【公開講座】幼児教育コーディネータ養成講座_スタートアップオンライン講座
目的・概要
幼児教育コーディネータは、地域・学校園における幼児教育の研修及び専門的指導のための研修講座の計画立案実践能力、組織化、および地域課題解決への具体的対応力を身につけることにより、地域、学校園における保幼こ小連携などの幼児教育をコーディネートできる人材の育成や、その能力の向上を図ることを目的とするものです。
原則的に、幼稚園教諭2種免許状所持者で、基礎資格となる免許状を取得した後、幼稚園(特別支援学校の幼稚部及び幼保連携型認定こども園を含む)における教員として在職年数が、12年以上の方を対象とし、幼稚園教諭1種免許状所持者でスキルアップを目指す方や幼稚園教諭としてお勤めで、管理職・マネジメントの職務についている方を対象とします。
また、本講座を受講・修了した後、免許管理者(都道府県教育委員会)に申請することにより2種免許状を1種免許状に上進することが可能となります。
受講対象者
次の(1)~(3)に該当する方とします。
(1)幼稚園教諭2種免許状所持者で、基礎資格となる免許状を取得した後、幼稚園(特別支援学校の幼稚部及び幼
保連携型認定こども園を含む)における教員として在職年数が、12年以上の方。( (1)に該当する方につきまし
ては、2種免許状を1種免許状に上進が可能となります。)
(2)幼稚園教諭1種免許状所持者でスキルアップを目指す方。
(3)幼稚園教諭としてお勤めで、管理職・マネジメントの職務についている方。
科目数並びに総時間数
7科目(10単位)
コース終了条件
各講習における試験またはレポートによる最終試験を全て合格すること。
定 員
第1期〜第3期(100名定員/期)
受講料
30,000円 (3,000円/単位×10単位)
学習環境
本養成講座は基本的に「e-learning」で行いますので、受講には、各自カメラ付きのパソコンやノートパソコン・タブレットPC・スマートフォン並びにインターネットの通信環境が必要になります。
スタートアップオンライン講座
幼児教育コーディネータとは
- 幼児教育コーディネータとは、幼児期の子供たちの教育に関する計画やプログラムを立案し、実施する役割を担う専門家です。彼らは、保育園や幼稚園、学校、地域センターなど、幼児教育施設や関連する組織で働くことが一般的です。
幼児教育コーディネータは、幼児の発達段階や教育ニーズを理解し、それに基づいて教育プログラムを計画します。彼らは、子供たちの認知、言語、身体運動、社会的・情緒的発達を促進するための教育活動や遊びを設計し、教材や資源を選定します。
また、幼児教育コーディネータは、教育スタッフや保護者と連携し、教育目標の達成や子供たちの成長をサポートします。彼らは、教育プログラムの実施状況をモニタリングし、評価を行い、必要な調整や改善を提案します。
さらに、幼児教育コーディネータは、地域の教育関係者や専門家と協力し、最新の教育トレンドや研究成果を把握し、教育プログラムの品質向上に努めます。また、保護者や地域のコミュニティとの関係構築も重要な役割です。
総合的に言えば、幼児教育コーディネータは、子供たちの幼児期における学びや成長を支援するための教育環境を構築し、教育プログラムを適切に運営する責任を担っています。
幼児教育コーディネータ概論
Ⅰ はじめに
今般の子ども・子育て支援関係の人材に対する需要の増加等を受け,私立施設を中心として,幼稚園において幼児教育の質を支える優秀な教員の確保が喫緊の課題となっている.また,平成19年度の岐阜県の幼稚園教諭免許状授与件数の77.9%は二種免許状であり,一種免許状への上進の必要性が高まっている.また,教育再生実行会議第十二次提言では,一人一人の多様な幸せと社会全体の幸せ(ウェルビーイング)の実現を目指し,学習者主体の教育に転換することを提言している.そのために,教師の質の向上や多様な人材の活用のための方策や「教学マネジメント指針」に基づく密度の高い組織的な大学教育の展開が求められている.
社会,特に子どもを取り巻く環境が多様化し,幼稚園や認定こども園で幼児教育に携わる教員にもこうした状況に対応する資質・能力の向上が求められる.とりわけ,幼児教育の現場で中心的な役割を担う中堅層(ミドルリーダー)の果たすべき役割は大きい.
しかし,中堅層の多くは二種免許状所有者であり,その専門性を向上させるためには教育委員会の研修で学ぶ教育の最新事情とともに,理論と実践を往還する内容が必要といえる.そのために,教員養成大学においても免許法認定講習等で,二種免許状保有者の専門性の向上を図り,上進を推進することが求められている.
そこで,教員自身が時代や社会,環境の変化を的確につかみ取り,その時々の状況に応じた適切な教育・保育の提供を行うためには,個々の教員が自ら課題を持って,主体的に研修に参加する研修体制の確立が必要である.その際,受講者のニーズに応じて柔軟に研修内容を組み合わせたり,ワークショップ型研修方法を取り入れたりして,受講者が主体的に学ぶ講座の場を考えていく必要がある.
ここでは,幼稚園教諭の資質向上を目指すキャリアステージにおける講座の在り方を研究し,幼児教育の新たなキャリアである幼児教育コーディネータの養成について考える.
Ⅱ 授業の目的・ねらい
・幼稚園教諭の資質向上を目指すキャリアステージにおける講座の在り方を研究し,幼児教育の新たなキャリアである幼児教育コーディネータの養成について考える.
Ⅲ 授業の教育目標
幼児教育コーディネータ養成コースは,「地域・学校園における幼児教育の研修及び専門的指導」のための研修講座の計画立案実践能力,組織化,および地域課題解決への具体的対応力を身につけることにより,地域,学校園における保幼こ小連携などの幼児教育をコーディネートできる人材の育成や,その能力の向上を図ることを目標とする.
映像資料
学習の進め方
- テキストと e-Learning は,事前にテキストと動画で学習する自律的なオンライン研修の教材です.
- 講習の内容は,まず,テキストと e-Learning との両方を活用して学びます.
- 講義では,始めに各講で講義の目的と学習到達目標についての説明を行います.
- 講義内容について,受講者による自己研修を行います.
- 各講の終わりに課題を示します.自分の学習の深度に従って,考えてみましょう.
プレゼン資料
映像資料
遊びと文化Ⅰ・Ⅱ
講習内容
- 「自から知識を構成する」学習観である構成主義の学びと創造的に学ぶ(クリエイティブ・ラーニング)教育について事例を挙げ、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと共同的な学びの実現にためのオンライン学習における教材開発について理解する。
- 幼児期に遊ぶ「折り紙」や身近にある「紙コップ」や「紙皿」などを使い,オンライン学習における動くおもちゃの教材を作る。その過程を通して,幼児に身に付けさせる力を考え,それを指導するための方法を考案する。さらには幼児が安定した確かな作品ができるか等の視点を定め,幼児の学びのプロセスを評価し改善・指導できる力の深化を図る。
映像資料
保育内容(表現)
講習内容
- 山形の東根長瀞小学校の「想画教育」や「レッジョ・エミリア・アプローチ」における子どもの表現力やコミュニケーション能力、探究心、考える力の養成研究を考える。また、子どもによる紙芝居の創作(クリエイティブ・ラーニング)を通じて表現方法を考える。
映像資料
教師論
講習内容
- 教師は、学習者がその成長・発達に必要な「生きる力」を身に付けることができるよう、学習内容や学習活動の特質、幼児児童生徒の実態に応じた適切な指導ができなければならない。そのために、幼児教育における教師の役割と責務について理解を深め、教育者としての資質・能力を考える。
映像資料
教育の方法・技術
講習内容
- 21 世紀の知識基盤社会における「学力」は「他者と協働しつつ創造的に 生きていく」ための資質・能⼒の育成である。そのために、学習活動では、他者と共に新たな知識を生み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を、数多く積ませることが重要である。また、情報化や国際化が進み、社会が⼤きく変化する中で、学校、そして教師は様々な変化に直面している。児童に求められる学力の変化や授業でのICT活用など、教師はどう対応していけばよいのだろうか。本講座では「インストラクショナルデザイン」を手がかりに、幼児教育の基礎としてのインストラクショナルデザインについて考える。
プレゼン資料
映像資料
教育相談Ⅰ
講習内容
- 教育相談や発達相談,子育て支援を行う意義について理解し,教育相談を推進することができるような組織づくりや計画・評価について振り返り、幼児・児童生徒が抱える課題を理解し,個に応じた支援及び環境調整への配慮を考える。
映像資料
幼児理解
講習内容
- 幼児も他者であることを前提に、他者の心を理解する枠組みを理解するとともに、幼児理解についての知識を身に付け、考え方や基礎的態度を理解する。また、ケーススタディにより幼児理解の方法を具体的に提供し、様々な問題解決を通じてから理解の深化を図る。
映像資料
資料
令和5年度 岐阜県私立大学地方創生推進事業
【公開講座】社会人のための準デジタルアーキビスト資格取得講座2023
1.【特別講義】デジタルアーカイブin岐阜2023 「AI時代のデジタルアーカイブ」
日 時:2024年2月11日(日) 9:00~12:00
会 場:オンライン講座(Zoomを使用)
主 催:岐阜女子大学デジタルアーカイブ研究所
後 援:デジタルアーキビスト資格認定機構、日本教育情報学会、公益財団法人学習情報研究センター
受講対象:社会人(デジタルアーカイブと教育に興味がある社会人)
趣 旨:デジタルアーカイブは機械学習をはじめとしたAI技術の基盤となるものであり、AI技術の深化により、人間の学びなどの人間の知的活動に、AIが大きな役割を果たしつつある。このAIにおける様々な処理には,デジタルアーカイブがその基礎にあり、AI時代のデジタルアーカイブは、情報の保全・活用、知識の蓄積・再利用、文化遺産の保存・伝承、予測と未来への展望といった面で多様な価値を持つ。今年のデジタルアーカイブin岐阜は、「AI時代のデジタルアーカイブ」をテーマにして、AI時代のデジタルアーカイブの在り方と、人間の学びの変革について考えます。
定 員:100名 (実施済)
募集期間:令和5年11月1日(水)~ 令和6年1月31日(水)
受 講 料:20,000円
プログラム:
1.「AIと人間の学び」(9:10~10:00)
赤堀侃司(東京工業大学名誉教授)
動画資料
資 料
1.プレゼン資料(赤堀先生)
2.AIと人間の学び 壁の向こうで答えているのはAIか人か? (単行本)発売日 : 2022/3/31
2.「人とAIの学習研究から考えるこれからの教育」(10:10~11:00)
益川弘如(聖心女子大学教授)
動画資料
資料
3.「人工知能(AI)とデジタルアーカイブの現状と未来」(11:10~12:00)
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
動画資料
資料
コーディネータ
久世均(デジタルアーカイブ研究所長)
申し込み先
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeWLEsg0CE1TI92e4ytZOh-kCf2_TNZZ-Oma7AoQq87ln4-lQ/viewform
※講師の関係で講演の順番について変更させていただきました。(2024.1.23)
資料
2.e-Learning講座
第1講 デジタルアーカイブの基礎
1.目 的
デジタルアーカイブは、「デジタル」と「アーカイブ」という言葉からできた和製英語と言われています。デジタルアーカイブとは何か? デジタルアーキビストに必要な能力は何か?ここでは、言葉の意味と発展の歴史から、基本的な考え方を理解し、今後のデジタルアーカイブの方向性を考えます。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブとは何か説明できる。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたかについて具体例をあげ説明できる。
③ デジタルアーキビストに求められている能力について具体的に説明できる。
3.課 題
① デジタルアーカイブとは何か自身の立場で説明しなさい。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたか説明しなさい。
③ デジタルアーキビストに求められている能力は何か自身の立場で説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの基礎
5.動画資料
第2講 デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
1.目 的
デジタルアーカイブの利用は、資料の提示や提供から始まり、課題解決、知的創造等の処理へと進みます。またデジタルアーカイブを活用し、新しい「知」の創造を求め、さらに新しい「知」と人々の経験を付加し、新たな知的活動へと発展します。ここでは、デジタルアーカイブの開発と活用プロセスについて考えます。
2.学習到達目標
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明できる
②資料の選定評価について説明できる。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明できる。
3.課 題
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明してください。
②資料の選定評価の課題について説明してください。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明してください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
5.動画資料
第3講 デジタルアーカイブの評価とメタデータ
1.目 的
デジタルアーカイブは、対象とする資料(情報資源)の分野も多岐にわたり、プロジェクト規模なども異なるため、それぞれにあわせた評価手法が求められます。そこで、本講では、デジタルアーカイブの自己点検ツールとして考案された「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容を把握し、その評価項目の中でも重視されているメタデータについて、記述のための国際標準、国際指針として制定されている事例から学びます。
2.学習到達目標
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容について説明できる。
② 記述のための国際標準、国際指針などの事例について説明できる。
③ 資料(情報資源)のメタデータ記述ができる。
3.課 題
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の評価項目の内、あなたが重要だと思う項目について、なぜそう思うかを含めて説明してください。
② 具体的に何か資料(情報資源)を一つ取り上げ、その資料のメタデータ記述項目を設定した上で実際の記述を行ってください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの評価とメタデータ
5.動画資料
第4講 デジタルアーカイブの利活用
1.目 的
デジタルアーカイブは、1990年代の初期から、過去から現在の資料をデジタル化し、次の世代への伝承と現状での利活用を目指して開発が進められてきた。デジタルアーカイブの基本は、過去~現在の資料の収集・保管、デジタル化、さらに現状での利活用と次の世代への伝承である。
過去~現在の各種資料を収集・保管し、次のように使われる。
①次世代へのデジタルコンテンツの確かな伝承
②国内外のデジタルコンテンツの流通と利活用
ここでは、図書館や博物館等におけるデジタルアーカイブの利活用について考える。
2.学習到達目標
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明できる。
3.課 題
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの利活用
5.動画資料
第5講 デジタルアーカイブによる地域活性化
1.目 的
知識基盤社会においてデジタルアーカイブを有効的に活用し,新たな知を創造するという本学独自の「知の増殖型サイクル」の手法により,地域課題に実践的な解決方法を確立するために,地域に開かれた地域資源デジタルアーカイブによる知の拠点形成をする。このことにより,地域課題に主体的に取り組む人材を養成する大学として,伝統文化産業の振興と新たな観光資源の発掘並びにデジタルアーカイブ研究による地方創成イノベーションの創出について具体的に考える。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブと地域課題解決について説明できる。
② 地方創成イノベーションの創出について具体的に説明できる。
3.課 題
① 飛騨高山匠の技デジタルアーカイブにより,地域の文化産業を振興するための方策を3つ挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブによる地域活性化
5.動画資料
※本映像は本学の学部の授業(情報の管理と流通)の内容の一部を利用して提供しています。
6.テキスト資料
デジタルアーカイブによる地域活性化
第6講 デジタルアーカイブと知的財産権(1)
1.目 的
デジタルアーキビストとして、アーカイブを計画し、そして資料収集し、そして構築し、そして利用許諾し、また運用していくという、こういったときに必要な権利処理について説明する。
2.学習到達目標
