【授業】学校経営と学校図書館
【授業】学校経営と学校図書館
Ⅰ はじめに
学校図書館は、戦後教育改革において学校教育に欠くことのできない施設として学校教育法施行規則や学校図書館法に規定された。学力観の変遷に伴い、学校図書館の重要性への認識も変わってきた。本科目では学校における学校図書館の位置づけや役割について学習し、情報時代・生涯学習時代における学校図書館の活用について考察できるようになることを期待する。
Ⅱ 授業の目的・ねらい
日本の学校図書館がどのように発展してきたのか,今度どのように発展するのかを考える。学校図書館の活動の根拠となる学校教育法や学校図書館法について理解した上で,学校経営組織における学校図書館,学校図書館の組織や運営について学習する。学校図書館の経営を中心的に担う司書教諭および学校司書の職務,養成や研修について概観する。学校図書館活動の内容や方法を学び,学校図書館活動を活性化させていく方策を考える。
Ⅲ 授業の教育目標
学校教育における学校図書館の位置づけ,役割について説明できる。
学校図書館の経営や,司書教諭・学校司書の職務,学校図書館活動について理解できる。
第1講 学校図書館像
1.何を学ぶか
「学校図書館」について学習前の情報を確認し、文部科学省から発表されている学校図書館に関する文書に記された考え方について学ぶ。
(1)「子どもの読書サポーターズ会議.これからの学校図書館の活用の在り方等について(報告)」2009 年
(2)「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」2017 年
2.学習到達目標
・これまでの経験から学校図書館とはどういうところだったのかを説明できる。
・自分にとって学校図書館がどのような場所だったのかを説明できる
3.研究課題
(1)あなたが小学校、中学校、高等学校と過ごしてきた学校の学校図書館はどんなところでしたか?
(2)あなたにとって学校図書館とはどんな場所ですか?
(3)公共図書館の司書と学校図書館の司書とでどんな違いがあると思いますか?
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第2講 学校図書館の理念と教育的意義
1.何を学ぶか
(1)学校教育とは
(2)学校図書館の理念と意義
(3)学校図書館の役割と機能
2.学習到達目標
・教育の3領域と生涯学習、学校教育の目的について説明できる。
・学校図書館の持つ教育力について説明できる
・学校図書館で身につけるべき「情報リテラシー」について説明できる
・学校図書館の主な機能として3つの機能を説明できる
・学校図書館での活動計画を考える際の過程を説明できる
3.研究課題
全国学校図書館協議会が発表した学校図書館憲章を読み、要点について整理しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第3講 生涯学習社会における学校図書館
1.何を学ぶか
(1)戦後日本の社会情勢、教育政策、学校図書館
(2)学習権と学力観
2.学習到達目標
・戦後から現在までの日本の社会構造の変化を説明できる
・戦後から現在までの教育政策の変化を説明できる
・戦後から現在までの学校図書館政策の変化を説明できる
・公教育の目的を説明できる。
3.研究課題
1990年代に教育政策は何が原因でどのように変化したのかを説明し、学校図書館との関連を考察しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第4講 学校教育と学校図書館
1.何を学ぶか
(1)ホーレス・マンの「学区図書館論」
(2)ジョン・デューイの「学校と社会」
2.学習到達目標
・マンの「学区図書館」の考え方について説明できる
・ジョン・デューイの「学校と社会」の考え方について説明できる
3.研究課題
(1)マンの「学区図書館論」について考察しなさい
(2)ジョン・デューイの「学校と社会」における図書館の考え方について考察しなさい
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第5講 学校図書館の歴史
1.何を学ぶか
(1)戦後教育改革と学校図書館
(2)新教育における学校図書館政策
2.学習到達目標
・戦後教育改革の概要を説明できる
・戦後教育改革の中で学校図書館はどのように位置づけられていたのかを説明できる
3.研究課題
近代日本の学校図書館の歴史について調べ、自分なりに焦点を当てたトピックについて新聞形式でWordファイルA4一枚にまとめなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第6講 教育行政と学校図書館
1.何を学ぶか
(1)教育行政とは
(2)学校教育関係の法令
(3)学校図書館と関連する法令:憲法・教育基本法・学校教育法
(4)学校図書館法
(5)学校図書館政策
2.学習到達目標
・学校図書館に関連する法令について説明できる
・学校図書館法の改正履歴を説明できる
・学校図書館政策の流れを説明できる
3.研究課題
(1)学校図書館法の変遷についてまとめなさい
(2)学校図書館政策の推移についてまとめなさい
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第7講 学校図書館経営
1.何を学ぶか
(1)学校経営とは
(2)学校図書館経営とは
(3)学校図書館の経営組織
(4)マネジメントサイクル
2.学習到達目標
・学校を経営するための要素を説明できる
・学校図書館経営の具体例を説明できる
・学校図書館を経営うるための組織の在り方を説明できる
・学校図書館におけるマネジメントサイクルを説明できる
3.研究課題
(1)具体的な学校図書館運営計画(短期)を参照し、考察を行いなさい
(2)具体的な学校図書館運営組織図を参照し、考察を行いなさい
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第8講 学校図書館専門職員の精度・役割
1.何を学ぶか
(1)学校図書館専門職員とは
(2)学校図書館職員の役割
2.学習到達目標
・現在の日本の司書教諭・学校司書・司書の制度的な違いを説明できる
・司書教諭の役割、学校司書の役割を説明できる
3.研究課題
司書教諭と学校司書との違いについてまとめなさい
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第9講 学校図書館専門職員の養成・研修
1.何を学ぶか
(1)学校図書館職員の養成
