石仏と奇岩群
石仏と奇岩群
大雨見山(おおあまみやま)(標高1336m)の北西麓にあたる蔵柱(くらばしら)川沿いに石仏という地名があり、そこにある高さ約12mの仏像に似た石柱が「石仏」である。その付近には“鏡岩”、“仏器岩”、“獅子頭岩”といった名前のついた奇岩と称する岩が山すそにある。いずれも大雨見山層群の宮川谷層に属する火山岩類のうち、比較的軟らかく風化作用を受けやすい凝灰岩からなる。見る方向によっていろいろな形状に見えることからそれぞれに名称がつけられたものである。
高山市国府町から県道76号で上宝町に向かい,大坂峠(通称十三墓峠)を越え2km程下ったところに濃飛バスの「石仏前(いしぼとけまえ)」バス停がある。
バス停の奥に,カラ松の間から高さ12cm程のまるで仏様のような形をした岩肌が突出している。これが地名の由来の「石仏岩」で,足元には小さな祠(ほこら)が建てられ祀られている。周囲にも点々と岩肌が露出し,屏風岩(びょうぶいわ),駒掛岩(こまかけいわ),鏡岩,箪笥岩(たんすいわ)等と名付けられ,全体が「石仏と奇岩群」として高山市の天然記念物に指定されている。
「石仏と奇岩群」は,どのようにしてつくられたのであろうか?
今から6600万年前~6000万年前の中生代白亜紀最末期から新生代古第三紀にわたり,現在の大雨見山(国府,丹生川,上宝町にまたがる山)を中心に,約100㎢にわたって流紋岩質マグマによる火山活動が起こった。このときできた溶岩や凝灰岩,火砕流堆積物を主体とする地層をまとめて「大雨見山層群」という。「石仏と奇岩群」の岩石の本体は,大雨見山層群の流紋岩溶岩である。この溶岩は,中に青灰色の玉ズイ(石英の微小な結晶の集まり)を含んでいて,「球顆流紋岩(きゅうかりゅうもんがん)」という。溶岩の一部は大坂峠近くにも露出し,風化した部分から数cm~こぶし大程の玉ズイの塊を見つけることができる。
石仏岩は,6000万年という長い年月をかけ,風化や侵食を受けた球顆流紋岩が,偶然にも仏様の容姿になって現れたものである。
引用:飛騨地学研究会 寺門 隆治様