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明ができる。
② 著作者の権利について具体的に説明できる。
③ 著作権の契約書を作成できる。
3.課 題
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明しなさい。
② 著作者の権利について具体的に説明しなさい。
③ 著作権の契約書を作成しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(1)
第7講 デジタルアーカイブと知的財産権(2)
1.目 的
著作権について、自分の立ち位置とは関係ない形で第三者的に実践の試みの良い部分と課題について理解を深め、基本的な理解を図った後に、実践の中から法律など制度的な課題について考えます
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明できる。
② 著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて
説明できる。
3.課 題
1.デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明しなさい。
2.著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(2)
5.動画資料
第8講 ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
国立情報学研究所名誉教授 高野明彦氏
➝ プレゼン資料:ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
第9講 世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
東京大学大学院情報学環 時実象一氏
➝ プレゼン資料:世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
第10講 デジタルアーカイブと法制度の現在地点
骨董通り法律事務所パートナー弁護士 福井健策氏
➝ プレゼン資料:デジタルアーカイブと法制度の現在地点
テキスト
【テキスト】
3.準デジタルアーキビスト資格試験
■認定試験の方法
1.認定試験問題を下記に提示いたしますので、試験問題を回答いただき、2月25日(日)17時(時間厳守)までに下記のメールアドレスに送付してください。
pfe01173@nifty.com
2.下記振込期限までに講座に受講料(資格試験料含む)を振り込んでください。
なお、請求書や領収書が必要な場合は、宛先を明記の上下記まで申し込んでください。
pfe01173@nifty.com (担当:久世)
※なお、事前に資格を希望された方には、E-Mailにて課題をお送りさせていただいております。
新たに資格を希望される方は、下記の課題を提出いただき、資格試験料を振り込んでいただければ資格証をお送りいたします。
■認定試験問題
1.R5社会人のための準デジタルアーカイブ資格取得講座課題(Ward版)
2.R5社会人のための準デジタルアーカイブ資格取得講座課題(PDF版)
資格試験料振込口座
資格試験料については、下記の口座に振り込みをお願いいたします。
資格試験料 20,000円
振込期限:令和6年2月29日(木)17:00(時間厳守)
銀行名 十六銀行
支店名 高富支店
預金種目 普通預金
口座番号 1526285
口座名義 学校法人華陽学園(ガッコウホウジンカヨウガクエン)
尚、請求書や領収書が必要な場合については pfe01173@nifty.com まで申し込んでください。
※準DA資格証の発行については、課題提出後2ヶ月後となります。
資料
令和5年度 岐阜県私立大学地方創生推進事業
デジタルアーカイブin岐阜2023
「AI時代のデジタルアーカイブ」
日 時:2024年2月11日(日) 9:00~12:00
会 場:オンライン講座(Zoomを使用)
主 催:岐阜女子大学デジタルアーカイブ研究所
後 援:デジタルアーキビスト資格認定機構、日本教育情報学会、公益財団法人学習情報研究センター
受講対象:社会人(デジタルアーカイブと教育に興味がある社会人)
趣 旨:デジタルアーカイブは機械学習をはじめとしたAI技術の基盤となるものであり、AI技術の深化により、人間の学びなどの人間の知的活動に、AIが大きな役割を果たしつつある。このAIにおける様々な処理には,デジタルアーカイブがその基礎にあり、AI時代のデジタルアーカイブは、情報の保全・活用、知識の蓄積・再利用、文化遺産の保存・伝承、予測と未来への展望といった面で多様な価値を持つ。今年のデジタルアーカイブin岐阜は、「AI時代のデジタルアーカイブ」をテーマにして、AI時代のデジタルアーカイブの在り方と、人間の学びの変革について考えます。
定 員:100名 (実施済)
募集期間:令和5年11月1日(水)~ 令和6年1月31日(水)
受 講 料:無 料
Zoom:
プログラム:
1.「AIと人間の学び」(9:10~10:00)
赤堀侃司(東京工業大学名誉教授)
動画資料
資 料
1.プレゼン資料(赤堀先生)
2.AIと人間の学び 壁の向こうで答えているのはAIか人か? (単行本)発売日 : 2022/3/31
2.「人とAIの学習研究から考えるこれからの教育」(10:10~11:00)
益川弘如(聖心女子大学教授)
動画資料
資料
3.「人工知能(AI)とデジタルアーカイブの現状と未来」(11:10~12:00)
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
動画資料
資料
コーディネータ 久世均(デジタルアーカイブ研究所長)
※講師の関係で講演の順番について変更させていただきました。(2024.1.23)
資料
【公開講座】社会人のための準デジタルアーキビスト資格取得講座2023 (希望者)
➝ 社会人のための準デジタルアーキビスト資格取得講座2023
参加申し込み
参加申し込みはここから ➝ デジタルアーカイブin岐阜2023
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeWLEsg0CE1TI92e4ytZOh-kCf2_TNZZ-Oma7AoQq87ln4-lQ/viewform
資料
2.新聞広告_原稿
【高大連携研究】ICTを活用した「主体的・対話的で深い学び」の実現
研究目標 :
(1)授業改善
(2)ICTを効果的に活用
目標達成に向けた取組:
(1)効果的な問や課題で,系統的な学びの機会を創出する・させる
(2)「個」の考えや「気づき」を深めさせるために,学びの「視覚化」「言語化」「構造化」を伴う対話的な活動を導入して授業改善
(3)指導助言者や職員間のアドバイスを受け入れ専門的多角的に授業改善
(4)全職員が情報収集・発信を意識して多面的に授業改善
発問・学習方略
・効果的な問いや課題で,系統的な学びの機会を創出する・させる
ICT・アクティブラーニング
・「個」の考えや「きづき」をより深めさせるために,学びの「視覚化」「言語化」「構造化」を伴う対話的活動を導入する
発問・アクティブラーニング・ICT・学習方略
・思考を活性化させ,他者と共に新たな「きづき」を生み出し,「知識」「理解」が「構造化」され,学びを深めていく経験ができるように,「インストラクショナル・デザイン」を意識する
【講演】知識の構造化とインストラクショナル・デザイン
Ⅰ はじめに
21 世紀の知識基盤社会における「学力」は「他者と協働しつつ創造的に 生きていく」ための資質・能⼒の育成である。そのために、授業では、他者と共に新たな知識を⽣み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を、数多く積ませることが重要である。また、情報化や国際化が進み、社会が⼤きく変化する中で、学校、そして教師は様々な変化に直⾯している。児童・生徒に求められる学⼒の変化や授業でのICT活⽤など、教師はどう対応していけばよいのだろうか。本講座では「インストラクショナルデザイン」を⼿がかりに、教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインについて考えていく。
Ⅱ 授業の目的・ねらい
高度情報社会は新しい課題を世界にもたらし、新しい解を生み出せる人間を求める社会である。つまり、これからの社会は、一部の専門家があらかじめ有する「正解」を適用するだけで解決できるものではなく、問題を共有する者が知識やアイデアを出し合い、不完全にせよ解を出して実行する。そして、その結果を見ながら解とゴールを見直すことが求められている。このような課題に対して、社会全体が応えようとしている表れが、知識基盤社会、コミュニティ基盤社会への転換と進展、ICTの利活用である。知識基盤社会とは、新しい知識やアイデア、技術のイノベーションがほかの何よりも重視される社会である。そのイノベーションのために、他者とのコミュニケーションやコラボレーション(協働、協調)が重視され、 それらが効果的・建設的に行えるように、人と人を繋ぐコミュニティやICTの役割に注目が集まっている。
つまり、現在決まった答えのないグローバルな課題に対して、大人も子 供も含めた重層的なコミュニティの中で、ICT を駆使して一人ひとりが自分の考えや知識を持ち寄り、交換して考えを深め、統合することで解を見出し、その先の課題を見据える社会へと、社会全体が転換しようとしている。ここでは、その高度情報社会とそれに応じて求められる資質や能力について考える。
Ⅲ 授業の教育目標
教育情報とは、検索利用可能な形で集積され、流通される情報を第一義的なものと考え、狭義には学資教材情報を、広義には、教育研究情報や教育の管理経営の情報その他を含めて考えることが情報管理論的に妥当である。こうした教育情報のシステムは、すでに学術的には開発され、試行されているものがあるので、これを基準に、教育情報について体系的に考察する。
(1)「イ ンストラクショナルデザイン」を⼿がかりに、効果的・効率的・魅⼒的な授業づくりや教材開発について考える。
(2)21 世紀に求められる学⼒を育む新たな授業と評価を、背景や実践事例を紹介しながら考える。
(3)⽬標を分析して構造がわかると、評価規準ができる。⽬標の構造がわかるというのは、評価規準のなかで、重要度を決定することを考える。
(4)企業の教材開発の視点を考える。
(5)協働学習の⼿法の⼀つである「ジグソー学習法」を経験し、学習者⾃⾝で知識を統合して答えを出す学習活動過程について理 解を深め、その効⽤を考える。
1. インストラクショナルデザイン
1. 何を学ぶか
情報化や国際化が進み、社会が⼤きく変化する中で、学校、そして教師は様々な変化に直⾯している。⼦供達に求められる学⼒の変 化や授業でのICT活⽤など、教師はどう対応していけばよいのだろうか。ここでは「イ ンストラクショナルデザイン」を⼿がかりに、効果的・効率的・魅⼒的な授業づくりや教材開発について考える。
2. 学習到達目標
① インストラクショナルデザインとは何か説明できる。
② ADDIEモデルについて事例をあげて説明できる。
3. 研究課題
① ADDIEのプロセスを検討し、折り紙を折れるようになる教材を作成しなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
2. 21世紀に求められる学⼒と学習環境
1. 何を学ぶか
21 世紀にふさわしい主体的・協働的な授業をいかに設計し、評価していくべきだろうか。21 世紀の知識基盤社会における「確かな学⼒」は「他者と協働しつつ創造的に⽣きていく」資質・能⼒の育成であるため、授業では、他者と共に新たな知識を⽣み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を、数多く積ませることが重要である。ここでは、21 世紀に求められる学⼒を育む新たな授業と評価を、背景や実践事例を紹介しながら考える。
2. 学習到達目標
① 21 世紀に求められる学⼒について説明できる。
② 資質・能⼒を引き出す授業の条件を説明できる。
3. 研究課題
① 知識習得モデルと知識創造モデルの違いを説明しなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
3. 教材の分析と設計
1. 何を学ぶか
⽬標分析をできないと評価規準をつくるのは難しいと⾔われる。「⽬標分析をする」とは、⽬標の構造を捉えることである。つまり、 ⽬標は平⾯的で、それだけでは構造はわからない。しかし、⽬標を分析して構造がわかると、評価規準ができる。⽬標の構造がわかるというのは、評価規準のなかで、重要度を決定することである。「この単元で何をしたいのか、何を教えたいか、何を指導したいか、どのような順序で教えるのか」を決定する。そして、「それを指導するために、何がいるのか」を考える。
2. 学習到達目標
① 何を教えるのか、そのための教材作成のあり⽅について説明できる。
② システム的な教材設計・開発の⼿順を5 つに分けて説明できる。
3. 研究課題
① あなたは、どのような場⾯でメディアの影響を強く受けていると思うか、また、どのような場⾯でメディアの影響をあまり受けていないと思うかグループで話し合って発表しなさい。
② テレビなどのCM は、専⾨家がなんとか視聴者をひきつけようとして創作した作品である。どんなCM が印象に残っているか。それは何故か。メディアの特性をどのように使っているか。グループで話し合って発表しなさい。
③ インターネットで、いくつかの教材を調べて、その教材の有効性を5段階で判定しなさい。そして、どのような要因でその判定結果になったかを、書きなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
4. 学習⽬標のデザイン
1. 何を学ぶか
授業づくりは、まず学習⽬標を適切かつ明確にすることからスタートする。学習⽬標とは、学習者が、わかるようになること、できるようになること、⾝に付けることなど、教師が授業でねらいとすることを、より具体的な形で表し、どのようにわかったか、どのようにできるようになったか、どのように⾝に付いたかについて考える。
2. 学習到達目標
① ブルームの教育⽬標分類について、⾏動⽬標による例を取り上げて説明できる。
② ガニェの学習成果の5 分類について、具体例を挙げて説明できる。
③ 明確な学習⽬標について、具体的な単元において説明できる。
3. 研究課題
① ガニェの学習成果の5分類をもとに、各教科や単元を例にとって、グループで明確な学習⽬標を設定して発表しなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
5. 協働的な学びをデザインする
1. 何を学ぶか
⽇本において「協働学習(Collaboration Learning)」という⾔葉や概念は教育⼯学・認知科学の分野において使⽤され始め、ICT環境の整備とテクノロジによる学習⽀援が実現されていくのと共に広く知られるようになった。もともと「協働」とは⾃らが属する組織や⽂化の異なる他者と⼀つの⽬標に向けて互いにパートナーとして働くことである。従って「協働学習」は、単に「問題を⼀緒に解く」というような抽象的な活動のことではない。問題を解く場⾯で「どうしても他⼈がいないと起きない活動」を通じて「他⼈がいると⾃分⼀⼈で解くより答えの質が上がる」ことを繰り返し経験することで柔軟に解決できる“使えるスキル“の育成について考える。
2. 学習到達目標
① 協働学習の考え⽅を理解し実際に授業デザインできる。
② ワークショップの⼿法を5種類説明できる。
③ ジグソー学習について説明できる。
3. 研究課題
① 協働学習の⼿法の⼀つである「ジグソー学習法」を経験し、学習者⾃⾝で知識を統合して答えを出す学習活動過程について理解を深め、その効⽤を検討してみましょう。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
6.教授・学習の理論と教育実践
1. 何を学ぶか
⼈が「学ぶ」ということについて、古くからいろいろな領域での研究がなされてきた。教授と学習という概念は、⼀般に教育者の⾏う教授活動と、学習者の⾏う学習活動という意味で理解されている。しかしながら、現実の多くの教育においては、「教授と無関係に成り⽴っている学習」もあれば、「教授が学習を導けない場合」もある。また、「教師がいないで⾏われている学習」であっても「教師からいかなる指⽰も影響も受けずに学習者が学習を⾏う場合」もあれば、「教師から前もっての指⽰のもとに、⼀⼈で学習する場合」もある。さらには、「教師の指⽰に反する⽅法で学習を⾏うような学習者」もいる。このように、現実の教育の場においては、教授と学習は必ずしもひとつの教育過程を構成しているとはいえない場合がある。ここでは、このような教授・学習の理論の変遷について考える。
2. 学習到達目標
① 教授学習に関する基本的な理論を具体的に説明できる。
② ⾏動主義と認知主義の2つの学習論の区別を説明できること。
3. 研究課題
① ⾏動主義的学習論と認知主義的学習論、構成主義的学習論に対応した教材や課題(問題)を作成し、グループで協議をしなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
テキスト
1. 教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザイン (テキスト)
2.教育情報研究
タキソノミーテーブル(教育目標の分類体系:タキソノミー)
1. タキソノミーテーブル(教育目標の分類体系:タキソノミー)インストラクショナルデザイン
講演のレジュメ
【講演】ICTを活用した「主体的・対話的で深い学び」の実現
【学習到達目標】
・21世紀に求められる資質能力について説明できる.
