自然-3 五色ケ原・シラビソコース(丹生川町)
自然-3 五色ケ原・シラビソコース(丹生川町)
コースは出合い小屋を起点に比較的なだらかな谷間を前半は登り後半は下って時計回りに一周して出合い小屋に戻る。一番標高が低い布引滝が1360m、最高地点のシラベ沢口が1640mで高低差は約280m。植生の垂直分布では本来なら山地帯上部でブナ、ミズナラを中心とした夏緑広葉樹が生息するような標高だが、コース全体でシラビソ、オオシラビソ中心の亜高山性の針葉樹林が広がるのは環境の厳しさによる。
このコースでは季節や降水によって満水と枯渇を繰り返す不思議な4つの池、渇水期にもごうごうと水量豊富な沢上沢。湧き水を集め苔生した岩の間を軽やかに流れるシラベ沢など乗鞍岳の恵みが織りなす変化に富んだ水風景が印象的である。
コース最期には轟音を響かせ流れ落ちる横手滝と、伏流水が崖にかかってそのまま滝になる姿が圧倒的な存在感を持つ布引滝が迫力ある景観を見せてくれる。
五色ヶ原の森の開設にあたっては、自然を破壊して利用するのではなく、自然の循環の中で持続的な保護と利用の両立が図られる仕組みを目指し、横浜国立大学の宮脇昭名誉教授の指導のもと、「元手を食いつぶさず、利息で食いつなぐ」をコンセプトに、入念な植生調査やルート調査を行った。また、整備にあたっては偽木やコンクリートなどを使用せず、現地の倒木や石により整備した歩道や、マイクロ水力発電で発電した電気を使用し、汚水はバイオマス浄化槽で処理し、一切外部に排出しないトイレを備えた山小屋など、自然環境への負荷を最小限に留める配慮を行っている。
シラビソコースの出発地点は案内センターから車で30分ほど走った山の中に建つ出合い小屋。途中車止めのゲートを抜けるとその先は一般車両進入禁止で、その日のツアー参加者だけが入山できる五色ヶ原の広大な森が広がる。