【授業】被服学概論
Ⅰ 学修の概要
衣環境学視点で被服の着用目的、要求性能、要求機能を解説する。被服材料学的には繊維や織物・編物の種類、構造、性質、生産の基礎を講義し、それらを基に被服の企画、製造、流通、購入、着用、管理、廃棄の流れを解説する。
また、人体側から被服を考え、衛生的で健康的な衣生活を送るための基礎的知識を、被服材料が持つ様々な性能と絡めながら講義する。
開講中に2回のレポート課題を与える。
Ⅱ 学修到達目標
快適で健康的な衣生活を営むために、被服に関する基礎的知識を幅広く修得する。
(1) 被服の機能と性能が理解できる。
(2) 被服の基となる繊維や布帛についての基礎知識が修得できる。
(3) 被服と人体との関係を理解することで、快適性の基本的知識が修得できる。
(4) 被服の企画、製造から購入、着用、管理までの流れが理解できる、
(5) 自分の衣生活を振り返ることで、快適で合理的な衣生活の指針を得ることができる。
被服学は様々な学問分野と関連していることが理解できる。
Ⅲ 目 的
被服着用の目的を明確にするとともに、着装行動に影響を与える要因を分析できるようにする。また、被服材料の種類、性能について十分把握し、衣服の種類によってどのような素材をどのようにデザインすれば、合理的で快適な衣生活ができるか考える能力を養う。更に被服材料がもたらすであろう地球環境への影響についても考える能力を養う。
被服生産現場では、どのように被服が設計・生産され、どのように製造されているか、現状把握ができるようにする。
中学校・高等学校の家庭科教員免許を取得するための、被服材料科学分野の必修科目である。
第1講 序論 衣環境学から考える被服 本論:ファッションと生活
1.概要(何を学ぶか)
被服は第2の皮膚として、人間を取り巻く第1の環境を形成する、非常に重要なものであることを認識・理解する。
被服の様々な着装起源を学び、自分の着装行動を振り返って分析する。
太平洋戦争後の社会構造の変化と、ファッションの変遷との関連を考え、現在のファッションのあり方を学ぶ。
2.学修到達目標
(1) 人間を中心にした生活環境の広がりを理解できる。
(2) 衣服のさまざまな着装起源について説明できる。
(3) 衣服の快適性追究が地球環境にもたらす影響を理解できる。
(4) 衣服の快適性追究が人間にもたらす影響を理解できる。
(5) 人間の歴史とファッションの歴史の関係を説明できる。
(6) 近代工業化と衣服の既製服化を理解できる。
(7) 高度経済成長と既製服化の進展の歴史が理解できる。
(8) 人間の心理的欲求とファッションのかかわりを理解できる。
(9) 社会構造の問題がファッションに与える影響を理解できる。
3.追究トピックス
(1) 人間の様々な着装起源説を自分の今の着装状態と関係させて説明しなさい。
(2) 快適性の追究が環境に与える悪影響について、事例をあげて考察しなさい。
(3) 大流行したファッションを例にあげ、その時の社会背景と関連させて流行の状態を考察しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第2講 被服の機能と材料に求められる性能
1.概要(何を学ぶか)
被服の着装行動に影響を及ぼす様々な要因について学び、自分の着装行動を分析して説明できるようにする。
衣環境がより快適であるために、被服材料に対して大変多くの性能を求めていることを学ぶ。繊維製品の主要製品ごとに、求められる性能が異なっていることを理解し、主要製品の事例をあげて説明できるようにする。
2.学修到達目標
(1) 被服の着装行動に影響を及ぼす要因について説明できる。
(2) 被服の保健衛生的機能と社会生活機能が説明できる。
(3) 衣環境の快・不快は感覚受容器で感受されることを知る。
(4) 被服材料には様々な性能が求められることを理解できる。
(5) 被服材料に要求される性能を主要製品ごとに説明できる。
3.追究トピックス
(1) 自分の着装衣服を自分の着装行動に照合させて説明しなさい。
(2) 被服購入時、被服にどのような性能を求めて購入するか、アイテム別に説明しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第3講 被服用天然繊維の種類と分類、性能
1.概要(何を学ぶか)
被服材料に多く利用されている天然繊維について、分類方法や種類を把握する。植物繊維と動物繊維に分けて、主成分、構造、性能、特徴、利用分野を学び、快適な衣生活を送る指針を得る。
2.学修到達目標
(1) 繊維は高分子物質であることを理解できる。
(2) 天然繊維の分類方法と種類について説明できる。
