【研究開発事業】令和5年度 教師の養成・採用・研修の一体的改革推進事業
令和5年度 教師の養成・採用・研修の一体的改革推進事業(現職教員の新たな免許状取得の促進)
事業の内容
【現状の課題】
〇教員には、学校段階間の接続を見通した常に義務教育9年間全体を俯瞰する視点を持ちつつ指導する力や、教科横断的な視点で学習内容を組み立てる力など、複数の学校種・教科等にわたる幅広い理解に基づいた総合的な指導力を教職生涯において身に付けることが、より一層期待されている。
〇また、教育DX(Digital Transformation)は、教員がオンライン技術を活用して、学びのあり方やカリキュラムを革新し、同時に、業務や組織、プロセス、学校文化の変革など、時代の変化に対応した教育ができる人材が求められている。
【目指す姿】
〇子どもたちの学び(授業観・学習観)とともに教師自身の学び(研修観)を転換し、「新たな教師の学びの姿」(個別最適な学び・協働的な学びの充実を通じた、「主体的・対話的で深い学び」)を実現する。
〇具体的には、受講者のニーズに応じて柔軟に講習内容を組み合わせたり、自律的に学ぶことができるオンライン講習(以下「自律的なオンライン講習」とする)を取り入れたりするなど、教員が主体的に学ぶことができる教えないで学べる学習環境をデザインする。
〇今年度は、これらの自律的なオンライン講習と教えないで学べる学習環境をデザインすると共に、実務経験3年以上の中学校教員を対象に新たなキャリアとして「小中一貫教育コーディネータ」を位置づけ、その人材を養成することを通して、小中学校免許状併有を促進し、学び続ける教師を推進する。
事業概要
〇本学が連携する教育委員会からの情報提供により、岐阜県においては、中学校教諭が小学校教諭免許状を併有している割合が74.9%と高い状況であるに対して、沖縄県においては、僅か6.8%と大変低い状況となっている(平成28年度調査)。
〇そこで、全国の教員を対象に(特に沖縄の教員を対象に)小学校教諭2種免許状を取得するに当たり現職教員が取り組みやすいようにオンラインでの講習を開発し、下記の観点で免許法認定講習等のプログラムを開発し実施する。
(※本学は沖縄にサテライト校を開設しており、現職教員を中心として100名近い学生・大学院生が学んでいる。)
〇なお、原則3年で教員免許状を取得できるよう講習を開設する予定であり、令和5年度は初年度として3科目を開設し、令和4年度と併せて合計5単位の講習を開設する。
〇今後、教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、本学は、ニューノーマル時代に求められる学びの在り方に対応するため、現職教員を対象として、本学における今までの「オンライン教育の実績」と「膨大な教育リソース(デジタルアーカイブ)」を最大限に活用する、e-Learningを主体とした授業として展開する新しい遠隔教育を推進する。
① 小中連携の新たなキャリアとしての小中連携教育コーディネータの養成カリキュラムの開発(新規)
〇中学校教諭等の免許状を有する者が,小学校において相当する教科等の教諭となることができる制度として,小学校等の専科担任制度がある。本制度については,平成14年の教育職員免許法の改正により,従前は,小学校で担任できる教科は音楽,図画工作,体育,家庭に限定されていたところ,全教科及び総合的な学習の時間に拡大された。
〇本制度は,教員が新たに他校種の免許を取得する必要もなく,学校にとって活用しやすいものであると思われるが,小学校教諭の免許状を有していない中学校教員は,大学における養成課程において小学校における教科の指導法等について学修していないことから,小学校における指導に困難を伴うことがあるとの指摘もある。
〇そこで,実際の小学校における指導に当たっては,小学校の養成課程の内容を学修するために,小中連携教育コーディネータという新たなキャリアを取得することにより,小中連携教育がスムーズに行うことができる。
〇本事業においては,複数の学校種・教科等にわたる幅広い理解に基づいた時代の変化に対応した総合的な指導力を持った人材として,小中連携教育コーディネータのカリキュラムを開発する。
② 自律的なオンライン講習のデザインと教えないで学べる学修環境の設計(継続)
〇新しい社会のGlobal・Innovationに対応した継続性を必要とした生涯学習の実現や将来の“afterコロナ”時代への対応も含め、対面授業を基本としつつe-Learningを組み合わせたオンライン講習を実施する。