(2)学校図書館職員の研修
2.学習到達目標
・司書教諭・学校司書の養成制度について説明できる
・専門職性を担保するための養成制度について理解する
・司書教諭の発令、学校司書の配置の現状を理解する
3.研究課題
学校図書館職員の現状についてデータを参照し考察を行いなさい
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第10講 メディアセンターとしての学校図書館
1.何を学ぶか
(1)メディアとは
(2)メディアの種類と特性
(3)メディアの選択・収集
2.学習到達目標
・学校図書館メディアの種類と特性を説明できる
・学校図書館の目的を踏まえ、学校図書館メディアの選択・収集の際の留意点を説明できる
3.研究課題
公共図書館メディアと比べたときの学校図書館メディアの特徴について説明しなさい
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第11講 図書館サービス・図書館利用教育・読書教育
1.何を学ぶか
(1)図書館サービスとは
(2)資料提供サービス
(3)情報提供サービス
(4)図書館利用教育
(5)読書教育
2.学習到達目標
・学校図書館における図書館サービスについて説明できる
・図書館利用教育の必要性と、歴史的な変遷について説明できる
・日本の読書概念の特徴、「読みの力」の段階、学校における「読み」と読書指導の特徴について説明できる
3.研究課題
(1)閲覧を効果的にする工夫を考えなさい
(2)どのようなメディアがどうして禁退出になっているか確認しなさい
(3)「読書」と「読書指導」について考察しなさい
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第12講 調べ学習・探究学習・情報リテラシー教育
1.何を学ぶか
(1)学習活動への支援
(2)調べ学習
(3)情報リテラシー教育
2.学習到達目標
・学校図書館の学習・情報センター機能について説明できる
・調べ学習支援の具体例を挙げることができる
・Big Six skills、ISPモデルについて説明できる
・日本における探究学習における課題を説明できる
3.研究課題
学校図書館を活用した調べ学習について任意の教科・単元で指導案を作成しなさい
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第13講 学校図書館メディアプログラム・学校文化と学校図書館
1.何を学ぶか
(1)学校図書館メディアプログラムとは
(2)学校図書館メディアプログラム策定にあたっての視座
(3)学校文化と学校図書館
(4)学校図書館ガイドライン
2.学習到達目標
・学校図書館活動の最新の動向を説明できる
・学校教育の中で学校図書館メディアを利用できる場面について説明できる
・学校文化とはどういうものなのか、学校文化の中で学校図書館はどのよう位置づけられるべきなのかについて説明できる
3.研究課題
(1)自分の学校経験から、学校文化の中で学校図書館はどのように位置づけられていたか考察しなさい
(2)学校図書館は学校文化の中でどのように位置づけられることが理想だと考えますか
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第14講 図書館協力とネットワーク
1.何を学ぶか
(1)図書館の相互協力
(2)ネットワーク
2.学習到達目標
・図書館が他の図書館と連携する必要性を説明できる
・図書館における相互協力の内容を説明できる
・相互協力における学校図書館の課題を説明できる
3.研究課題
(1)図書館間相互協力の必要性について説明しなさい
(2)相互協力における学校図書館の課題を説明しなさい
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
Ⅳ レポート課題
課題1
1953年の学校図書館法制定、1997年の法改正、2014年の法改正のそれぞれについて、その成果と残された課題について論じなさい。
課題2
学校図書館は家庭・地域とどのように連携することが可能か、具体的に考察しなさい。
Ⅴ アドバイス
課題1解説
学校図書館法がどのような経緯で制定されたのか、なぜ改正が必要だったのかを読み解くことで、学校教育における学校図書館の位置付けを確認する。
課題2解説
地域の例として、公共図書館、博物館はもちろんのこと、社会見学や体験学習など関係する機関を想定し、学校図書館として可能な連携を考えなさい。
Ⅵ 科目修得試験:レポート試験
(1)学校図書館の重要性について「生涯学習」「主権者教育」「民主主義」との関係を念頭に論じ、学校図書館担当者としての学校図書館運営、活動を考察しなさい。
(2)ICTやAIを活用した「個別最適な学び」が求められる学校教育における今後の学校図書館像を考察しなさい。
Ⅶ テキスト
配布資料による
Ⅷ 参考文献
渡邊重夫著『学校図書館の力:司書教諭のための11章』勉誠出版、2013.
全国学校図書館協議会監修『司書教諭・学校司書のための学校図書館必携:理論と実践』 改訂版.全国SLA、2017.
堀川照代編著『「学校図書館ガイドライン」活用ハンドブック 解説編』、悠光堂、2018.
子どもの読書サポーターズ会議.これからの学校図書館の活用の在り方等について(報告)2009年
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/meeting/__icsFiles/afieldfile/2009/05/08/1236373_1.pdf
学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議. これからの学校図書館の整備充実について(報告)2017年https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/115/houkoku/1378458.htm
文部科学省. 学校図書館ガイドライン 2016年 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1380599.htm
IFLA学校図書館宣言(2021)https://www.ifla.org/wp-content/uploads/2019/05/assets/school-libraries-resource-centers/publications/ifla_school_manifesto_2021.pdf