【授業】消費生活論
【授業】消費生活論
Ⅰ はじめに
私たちは日常的に事業者との取引を行なう消費者として生活をしている。現代社会は非常に利便性が高く、多種多様な商品やサービスがあふれ、選択することが困難になってきている。また、深刻な消費者被害も多発している。人の健康や安全・安心に関わる欠陥商品や不当表示、悪質商法などのトラブルや被害の問題がある。人が消費者として安全に暮らせるにはどのような政策や対応が必要であるか、消費者自身が学ばなくてはならない。
本授業では、衣料管理士2級の資格取得のための教科であるが、人間が生活し生きていく存在としての消費者たる自覚を持ち、消費者市民として消費者問題に適切に対応できるよう、消費者や消費者問題の歴史と変遷、国の政策に関連する法律等を消費者教育として学ぶ。
Ⅱ 授業の目的・ねらい
・この授業は、15講に分かれている。各講において参考文献は、テキストの各章の最後に示してあるので、テキストと合わせて事前・事後の学修として学んでおくことが必要である。
・各講の最後に課題が設定されているので、受講後、課題を学修し学びを深めることが重要である。
・衣料管理士2級の資格取得をめざす。
・消費者市民として、消費者問題に真摯に向き合い、行動できる消費者になることを狙いとしている。
Ⅲ 授業の教育目標
衣料管理士として、消費者の立場を理解したうえで、企業、行政側の管理や政策についても理解できるようになる。そして個人の消費行動が、常に社会的な力の形成につながっていることを理解し、ひとりひとりが考え・行動する消費者であることを意識して生活できるようになることを目標とする。
テーマ1 消費者問題とは何かを知る
1.何を学ぶか
日々消費者として生活しており、いつ消費者問題に巻き込まれるかわからないので消費者問題とは何かを理解するために、日本における消費者問題の発生とその要因・顕在化について学ぶ。
2.学習到達目標
・消費者問題が何かを説明できる。
・消費者問題が発生する背景を説明できる。
3.研究課題
・あなたは生活者として消費者として、どのような意思決定をしたらよいと考えますか?
その理由も述べなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ2 1960・1970年代の消費者事件
1.何を学ぶか
1960年代の消費者事件(欠陥商品、不当表示、物価の問題)、1970年代の多様化・複雑化する消費者取引といった過去の消費者事件と時代背景を知り、そのつながりを考える。
2.学習到達目標
・1960年代の消費者事件と時代背景を説明できる。
・1970年代の消費者事件と時代背景を説明できる。
3.研究課題
・1960年代・1970年代の消費者事件や問題を具体的にまとめなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ3 消費者の権利と責任
1.何を学ぶか
消費者には、国際消費者運動機関が提唱する8つの権利と5つの責任があることを知り、消費者を取り巻く社会経済情勢の変化を踏まえて自分事として理解する。
2.学習到達目標
・消費者の権利と責任について説明できる。
・消費者を取り巻く社会経済情勢について説明できる。(サービス化、高齢化、高度情報化、国際化の進展について)
3.研究課題
・消費者の権利と責任についてまとめなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ4 持続可能な社会の形成と消費者
1.何を学ぶか
持続可能な社会を形成するには、国連の取り組み(SDGs)や自分が消費者市民として環境・社会等に配慮した消費行動、倫理的消費(エシカル消費)などに取り組まなければならない事項を自覚する。
2.学習到達目標
・環境問題について説明できる。
・SDGsについて説明できる。
・環境に配慮した持続可能な消費行動について実行できる。
3.研究課題
・あなたがめざす消費者市民社会について800字程度で述べなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ5 日本の消費者政策
1.何を学ぶか
日本の消費者政策の流れを理解し、消費者保護基本法から消費者基本法への転換と基本理念を理解する。
2.学習到達目標
・日本の消費者政策の流れを説明できる。
・消費者保護基本法から消費者基本法へ移行した経緯について説明できる。
・消費者政策の基本理念について説明できる。
3.研究課題
・消費者保護基本法と消費者基本法の違いをまとめなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ6 日本の消費者行政
1.何を学ぶか
消費者庁と消費者委員会創設の経緯を知り、消費者行政について理解する。また、公正かつ自由な競争の推進と独占禁止法、競争行政についても学ぶ。
2.学習到達目標
・消費者庁設立の経緯について説明できる。
・消費者行政とは何か説明できる。
・独占禁止法について説明できる。
3.研究課題
・消費者行政についてまとめなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ7 21世紀型の消費者政策
1.何を学ぶか
これまで「消費者白書」の作成や公表、消費者関連法の制定・改正、消費者被害の発生・拡大防止など様々な消費者政策が実施されてきたが、消費者被害は減少していないことを理解し、今後実効性を確保するにはどうしたらよいか考える。
2.学習到達目標
・消費者政策の状況について説明できる。
・消費者被害の発生・拡大防止の仕組みについて説明できる。
・消費者政策の実効性を確保する方策について説明できる。
3.研究課題
・21世紀型の消費者政策についてまとめなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ8 消費者契約の適正化
1.何を学ぶか