・新学習指導要領改訂の視点について説明できる。
・新たな学びの視点について具体例を示して説明できる.
1.21世紀に求められる資質能力と学習環境
21 世紀の知識基盤社会における「学⼒」は「他者と協働しつつ創造的に⽣きていく」ための資質・能⼒の育成である.そのため,授業では,他者と共に新たな知識を⽣み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を,数多く積ませることが重要である.ここでは,21世紀に求められる学力と学習環境について述べる.
(1)21世紀型スキル
「21世紀型スキル」とは,世界の教育関係者らが立ち上げた国際団体「ATC21s」が提唱する概念で,これからのグローバル社会を生き抜くために求められる一般的な能力を指している.批判的思考力,問題解決能力,コミュニケーション能力,コラボレーション能力,情報リテラシーなど,次代を担う人材が身に付けるべきスキルを規定したもので,各国政府も知識重視の伝統的な教育から21世紀型スキルを養い伸ばす教育への転換に取り組み始めている.「21世紀型スキル」の定義については,ATC21Sプロジェクトの「21世紀のスキルに関する作業グループ」で検討されており,以下のように書かれている.
①思考の方法(創造性と革新性,批判的思考・問題解決・意思決定,
学習能力・メタ認知)
②仕事の方法(コミュニケーション,コラボレーション(チームワーク))
③学習ツール(情報リテラシー,情報コミュニケーション技術
(ICTリテラシー)
④社会生活(市民権(地域および地球規模),生活と職業,個人的責任お
よび社会的責任(文化的差異の認識および受容能力を含む))
(2) 21世紀型能力
国立教育政策研究所では,教育課程の編成に関する基礎的研究報告書5(2013.3:研究代表者 勝野頼彦)において,前述の21世紀型スキルを踏まえて,21世紀を生き抜く力を「21世紀型能力」と名付け,その試案を次のように提案している.21 世紀型能力は,「21 世紀を生き抜く力をもった市民」としての日本人に求められる能力であり「思考力」,「基礎力」,「実践力」から構成されている.
第1に,21世紀型能力の中核に,「一人ひとりが自ら学び判断し自分の考えを持って,他者と話し合い,考えを比較吟味して統合し,よりよい解や新しい知識を創り出し,さらに次の問いを見つける力」としての「思考力」を位置づけている.
「思考力」は,問題の解決や発見,アイデアの生成に関わる問題解決・発見力・創造力,その過程で発揮され続ける論理的・批判的思考力,自分の問題の解き方や学び方を振り返るメタ認知,そこから次に学ぶべきことを探す適応的学習力等から構成される.
第2に,思考力を支えるのが「基礎力」,すなわち,「言語,数,情報(ICT)を目的に応じて道具として使いこなすスキル」である.技術革新を背景にICT 化が著しく進む今日において,社会に効果的に参加するためには,読み書き計算などの基礎的な知識・技能とともに,情報のスキルが不可欠である.情報スキルは,計算や記憶の代行など,読み書き計算の不足を補償する可能性すらある.その支援力の大きさを使って,思考力を助けるのが,この基礎力の一つの役割と考えることもできる.
第3に,思考力の使い方を方向づける「実践力」を位置づけている.「実践力」とは,「日常生活や社会,環境の中に問題を見つけ出し,自分の知識を総動員して,自分やコミュニティ,社会にとって価値のある解を導くことができる力,さらに解を社会に発信し協調的に吟味することを通して他者や社会の重要性を感得できる力」のことである.
そこには,自分の行動を調整し,生き方を主体的に選択できるキャリア設計力,他者と効果的なコミュニケーションをとる力,協力して社会づくりに参画する力,倫理や市民的責任を自覚して行動する力などが含まれる.
(3)教育用メディア環境
21 世紀にふさわしい主体的・対話的な深い学びのためのどのように教育用メディア環境の設計していくべきだろうか.現在,情報通信技術の急速な汎化が進み,Web情報も重要なデジタルアーカイブの情報源として選択保存の必要性が出てきた.これらの,研究・教育の結果として,デジタルアーカイブ開発として新しい観点で実践・研究を展開されている.従来のデジタルアーカイブは,現物のみを対象として考えてきたが,現在の多様なメディアの実用化にともない,メディアを次の4領域に分けメディア環境として構成することが必要となった.
① 実物・体験・文化活動
② 印刷メディア(記述・印刷の紙などのメディア)
③ 通信メディア(通信でWeb情報として収集可能な資料の選択・保存)
④ デジタルメディア(マルチメディア機能をもつメディア)
新しい教育用メディア環境は,かつての現物としていた対象物を最近の通信メディアの発達により,多様な情報が流通する中から,デジタルアーカイブとして記録・保管すべき情報を選定評価し,必要に応じて保管し,組み合わせて表現することを示す.また,各メディア間では相互に変換し利用が進み,新しい資料活用が始まろうとしている.例えば,書籍や教科書をデジタル化し,紙の印刷物と同じ内容の資料がデジタル教科書として図書の二次利用が既に始まっている.教育用メディア環境では,学習者が,電子黒板や教育用メディア端末,印刷メディアである従来の教科書等必要なメディアを主体的に選択し,あるいは組み合わせて利用を可能にすることが重要である.
(4)デジタル学習材
教育用メディア環境としての4領域の大きなカテゴリー化は,教育用のメディア利用の枠組みとして,適用できるかが課題となる.一般に,デジタル学習材と一括して表現されているものには,ネットワーク型もあり,DVD等の学習材,また,印刷物との複合学習材,教育用メディア端末の学習材等,様々な学習材をもデジタル教材と表現している.前述のように,学習者に対する教育用メディア環境も大きく変化している中で,教師が授業で活用する教材とメディアの特性を活かすデジタル学習材に再分類し,メディアの特性を生かし,学習者が主体的に活用でき,一人ひとりの学習者の特性に対応した学習材のあり方を検討している.このため,今後,このメディアの特性について,組み合わせを含めて資料活用上の実践・研究を進め,その適否の評価をすることが必要である.新しい教育用メディア環境としては,前述の4つの領域に分類し,これらを単独として考えるのではなく,これらを組み合わせたものとしてデジタル学習材を考えることが必要となる.
2.新学習指導要領の視点
新学習指導要領では,図2-2のように,次の「3つの視点」でとらえることができる.
新学習指導要領では,第1は,知識・技能を「何を理解しているか,何ができるか」と捉えなおしていることである.知識基盤社会においては,知識はばらばらにあっても使えるものにならない.個別の知識はすぐに忘れてしまう.またその知識を新たな学習により絶えず再編していくことにより活かすことができる.第2に,思考力・判断力・表現力等について,「理解していること・できることをどう使うか」としている.つまり,これからの視点として問題を発見し,定義し,解決の方向性を決め,解決方法を探し,計画を立て,結果を予測しつつ実行し,そのプロセスを振り返って,次の問題発見・解決につなげていくことが重要となる. 第3に,主体的に学習する態度を「どのように社
会・世界と関わり,よりよい人生を送るか」として概念化している.ここには,情意や態度が含まれ,生きる力の根底に関わるところである.
3.アクティブ・ラーニング
アクティブ・ラーニングについては,図3に示す3つの「新たな学びの視点」としてまとめている.
第1が「深い学びの過程」である.習得・活用・探究という学習プロセスの中で,問題発見・解決を念頭に置いた深い学びが実現できているかどうかということである.これは知識・技能の高度化であり,それらが互いに関連づけられ,体系化されていくことにより,思考力を発揮する問題解決過程を通して主体的に学んでいくことで可能にする.学習者が既に学んできたことと新たに学ぶことをつなげ,体系化された知識として保持し,教科としての体系的な見方を身に付ける中で,それを問題解決過程に使えるということを目指している.
第2が「対話的な学びの過程」である.他者との対話を通じて外界との相互作用を通じて,自らの考えを広げ深める.対話とは,物事の複眼的で深い理解に達するために,様々な考えに触れ,やりとりを通していく.教師と子ども,子ども同士がやりとりすることとともに,外界の出来事やものや表現とのやりとりも重要となる.学習者である子どもが教材を前にその探究と理解に向かい,それを助ける教師がいて,また仲間同士がいる中で,ともに考える.
第3が「主体的な学びの過程」である.子どもたちが見通しを持って粘り強く取り組み,自らの学習活動を振り返って次につなげる.積極的に意欲を持って学習に取り組むことから始まり,難しい点に会ってもすぐにあきらめることなく,複眼的で多視点でものを考え,解決法を工夫し,課題をやり遂げていく.他の学習者や教師と考えの共有を図りつつ,自分の間違いを捉え,また自分と他者の良さを自覚し,多面的な理解を深めていく.意欲から意志へ,そして自覚する学習者へと育てていくのである.
【課題】
(1)新たな学びの視点を入れた授業をデザインし,その指導の概要をまとめてみなさい.
(2)新学習指導要領について,その背景,教育の課題,改訂のポイントという視点で,それぞれ4つキーワードを出して説明しなさい.
【参考文献】
1.林徳治他:教学改善のすすめ ぎょうせい 平成28年4月15日
2.P.グリフィン;21世紀型スキル 北大路書房 2014.4.20
資料
【講座】21世紀に求められる資質能力と学習環境
1.21世紀に求められる資質能力と学習環境
1. 何を学ぶか
21 世紀にふさわしい主体的・協働的な授業をいかに設計し、評価していくべきだろうか。21 世紀の知識基盤社会における「確かな学⼒」は「他者と協働しつつ創造的に⽣きていく」資質・能⼒の育成であるため、授業では、他者と共に新たな知識を⽣み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を、数多く積ませることが重要である。ここでは、21 世紀に求められる学⼒を育む新たな授業と評価を、背景や実践事例を紹介しながら考える。
2. 学習到達目標
① 21 世紀に求められる学⼒について説明できる。
② 資質・能⼒を引き出す授業の条件を説明できる。
3. 研究課題
① 知識習得モデルと知識創造モデルの違いを説明しなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成(第3講)
5.映像
2.主体的・対話的な深い学びと学習理論
【学習到達目標】
・主体的・対話的で深い学びについて具体例を挙げて説明できる.
・アクティブ・ラーニングと主体的・対話的な深い学びについて説明できる.
・主体的・対話的な学びについて学習理論を示して説明できる.
