【講義】教育メディア特講
【講義】教育メディア特講
Ⅰ はじめに
メディア(Media)とは、mediumの複数形でラテン語が起源である。このmediumは、中間とか媒体という意味であるため、一般に情報の記録、伝達、保管などに用いられる媒体や装置のことの他に、コミュニケーション媒体や情報媒体等と訳されることもある。このためにメディアを、「記録・保管のための媒体」と「コミュニケーションのための媒体」とに大別することができるが、両者には重なりがある。例えばCD、手紙、電話、テレビなどは音楽、文章、声や映像などの情報を伝達するのに用いられるが、コミュニケーションの媒介としても存在しているように複合メディアとしてとらえている。そのために、情報がある人から別の人へ伝達される際には、多くはその間に何らかのメディアが介在している。メディア教育は、「メディア作品の分析と制作を通じ、批判力および創造力を体系的に発達させる教育」と「メディアそのものを教育の内容とし、メディアについての理解とその能力の育成を目指す。」の二つの解釈がある。このメディア教育は、近年「メディアリテラシー」として、情報教育の中でも多く用いられるようになった。
Ⅱ 授業の目的・ねらい
教育におけるメディアの発達、効果研究を概観し、メディアのもたらす学習環境と学習コミュニティの形成、教育コミュニケーションにおける教育情報表現について学び、教育用コンテンツの制作、流通、教材の設計と評価、メディアと著作権の問題に言及する。一方、新しい情報表現としての仮想空間の教育的効果、e-Learningなど新しい遠隔教育システムについても学習する。
Ⅲ 授業の教育目標
教育におけるメディアの発達、効果研究を概観し、メディアのもたらす学習環境と学習コミュニティの形成、教育コミュニケーションにおける教育情報表現について学び、教育用コンテンツの制作、流通、教材の設計と評価、メディアと著作権の問題に言及する。一方、新しい情報表現としての仮想空間の教育的効果、教育メディアを用いた新しい子どものための文化システムについても学習する。
(1)教育における文化情報メディアの役割・機能について学び、教育環境、学習環境を構成するメディア技術を体系的に理解する。
(2)学習資源とメディア教材を概観し、メディアのもたらす学習環境と学習コミュニティの形成、教育コミュニケーションにおける教育情報表現について学ぶ。
(3)e-Learningをベースにした個人の学習環境、文化情報メディアによる新しい学校環境などに関する基本知識を習得する。
(4)メディアと著作権について、個人情報と情報セキュリティとともに理解する。
(5)新しい情報表現としての仮想空間の教育的効果、教育メディアを用いた新しい子供のための文化システムについても学習する。
テーマ1 メディアと情報
1.何を学ぶか
小中高校などの初等教育での情報教育の重要性は、以前からも認識されており、「ミレミアム・プロジェクト」などの国の政策や民間の支援などが行なわれてきた。これらの情報教育の変遷と「教育の情報化」の目的を理解する。
2.学習到達目標
①「情報教育」と「教育の情報化」の違いについて論述できる。
② 教育における情報化政策について説明できる。
3.研究課題
① 高校まででかなりの情報教育が行なわれるようになると、大学ではどのような情報教育をする(大学生にはどのような知識能力が求められる)べきか。
② 大学での授業の方法や大学の情報化について、学生の立場から期待することを列挙すること。
③ インターネットの特徴とメディアとしてのインターネットの可能性を述べよ。
④ メディアにおけるアナログとデジタルの特徴と、社会全体がデジタル化されていく理由について述べよ。
テーマ2 メディア教育と教材
1.何を学ぶか
メディア教育は、「メディア作品の分析と制作を通じ、批判力および創造力を体系的に発達させる教育」と「メディアそのものを教育の内容とし、メディアについての理解とその能力の育成を目指す。」の二つの解釈がある。このメディア教育は、近年「メディアリテラシー」として、情報教育の中でも多く用いられるようになった。ここでは、メディア教育についてメディア比較研究につ
いて理解する。
2.学習到達目標
① メディア比較研究の歴史的な経緯について説明できる。
② 視聴覚教育におけるメディアの役割について考察できる。
3.研究課題
① 視聴覚教材の特性を具体的な例を挙げて述べなさい。
② 自作教材を作成する意義について例を挙げて述べなさい。
テーマ3 学習資源とメディア教材
1.何を学ぶか
今後、高度に情報化された社会を実現していくに当たり、効果的な人材育成を行なうための基盤作りが最重要課題であり、学校教育・社会人教育の情報化のために必要なコンテンツを流通させるとともに、先進的なプラットフォーム等を開発・提供することが求められている。また、学習指導要領においては、インターネットの検索機能やITを活用した「調べ学習」等を通じ、学校内に留ま
