の問題点を主観的情報、客観的情報に分ける
3.演習症例の必要栄養量
4.演習症例の栄養食事指導のプランを立案
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
Ⅳ レポート課題
課題1
高血圧症(本態性高血圧)の食事療法について、「高血圧治療ガイドライン」に基づき説明しなさい。
課題2
慢性腎臓病の病期分類とその分類に合わせた食事療法およびそのポイントを説明しなさい。
Ⅴ アドバイス
課題1解説
本態性高血圧は生活習慣が原因になる生活習慣病である。「高血圧治療ガイドライン」では生活習慣を改善することを重視しており、そのために生活習慣の修正項目として改善策を挙げています。この修正項目と日本版DASH食から高血圧症の食事療法について考えてみましょう。
課題2解説
慢性腎臓病の食事療法では、腎臓の残存機能から病期分類され、その分類に合わせて各種栄養素が厳しく制限されます。各ステージにおいて、制限が必要な栄養素となぜその栄養素を制限する必要があるかを考えてみましょう。
Ⅵ 科目修得試験:対面による筆記試験
Ⅶ テキスト
ステップアップ 栄養・健康科学シリーズ 臨床栄養学 東山幸恵編(科学同人)
Ⅷ 参考文献
日本腎臓学会編CHD診療ガイドブック:(東京医学社)
病態栄養ガイドブック:日本病態栄養学会(メディカルレビュー)
症例からみた臨床栄養学:加藤昌彦ほか(東京教学社)
慢性腎臓病食事指導のポイント:兼平菜々((医歯薬出版)
臨床病態栄耀学 武田英二(文光堂)
今日の病態栄養療法 渡辺明治(南江堂)
栄養食事療法シリーズ2 たんぱく質コントロール食の食事療法 渡邉早苗ほか(建帛社)
栄養食事療法シリーズ4 食塩コントロール食の食事療法 渡邉早苗ほか(建帛社)