【授業】在留外国人と言語
【授業】在留外国人と言語
Ⅰ はじめに
本科目で学ぶことで、在留外国人の実態とそれらの人々のかかえている言語問題を理解することである。外国人の増加という現象は近年顕著になってきており、我々がどのように対処すべきかは緊急の問題となっている。それらの問題を概観してゆきたい。
Ⅱ 授業の目的・ねらい
多文化共生社会と言われている現代において、どのような問題が生まれつつあるのか、そしてそれらに対して、我々日本人はどのように取り組んできたのか、そして今後はどのように取り組むべきかについていくのか考察を深めることがこの授業の目的・ねらいである。授業を通して、これらの問題は他人事ではなくて、自分事であるとの認識を持つようになりたい。
Ⅲ 授業の教育目標
在留外国人と言語に関して、基本的な概念を理解して、それらの概念を通して、現代の日本が抱える問題点を理解するようにする。言語問題、とりわけ、外国人に言語サービスをどのように提供するか、外国人は日本語が苦手という点をどのように克服するか検討してゆきたい。
テーマ1 在留外国人の定義
1 何を学ぶか
在留外国人という名称と定義について考える。何故に、この名称が選ばれたのか。その他に相応しい名称はないか。在留外国人の数が増えている実際を数字で理解する。
2 学習到達目標
日本語にまだ慣れていないことで、どのような問題点が生じるか説明することができる。言語サービスという概念の誕生とその発展を時系列的にフォローしてゆくで、外国人の比率が数十%以上に達した欧米諸国と比較して、日本はどのような点が異なるか説明することができる。
3 課題
① 言語サービスはなぜ必要なのかレポートにまとめる。
② 自分の住んでいる自治体で外国人に提供される言語サービスの内容をレポートにまとめる。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ2 言語サービスの主体
1 何を学ぶか
言語サービスと多言語サービスの違いについて学び、言語サービスを提供する主体として地方自治体が最適であることを理解する。
2 学習到達目標
① 法的な観点からの、地方自治体の役目を説明することができる。今度はどのような視点から、法整備が行われてゆくべきか説明することができる
② マイナーな言語の話者がかかえる問題点について説明できる。
③ 在留外国人の増加の程度を予想して、地方自治体がどのようなことをするべきか説明できる。
3 課題
自分が経験した外国人とコミュニケーションするときの問題点を互いに紹介しあう。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ3 言語サービスの対象者
1 何を学ぶか
言語サービスの対象者は誰か。げんごサービスの主体とどのように互いと関連する考察する。オーバーステイの外国人はどのように向かい合うか、そしてその子どもたちはどのような教育が必要か。そもそも、言語サービスを行うその法律的な根拠は何か、単なる善意で行っているのか、検討する。
2 学習到達目標
① どのような外国人に言語サービスを提供すべきか説明できる。世界的に話し手の多い言語話者とマイノリティ言語の話者に対してのサービスの違いを説明できる。
② 出身国別の外国人の言語問題の違いを説明できる。
③ 言語サービスの法的根拠を説明できる。
3 課題
① 日本語や英語以外の母語保持教育について考える。
② 緊急事態では、外国人はどの言語に頼るかを説明する。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ4 公務員が提供するサービス
1 何を学ぶか
① 公務員とは全体の奉仕者であることを確認する。
② 在留外国人の数が増加している現在を確認する。
③ 地方自治体で働く公務員が在留外国人に対して、どのような言語サービスを行っているか確認する。
2 学習到達目標
① 外国人雇用管理主任者とはどのような仕事か説明できる。
② Visaやpassportの概念について説明ができる。在留カードの歴史や現在の機能について説明できる。
③ 外国人が住民基本台帳に掲載されるまでのプロセスを理解して説明できる。
④ 市民課や外国人課の役割や外国人に対してのサービスの概要を説明できる。
3 課題
① 外国人雇用管理主任者とはどのような役目を行うかまとめる。
② 外国人実習制度についてまとめる。
③ 在留カードの機能についてまとめる。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ5 やさしい日本語
1 何を学ぶか
外国人向けに提案されてきた易しくされた日本語の歴史や概要を調べて、どのような役割を果たしているか学ぶ。そして、「やさしい日本語」を普及する場合の問題点を考える。「やさしい日本語」は英語や外国人の母語とどのように異なるか学ぶ。
2 学習到達目標
① やさしい日本語の成立に大きく関与した「簡約日本語」について説明できる。
② 「やさしい日本語」の生まれた必要性について説明できる。
③ 「やさしい日本語」を用いることができる。
3 課題
① 外国人に対して日本語で話したときに感じた問題点を、受講者同士で共有し合う。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ6 日本語の国際化について
1 何を学ぶか
①海外で日本語教師が直面する問題点を考える。
②日本語教師として生計をたてる場合の問題点を考える。
2 学習到達目標
① 日本語教育の国際的な広がりについて説明できる。
② 日本語能力試験、日本語教育能力検定試験などの制度を説明できる。
③ 国連での公用語には何があるか説明できる。
3 課題
① 各国で日本語を学んでいる人の最新の数を調べてみる。
② 外国人に対して日本語で話したときに感じた問題点を、受講者同士で共有し合ってみる。
③ 日本語能力検定試験はどのような目的で作られたのか述べよ。
④ 日本語教育と国語教育の違いを述べよ。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ7 日本語が話せない子どもたちの増大
1 何を学ぶか
① 外国人が直面する問題点をいくつか列挙して、その対策を考えてみる。その中で、日本語の能力の有無がどのような問題点を生み出すか考えてみる。
② 国民である場合(国籍を取得した場合)と永住権を持っている場合の違いについて考える。
2 学習到達目標
