【授業】世界遺産論
Ⅰ はじめに
世界遺産とは、顕著で普遍的な価値をもつ自然や文化財を、世界遺産リストに記載して国際的に保存・保全してゆくものであり、2023年11月現在1199件が登録されている。世界遺産の中には、我々人類が創り出した建造物や自然環境、希少な動植物の生息地などが含まれ、未来へ残すべき価値のある宝物であると考えられている。保護・保全が第一の目的である一方、教育や観光の場でも世界遺産は取り上げられ、各世界遺産の物件を通して、我々は世界の地理や歴史、自然環境を学ぶことができる。
Ⅱ 授業の目的・ねらい
世界遺産条約の歴史や世界遺産の種類及び登録手続き方法を概観し、世界遺産リストに登録された遺跡や景観そして自然などの現状について学ぶ。また、登録後の保全活動や観光地化などにおける問題点を考察する。
Ⅲ 授業の教育目標
ここでは、15のテーマに基づき、それぞれのテーマの基礎知識を身に付けることとする。また、そのテーマに基づいたワークブック、研究課題と学習到達目標を設定し、個々に学習の到達を確認することができる。
テーマ1 オリエンテーション、世界遺産の概要
1.何を学ぶか
(1)授業の進め方と世界遺産検定
(2)世界遺産とは何か「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」
(3)世界遺産条約とその誕生
2.学習到達目標
・世界遺産とは何か、「顕著な普遍的価値」とは何かが説明できる
・世界遺産条約の誕生の歴史について、関係する憲章や条約の考え方の違いについて説明できる
・世界遺産の3つの分類とその内容について説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
(2)アテネ憲章とヴェネツィア憲章において文化財保護およびその修復に関する考え方の違いについてまとめなさい
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ2 世界遺産の登録の流れと世界遺産委員会
1.何を学ぶか
(1)世界遺産の申請の流れと登録
(2)関連調査機関 ICOMOSとIUCN
(3)世界遺産の登録条件―世界遺産条約履行のための作業指針
(4)世界遺産基金
(5)世界遺産委員会
2.学習到達目標
・世界遺産登録申請と関連調査機関について説明できる
・世界遺産基金とは何かについて説明できる
・世界遺産委員会の構成とその内容について説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ3 世界遺産の概念
1.何を学ぶか
(1)真正性と完全性
(2)人間と生物圏計画(MAB計画)
(3)文化的景観
(4)シリアル・ノミネーション・サイトとトランスバウンダリー・サイト
(5)近年の世界遺産委員会の動き
2.学習到達目標
・世界遺産の概念「真正性」「完全性」「文化的景観」「シリアル・ノミネーション・サイト」「トランスバウンダリー・サイト」とは何か説明できる
・人間と生物圏計画(MAB計画)についてコア・エリア、バッファー・ゾーン、トランジション・エリアの違いと世界遺産条約における文化・自然保護に関する考え方について説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
(2)前年度行われた世界遺産委員会ではどのような審議内容が行われたか調べ、世界遺産委員会が抱える諸問題について言及しなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
② 世界遺産論_第3講 補助教材(第45回世界遺産委員会について)
テーマ4 日本の世界遺産(文化遺産)①
1.何を学ぶか
(1)世界遺産条約における文化遺産とは
(2)日本の文化遺産の特長
(3)「紀伊山地の霊場と参詣道」と世界遺産概念の多様化「道の遺産」
(4)「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」
2.学習到達目標
・日本が保有する文化遺産の特長を説明できる
・「紀伊山地の霊場と参詣道」の概要と登録内容について説明できる
・「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の概要と登録内容について説明できる
・「文化的景観」の3つのカテゴリーについて説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
4.動画資料
5.プレゼン資料
② 世界遺産論_第4講 補助教材1(日本の世界遺産―登録基準詳細)
③ 世界遺産論_第4講 補助教材2(日本の世界遺産登録基準一覧)
④ 世界遺産論_第4講 補助教材3(文化遺産概要と日本の特長)
テーマ5 日本の世界遺産(文化遺産)②