(3) 植物繊維の主成分、構造、性能、特徴、利用分野を説明できる。
(4) 動物繊維の主成分、構造、性能、特徴、利用分野を説明できる。
3.追究トピックス
(1) 綿と麻は主成分が同じなのに、なぜ性能が異なるか説明しなさい。
(2) 羊毛と絹は主成分が同じなのに、なぜ性能が異なるのか説明しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第4講 被服用化学繊維の種類と分類、性能
1.概要(何を学ぶか)
被服材料に多く利用されている化学繊維について、分類方法や種類を把握する。再生繊維、半合成繊維、合成繊維、無機繊維に分けて、主成分、構造、性能、特徴、利用分野を学び、快適な衣生活を送る基礎知識を得る。
繊維は衣服だけではなく、産業資材としても大変大量に生産使用されている現状を学ぶ。
2.学修到達目標
(1) 化学繊維の分類方法と種類について説明できる。
(2) 再生繊維、半合成繊維、合成繊維の分子構造の違いが説明できる。
(3) 化学繊維の紡糸方法について説明できる。
(4) 再生繊維の主成分、構造、性能、利用分野が説明できる。
(5) 半合成繊維の主成分、構造、性能、利用分野が説明できる。
(6) 合成繊維の主成分、構造、性能、特徴、利用分野が説明できる。
(7) 特殊繊維の利用分野について、事例をあげて説明できる。
3.追究トピックス
(1) 再生繊維の3種類は主成分が同じであるが、若干性能が異なっている。その原因を追究しなさい。
(2) 合成繊維の3種類は利用分野が若干異なっている。その理由を考察しなさい。
(3) 日常生活には様々な繊維が利用されている。被服以外に利用されている材料を、事例をあげて考察しなさい
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第5講 被服用糸の種類と性能
1.概要(何を学ぶか)
綿や羊毛の短繊維の紡績方法を学び、繊維からどのように糸にするかを説明できるようにする。
絹や化学繊維の長繊維から、どのように糸にするかを学ぶ。
糸の分類方法、性能や風合いに影響を与える構成因子などについて学び、糸の太さを表す表示方法を理解する。
2.学修到達目標
(1) 綿や羊毛など短繊維の紡績工程の概略について理解できる。
(2) 絹など長繊維の製糸工程の概略について理解できる。
(3) 糸の形態が布の風合いに与える影響について説明できる。
(4) 糸の風合いに影響を与える構成因子を説明できる。
(5) 糸の太さを表す番手法について説明できる。
3.追究トピックス
(1) 縫製用縫い糸とレース糸を分解して組織の違いを考察しなさい。
(2) 自分の衣服を、紡績糸使用とフィラメント糸使用に分類しなさい。
(3) 綿ミシン糸(カタン糸)を数種類分解して、表示番手数と細さの違いを考察しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第6講 被服用織物の製造、構造、性能、分類
1.概要(何を学ぶか)
被服材料の多くを占める織物について、その製造法や組織を学び、構成因子の違いによって、様々な風合いを持つ織物ができあがることを学ぶ。実際の被服がどのような織物でできているか、体験的に調査してその理由を理解する。
世界各地の伝統的な織物を学び、伝統衣装との関連を探る。
2.学修到達目標
(1) 織物の製造法の原理について説明できる。
(2) 織物の基本組織と変化組織について説明できる。
(3) 織物の風合いや表情に影響を与える構成因子を説明できる。
(4) 代表的な織物の名称と素材と組織の関係を説明できる。
3.追究トピックス
(1) 自分が着用しているジャケットやズボンの組織を観察しなさい。
(2) 素材と組織の違いで布名称がつけられていることを調査しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第7講 被服用編物の構造、分類、組織、性能
1.概要(何を学ぶか)
被服材料に利用されている編地について、その製造法や組織を学び、構成因子の違いによって、様々な風合いや表情を持つ編地ができ上がることを学ぶ。
どのような繊維製品が編地なのか、どうして編地なのかを、自分が着用している衣服を事例に体験的に知る。
2.学修到達目標
(1) 編物の製造法の原理について説明できる。
(2) 緯編の基本組織と変化組織について説明できる。
(3) 経編の基本組織と変化組織について説明できる。
(4) 編物の風合いや表情に影響を与える構成因子を説明できる。
(5) 代表的な編地の名称と素材と組織の関係を説明できる。
(6) 織布と編地の性能の違いを説明できる。
3.追究トピックス
(1) 自分が着用している肌着やインナーの組織を観察しなさい。
(2) 自分が着用している被服を、織物と編物に分類し、その風合いや着用感を比較して考察しなさい。
(3) 繊維製品が持つ様々な性能が、織物と編物でどのように異なるか考察しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第8講 繊維製品の染色
1.概要(何を学ぶか)
織物や編物が製織・製編後製品として消費者に渡る前に、どのような加工や染色がなされているかを学ぶ。
天然染料と化学染料に分けて、様々な染料の化学的構造と、各種繊維材料との物理的・化学的相性を学ぶ。
いろいろな染料の染色堅牢性を繊維材料と関連させ、消費者として繊維製品の取り扱い方法や管理方法を学ぶ。
2.学修到達目標
(1) 主な天然染料について説明できる。
(2) 主な合成染料の種類と、対象繊維素材が説明できる。
(3) 日本の伝統的染色方法をあげて比較説明ができる。
(4) 主な繊維素材とその染色方法について説明できる。
(5) 染色堅牢度の種類について説明できる。
3.追究トピックス
(1) 浸染法と捺染法にわけて、その染色原理を比較説明しなさい。
(2) 染色された自分の衣服アイテムについて、その染色方法を推測し、着用中はどの染色堅牢度が重要か考察しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第9講 被服の製造と品質管理
1.概要(何を学ぶか)
アパレル製品の企画、主資材や副資材の選定、パターン作成、裁断、縫製、流通、販売という製造過程を学ぶ。
各製造過程における品質管理はどうあるべきか、生産者側と消費者側双方の立場から考える。
アパレル生産工業は労働集約型産業であることを学び、今後の繊維産業の方向性を探る。
2.学修到達目標
(1) アパレル商品の企画から販売までの流れを説明できる。
(2) アパレル商品の主資材と副資材の種類と、それぞれの資材に必要な消費科学的特性因子が説明できる。
(3) アパレル商品の工業的生産工程について説明できる。
(4) アパレル商品の品質管理にかかわる因子を説明できる。
3.追究トピックス
(1) アパレル製品の製造において、手作り単品製作と工業的大量生産の相違点を考察しなさい。
(2) マーキング作業において最も重要なことは何か考察しなさい。
(3) 縫製仕様書にはどのような事が重要視されているか考察しなさい。
(4) 大量生産現場における品質管理者が最も気を付けなければならないことは何か考察しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第10講 人体の発熱と放熱 被服による皮膚温・体温維持作用
1.概要(何を学ぶか)
人間の自律神経の働きを学んだあと、人間の体温維持作用を学び、体温と皮膚温の関連を学ぶ。
環境の快適温熱条件、身体の体温維持作用、被服の衛生的性能の相互の関連を学ぶ。
被服材料の衛生学的諸性能が、被服気候に与える影響を考え、理想的な被服気候と最良の着心地を考える。
2.学修到達目標
(1) 人間の体温維持の生理と、自律神経の関係を説明できる。
(2) 人間の快適環境条件と被服の保温性の関係を説明できる。
(3) 被服気候の快適条件を説明できるとともに、体温と皮膚温の関係を説明できる。
(4) 被服材料の衛生学的性能と着心地の関係を説明できる。
3.追究トピックス
(1) 環境の温熱条件と生活環境の快適条件の関係を考察しなさい。
(2) 夏季と冬季の着用状態を比較して、被服層と空気層の被服気候を考察しなさい。
(3) 人間にとって快適な着用状態とはどのような温熱条件なのか考えなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第11講 被服による皮膚障害、衣料公害
1.概要(何を学ぶか)
衣服の着装時に発生する健康障害を、衣服圧など物理学的側面から、歴史的背景と現状を学ぶ。
人体に悪影響を及ぼす被服、衣料公害や香害について、洗剤や加工剤など化学的側面から、歴史と現状を学ぶ。
衛生的で健康的な衣環境は、どのような着装をすれば達成できるかを考える。
2.学修到達目標
(1) 衣服圧の発生原因と身体への悪影響について説明できる。
(2) 皮膚の汚染原因を分類し、対処方法について説明できる。
(3) 衣服による皮膚障害について、物理的刺激と化学的刺激に分けて説明できる。
3.追究トピックス
(1) 自分の着装状態から、どのような衣服がどの部位に衣服圧を発生しているか考察しなさい。
(2) 衛生的で健康的な衣生活を送るため、日常生活で気をつけることは何か、事例をあげて考察しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第12講 洗浄理論、仕上げ加工、保管
1.概要(何を学ぶか)
被服は、着用、洗濯、仕上げ、保管の4行程のサイクルで使用され、最後には廃棄されることを理解する。
日常生活において、被服に付着する汚れについて、種類や主成分、性質を学ぶ。
被服に付着する汚れの性質に対応させた適切な洗浄方法を学び、洗浄理論を学ぶ。
家庭洗濯において、効果的に汚れを除去する条件と、合理的な保管方法について学ぶ。
2.学修到達目標
(1) 日常生活における汚れの種類と効果的対処法を説明できる。
(2) 市販洗剤の種類(界面活性剤の種類)と汚れの種類を対応させて、効果的洗浄方法について説明できる。
(3) 洗浄の条件をあげて、効果的洗濯方法を説明できる。
(4) 繊維製品の素材に合わせた合理的保管方法を説明できる。
3.追究トピックス
(1) これまでの自分の洗濯方法を分析して、より効果的な洗濯方法を考察しなさい。
(2) 日本における春と秋の衣替えの重要性を考察しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第13講 繊維特性による品質苦情
1.概要(何を学ぶか)
被服着用中に発生しやすい繊維素材の損傷事例について、その発生原因を探る。
被服材料の違いによって、発生する損傷形態が異なっていることを学ぶ。
品質苦情が起きないようにするにはどうすればよいか、生産者側と消費者側から、それぞれ対処法を考える。
自分の衣生活において発生した損傷事例をあげて、その原因と対処法を考える。
2.学修到達目標
(1) アパレル製品の消費者苦情について、事例を説明できる。
(2) アパレル製品の消費者苦情の原因を把握するため、製造過程における特性要因について説明できる。
(3) 第2講から第4講で学修した各繊維特性と関連させ、品質苦情を防止するにはどうすれば良いか説明できる。
(4) 消費者苦情が起きないようにするため、生産者として注意すべきことが説明できる。
(5) 自分の衣生活における被服の損傷事例など、具体的な苦情事例の原因と対処法を説明できる。
3.追究トピックス
(1) 自分のこれまでの衣生活を振り返り、アパレル製品に発生した不都合事例をあげ、解決方法を考察しなさい。
(2) アパレル製品の品質苦情が社会問題になった事例をいくつか挙げて、生産者側で注意すべき点と、消費者側で注意すべき点を考察しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第14講 被服の廃棄問題
1.概要(何を学ぶか)
被服材料の廃棄量が他の製造業と比べて多い理由を考えるとともに、日本における被服廃棄の実態を学ぶ。
被服の廃棄には特殊な事情があることを学び、またリサイクルしにくい側面がある事を学ぶ。
被服の廃棄量を減らすために、生産者側と消費者側の双方の立場から現実的方策を考える。
2.学修到達目標
(1) 被服の製造工程中に発生する素材廃棄の現状を説明できる。
(2) 消費者がどのように衣服を廃棄しているか説明できる。
(3) 被服の廃棄量を減らすための、企業努力と消費者行動を具体的に説明できる。
3.追究トピックス
(1) 被服の廃棄に関する世界的問題と日本での問題を調査しなさい。
(2) 自分の衣生活を振り返り、廃棄量を減らす方策を考察しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
第15講 繊維製品の品質表示、原産国表示、各種の表示
1.概要(何を学ぶか)
家庭用品品質表示法に定められていることを学び、自分の衣服の実際の表示と照合して、表示内容を学ぶ。
不当景品類及び不当表示防止法に定められている内容を学び、実際の表示と照合して、表示内容を学ぶ。
各種繊維製品についている品質保証マークを調べ、その保証内容を学ぶ。
2.学修到達目標
(1) 家庭用品品質表示法に定められている、繊維製品の表示ついて説明できる。
(2) 家庭洗濯等取扱い表示(洗濯絵表示)について説明できる。
(3) 原産国表示が定められている法規とその内容が説明できる。
(4) アパレル製品の様々な品質保証マークを理解できる。
3.追究トピックス
(1) 家庭用品品質表示法と不当景品類及び不当表示防止法の内容を調査して、内容の詳細を述べなさい。
(2) 表示内容を一般消費者に浸透させる方策を考察しなさい。
4.映像資料
5.プレゼン資料
6.テキスト
資料