〇そのための「インストラクショナルデザイン指導力」を高めると共に、従来の講義形式から脱却し、教育リソースとオンライン講習を融合した“教えないで学べる学習環境”の設計を行う。
〇授業の設計に関して「何をどのように教えるか」がカリキュラムである。それに対して、カリキュラムを構築するための方法論が「インストラクショナルデザイン」である。
〇今後、広く深く学びを継続し、学び続ける教師として、「インストラクショナルデザイン」に基づいて自律的な学びを設計する「インストラクショナルデザイン指導力」を高める。
〇このような自律的な学びを、受講生自らが本講習を受講することで身に付けることができるよう、講習を設計する。
〇設計には、キャロルの学校学習の時間モデルを活かし、授業の質を高め、授業理解力を助けることを行う。
〇そのことは学習機会や学習持続力を高める手法にもなり、学習環境にもなる。
〇「教えないで学べる」ことは、これらの手法や学習環境を整備することによって実現するものであり、学習者の学ぶ意欲を促し、自律的に継続して学ぶ力を付けていくことである。
〇講習の目的は「教えること」ではなく、学習者が「自ら学ぶ」ことを手助けし、学習者に「行動変容」が起こることである。「教えない」講習が主体的な学び手を前提として、よりフレキシブルな学習環境を提供すると共に、本講習の対象者である大人の学習であるアンドラゴジーの原則を踏まえるカリキュラムとする。
本学としては、インストラクショナルデザインや e-Learningの学び次のように考えている。
・インストラクショナルデザインは、カリキュラムを効率的に教えるために、学習者の特徴や与えられた環境、リソースなどを考慮し、最も効果的で魅力的な教育方法を選択することであり、実行と評価を繰り返すことで、研修の成果を高めることができる。
・e-Learning のみでの学修は、いつでも、どこからでも学修ができるため、教えないで学べる完成型として位置付ける。すでに社会には多くのオンラインでの学修機会があり,学び方として定着しつつある。
③ キャリアステージに対応した教員に求められる資質能力の構造化(継続)
〇教員として不易とされる資質能力と新たな課題に対応できる力並びに組織的・協働的に諸問題を解決する力を中心にキャリアステージに対応した教員の資質能力を明確化し、資質能力とのカリキュラムマップを作成すると同時に講座のタキソノミーテーブル(教育目標分析シート)を作成することによりオンライン講習の学習目標の再定義と構造化を図る。
〇そのために、今回の講習においては、各科目の各講で担当教員により学習到達目標並びに課題を設定する。これらの課題を各担当教員によりタキソノミーテーブルに分類する。
〇このように、改訂版ブルーム・タキソノミーという分類を通してカリキュラムを分析・構造化することにより、カリキュラムの教育目標では、どのような性格の知識の習得を目指しているのか(内容的局面)、またその知識をどのように認知させようとしているのか(行動的局面)の、それぞれについて可視化し、カリキュラム開発者や授業者以外の第三者に説明することを可能にする。
④ 学習環境としての教育リソースの整備(継続)
〇教員自身が時代や社会、環境の変化を的確につかみ取り、その時々の状況に応じた適切な教育の提供を行うためには、教員が自ら課題を持って、主体的に講座に参加する体制の確立が必要である。
〇そのためにも教育実践に関する調査研究や教育資料をデジタルアーカイブ化することにより、教育リソース(デジタル化された教育資料)を縦横に使いこなし、“新たな学びの空間”を創造するための知識やツールを提供する。
〇ここでの“新たな学びの空間”とは、学習者が主体的に学びを深めることができる学ぶための材料である教育リソースを含んだ、対面、オンライン、教育リソースを活用した学びを行っていくその学びの学習環境である。
資料
1.20230322 一体的改革公募要項
2.20230322 一体的改革実施要項
3.一体的改革事業計画書(岐阜女子大学_20230227)
令和4年度 関連事業
令和4年度 現職教員の新たな免許状取得を促進する講習等開発事業
令和5年度 教師の養成・採用・研修の一体的改革推進事業(現職教員の新たな免許状取得の促進)
教育政策の動向と新たな教師の学びの姿
髙口 努 氏(信州大学理事(元文部科学省大臣官房審議官))
第2回 評価検討委員会
協議事項(メール並びにヒアリング)
令和5年度現職教員の新たな免許状取得を促進する講習等開発事業第2回評価検討委員会_協議事項
【委員からの回答まとめ】