1.何を学ぶか
(1)ル・コルビュジエの建築作品:近代建築運動への顕著な貢献」とは~バルセロナ「アントニ・ガウディの作品群」との違い
(2)「広島平和記念碑(原爆ドーム)」
2.学習到達目標
・「ル・コルビュジエの建築作品:近代建築運動への顕著な貢献」の概要と登録内容について説明できる
・「広島平和記念碑(原爆ドーム)」の概要と登録内容について説明できる
・建築家の作品群のOUVについてル・コルビュジエとアントニ・ガウディの構成資産を比較しながら、そのOUVの特長を説明できる
・「負の遺産」とは何か、その特徴について具体例を挙げながら説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
(2)ル・コルビュジエとアントニ・ガウディの建築作品を比較し、それぞれのOUVとは何か、またその考え方の違いをレポートにまとめなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ6 日本の世界遺産(文化遺産)③
1.何を学ぶか
(1)「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」
(2)世界遺産リストにおける不均衡の是正及び代表性信用性の確保のためのグローバル・ストラテジー
2.学習到達目標
・「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の概要と登録内容について説明できる
・世界遺産概念の多様化について「グローバル・ストラテジー」という言葉を使って説明できる
・危機遺産とは何かが説明できる
・選択した日本の文化遺産の保護・保全そして活用について具体的に説明することができる
3.研究課題
(1)ワークブック
(2)講義内で取り上げなかった、日本の文化遺産のうち一つ選び、①その世界遺産のOUVは何か ②現在取り組まれている、具体的な保護活動 ③その世界遺産の具体的な活用について調べ、レポートにまとめなさい
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ7 日本の世界遺産(自然遺産)
1.何を学ぶか
(1)世界遺産条約における自然遺産とは
(2)日本の自然遺産の特長
(3)「知床」とナショナル・トラスト
2.学習到達目標
・日本が保有する自然遺産の特長を説明できる
・「知床」の概要と登録内容について説明できる
・英国ナショナル・トラストの誕生と日本ナショナル・トラストの動きについて説明できる
・選択した日本の自然遺産の保護・保全そして活用について具体的に説明することができる
3.研究課題
(1)ワークブック
(2)講義内で取り上げなかった、日本の自然遺産のうち一つ選び、①その世界遺産のOUVは何か ②現在取り組まれている、具体的な保護活動 ③その世界遺産の具体的な活用について調べ、レポートにまとめなさい
4.動画資料
5.プレゼン資料
② 世界遺産論_第7講 補助教材(自然遺産・複合遺産概要と日本の特長)
テーマ8 海外の世界文化遺産(人類の誕生・古代文明にまつわる遺産)
1.何を学ぶか
(1)「ストーンヘンジ、エイヴベリーの巨石遺産と関連遺産群」
(2)「ヌビアの遺跡群:アブ・シンベルからフィラエまで」
2.学習到達目標
・「ストーンヘンジ、エイヴベリーの巨石遺産と関連遺産群」の概要と登録内容について説明できる
・「ヌビアの遺跡群:アブ・シンベルからフィラエまで」の概要と登録内容について説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
4.動画資料
5.プレゼン資料
② 世界遺産論_第8講 補助教材(stonehenge-phased-plan)
テーマ9 海外の世界文化遺産(アジア)
1.何を学ぶか
(1)「万里の長城」
(2)「タージ・マハル」
2.学習到達目標
・「万里の長城」の概要と登録内容について説明できる
・「タージ・マハル」の概要と登録内容について説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ10 海外の世界文化遺産(ヨーロッパ)
1.何を学ぶか
(1)ヨーロッパの建築様式
(2)「パリのセーヌ河岸」
(3)「フィレンツェの歴史地区」
2.学習到達目標
・ヨーロッパの建築様式についてその特徴を説明できる
・「パリのセーヌ河岸」の概要と登録内容について説明できる
・「フィレンツェの歴史地区」の概要と登録内容について説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ11 海外の世界文化遺産(南米・オセアニア・アフリカ)
1.何を学ぶか
(1)「マチュ・ピチュ」
(2)「ウルル、カタ・ジュタ国立公園」
(3)ウルル登山禁止の背景とこれから
2.学習到達目標
・「マチュ・ピチュ」の概要と登録内容について説明できる
・「ウルル、カタ・ジュタ国立公園」の概要と登録内容について説明できる
・ウルル登山禁止の背景を説明し、今後のウルル観光について自身の考えを述べることができる
3.研究課題
(1)ワークブック
(2)ウルル登山禁止について保護と観光活用の視点からあなたの考えをレポートにまとめなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ12 海外の世界文化遺産(近代国家の成立と世界の近代化)
1.何を学ぶか
(1)「自由の女神像」
(2)「ウィーンの歴史地区」
(3)危機遺産「ウィーンの歴史地区」都市開発と保護・保全
2.学習到達目標
・「自由の女神像」の概要と登録内容について説明できる
・「ウィーンの歴史地区」の概要と登録内容について説明できる
・「ウィーンの歴史地区」が「危機遺産」に登録された理由を説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ13 文化的景観、危機遺産、負の遺産
1.何を学ぶか
(1)「ワルシャワの歴史地区」とは
(2)「奈良文書」における文化遺産の保存と修復に関する考え方
(3)文化的景観、危機遺産、負の遺産
(4)世界遺産リストから削除された物件について
2.学習到達目標
・「文化的景観」「危機遺産」「負の遺産」とは何かが説明できる
・「ワルシャワの歴史地区」の概要と登録内容について説明できる
・「ワルシャワの歴史地区」の真正性と建造物の再建に関する世界遺産員会の取り決めについて評価できる
・1994年採択された「奈良文書」における文化遺産の保存と修復に関する考え方について説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
(2)「ワルシャワの歴史地区」のOUVとは何か。真正性の観点を含め、OUVが認められた経緯を述べながら、その後の修復・再建に関する世界遺産委員会の見解について述べなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ14 海外の自然遺産
1.何を学ぶか
(1)「ハワイ火山国立公園」
(2)「ンゴロンゴロ自然保護区」
2.学習到達目標
・「ハワイ火山国立公園」の概要と登録内容について説明できる
・「ンゴロンゴロ自然保護区」の概要と登録内容について説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
4.動画資料
5.プレゼン資料
テーマ15 世界遺産と観光
1.何を学ぶか
(1)「ヴェネツィアとその潟」
(2)「ヴェネツィアとその潟」とオーバーツーリズム
2.学習到達目標
・「ヴェネツィアとその潟」の概要と登録内容について説明できる
・「ヴェネツィアとその潟」が抱える諸問題とその対策法について具体例をあげながら説明できる
・オーバーツーリズムとは何か近年の事例をあげながら具体的に説明できる
3.研究課題
(1)ワークブック
(2)世界遺産を保有する観光地におけるオーバーツーリズムの実態について一つ事例地をあげ、その対策について自身の考えを述べなさい。
4.動画資料
5.プレゼン資料
Ⅳ レポート課題
課題1
「テーマ1~7」の「研究課題」(ワークブック除く)の中から、もっとも興味をもった課題を一つ選択肢、解答しなさい。
課題2
「テーマ8~15」の「研究課題」(ワークブック除く)の中から、もっとも興味をもった課題を一つ選択肢、解答しなさい。
Ⅴ アドバイス
課題1解説
(1)レポートは、A4サイズword形式で作成し、PDFファイルで提出すること
(2)レポート冒頭に「第○講 課題 学籍番号 氏名」を書くこと
各授業内で学んだ学習内容や参考資料などを用いながら、広く調べ、その内容を整理しながら自身の考えを述べること
課題2解説
(1)レポートは、A4サイズword形式で作成し、PDFファイルで提出すること
(2)レポート冒頭に「第○講 課題 学籍番号 氏名」を書くこと
各授業内で学んだ学習内容や参考資料などを用いながら、広く調べ、その内容を整理しながら自身の考えを述べること
Ⅵ 科目修得試験:レポート試験
定期筆記試験(100点満点)
Ⅶ テキスト
『きほんを学ぶ世界遺産100 世界遺産検定3級公式テキスト』世界遺産検定事務局著,マイナビ出版
Ⅷ 参考文献
『世界遺産検定公式過去問題集3.4級』<2023年度版> 世界遺産検定事務局著,マイナビ出版
『世界遺産検定公式過去問題集1.2級』<2023年度版> 世界遺産検定事務局著,マイナビ出版
『くわしく学ぶ世界遺産300 世界遺産検定2級公式テキスト』世界遺産検定事務局著,マイナビ出版
資 料