1.主体的・対話的で深い学びの視点
アクティブ・ラーニングについては,平成24年8月中央教育審議会の「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」の中に,能動的学修(アクティブ・ラーニング)と括弧書きで記載されている.「能動」の対義語は「受動」であるため,大きなとらえとしては「受動的にならない学習」であるが,先述の諮問文では「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」とされている. 一方で「アクティブ」という言葉から,活動性をイメージさせてしまい,授業中に子どもたちが活動する,ダイナミックに動きまわる,何か体験をたくさんさせなければならない,といった誤解を持たれる傾向がある.確かに体が活動的であるということも大事ではあるが,一番活性化してほしいのは子どもたちの頭の中「深い学び」である.
つまり,「子どもたちの思考が活性化し,深い学び」が授業の中で起きているかどうかが重要になる.
例えば活用の場面で「より積極的に自分の考えを他者に伝える」,習得の場面で「何のために習得するのか,自身にどのような成長があるかを自覚的に習得する」さらには「個別ではなく子ども同士で教え合う,教えてもらう」といった場面でも,子どもの思考は活性化している.このような学習の状況を授業場面の中に作っていくことがアクティブ・ラーニングにつながる.
そうすると,これまで国内で積極的に行われてきた授業改善の取り組みは,まさにアクティブ・ラーニングであると言える.特に小学校の先生方は熱心に取り組まれており,例えば問題解決的な学習や発見学習,体験活動やグループ・ディスカッション,ディベートなどさまざまにある.そういったものもアクティブ・ラーニングに含まれる.
しかし,小・中・高等学校,大学と校種が上がるにつれて,より受動的になる傾向がある.これからは,これらをすべての校種の教室で実施し,質的にも担保していくことが求められてくる.さらに,授業の質の向上には,これまで行われていなかった新しい学習・指導方法を考えていくことも必要である.例えばジグソー法や思考ツールを使ったディスカッション,あるいはICTなどを積極的に授業に取り入れ,子どもたちがよりアクティブに学ぶ授業を考えることも求められる.アクティブ・ラーニングについては,前述の答申では,「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称.学修者が能動的に学修することによって,認知的,倫理的,社会的能力,教養,知識,経験を含めた汎用的能力の育成を図る.発見学習,問題解決学習,体験学習,調査学習等が含まれるが,教室内でのグループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である.」と定義されている.
2.主体的・対話的で深い学びと学習理論
人が「学ぶ」ということについて,古くからいろいろな領域での研究がなされてきた.教授と学習という概念は,一般に教育者の行う教授活動と,学習者の行う学習活動という意味で理解されている.しかしながら,現実の多くの教育においては,「教授と無関係に成り立っている学習」もあれば,「教授が学習を導けない場合」もある.また,「教師がいないで行われている学習」であっても「教師からいかなる指示も影響も受けずに学習者が学習を行う場合」もあれば,「教師から前もっての指示のもとに,一人で学習する場合」もある.さらには,「教師の指示に反する方法で学習を行うような学習者」もいる.このように,現実の教育の場においては,教授と学習は必ずしもひとつの教育過程を構成しているとはいえない場合がある.教授・学習の理論とは,「一定の教材を教師が教授し,学習者がその教授のもとで学習する活動を言い表す概念である.」と定義されるように,本来,教授と学習は一体化して行わなければならない.
3.教授・学習の理論
教授・学習の理論の歴史的な変遷とその課題について考えてみる.1960年代に,世界中で,それまでの学校教育のあり方の見直しが行われた.この動きはカリキュラム改革運動としてアメリカに端を発し,およそ20年間続いた.このカリキュラム改革運動期では多くの教育プロジェクトが出現した.その基礎理論は既存の心理学理論であった.この既存の心理学理論には,大別すると行動主義と認知心理学がある.ここでは,行動主義の代表としてはバラス・スキナー(B.F.Skinner),認知主義の代表としてはピアジェ(J,Piaget)の理論を取り上げ,カリキュラム改革運動期における教授・学習論について考える.さらに,構成主義的学習論から社会的構成主義に至る経緯を述べる.
4.行動主義的学習論
人がどのように思考しているかを研究する学問,心理学が学問として成立したのは19世紀後半のことである.このころ,意識や思考のプロセスを探るには,その人に直接たずねるという「内観法」とよばれる方法に頼っていた.この「内観法」の主観性を問題視し,客観的な心理学を求めて提唱されたのが「行動主義」による心理学である.「行動主義」により学習を定義すると「行動が変わること」となる.つまり,行動主義的学習論では,客観的に示す方法がない頭の中の出来事は全てブラックボックスとみなしてしまい,科学的に扱える「行動」のみを対象に評価や研究を行うのが「行動主義」である.すなわち,「学習者の刺激に対する反応のみに注目し,学習成立の有無を判断しようとするもので,学習者の心的なプロセスは分析の対象としない学習論」といえる.行動主義的学習論では,学習者の行動から学習の成立を考える.例えば,授業が終わった直後に「よくわかりました」と言っている児童生徒がいたとする.しかし,行動主義的学習論では,この時点では学習したとはいわない.学習したかどうかはすべて学習者の行動が変わることによって示されるからである.従って,「わかったならやって見せなさい」というのが行動主義的な考え方といえる.
行動主義的学習論の基本的な理論は,1938年に代表的な行動主義心理学者のひとりであるバラス・スキナー(B.F.Skinner)が考えた.スキナー箱というものを使ってマウスやハトを用いて有名な研究を開始した.このスキナー箱とは,マウスが,餌が出るレバーを押すように自発的に行動(operate)するようになることを観察する代表的な実験装置である.この実験により,報酬や罰などの刺激に反応して,自発的にある行動を行うように,学習することを,オペラント条件づけと呼んだ.すなわち,「オペランド条件づけ」とは,偶発的行動に正の強化を与えるとその行動が生起しやすくなることを研究し,その結果,学習は訓練によってだれにでも身につけさせることできることを理論化したのである.スキナーは,さらにこの「オペラント条件づけ」の理論に基づき,1960年代に「プログラム学習」を開発した.開発のきっかけとなったのは,愛娘の授業参観に行ったスキナーが,授業方法のひどさに呆れ,「これはネズミの訓練以下の教育だ」と憤慨し,その結果開発されたのがプログラム学習だったという話がある.
一般に教育の世界では, 常にものごとの 「基礎・基本」を身につけることの重要性が叫ばれる.そのような「基礎・基本」を身につける手段には,必ずといってよいほど,やさしい問題から順に難しい問題に進む.階段を上がるように一歩一歩,練習問題を解いでいくコースが設定され,それぞれの段階での「反復練習」が強調される.このようにして獲得された反応が,新しい課題状況でも発揮されることにより,基礎技能が「活用」 できるようになるのだときれてきた.学習というものがこのようにあとで役に立つ行動様式の積み重ねで構成されるという考え方を支えてきたのが行動主義的学習論である.しかし,行動主義的学習論には,いくつかの課題があった.それは,動物や頭を使わない訓練の場合はうまくいくが,人間の場合には,報酬にたいする価値観や知的好奇心等複雑な心的な条件が関わってくるため,必ずしも,行動主義的学習論のみでは学習できない.また,学習のプロセスを評価することの是非についても課題となってきた.
5.認知主義的学習論
このような行動主義に対して,ピアジェ(J,Piaget)は,認知主義的学習論として学習者の学習の成立を発達段階に応じた新たなシェマ(Schema)の獲得と位置づけて説明した.シェマとは,学習者が発達していく段階で外部事象を取り入れるために既有の心的構造である.すなわち,学習を,学習のプロセスも含む頭の中での変化を対象とする学習論としてとらえた.ピアジェは,このシェマによって外部事象をそのまま受け入れることを「同化」といい,既有のシェマによる受け入れが困難な場合にはシェマの修正を行い,新たなシェマを獲得することを「調節」といった.また,場面に応じてシェマを適切に運用する人間の心的行為を「操作」と呼んだ.このように,ピアジェは行動主義ではブラックボックスとされた人間の内観をこの「同化」「調節」「操作」という概念でもって説明しようとした.
行動主義的学習論に対して,認知主義的学習論では,学習は,頭の中での変化を含む変容,学習のプロセスも含むと定義しており,学習者が発達していく段階で外部の事象を取り入れるために,既にある心的構造を用いている.ピアジェは人間には,もともと好奇心があり,外に働きかける学びはその関わりの中で生じるといっている.
このようにカリキュラム改革運動期における学習論は,学習者の内観を重視するピアジェの認知主義的学習論と,学習者の行動から学習の成立を検証するスキナーの理論の行動主義的学習論が位置付いていた.
6.構成主義的学習論
認知主義的学習論の次に提唱された学習論として,「構成主義的学習論」がある.ここで,従来の学習論と構成主義的学習論の最も大きな違いは,学習者を受動的な存在と見るか,能動的な存在と見るかという点になる.前者においては学習者を,知識を流し込まれる器のような存在ととらえ,また後者においては学習者を自ら外部に働きかけ知識をつかみとる力を持つ存在ととらえている.この違いに着目して,構成主義的学習論を考える.構成主義とは,学習者たち一人ひとりが主体的に教えられている対象の概念を組み立てていくように教えるという考えである.そこでは学習者自身が能動的に知識を構築していくという考え方があり,その結果,学習プロセスの中で質的な変化が学習者自身に起こると考えた.このように,「行動主義」における教える側からの受動的な学習観に対して,学習者側からの能動的な学習観を提唱するのが「構成主義」による心理学である.構成主義はピアジェ(J,Piaget)の認知主義に基づき「人が,自分がすでに持っている知識構造(シェマ)を通して外界と相互作用しながら,新しい知識を得,新しい知識構造を構成すること」を学習の定義としています.もう少しわかりやすく表現すると構成主義は,「人は自らのいる環境で回りにある材料を使って行動する過程で自らさまざまな概念や知識を主体的に学び取るのである.」といった主体的・積極的な学習観を示す.また,「学習は個人の活動であり,学習の効果は個人の能力として評価される.」という学習観である.
さらに,この構成主義的学習論を進化したのが,ヴィゴツキー(Vygotsky,LS)である.このヴィゴツキーの理論を具現化したのが「社会構成主義的学習論」である.すなわち,学校における学習は,学習者である現在の児童生徒のみでできることではなく,教師の協力や仲間との協働によって可能なことを学ぶのであるという考え方である.言い換えれば,学習者が成長していく過程で,その周りの人たちが果たす役割の重要性について言及したものである.彼はこの考えの中で,知的な能力は他人との関わり合いの中から発達するということを主張した.つまり,彼は学習者が成長するときに,家族や大人,仲間と協働にやることが重要であるということを提示した.ヴィゴツキーはこれを発達の最近接領域と命名した.すなわち,ヴィゴツキーは,発達の最近接領域における「協働学習」の有効性を強調したのである.それは,「協働の中では,学習者は自分一人でする作業のときよりも強力になり,有能になる.かれは,自分が解く知的難問の水準を高く引き上げる.」という言葉に表れている.このようにして,子どもの学習が,「教室における集団」「教師やクラスメイトとの対話」「観察や実験などの事実」「教科書などから得られる情報」等を通じて成立することを理論化したのである.すなわち,このことにより社会的構成主義学習論の基礎が築かれた.
従来の学習論と社会的構成主義の違いについて,今,テストを例に考えてみる.通常,人の手を借りてテストを受けるのはカンニングと言われる.通常の学校教育の現場では,学習者は,「他者の助けなし」で有能であることが求められている.すなわち,学校では,学習はあくまで個人のものであるというようにとらえている.しかし,通常の日常生活を考えてみると,ある研究によると,我々が,仕事場で行う90%以上の仕事は,個人が一人で取り組むのではなく,他人に知恵を借りたり,お互いにできない部分を補いあったり,得意な部分を活かしあったりして,仕事を達成している.これは,先ほどの学校と違って,日常においては,我々は,一人で「有能」であるわけではない.様々な人々と一緒に,彼らとともに「生きる」ことで,有能に振る舞っている.このように日常生活では,学習者は,他の人々とコミュニケーションをとりながら,知的に振る舞う.そしてそこで実施される学習も,決して,個人の中だけに閉じているものではない.わからないときは,教師や有識者の知恵を聞く.より有能な友人から,手助けを得て,知恵をもらいつつ,学習者は,日々生きている.同じくらい有能な同級生との対話によっても,人は,学べる.例えば,あなたは今,Aということをよく知っている.そして同級生はBを知っている.Aについてよく知っているあなたと,Bについてよく知っている同級生が対話をすれば,Cという新しい価値,新しい知識が生まれる可能性がある.もちろん,お互いに「行き着くところは同じではない」かもしれないが,あなたはAについて「より知ること」ができる.同級生はBについて,新たな見方ができるようになる.人が集まり,何かについて話し合えば,必然的に説明をする必要に迫られる.こうして,相互に学びが深まる可能性がある.社会的構成主義は,このような事例に典型的にあらわれている.ここでも,行動主義と社会的構成主義を捉えるうえでのポイントは,学習を「受動的なもの」から「能動的(主体的)なもの」として捉え直すということである.
最後に,基礎的な学習論である行動主義的学習論と認知主義的学習論をまとめると次のようになる.「行動主義」がそのブームを終え,「構成主義」もさらに新たな展開を見せている現在でも,従来の学習論は,プログラム学習に基づく自学自習教材や,「構成主義」に基づく問題解決学習など,伝統的な学習理論は領域に応じて適用され,効果をあげている.また,これらの理論は,現在でもドリル学習や発見学習,協働学習,ジグソー学習,遠隔学習等.また,e-Learning等様々な学習方法の基礎となっている.教育や学習の目的も価値も時代の流れとともに変わり,普遍的なものではない.教える側にとっても学ぶ側にとっても,課題と状況に応じて新旧いろいろな理論からのアプローチを試みながら,均衡点を常に探し続ける柔軟で動的な学習観を持つことが期待されている.