ることなく地域社会や経済社会、さらには世界中のコンテンツを利用した自らの好奇心に基づいた創造的な学習形態を確立していくことが求められているが、地域社会や産業活動等を紹介する学校向けのコンテンツは非常に不足しており、また、地域社会や企業等から学校への貢献についても充分に行われていないのが現状である。従来実施されてきたITを活用した授業実践を含む事業にお
いては、授業実践事例の共有が効率良く行なえず、ITを活用した授業を実践する人材の育成が遅れている。ここでは、これらの学習資源とメディア教材について具体的な事例を元に考察する。
2.学習到達目標
① メディアの特性を教材に生かしているかを評価できること。
② メディア教材を評価して、学習活動で活用できる。
3.研究課題
① 地域資料教材を使った授業を計画しなさい。
② 静止画教材と動画教材を使った授業を計画しなさい。
テーマ4 e-Learningと学習
1.何を学ぶか
e-Learningとは、情報技術であるコミュニケーション・ネットワークなどを活用した主体的な学習である。コンテンツは学習目的にしたがって編集され、学習者とコンテンツ提供者との間に必要に応じてインタラクティブ性が確保されている。このインタラクティブ性とは、学習者が自らの意志で参加する機会が与えられ、人またはコンピュータから学習を進めていくうえでの適切なインス
トラクションが適時与えられることを指す。このe-Learningによる学習支援の方法とその実践について理解すると共に、Webのアクセスビリティについて理解する。
2.学習到達目標
① e-Learningによる学習支援の方法について説明でき、実践して、学習活動で活用できる。
② ウェブ・アクセシビリティについて理解したWeb教材を構築できる。
3.研究課題
① 総務省「ウェブ・アクセシビリティ実証実験」の結果報告を読み、高齢者や障害者がどのようなことで戸惑うか、それを解決するにはどのようなことに留意する必要があるかを調べなさい。
② 目隠しをしてWebページを閲覧しなさい。他の人に読み上げてもらったり、ガイドしてもらったりして、①を実感して報告しなさい。自分が作成公開しているページ(それがなければ地方自治体のページ)を対象にする。
③ インターネットでは、アクセシビリティに考慮したHTMLの書き方などを説明したサイトが多くあります。そのうち、推奨するサイトとその特徴を報告しなさい。
④ ユーザビリティやアクセシビリティの観点から、Webページを評価してランキングした結果を掲載しているページを探しなさい。特に、その評価項目として何を用いているかを調べなさい。
テーマ5 メディアと著作権
1.何を学ぶか
文化の発展のためには、著作をした人の権利を保証することにより、著作をすることを支援すること、他人の著作を円滑に利用できるようにすることが必要である。それを法律にしたのが著作権法である。ここでは、これらの著作権についての概念を理解するとともに、プライバシーや個人情報・セキュリティについて理解する。
2.学習到達目標
① 著作権について理解し、教育における著作権の扱いについて論述できる。
② プライバシーや個人情報・セキュリティについて理解し、教育における課題を考察できる。
3.研究課題
① 個人情報を入力させているサイトを1つ例にとり、入力項目のうち、このサイトを利用するために必要な項目、不必要な項目を分けて列挙し、そう考えて理由を述べよ。
② 個人情報を入力させているいくつかのサイトについて、個人情報保護に関するページがどのように記載されているかを確認せよ。
③ インターネットの検索エンジンなどにより、個人情報漏洩の事例をいくつか探し、それが本文の「個人情報取扱事業者の義務等」でのどれが不十分だったことにより発生したのかを示せ。
④ 経済産業省「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象としたガイドラインの策定」平成16年6月では、いろいろと事例が掲載されている。これを読んで、興味を持った事例をいくつかあげて、どうしてそれが個人情報あるいは個人情報データベース等であるのか、そうでないのかの理由を述べよ。
(http://www.meti.go.jp/feedback/downloadfiles/i40615hj.pdf)
⑤Webで「コンピュータ不正アクセス対策基準」のシステムユーザ基準の個所を調べ、あなたが「なぜこれが必要なのか」と思う事項があれば、それを列挙して、みんなで考えよ。
⑥あなたが不正アクセス対策の提案をしたところ、A氏からは「当社には他人のほしがるような情報はないので、不正アクセスがあってもかまわない」、B氏からは「どんなに対策をしても、優秀なハッカーにはかなわないので、やるだけ無駄だ」といわれた。あなたはこれらの意見にどう反論するか。
テーマ6 ネットワーク社会
1.何を学ぶか
世の中がネットワーク社会にシフトしている。社会教育においてもその影の部分における問題として、デジタル・デバイド(情報格差)が問題となり、平成12年7月22日の沖縄で行われたサミットにおける「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章」においても、この問題を取り上げられている。ここでは高度情報通信ネットワーク社会の特徴と参画する態度について理解する。