取引をめぐるトラブル・被害の多発と消費者契約の適正化をするための消費者契約法、特定商取引法、クーリング・オフ制度を理解し、具体的に活用することができることを学ぶ。
2.学習到達目標
・消費者契約法について説明できる。
・特定商取引法について説明できる。
・クーリング・オフ制度を活用できる。
3.研究課題
・2週間前に、高校時代の友人から電話があり、久々にファミリーレストランで会った。その際、「化粧品とビタミン剤を買って、友人を紹介するだけで収入になる。月20万円稼いでいる人もいる。商品代金のクレジットも、余裕で払える。」と熱心に勧誘され、会員登録をして、化粧品30万円を契約した。
2日後、商品と会員証、勧誘に使うパンフレットなどが届いた。早速、何人か友人を誘ってみたが、全く入会してもらえなかった。
クレジットを支払えそうにもない。解約したい。(20代 女性 給与生活者)
この場合の対処方法は、どのようにしたらよいか考えてください。
また、クーリング・オフの手続きを書いてみましょう。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ9 消費者信用と支払い決済方法
1.何を学ぶか
消費者信用(クレジット・ローン)や多様な支払方法)、仮想通貨(暗号資産)を知り、被害にあわない活用方法を考える。
2.学習到達目標
・消費者信用について説明できる。
・多様な支払方法について説明できる。
3.研究課題
・現金、電子マネー、クレジットカード、デビットカードについてそれぞれメリットとデメリットをまとめなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ10 消費者紛争の解決・被害救済
1.何を学ぶか
消費者被害にあった時の解決方法(ADR、少額訴訟制度、法テラス等、消費者センターへの相談等)について知り、対応できるようにする。
2.学習到達目標
・民事紛争の解決方法を説明できる。
・消費生活センターについて説明できる。
・ADR、少額訴訟制度、法テラス等について説明できる。
3.研究課題
・消費者被害にあってしまったらどうしたらよいか、その解決方法を様々な場合に分けてまとめなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ11 消費者政策の展開と繊維製品の「表示」「安全」
1.何を学ぶか
繊維製品等の「表示」である組成表示、家庭洗濯等取り扱い表示、はっ水表示、表示者について理解し、適切な処理をすることができることを学ぶ。
2.学習到達目標
・組成表示、家庭洗濯等取り扱い表示、はっ水表示、表示者について説明できる。
3.研究課題
・組成表示や家庭洗濯等取扱い方法についてもう一度まとめなさい。
・日常の洗濯を振り返り留意点を示しなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ12 景品表示法
1.何を学ぶか
景品表示法(原産国表示・サイズ表示)を理解し、不当表示はないかチェックできることを学ぶ。
2.学習到達目標
・景品表示法について説明できる。
3.研究課題
・景品表示法について、消費者庁のサイトから再度詳しく調べなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ13 繊維製品の「安全」
1.何を学ぶか
消費者安全法、消費生活用製品安全法、製造物責任法、有害家庭用品規制法といった「安全」に関する法律を理解し、日々安全に生活することができることを学ぶ。
2.学習到達目標
・繊維製品による身体・生命にかかわる被害について説明できる。
・消費者安全法、消費生活用製品安全法、製造物責任法、有害家庭用品規制法について説明できる。
3.研究課題
・「安全」に関する法律は、いろいろある。繊維製品に関する安全について、まとめなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ14 企業の消費者対応
1.何を学ぶか
企業側の消費者対応の変遷やISO/JIS Q 10002苦情対応マネジメントシステムについて理解する。
2.学習到達目標
・企業における消費者対応の変遷について説明できる。
・消費者対応部門の役割と進化について説明できる。
3.研究課題
・公益社団法人消費者関連専門家会議(ACAP) について詳しく調べなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ15 企業の消費者対応部門の課題
1.何を学ぶか
企業の消費者対応部門の在り方を知り、消費者市民としてどのように関わったらよいかを考える。
2.学習到達目標
・お客様の期待と満足向上について説明できる。
・グッドマンの法則、ハインリッヒの法則について説明できる。
3.研究課題
・「4-4企業市民としての消費者・社会とのかかわり」について、読んでまとめなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
Ⅳ レポート課題
課題1
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に前年の1月~12月までの1年間にどのような相談内容・件数が寄せられているのか調べて、A4 3枚程度にまとめてください。
課題2
商品・サービスには、マークによる表示がある。これには①義務マークと②任意マーク、③業界の自主基準によるものがある。①②③には、どのようなマークがあるか調べて表示と意味をまとめてください。
アドバイス
課題1
解説 国民生活センターの「消費生活相談データベース」から調べることができる。
課題2
解説 国民生活センター『くらしの豆知識』を参考にするとよい。
Ⅵ 科目修得試験:レポート試験
Ⅶ テキスト
一般社団法人 日本衣料管理協会出版部会 『新版 消費生活論』一般社団法人 日本衣料管理協会
Ⅷ 参考文献
主にテキストの示してある文献を参考にする。
資料