【課題】
(1)主体的・対話的な深い学びの授業をデザインするために必要なことを纏めて説明しなさい.
(2)学習理論から主体的な学びと対話的な学びについて説明しなさい.
【参考文献】
1.R.A.リーサー他:インストラクショナルデザインとテクノロジ
北大路書房、2013.9.20
2.近藤他;教育メディアの開発と活用 ミネルヴァ書房 2015.3.20
資料
5.資料
【講座】 教授・学習の理論と教育実践
1. 何を学ぶか
⼈が「学ぶ」ということについて、古くからいろいろな領域での研究がなされてきた。教授と学習という概念は、⼀般に教育者の⾏う教授活動と、学習者の⾏う学習活動という意味で理解されている。しかしながら、現実の多くの教育においては、「教授と無関係に成り⽴っている学習」もあれば、「教授が学習を導けない場合」もある。また、「教師がいないで⾏われている学習」であっても「教師からいかなる指⽰も影響も受けずに学習者が学習を⾏う場合」もあれば、「教師から前もっての指⽰のもとに、⼀⼈で学習する場合」もある。さらには、「教師の指⽰に反する⽅法で学習を⾏うような学習者」もいる。このように、現実の教育の場においては、教授と学習は必ずしもひとつの教育過程を構成しているとはいえない場合がある。ここでは、このような教授・学習の理論の変遷について考える。
2. 学習到達目標
① 教授学習に関する基本的な理論を具体的に説明できる。
② ⾏動主義と認知主義の2つの学習論の区別を説明できること。
3. 研究課題
① ⾏動主義的学習論と認知主義的学習論、構成主義的学習論に対応した教材や課題(問題)を作成し、グループで協議をしなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成(第13講)
5.映像
1.主体的・対話的な深い学びとその評価
【学習到達目標】
・学力の定義の変遷について説明できる.
・パフォーマンス評価とルーブリックの関係を説明できる.
1.知識基盤社会と資質・能力
高度情報社会は新しい課題を世界にもたらし,新しい解を生み出せる人間を求める社会である.つまり,これからの社会は,一部の専門家があらかじめ有する「正解」を適用するだけで解決できるものではなく,問題を共有する者が知識やアイデアを出し合い,不完全にせよ解を出して実行する.そして,その結果を見ながら解とゴールを見直すことが求められている.このような課題に対して,社会全体が応えようとしている表れが,知識基盤社会,コミュニティ基盤社会への転換と進展,ICTの利活用である.
知識基盤社会とは,新しい知識やアイデア,技術のイノベーションがほかの何よりも重視される社会である.そのイノベーションのために,他者とのコミュニケーションやコラボレーション(協働,協調)が重視され,それらが効果的・建設的に行えるように,人と人を繋ぐコミュニティやICTの役割に注目が集まっている.
つまり,現在決まった答えのないグローバルな課題に対して,大人も子供も含めた重層的なコミュニティの中で,ICTを駆使して一人ひとりが自分の考えや知識を持ち寄り,交換して考えを深め,統合することで解を見出し,その先の課題を見据える社会へと,社会全体が転換しようとしている.ここでは,その情報社会とそれに応じて求められる資質や能力について考える.
2.目標分析
「目標分析」とは,目標の構造をとらえることで,目標分析をできないと評価規準をつくるのは困難である.つまり,目標自体は平面的で,それだけでは構造はわかりませんが,目標を分析して全体の構造がわかると,評価規準を作成することができる.
目標の構造がわかるというのは,評価規準のなかで,重要度を決定することである.つまり,教材の目標分析とは,「この単元で何を,どのように教えたいか,いつ指導したいのか,どのような順序で教えるのか,どのような方法で教えるのか,そのためにどのような教材を利用するのか」を決定することといえる.
次に,「それを指導するために,何がいるのか」を考え,そしてそれらを分類する事が重要となる.このように,これを教えるためには何が必要かを考えことを,「目標の構造化」という.目標の構造化をすることにより,教材の流れが出てくる.抽象的な教科全体のことを「目標分析」,教材単元のことを「目標分類」と分けて考えると,「目標分類」によって構造とともに授業の流れがわかる.
それぞれの学校や学級によって目標は変わらないが,目標の構造は,子どもの実態によって変わる.子どもの実態,教師の指導方法・指導力,学習環境など,そういうことを含めた授業研究がなされて初めて目標分析ができる.
2.教育目標の分類
日本で目標分析が行われるようになったのは,B.S.ブルーム(B.S.Bloom)の「教育目標の分類」の研究以降である.B.S.ブルームらが開発した手法は,教育目標を構造化し,マトリックス上に表現したものである.
具体的には,学習の「内容」を縦軸にとり,そこで目指される「学習行動(能力)」を横軸にすえたマトリックスを作成し,学習目標をその枠の中に割り付けていくという手法である.このうち,横軸に並べる学習行動(能力)については3つの領域,すなわち認知的領域,情意的領域,精神運動的領域が枠組みとして設定され,それぞれの領域においては目標に段階性があることを意識しながら目標を割り付けていくことが目指された.
B.S.ブルームによる提案が行われて以降,学習行動(能力)の段階性に関する研究が積み重ねられ,各教科で適用可能な形式へと発展していった.また,各国の教育の実情や文化・風土にあったタキソノミー(Taxonomy)を作ることが推奨され,日本の教育文化にあったタキソノミーづくりの試みも実際になされている(梶田,2002).
この教育目標の分類学という目標分析の手法は,あいまいになりがちな授業の目標を明確化し,子どもの学習の評価観点を明確化するという意義がある.また,教師にとっては,その授業の中で何を教えればよいのかが明確に意識化され,子どもの学習評価を,印象論ではなく,明確な観点を持って行うことができるというメリットもある.さらに,教育目標の高度化の方向も示すこともでき,そのための授業改善の方法を探ることもできる.
例えば,深い学びに授業に改善することは,B.S.ブルームの「教育目標の分類」における認知的領域の「内容」を豊富に含むことであり,そのための授業内容や方法を改善することが必要となる.
4.学 力
学生の学力が低下しているといった報道をよく耳にする.そもそも,学力とはどのようなものか.ここでは,まず学力について考えてみる.
授業を実施した場合に,学んだ内容が学生にしっかり身についているかどうか,最終的に評価しなければならない.その評価で測る対象が学力である.
学校ではどのような学力をつけるべきかを問う際に,その基本構造について合意形成していくことが有効である.ここでは柴田の提示している学力構造と相互関係から考えてみる.(柴田1994)
柴田(1994)は,学力を「学んだ力(基礎的知識・技能)」と「学ぶ力(自ら学ぶ力,学び方)」,そして「学ぼうとする力(学習意欲)」の3つの要素で構成されるとしている.「学んだ力」は学習の結果として身に着けた知識や技能を指し,それらを学ぶための必要な学び方,問題解決の方法を「学ぶ力」と表現している.さらに,それらを支える学習意欲を「学ぼうとする力」としている.
その上で,特に「学ぶ力(学び方)」を中心とした学力構成の重要性を述べ,「学び方の論理的側面」としての基本的な思考様式(推論的思考様式,実験的思考様式等)と「学び方の技術的側面」としての実践的知識(辞書の使い方,発表の仕方,情報機器の使用法等)という方法を教育内容として系統的にきちんと位置付ける必要性を強調している.
学力は児童生徒が社会人になっても役に立つ力であってほしいものである.別の見方でいえば,社会が変化すれば,必要な学力も変化することを意味する.
国際的な学力調査PISAを実施しているOECD(経済協力開発機構)は,これからの社会を知識基盤社会だとして,教育の成果と影響に関する情報への関心が高まり,「キー・コンピテンシー(主要能力)」の特定と分析に伴うコンセプトを各国共通にする必要性を強調した.そのために,OECDではプログラム「コンピテンシーの定義と選択」(DeSeCo)をスタートし,その後「キー・コンピテンシー」の概念を提唱した.ここで,提唱された「コンピテンシー(能力)」とは,単なる知識や技能だけではなく,技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して,特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力としている.
つまり,「キー・コンピテンシー」とは,日常生活のあらゆる場面で必要なコンピテンシーをすべて列挙するのではなく,コンピテンシーの中で,特に,①人生の成功や社会の発展にとって有益,②さまざまな文脈の中でも重要な要求(課題)に対応するために必要,③特定の専門家ではなくすべての個人にとって重要,といった性質を持つとして選択されたものと定義できる.
今後,このような個人の能力開発に十分な投資を行うことが社会経済の持続可能な発展と世界的な生活水準の向上にとって唯一の戦略であるとしている.そこで,OECD(経済協力開発機構)は,12か国の間で議論し「キー・コンピテンシー」として次の3つを提唱した.
○社会・文化的,技術的道具を相互作用的に活用する力
○自律的に行動する力
○社会的に異質な集団で交流する力
一方,日本の学校では,学習指導要領に教育内容が規定されている.学習指導要領が目指す学力は,1998年以降「生きる力」が掲げられ,次の3つの力の育成が重要とされた.
①基礎・基本を確実に身に付け,いかに社会が変化しようと,自ら課題を見
つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を
解決する資質や能力
②自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心な
どの豊かな人間性
③たくましく生きるための健康や体力
さらに,幅広い学力を育成するためには,どんな要素から成り立っているかをさらに詳しく把握する必要がある.1989年(平成元年)の学習指導要領では,全ての教科は「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」などの4観点に分けられている(国語のみ5観点,それ以外の教科は4観点).
教師はそれぞれの観点ごとに目標を設定し,学習者がその目標に対してどれだけ実現できたかを分析し,評価している.この評価方法は絶対評価で行われ,観点別評価とも言われている.学年末には,各必修教科,選択教科の観点別評価が,観点別学習状況として評定とともに指導要録にも記録されている.
○関心・意欲・態度
○思考・判断・表現
○技能
○知識・理解
ところが,2008年(平成20年)の学習指導要領では,学力について従来の4観点から次の3要素に再編された.特に,学校教育法第30条に,学力について次のように示された.
第三十条 小学校における教育は,前条に規定する目的を実現するために必要な程度において第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする.
○2 前項の場合においては,生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない.
ここで,第2項に示してある次の3項目を「学力の3要素」と呼んでいる.
○基礎的・基本的な知識・技能
○知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断
力・表現力等
○主体的に学習に取り組む態度
2020年には,児童生徒一人1台のタブレットPCが導入され,アクティブ・ラーニングなどの新しい学習の方法が導入されてくる.現在,学力観は現在大きな転換点を迎えているといえる.
5.新しい評価方法
21世紀型能力のような新しい学びには,新しい評価方法が必要である.学習結果の到達点を測る評価ではなく,学習の進み具合を捉え,次の段階に進むために今やっていることをどう変えたらよいか判断するための評価である.このような評価を学習の進行に合わせて行うためには,学習プロセスの記録を取り,分析・共有して次のステップを検討する強力なICT基盤が必要である.ICT基盤が強力であれば,教員はそのICT環境の維持や新しい評価方法に翻弄されることなく「新しい学びの構築」に集中することができる.
6.パフォーマンス評価と変容的評価
「パフォーマンス評価」とは,「パフォーマンス課題」によって学力をパフォーマンスへと可視化し,学力を解釈する評価法である.パフォーマンス評価は,「パフォーマンス課題」に取り組ませることで,子どもの学力を「見える」ようにし,「ルーブリック」という評価基準を使って評価する.したがって,パフォーマンス課題は,評価したいと思う学力ができるだけ直接的に表れるものにする必要がある.
また,「パフォーマンス評価」の利点として,従来のテストでは見えにくい「思考力」「表現力」などを具体的な表れとして見られることが挙げられる.例えば,算数で,思考の過程を表現させる課題を出し,式や言葉,図,絵などさまざまな方法を用いてもよいとすれば,子どもは自分なりに考え,表現しようとする.パフォーマンス評価では一つとして同じ答案はなく,子どもの思考や表現は実に多様だと実感できる.子どもの思考を理解するのに役立ち,子どもは「書く」経験を積むことができる.答案を発表し合えば,友だちの考えへの理解や,個性の自覚にもつながる.しかし,「パフォーマンス評価」は有効な方法であるが,「思考力」「表現力」を丸ごと測れるわけではない.あくまでも一つの課題に対する結果と考えることが重要である.「思考力」や「表現力」という力そのものを把握できる方法はないので,パフォーマンスから,その背後にある子どもの思考や表現の特徴を把握しようと努めることが大切である.
【課 題】
(1) 知識・技能と資質・能力の違いについて説明しなさい.
(2)パフォーマンス評価とルーブリックについて具体例を示して,説明しなさい.
(3)ルーブリックを児童生徒に作成させることのメリットをグループで解説しなさい.
【参考文献】
1.鈴木:教材設計マニュアル 北大路書房 2013.9.20
2.稲垣・鈴木;授業設計マニュアル 北大路書房 2013.6.20
資料
2.主体的・対話的な深い学びとICT
【学習到達目標】
・主体的・対話的な深い学びを不断の授業改善の視点から説明できる.
・不断の授業改善におけるICTの役割を説明できる.
1.不断の授業改善の視点としての主体的・対話的な深い学び
既に前章までに触れられてきているように,子供たちが成人して社会で活躍する頃には,生産年齢人口の減少,グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により,社会や職業の在り方そのものが大きく変化する可能性が指摘されている.そうした厳しい挑戦の時代を乗り越えていくためには,伝統や文化に立脚しながら,他者と協働し価値の創造に挑み,未来を切り開いていく力が必要とされている.そのためには,学ぶことと社会とのつながりを意識し,「何を教えるか」という知識の質・量の改善に加え,「どのように学ぶか」という学びの質や深まりを重視することが必要とされている.
そこに向けた取組の視点として「アクティブ・ラーニングの視点からの不断の授業改善」が言われている.より具体的には,①学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか,②子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか,③習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか,といった「3つの学び」の視点が掲げられている.
このように質の高い深い学びを目指す中で,教員が,指導方法を工夫して必要な知識・技能を教授しながら,それに加えて,子供たちの思考を深め発言を促したり,気付いていない視点を提示したりするなど,学びに必要な指導の在り方を追究し,必要な学習環境を積極的に設定していくことが求められてきている.
ここでは,習得・活用・探究のプロセスにおいて、習得された知識・技能が思考・判断・表現において活用されるだけでなく,思考・判断・表現を経て知識・技能が生きて働くものとして習得されたり,思考・判断・表現の中で知識・技能が更新されたりすることなども述べられている。このように「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業改善を行うことで,学校教育における質の高い学びを実現し,子供たちが学習内容を深く理解し,期待されている資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けるようにすることが,求められてきている.
2.主体的・対話的な深い学びを導く教育・学習環境としてのICT
上記のような授業の絶えざる改善を進めていくためには,一方で学習環境の改善及びその効果的な利用法にも目を向けていく必要がある.
例えば,対話的な学びと関わるグループワークでは、なかなか全員が参加する活動にならないという悩みがよく言われている.また活発に話し合ってはいるがそこに深まりが見られないなどの悩みが言われている.しかし目に見える活発な話し合いの姿は見せないが、人の意見をよく聞いてまた読んで自己の学びを構成していく潜在的対話的な学びをしている児童生徒も実際にいる場合がある.このような潜在的対話的学びをしている児童生徒を生かし,一方で顕在的対話的な学びをリードし自信をもっている児童生徒により他の子の意見を丁寧に見てさらなる熟考を促していくために,ICTなどテクノロジーが有効となる.たとえば,児童生徒のタブレットがネットワークにつながっていることで,顕在的に話し合わなくても,各自が考えていることが互いに見える.教員はこの機能を生かし,従来の机間指導で見取れなかった子供の姿,埋もれがちな子どものよい意見を取り上げたり,全員の意見を等しく見て,限られた授業時間を有効に使いながら議論を組むことも可能となる.もちろんそのための課題設定や発問の質が重要となるが,それぞれの児童生徒の学習スタイルや発達課題を考慮しながら,授業で教員が顕在的な対話と潜在的な対話を適切に組み立てることが,人の考えを参考にして自分の考えの検討をつけたり、新たな考えを創出したり,自分の考えを掘り下げたりすることを促す可能性を作る.発言が苦手な子にはこの取り組みを通じて話す機会を作って自信を持たせ,一方で話し合いには参加しているがじっくり自分の考えを持つことが苦手な子には,熟考できる機会を作る.このようにICTなどのテクノロジーを,教育の原理と絡めて授業の絶えざる改善に向けて使うことが重要となる.
また平成30年から実施される学習指導要領で期待されている資質・能力の育成においては,その成長をいかに見取り,評価するのかが大きな課題である.その点に関しても,コンピュータを使うと難しいといわれている思考のプロセスを残せるようになる.児童生徒の学びの履歴をもとに,授業の改善を考えることができ,長い目で見ると,単元レベルの授業の改善,学年単位レベル,さらには学校全体の教育課程レベルで授業改善を考えていく根拠資料として,その記録が有効となる.このように評価情報を収集し授業の改善につなげていく道具としてICTを用いていく,つまりアセスメントツールとしてICTの活用をより意識すると,「授業の絶えざる改善」をより効果的に進めることができ,さらに言えば,カリキュラム・マネジメントの取り組みにもつながっていく可能性がある.
3.主体的・対話的な深い学びの授業デザインの目を磨くためには
授業にアクティブ・ラーニングの視点を取り入れる際には、「ゴールの姿」と「方法・環境」の両方をしっかりおさえておく必要がある。例えば、「方法・環境」しか見ていない場合は、アクティブ・ラーニングの「型」をなぞるだけとなり、どのような力が育つのかという「ゴール」が分からない授業となってしまう。一方、「ゴールの姿」だけを設定しても、「方法・環境」が十分練られていないと、授業づくりが難しくなる。
これからの授業のデザインは、教員がその授業で身につけさせたい教科の内容と資質・能力を子供の姿のアセスメント情報からより明確にし、学習の内容や方法を検討することがさらに重要となる。当然ながら「本単元に入るために必要な前提となる力をこのクラスの子供がどれくらい持っているかを見定める.そしてこの単元や授業では、ここから入り,この資質・能力のこの部分を伸ばす」といったゴールを明確にすることは行われると思われる.しかし授業にアクティブ・ラーニングの視点を取り入れ,例えば「学ぶ力」や「学びに向かう力」等より意識して指導していくためには,そこに向けて、ここでは思考を広げたいとか、ここでは振り返りをさせたいなど、子どもの学びの姿をイメージしながら、ダイナミックな活動の流れのもつ効果を見定めていく小さな目標(学習活動やそれが持つ効果を見るチェックポイント)を設定する必要がある.図4-1は,「問題解決・発見力」を子供に培っていく際の学習プロセスやそこでのICTなどを生かした学習活動の組み合わせのバリエーションをイメージとして提供してくれている.このように単元デザインを”学びの連続体”としてとらえ、入り口と出口の子供の姿を明確にし,そこでの学びが確かで豊かになる学習活動の組み合わせを考え,どの場面でどのように学びの姿の成果を見るか(形成的評価につながるチェックポイント)を計画し,授業全体をデザインしていく目がより求められてくる.
4.主体的・対話的な深い学びを確かなものとしていくために
一口にアクティブ・ラーニングといっても,いろいろなレベルがある.子どもに気づきを促したいのか,思考を深めさせたいのか,興味・関心を引き出して学びに向かわせたいのかなどによって,議論,探究,表現活動など,行うべき学習活動は異なる.またなかなか自ら学びに向かうことができない子どもたちには,自尊感情を高めることを意図した協働的な学びも考えられる.子どもの状況や目的に応じて,それに適した活動を取り入れることが重要である.
そして子どもが主体的になるために,先にも触れたが,ずっと問いを持ち続けられるような工夫が必要になる.課題の内容やレベルにより,子どもの思考は大きく左右される.例えば、とにかく多くのアイデアを出させたい場面では,子どもの気づきに任せて話し合わせるのもよい.一方、グループワークを通して思考を深めさせたい対話的深い学びの場面では,多様な考え方ができ,すぐには答えにたどり着けない深い課題が必要となる.この場合は,子どもの気づきだけに任せると浅い思考で終わってしまうことが多いため,教員が課題を設定することが必要となる.また子どもの思考は,子どもにとって面白い課題でないと活性化されないことに留意する必要がある.子ども自身が知りたい,解決したいと思うからこそ,そのために何を調べればよいのか,どうまとめると伝わるのかなどを真剣に考えるようになる当事者意識をどう持たせるかが「学びに向かう力」を育てる上では重要となる.
また主体的で深い学びには,振り返りの支援が重要である.子どもが自分で学びを進めるためには,「学びに向かう力」が不可欠であり,振り返りの視点,いわゆるメタ認知の力が欠かせない.自分が今どういう状況にあるのかをモニタリングしたり,何が好きかなど自己認識をしたり,次に何をしたらよいのかを考えたりするなど,自分自身を振り返って高めていく仕組みが必要となる.自分にとって必要な学習を考え,次の一歩を踏み出すことの繰り返しで,学びはつくられていくと考えられるからである.
不断の授業改善に向けて子どもの姿から学びをとらえる姿勢が重要となる.
【課題】
(1) 不断の授業改善の視点として言われている「主体的・対話的な深い学び」で想定されている学びの姿を他の人にわかりやすく伝えることを意識してまとめなさい.
(2) 不断の授業改善におけるICTの活用可能性について,「主体的・対話的な深い学び」と関連付けて説明しなさい.
資料
3.主体的・対話的な深い学びとコミュニケーション
【学習到達目標】
・コミュニケーション能力を構成する3要素について説明できる
・教育的コミュニケーションについて説明できる
・現代のコミュニケーション活動の特徴を知り日常生活面で改善できる
1.コミュニケーション能力の構造(3つの要素)
人を育てる職業である教師にとって,学習者間での相互理解を深めるためのコミュニケーション能力は,極めて重要です。
コミュニケーション(communication)とは,「特定の刺激によって互いにある意味内容を交換すること。人間社会においては,言語・文字・身震いなど種々のシンボルを仲立ちとして複雑かつ頻繁な伝達,交換が行われ,これによって共同生活が成り立っている。」(国語大辞典,小学館)と記されています。すなわちコミュニケーションは,複数の人の間で記号を媒体とする相互作用と定義できます。人間は,社会において共同生活を営み,コミュニケーション活動により様々な課題を克服し,新たなものを創造し,さらに豊かなコミュニティを構築する協創・協働活動を行っています。
次に,相互理解のためのコミュニケーション能力の構造図を図1に示します。
図1よりコミュニケーション能力は,3つの要素から成り立っているのがわかります。
一つ目は,コミュニケーション能力の頂点となる「論理的に考える力(critical thinking, logical thinking)」です。これは,1.問題を発見し情報を収集する力,2.情報を読みとり考察する力,3.問題を明快に分析する力,4.解決策を提案する力,5.道徳的に判断する力を含みます。
二つ目は,「受け止める力(assertion)」です。受け止める力では,一方的な提案や主張(アグレッシブ)にならないよう,相手の気持ちや言い分を受容することで,双方が納得できる関係を構築するための1.受容的に聴く力,2.相手の気持ちを理解する力,3.相手を意欲的する力を含みます。
三つ目は,「伝える力(presentation)」です。伝える力では,1.的確な指示を行う力,2.自分の魅力を伝える力,3.話に刺激があり記憶に残す力,4.身振りで伝える力,5.相手の立場を知り共感される力,6.自己の考えを主張できる力,7.情報を論理的に構造化する力,8.自分の情報を整理する力,9.プレゼンテーションの筋書きを作る力,10.議論に負けない力などがあります。これらは,相手の納得する提案や主張を,効果的・効率的に構築し,伝えるためのさまざまなプレゼンテーションの知識・技能です。
2.3方向の教育的コミュニケーション
授業でのコミュニケーションは,①教授者の情報提示(指示,説明,発問など),②学習者のお返し(回答,意見など),③教授者の働き返し(正解,ほめるなど)の3つの過程が基本的な考えです。この学習理論をもとにした教育的コミュニケーションを図2に示します。
授業は,教授者と学習者,学習者相互間において,上記の教育的コミュニケーションの過程を繰り返すことにより営まれています。授業では,教科書,プリント,黒板,AV,PC,タブレットなど学習を支援する媒体としての教育メディアを活用し,教育的コミュニケーションの改善を図ります。また,図2において教授者からの働き返しをKR(knowledge of results)と言います。これには,正誤を知らせる知的KRと,受容やほめたり励ますなどの情的KRがあり,教授学習過程では重要な役割を果たします。知的KRは,学習者の発言や発表に対して正誤を知らせる認知面にかかわる情報です。情的KRは,学習者の発言や行動に対してほめる,認めるといった情意面にかかわる情報です。教授者の知的KRと情的KRの使い方によって,学習者の理解や意欲が大きく違ってきます。
学校では,学習者の知識や技能のレベルがさまざまな状態にあります。教師は,それぞれの学習者の既習度や特性に応じて適切な情報を抽出し,わかりやすくかみ砕き説明,発問して適切なKR情報を与えることできる能力が求められます。
3.コミュニケーションの分類
(1)言語コミュニケーション(verbal communication)
言語とは,人間社会において,コミュニケーション活動の基盤となる字音的表現であり,人間が創作した人為的な記号体系や音声による記号体系により,人間の感情や思想,意思などを表現したり,相互に伝え合うことができます。言語の目的は,言うまでもなく情報を他者に伝えることです。それでは,言語を音声言語(話し言葉)と文字言語(文字言葉)に分類し考えてみましょう。
音声言語とは,オーラルコミュニケーション(oral communication)が一般的で,聴覚を利用した口頭での意思伝達です。音声言語は一過性による人と人との直接的なコミュニケーションであり,人それぞれに独特の音声の高低や強弱,音質,ポーズ(間)などの特徴が付加されます。同時に,話し手の意思や意味を聴き手が解釈することで話の内容があいまいになるケースもあり,聴き手の既有知識,し好,経験,信頼,感情,立場などの特性によって,多様に解釈され理解されることがあります。また,話し手,聴き手相互間で,「~を言った」,「言っていない」,といった相互の主張によるトラブルがあります。これを補うツールとしてビデオやボイスレコーダなどのメディアがあります。
文字言語は,人間の視覚を利用した文字による意思伝達です。文字言語は記録・保存により,さまざまな用法によって独特の性質をもたらすことができます。そこで,紙や電子媒体を用いて表現,保存することで,伝達の範囲を時間的・空間的に拡大できます。
(2)非言語コミュニケーション(nonverbal communication)
非言語コミュニケーションは,言葉で記号化できるもの以外で,視聴覚など五感を通して収集できるものを言います。たとえば,人の表情や身振り,アイコンタクトをはじめ,髪型,服装,におい,身に着けるアクセサリー,化粧に至るすべてを含みます。現代では,グローバル化が進み,他の国の人々との異文化接触の機会が増えました。その結果,異文化間での言語の違いはもとより彼らの風習や習慣や思想の違いで,非言語コミュニケーションによる誤解や齟齬が生じ,相互理解が困難な場合があります。たとえば,タイ国では子どもを含み人の頭をむやみに撫でたり触れたりしてはいけません。日本でよく見かける,教師が子どもをほめる時に行う頭を撫でることはタイ国では見られません。異文化コミュニケーションを考えるとき,言語コミュニケーションにばかり注目する傾向がありますが,他国の文化や思想を理解する他者理解の視点から非言語コミュニケーションを見直すことが大切です。
最近のコミュニケーション活動は,スマートフォンや電子タブレットなどの普及により表現や伝達方法,内容がますます多様化する傾向にあります。ICTの進展により,映像を介した非言語コミュニケーションも可能になりました。そのため私たちは,普段なにげなく使っている非言語コミュニケーションの特徴を学び意識し,相互理解のためのコミュニケーションについて再考察することが大切でしょう。
次に,非言語コミュニケーションに関する有名な研究があります。アメリカの心理学者アルバート・メラビアン(A. Mehrabian)は,コミュニケーションにおいて話し手が聴き手に与える影響は,7%が言語コミュニケーション(言語情報:言葉そのもの)であり,残りの93%が非言語コミュニケーション(55%が視覚情報:見た目・表情・しぐさ・視線,38%が聴覚情報:声の質・速さ・大きさ・口調)であるとし,非言語コミュニケーションの重要性を述べています。この法則は,メラビアンの法則と呼ばれ広く知られています。
また,非言語コミュニケーションの研究者であるアーガイル(M. Argyll)によると,聴き手の70%以上が話し手の話を聞いているときに目を見ている,会話をしているときは,約60%が相手を見ていると報告されています。他にもエクマン(P. Ekman)は,顔の表情各部分の比率より,基本的感情表出度を表していることを示しています。
以上のように,多くの研究がなされていることからも非言語コミュニケーションの重要性が高いことがわかります。
4.現代社会でのコミュニケーションの光と影
スマートフォン,インターネット,Wi-Fiのインフラの充実に加え,LINE,Skype,Facebookなどコミュニケーションツールの無料アプリが普及した現代では,私たちは日々メディアを利用したコミュニケーションを行うようになりました。ここで言うメディア“media”とは,ミディアム“medium”の複数形であり,声や文字などの情報を伝達する媒体のことです。
マーシャル・マクルーハン(M. McLuhan)は,その著書『人間拡張の原理』で「すべてのメディアは,われわれ人間の感覚の拡張である。メディアはメッセージである。すべてのメディアの内容は常にもう一つのメディアである。」と述べています。つまり,メディアを人間のもつ感覚まで含めているのです。たとえば,衣服は皮膚の拡張,車輪は脚の拡張,電話は耳の拡張などといったことです。
ICTが発展・普及した現代では,社会システムの合理化や効率化に伴い,人と人との直接的なコミュニケーションの機会がますます減少する方向に進んでいるのは事実です。前述したように,今日ではいつでも(時間),どこでも(場所),だれとでも(人)を意識せず,メディアを介した間接的なコミュニケーション活動が容易な時代になりました。現代では,ICTの恩恵や利益など光の部分が先行し,通信メーカによるCMなどの影響で便利な生活が誇張されています。しかし,従来の直接対話に比べ,メディアを介した間接対話は,私たちが予期できなかった想定外の事故や事件,犯罪を招いたり,人間の価値観や判断,活力,究極的には生命まで脅かす影響を与えたりするケースが生じるようになってきました。ICT恩恵の背後には,個人情報や犯罪利用など多くの問題や悪い影響につながる影の部分が多々あることに大きな社会事件を通して気づきます。そのため,一人ひとりが情報・メディアとつきあう教養やコミュニケーション能力(言語・非言語・メディア)を養う必要性を自覚し,日々の生活で実践・向上させる心構えが最も大切です。
【課題】コミュニケーション実践のためのデジタルWeb教材を行ってレポートにまとめなさい。
http://www.hayashi-tokuji.com/td-ict/index.html
【参考・引用文献】
・林徳治・藤本光司・若杉祥太『主体的に学び意欲を育てる教学改善のすすめ』ぎょうせい,2016
・林徳治・奥野雅和・藤本光司『元気がでる学び』ぎょうせい,2011
・沖裕貴・林徳治 他7名『必携!相互理解を深めるコミュニケーション実践学(改訂版)』ぎょうせい,2010
資料
4.学習指導要領とアクティブ・ラーニング
【学習到達目標】
・21世紀に求められる資質能力について説明できる.
・次期学習指導要領改訂の視点について説明できる.
・アクティブ・ラーニングとICTの活用ついて説明できる.
1.21世紀に求められる資質能力と学習環境
21 世紀の知識基盤社会における「学⼒」は「他者と協働しつつ創造的に⽣きていく」ための資質・能⼒の育成である.そのため,授業では,他者と共に新たな知識を⽣み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を,数多く積ませることが重要である.ここでは,21世紀に求められる学力と学習環境について述べる.
(1)21世紀型スキル
「21世紀型スキル」とは,世界の教育関係者らが立ち上げた国際団体「ATC21s」が提唱する概念で,これからのグローバル社会を生き抜くために求められる一般的な能力を指している.批判的思考力,問題解決能力,コミュニケーション能力,コラボレーション能力,情報リテラシーなど,次代を担う人材が身に付けるべきスキルを規定したもので,各国政府も知識重視の伝統的な教育から21世紀型スキルを養い伸ばす教育への転換に取り組み始めている.「21世紀型スキル」の定義については,ATC21Sプロジェクトの「21世紀のスキルに関する作業グループ」で検討されており,以下のように書かれている.
①思考の方法(創造性と革新性,批判的思考・問題解決・意思決定,
学習能力・メタ認知)
②仕事の方法(コミュニケーション,コラボレーション(チームワーク))
③学習ツール(情報リテラシー,情報コミュニケーション技術
(ICTリテラシー)
④社会生活(市民権(地域および地球規模),生活と職業,個人的責任お
よび社会的責任(文化的差異の認識および受容能力を含む))
(2) 21世紀型能力
国立教育政策研究所では,教育課程の編成に関する基礎的研究報告書5(2013.3:研究代表者 勝野頼彦)において,前述の21世紀型スキルを踏まえて,21世紀を生き抜く力を「21世紀型能力」と名付け,その試案を次のように提案している.21 世紀型能力は,「21 世紀を生き抜く力をもった市民」としての日本人に求められる能力であり「思考力」,「基礎力」,「実践力」から構成されている.
第1に,21世紀型能力の中核に,「一人ひとりが自ら学び判断し自分の考えを持って,他者と話し合い,考えを比較吟味して統合し,よりよい解や新しい知識を創り出し,さらに次の問いを見つける力」としての「思考力」を位置づけている.
「思考力」は,問題の解決や発見,アイデアの生成に関わる問題解決・発見力・創造力,その過程で発揮され続ける論理的・批判的思考力,自分の問題の解き方や学び方を振り返るメタ認知,そこから次に学ぶべきことを探す適応的学習力等から構成される.
第2に,思考力を支えるのが「基礎力」,すなわち,「言語,数,情報(ICT)を目的に応じて道具として使いこなすスキル」である.技術革新を背景にICT 化が著しく進む今日において,社会に効果的に参加するためには,読み書き計算などの基礎的な知識・技能とともに,情報のスキルが不可欠である.情報スキルは,計算や記憶の代行など,読み書き計算の不足を補償する可能性すらある.その支援力の大きさを使って,思考力を助けるのが,この基礎力の一つの役割と考えることもできる.
第3に,思考力の使い方を方向づける「実践力」を位置づけている.「実践力」とは,「日常生活や社会,環境の中に問題を見つけ出し,自分の知識を総動員して,自分やコミュニティ,社会にとって価値のある解を導くことができる力,さらに解を社会に発信し協調的に吟味することを通して他者や社会の重要性を感得できる力」のことである.
そこには,自分の行動を調整し,生き方を主体的に選択できるキャリア設計力,他者と効果的なコミュニケーションをとる力,協力して社会づくりに参画する力,倫理や市民的責任を自覚して行動する力などが含まれる.
(3)教育用メディア環境
21 世紀にふさわしい主体的・対話的な深い学びのためのどのように教育用メディア環境の設計していくべきだろうか.現在,情報通信技術の急速な汎化が進み,Web情報も重要なデジタルアーカイブの情報源として選択保存の必要性が出てきた.これらの,研究・教育の結果として,デジタルアーカイブ開発として新しい観点で実践・研究を展開されている.従来のデジタルアーカイブは,現物のみを対象として考えてきたが,現在の多様なメディアの実用化にともない,メディアを次の4領域に分けメディア環境として構成することが必要となった.
① 実物・体験・文化活動
② 印刷メディア(記述・印刷の紙などのメディア)
③ 通信メディア(通信でWeb情報として収集可能な資料の選択・保存)
④ デジタルメディア(マルチメディア機能をもつメディア)
新しい教育用メディア環境は,かつての現物としていた対象物を最近の通信メディアの発達により,多様な情報が流通する中から,デジタルアーカイブとして記録・保管すべき情報を選定評価し,必要に応じて保管し,組み合わせて表現することを示す.また,各メディア間では相互に変換し利用が進み,新しい資料活用が始まろうとしている.例えば,書籍や教科書をデジタル化し,紙の印刷物と同じ内容の資料がデジタル教科書として図書の二次利用が既に始まっている.教育用メディア環境では,学習者が,電子黒板や教育用メディア端末,印刷メディアである従来の教科書等必要なメディアを主体的に選択し,あるいは組み合わせて利用を可能にすることが重要である.
(4)デジタル学習材
教育用メディア環境としての4領域の大きなカテゴリー化は,教育用のメディア利用の枠組みとして,適用できるかが課題となる.一般に,デジタル学習材と一括して表現されているものには,ネットワーク型もあり,DVD等の学習材,また,印刷物との複合学習材,教育用メディア端末の学習材等,様々な学習材をもデジタル教材と表現している.前述のように,学習者に対する教育用メディア環境も大きく変化している中で,教師が授業で活用する教材とメディアの特性を活かすデジタル学習材に再分類し,メディアの特性を生かし,学習者が主体的に活用でき,一人ひとりの学習者の特性に対応した学習材のあり方を検討している.このため,今後,このメディアの特性について,組み合わせを含めて資料活用上の実践・研究を進め,その適否の評価をすることが必要である.新しい教育用メディア環境としては,前述の4つの領域に分類し,これらを単独として考えるのではなく,これらを組み合わせたものとしてデジタル学習材を考えることが必要となる.
2.学習指導要領の視点
学習指導要領では,図2-2のように,次の「3つの視点」でとらえることができる.
次期学習指導要領では,第1は,知識・技能を「何を理解しているか,何ができるか」と捉えなおしていることである.知識基盤社会においては,知識はばらばらにあっても使えるものにならない.個別の知識はすぐに忘れてしまう.またその知識を新たな学習により絶えず再編していくことにより活かすことができる.第2に,思考力・判断力・表現力等について,「理解していること・できることをどう使うか」としている.つまり,これからの視点として問題を発見し,定義し,解決の方向性を決め,解決方法を探し,計画を立て,結果を予測しつつ実行し,そのプロセスを振り返って,次の問題発見・解決につなげていくことが重要となる. 第3に,主体的に学習する態度を「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか」として概念化している.ここには,情意や態度が含まれ,生きる力の根底に関わるところである.
3.アクティブ・ラーニング
アクティブ・ラーニングについては,図2-3に示す3つの「新たな学びの視点」としてまとめている.
第1が「深い学びの過程」である.習得・活用・探究という学習プロセスの中で,問題発見・解決を念頭に置いた深い学びが実現できているかどうかということである.これは知識・技能の高度化であり,それらが互いに関連づけられ,体系化されていくことにより,思考力を発揮する問題解決過程を通して主体的に学んでいくことで可能にする.学習者が既に学んできたことと新たに学ぶことをつなげ,体系化された知識として保持し,教科としての体系的な見方を身に付ける中で,それを問題解決過程に使えるということを目指している.
第2が「対話的な学びの過程」である.他者との対話を通じて外界との相互作用を通じて,自らの考えを広げ深める.対話とは,物事の複眼的で深い理解に達するために,様々な考えに触れ,やりとりを通していく.教師と子ども,子ども同士がやりとりすることとともに,外界の出来事やものや表現とのやりとりも重要となる.学習者である子どもが教材を前にその探究と理解に向かい,それを助ける教師がいて,また仲間同士がいる中で,ともに考える.
第3が「主体的な学びの過程」である.子どもたちが見通しを持って粘り強く取り組み,自らの学習活動を振り返って次につなげる.積極的に意欲を持って学習に取り組むことから始まり,難しい点に会ってもすぐにあきらめることなく,複眼的で多視点でものを考え,解決法を工夫し,課題をやり遂げていく.他の学習者や教師と考えの共有を図りつつ,自分の間違いを捉え,また自分と他者の良さを自覚し,多面的な理解を深めていく.意欲から意志へ,そして自覚する学習者へと育てていくのである.
【課題】
(1)各自で,新たな学びの視点を入れた授業をデザインし,グループでそ の効果について協議しなさい.
(2)次期学習指導要領を背景,教育の課題,変更のポイントという視点で,それぞれ4つキーワードを出して,グループで協議をしなさい.
資料
動画資料
5.アクティブ・ラーニングとICTの活用
【学習到達目標】
・アクティブ・ラーニングについて具体例を挙げて説明できる.
・アクティブ・ラーニングとICTの活用について説明できる.
・J・B・キャロルの学校学習の時間モデルついて説明できる.