2.学習到達目標
① ネットワーク社会の特徴を論述できる。
② ネットワーク社会に参画するということはどういうことであるのか理解できる。
3.研究課題
① ネットワーク社会の特徴と参画するために必要なことを論述する。
Ⅳ レポート課題
課題1 メディアの特性を、紙、インターネット(通信)、体験や活動に分けて説明しなさい。(A4用紙1枚程度)
課題2 学校における著作権問題を調べて、課題について説明しなさい。(A4用紙1枚程度)
Ⅴ アドバイス
課題1解説 ・これからの教室の学習環境には、様々なメディア機器(電子黒板、1人1台のタブレットPC等)が導入されてくる。そこで、様々なメディア(紙・通信・体験)についての特性を調べて、課題を整理する。
課題2解説 ・著作権問題について、学校における具体的な事例を調べ、問題点を整理し、ネットワーク社会における学校教育の課題を整理する。
評価の観点(ルーブリック)
Ⅵ 科目修得試験:レポート試験
Ⅶ テキスト
久世均著 『教育メディア特講』 岐阜女子大学、2008
教育メディア特講テキスト
教育メディア特講(資料付き)
教育メディア特講(科目別ガイドブック)評価ルーブリック
Ⅷ 参考文献
吉田喜彦著 『Webデザイン』 実教出版、2006
長尾真著 『マルチメディア情報学の基礎』 岩波書店、1999
M.マクルーハン著 『マクルーハン理論』 平凡社ライブラリー、2005
後藤忠彦著 『デジタル・アーカイブ要覧』 教育評論社、2007
評価の観点(ルーブリック)
課題1 メディアの特性を、紙、インターネット(通信)、体験や活動に分けて説明しなさい。(A4用紙1枚程度)
・これからの教室の学習環境には、様々なメディア機器(電子黒板、1人1台のタブレットPC等)が導入されてくる。そこで、様々なメディア(紙・通信・体験)についての特性を調べて、課題を整理する。
不可 | 可 | 良 | 優 | 秀 |
○メディアの特性について概要を述べている
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○メディアの特性について概要を述べている
○4つのメディアに分けてメディアの特性を表現している。 |
○メディアの特性について概要を述べている
○4つのメディアに分けてメディアの特性を表現している。 ・○4つのメディアに分けてメディアの特性を具体的な例を上げて調べている。 |
○メディアの特性について概要を述べている
○4つのメディアに分けてメディアの特性を表現している。 ・○4つのメディアに分けてメディアの特性を具体的な例を上げて調べている。 ○4つのメディアに分けてメディアの特性を具体的な例を上げて調べて、自分なりにまとめて述べている。
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○メディアの特性について概要を述べている
○4つのメディアに分けてメディアの特性を表現している。 ・○4つのメディアに分けてメディアの特性を具体的な例を上げて調べている。 ○4つのメディアに分けてメディアの特性を具体的な例を上げて調べて、自分なりにまとめて述べている。 ○新しいICTの学習環境と対応して、4つのメディアをどのように組み合わせると教育効果があると述べている。 |
課題2 学校における著作権問題を調べて、課題について説明しなさい。(A4用紙1枚程度)
・著作権問題について、学校における具体的な事例を調べ、問題点を整理し、ネットワーク社会における学校教育の課題を整理する。
不可 | 可 | 良 | 優 | 秀 |
○著作権法について記述してある。
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○著作権法について記述してある。
○著作権法35条についてまとめている。 |
○著作権法について記述してある。
○著作権法35条についてまとめている。 ○著作権法35条における課題について記述されている。
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○著作権法について記述してある。
○著作権法35条についてまとめている。 ○著作権法35条における課題について記述されている。 ○著作権法35条について、学校における著作権の課題を整理して、具体的な例を上げて記述している。 |
○著作権法について記述してある。
○著作権法35条についてまとめている。 ○著作権法35条における課題について記述されている。 ○著作権法35条について、学校における著作権の課題を整理して、具体的な例を上げて記述している。 ○著作権法35条を引き合いに出して、授業でデジタル教材を活用する場合に課題を整理している。 ○著作権法の課題と今後の方向について記述している。 |