① 市役所で外国人の世話をする課の仕事の内容を説明できる。
② 外国人への地方自治体の責任を説明できる。
③ 窓口となる公務員の必要な語学力を説明できる。
3 課題
① 近隣の市町村の役場を訪問して、外国人の世話をする部署について調べてみる。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ8 ダブルリミッド
1 何を学ぶか
ダブル・リミテッドとは何か。どのような社会的な背景から生まれたのか考えてみる。減算的バイリンガリズムと加算的バイリンガリズムを調べる。減算的バイリンガリズムを防ぐ手立てを考えてみる。CALPとBICSについて調べる。
2 学習到達目標
① 野生児の事例を調べることで、言語習得の臨界期について説明できる。
② 複数の言語を子どもの時に習得することから生まれる長所と短所を説明できる。
③ ダブル・リミテッドはどのような場合に生まれるか説明できる。
3 課題
自分に子どもができたとして、各国に滞在しなければならないとして、どのような言語教育を与えるか受講者同士で議論し合う。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ9 文化の違い
1 何を学ぶか
① 世界には様々な文化があり、在留外国人もそれらの文化を背景にしていることを理解する。
② 食文化の違い(例えば、イスラム教の子どもが来て、豚肉が食べられないというケースを想定して、どのように対処するかなど)を検討する。あるいは、女性のかぶるベールなど、衣服の習慣なども理解して、日本社会がどのように受け入れるか学ぶ。
2 学習到達目標
① 異文化の子どもをどのように日本に受け入れるべきか説明ができる。
② 異文化の違いで起きる摩擦について説明できる。
③ 異文化間摩擦の克服の仕方について説明できる。
3 課題
① 世界に多発する民族問題と言語の事例を収集する。取りわけ多文化社会がどのように対処してきたか、自分事として考える。
② 近所にハラール対応のレストランがあるか調べてみよう。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ10 社会とルール
1 何を学ぶか
① 西洋人と非西洋人に対しての日本人の態度の違いなどを考える。
② 敬語の使用が社会全体に組み込まれている日本社会の特質を知る。
2 学習到達目標
① 日本の社会でのルールが在留外国人達にどのように映るか説明できる。
② 敬語などの使い方を説明できる。
③ 面接やお辞儀などの文化的な相違を説明できる。
3 課題
① 面接の時の様子の違いを西洋と日本とで比較してみる。
② 握手とかお辞儀の仕方を在留外国人にどのように教えるか考察する。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ11 人権宣言
1 何を学ぶか
① 世界言語権宣言を読みながら、言語権という概念について考える。
② 差別をなくすために、国際連合が果たしている役割を考察する。
2 学習到達目標
① 人権宣言の骨子を説明できる。
② マイノリティの権利宣言の内容を説明できる。
③ 様々な宣言(子どもの権利条約、国際人権規約)などの意義を説明できる。
3 課題
① それぞれの宣言を時系列的にまとめてみましょう。
② これらの宣言が在留外国人の言語活動にどのように影響を与えるか考えてみる。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ12 国籍の取得
1 何を学ぶか
① 日本国籍を取得する手続きを説明できる。
② ビザの更新、永住権の取得、とはどのようなことなのか、検討する。
2 学習到達目標
① 国籍を取得するとどのような面で利点があるのか説明ができる。
② 出生地主義と血統主義の違いについて説明できる。
③ 二重国籍について説明できる。
3 課題
① 近所で不就学の外国人児童を見かけた場合、どのようにするか話し合う。
② 日本国籍を保持していない場合、児童生徒はどのような不利な取扱を受けるか考える。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ13 法廷通訳他
1 何を学ぶか
① 司法通訳とは何か、を知る。
② 司法通訳が必要とされる背景を知る。
③ 日本語が不自由な外国人が、犯罪の被害者、加害者として関与した場合にどのような問題点が生じるか考える。
2 学習到達目標
① 法廷通訳の必要性について説明できる。
② マイナーな言語の通訳人の必要性ついて説明できる。
③ 諸外国のとうてい通訳人について説明できる。
3 課題
① 年間で必要とされる法廷通訳人の数を言語別に調べる。
② もしも弁護、検察、裁判で同じ通訳人が兼ねたらどのような弊害が起こるのか考える。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ14 国際観光都市と多言語
1 何を学ぶか
① 外国人向けの標識やポスター、ホームページなどの充実を検討する。
② 主要都市以外の都市への外国人観光客を呼びこむ方法を考える。
2 学習到達目標
① 外国人観光客と在留外国人との違いについて説明できる。
② オーバーツーリズムの問題について説明できる。
③ 観光業が振興することで、在留外国人の言語サービスにどのように貢献するか説明できる。
3 課題
① 受講生が滞在する市町村へ外国人観光客を増やすための政策をいくつか挙げてみる。
② いわゆる観光地を1つ選び、外国人観光客を迎入れる方策がどのように行われているか現地調査をおこなう。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
テーマ15 望ましい多文化共生社会
1 何を学ぶか
① 多文化共生社会とはどのような社会であるか調べる。
② シンガポールの事例を調べて、どのように多文化共生社会を維持しているか考察する。
③ 日本が今後進むべき社会の姿を思い浮かべる。
2 学習到達目標
① 諸外国で多文化共生社会を標榜している国が直面している問題点を説明できる。
② 先進国で行われている多文化共生社会を説明できる。
③ 外国人の比率が一割を超える社会の状況を説明できる。
3 課題
① 小中小学校では、多文化共生社会を考えさせる教材のあり方を考察する。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト