安国寺経蔵

安国寺経蔵   高山市国府町西門前474  
 この経蔵は飛騨地方で唯一の国宝建築である。経蔵の建立は、天井裏にある輪蔵心柱の上端を受ける横木の墨書により応永15年(1408)と判明していて、内部の八角輪蔵は国内における現存最古の輪蔵である。輪蔵には寺僧が中国に渡航して請来した元版大蔵経(一切経)が納められている。心柱に大蔵経を納める書架を中心とした八角輪蔵の部材が取り付き、心柱を軸に回転する構造となっている。
 飛騨安国寺は諸国安国寺の一つとして貞和3年(1347)に創立された。多くの安国寺は既存の寺院に寺号を付与する形で設置が実現されており、飛騨安国寺も前身寺院として少林寺の名を伝える(『扶桑五山記』)。本尊釈迦三尊像は延文2年(1357)の造立、現在経蔵に安置してある三牌は文和元年(1352)の作成、観応元年(1350)に示寂した開山瑞巌和尚の頂相彫刻は明徳3年(1392)に造像され、開山塔(塔所)として成立した塔頭・瑞雲庵に安置されたと考えられる。
 応永2年~11年にかけて、益田郡中呂村・円通寺(のちの禅昌寺)の寺僧らが自坊に所蔵する大般若経をこの大蔵経と校合(文字の異同の確認作業)していることから、大蔵経が少なくとも応永2年以前に安国寺に請来されていたことがわかる。経蔵造営事業においては、建物より先に、大蔵経の入手が実現していたことになる。安国寺経蔵の元版一切経は現在では半数以上が散逸してしまったが、なお2000帖を超える規模で当初納入された場所に安置されているのは、全国でも稀有な事例となっている。
 参考文献『高山市史・建造物編』