1.アクティブ・ラーニング
アクティブ・ラーニングについては,平成24年8月中央教育審議会の「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」の中に,能動的学修(アクティブ・ラーニング)と括弧書きで記載されている.「能動」の対義語は「受動」であるため,大きなとらえとしては「受動的にならない学習」であるが,先述の諮問文では「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」とされている.
一方で「アクティブ」という言葉から,活動性をイメージさせてしまい,授業中に子どもたちが活動する,ダイナミックに動きまわる,何か体験をたくさんさせなければならない,といった誤解を持たれる傾向がある.確かに体が活動的であるということも大事ではあるが,一番活性化してほしいのは子どもたちの頭の中「深い学び」である.
つまり,「子どもたちの思考が活性化し,深い学び」が授業の中で起きているかどうかが重要になる.
例えば活用の場面で「より積極的に自分の考えを他者に伝える」,習得の場面で「何のために習得するのか,自身にどのような成長があるかを自覚的に習得する」さらには「個別ではなく子ども同士で教え合う,教えてもらう」といった場面でも,子どもの思考は活性化している.このような学習の状況を授業場面の中に作っていくことがアクティブ・ラーニングにつながる.
そうすると,これまで国内で積極的に行われてきた授業改善の取り組みは,まさにアクティブ・ラーニングであると言える.特に小学校
の先生方は熱心に取り組まれており,例えば問題解決的な学習や発見学習,体験活動やグループ・ディスカッション,ディベートなどさまざまにある.そういったものもアクティブ・ラーニングに含まれる.
しかし,小・中・高等学校,大学と校種が上がるにつれて,より受動的になる傾向がある.これからは,これらをすべての校種の教室で実施し,質的にも担保していくことが求められてくる.さらに,授業の質の向上には,これまで行われていなかった新しい学習・指導方法を考えていくことも必要である.例えばジグソー法や思考ツールを使ったディスカッション,あるいはICTなどを積極的に授業に取り入れ,子どもたちがよりアクティブに学ぶ授業を考えることも求められる.アクティブ・ラーニングについては,前述の答申では,「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称.学修者が能動的に学修することによって,認知的,倫理的,社会的能力,教養,知識,経験を含めた汎用的能力の育成を図る.発見学習,問題解決学習,体験学習,調査学習等が含まれるが,教室内でのグループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である.」と定義されている.
2.ICTの効果的活用と学校学習の時間モデル
学習者には,それぞれに個性があり,知識の差や興味関心が違う.このような個人差について,教員はどのように考えたらいいか.
J・B・キャロル(Carroll)が1963年に提唱した学校学習の時間モデルでは,ある学習者は成功し,ある学習者は失敗を重ねてしまう現象が起こる原因を,子供の能力ではなく,図3-2の式で示すように学習目標を達成するための時間不足と考えた.このことにより,課題の達成に必要な時間をどのように確保し,どのような援助を工夫したらもっと短い時間で学ぶことができるかを検討することができる.つまり,キャロルは,「能力」から「時間」への発想の転換を行ったのである.
図3-2 J・B・キャロル(Carroll)の時間モデル(1)
また,J・B・キャロルは,図3-2の学習率に影響を与える変数を,5つの要素に分解して説明している.まず,「課題への適性」とは,ある課題を達成するのに必要な時間の長短によって表される学習者の特性を課題への適性とした.次に,「授業の質」とは,学習者が短時間のうちにある課題を学べる授業かどうかを授業の質として捉えている.質の高い授業の要件としては,少なくとも何をどう学習するかが学習者に伝わっていて,はっきりとした形で材料が提示され,授業同士が有機的に次につながっていて,授業を受ける学習者の特性に応じた配慮がなされていることが挙げられている.次に,授業の質の低さを克服する力を「授業理解力」と呼び,これが第3の要因としている.次に,学習に費やされる時間を左右する要因を次のように示している.
ある課題を学習するためにカリキュラムの中に用意されている授業時間を「学習機会」と呼び,学習に費やされる時間を左右する第一の要因と考えている.また,与えられた学習機会のうち,学習者が実際に学ぼうと努力して,学習に使われた時間の割合を「学習持続力」とする.以上の5つの変数を学習率の式にあてはめると図3-3のようになる.
図3-3 J・B・キャロル(Carroll)の時間モデル(2)
教員は,学習率を高めるためには,学習に必要な時間を分母の要因に注目して減らす工夫と,学習に費やされる時間を分子の要因に注目して増やす工夫ができる.J・B・キャロルの時間モデルに含まれている5つの変数は,教員として授業を工夫し,学習者一人ひとりが学習に費やす時間を確保し,また,学習に必要な時間を短縮していくためのチェックポイントと考えることができる.ICTの活用についても,どの変数に働きかけるのかという視点で考えると,ICT活用の発想が広がる.大規模公開オンライン講座のMOOCS(ムークス,Massive Open Online Courses)で代表される授業映像の場合は,授業時間外の利用によって,「学習機会」の拡大につながる可能性が大きいことがわかる.
【課題】
(1)アクティブ・ラーニングを授業の中に定着するためには,どのような
ICT環境が必要かグループで協議しなさい.
(2) J・B・キャロル(Carroll)が1963年に提唱した学校学習の時間モデルにおいて,学習率を高めるにはどのような授業改善が必要かグループで協議しなさい.
資料
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6.新たな評価とICT
【学習到達目標】
・学力の定義の変遷について説明できる.
・パフォーマンス評価とルーブリックの関係を説明できる.
情報社会は新しい課題を世界にもたらし,新しい解を生み出せる人間を求める.つまり,これからの社会は,一部の専門家があらかじめ有する「正解」を適用するだけで解決できるものではなく,問題を共有する者が知識やアイデアを出し合い,不完全にせよ解を出して実行する.そして,その結果を見ながら解とゴールを見直すことが求められている.このような課題に対して,社会全体が応えようとしている表れが,知識基盤社会,コミュニティ基盤社会への転換と進展,ICT の利活用である.
知識基盤社会とは,新しい知識やアイデア,技術のイノベーションがほかの何よりも重視される社会である.そのイノベーションのために,他者とのコミュニケーションやコラボレーション(協働,協調)が重視され,それらが効果的・建設的に行えるように,人と人を繋ぐコミュニティやICTの役割に注目が集まっている.
つまり,現在決まった答えのないグローバルな課題に対して,大人も子供も含めた重層的なコミュニティの中で,ICTを駆使して一人ひとりが自分の考えや知識を持ち寄り,交換して考えを深め,統合することで解を見出し,その先の課題を見据える社会へと,社会全体が転換しようとしている.ここでは,その情報社会とそれに応じて求められる資質や能力について考える.
1.目標分析
「目標分析」とは,目標の構造をとらえることで,目標分析をできないと評価規準をつくるのは困難である.つまり,目標自体は平面的で,それだけでは構造はわかりませんが,目標を分析して全体の構造がわかると,評価規準を作成することができる.
目標の構造がわかるというのは,評価規準のなかで,重要度を決定することである.つまり,教材の目標分析とは,「この単元で何を,どのように教えたいか,いつ指導したいのか,どのような順序で教えるのか,どのような方法で教えるのか,そのためにどのような教材を利用するのか」を決定することといえる.
次に,「それを指導するために,何がいるのか」を考え,そしてそれらを分類する事が重要となる.このように,これを教えるためには何が必要かを考えことを,「目標の構造化」という.目標の構造化をすることにより,教材の流れが出てくる.抽象的な教科全体のことを「目標分析」,教材単元のことを「目標分類」と分けて考えると,「目標分類」によって構造とともに授業の流れがわかる.
それぞれの学校や学級によって目標は変わらないが,目標の構造は,子どもの実態によって変わる.子どもの実態,教師の指導方法・指導力,学習環境など,そういうことを含めた授業研究がなされて初めて目標分析ができる.
2.教育目標の分類
日本で目標分析が行われるようになったのは,B.S.ブルーム(B.S.Bloom)の「教育目標の分類」の研究以降である.B.S.ブルームらが開発した手法は,教育目標を構造化し,マトリックス上に表現したものである.
具体的には,学習の「内容」を縦軸にとり,そこで目指される「学習行動(能力)」を横軸にすえたマトリックスを作成し,学習目標をその枠の中に割り付けていくという手法である.このうち,横軸に並べる学習行動(能力)については3つの領域,すなわち認知的領域,情意的領域,精神運動的領域が枠組みとして設定され,それぞれの領域においては目標に段階性があることを意識しながら目標を割り付けていくことが目指された.
B.S.ブルームによる提案が行われて以降,学習行動(能力)の段階性に関する研究が積み重ねられ,各教科で適用可能な形式へと発展していった.また,各国の教育の実情や文化・風土にあったタキソノミー(Taxonomy)を作ることが推奨され,日本の教育文化にあったタキソノミーづくりの試みも実際になされている(梶田,2002).
この教育目標の分類学という目標分析の手法は,あいまいになりがちな授業の目標を明確化し,子どもの学習の評価観点を明確化するという意義がある.また,教師にとっては,その授業の中で何を教えればよいのかが明確に意識化され,子どもの学習評価を,印象論ではなく,明確な観点を持って行うことができるというメリットもある.さらに,教育目標の高度化の方向も示すこともでき,そのための授業改善の方法を探ることもできる.
例えば,深い学びに授業に改善することは,B.S.ブルームの「教育目標の分類」における認知的領域の「内容」を豊富に含むことであり,そのための授業内容や方法を改善することが必要となる.
3.学 力
学生の学力が低下しているといった報道をよく耳にする.そもそも,学力とはどのようなものか.ここでは,まず学力について考えてみる.
授業を実施した場合に,学んだ内容が学生にしっかり身についているかどうか,最終的に評価しなければならない.その評価で測る対象が学力である.
学校ではどのような学力をつけるべきかを問う際に,その基本構造について合意形成していくことが有効である.ここでは柴田の提示している学力構造と相互関係から考えてみる.(柴田1994)
柴田(1994)は,学力を「学んだ力(基礎的知識・技能)」と「学ぶ力(自ら学ぶ力,学び方)」,そして「学ぼうとする力(学習意欲)」の3つの要素で構成されるとしている.「学んだ力」は学習の結果として身に着けた知識や技能を指し,それらを学ぶための必要な学び方,問題解決の方法を「学ぶ力」と表現している.さらに,それらを支える学習意欲を「学ぼうとする力」としている.
その上で,特に「学ぶ力(学び方)」を中心とした学力構成の重要性を述べ,「学び方の論理的側面」としての基本的な思考様式(推論的思考様式,実験的思考様式等)と「学び方の技術的側面」としての実践的知識(辞書の使い方,発表の仕方,情報機器の使用法等)という方法を教育内容として系統的にきちんと位置付ける必要性を強調している.
学力は児童生徒が社会人になっても役に立つ力であってほしいものである.別の見方でいえば,社会が変化すれば,必要な学力も変化することを意味する.
国際的な学力調査PISAを実施しているOECD(経済協力開発機構)は,これからの社会を知識基盤社会だとして,教育の成果と影響に関する情報への関心が高まり,「キー・コンピテンシー(主要能力)」の特定と分析に伴うコンセプトを各国共通にする必要性を強調した.そのために,OECDではプログラム「コンピテンシーの定義と選択」(DeSeCo)をスタートし,その後「キー・コンピテンシー」の概念を提唱した.ここで,提唱された「コンピテンシー(能力)」とは,単なる知識や技能だけではなく,技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して,特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力としている.
つまり,「キー・コンピテンシー」とは,日常生活のあらゆる場面で必要なコンピテンシーをすべて列挙するのではなく,コンピテンシーの中で,特に,①人生の成功や社会の発展にとって有益,②さまざまな文脈の中でも重要な要求(課題)に対応するために必要,③特定の専門家ではなくすべての個人にとって重要,といった性質を持つとして選択されたものと定義できる.
今後,このような個人の能力開発に十分な投資を行うことが社会経済の持続可能な発展と世界的な生活水準の向上にとって唯一の戦略であるとしている.そこで,OECD(経済協力開発機構)は,12か国の間で議論し「キー・コンピテンシー」として次の3つを提唱した.
○社会・文化的,技術的道具を相互作用的に活用する力
○自律的に行動する力
○社会的に異質な集団で交流する力
一方,日本の学校では,学習指導要領に教育内容が規定されている.学習指導要領が目指す学力は,1998年以降「生きる力」が掲げられ,次の3つの力の育成が重要とされた.
①基礎・基本を確実に身に付け,いかに社会が変化しようと,自ら課題を見
つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を
解決する資質や能力
②自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心な
どの豊かな人間性
③たくましく生きるための健康や体力
さらに,幅広い学力を育成するためには,どんな要素から成り立っているかをさらに詳しく把握する必要がある.1989年(平成元年)の学習指導要領では,全ての教科は「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」などの4観点に分けられている(国語のみ5観点,それ以外の教科は4観点).
教師はそれぞれの観点ごとに目標を設定し,学習者がその目標に対してどれだけ実現できたかを分析し,評価している.この評価方法は絶対評価で行われ,観点別評価とも言われている.学年末には,各必修教科,選択教科の観点別評価が,観点別学習状況として評定とともに指導要録にも記録されている.
○関心・意欲・態度
○思考・判断・表現
○技能
○知識・理解
ところが,2008年(平成20年)の学習指導要領では,学力について従来の4観点から次の3要素に再編された.特に,学校教育法第30条に,学力について次のように示された.
第三十条 小学校における教育は,前条に規定する目的を実現するために必要な程度において第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする.
○2 前項の場合においては,生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない.
ここで,第2項に示してある次の3項目を「学力の3要素」と呼んでいる.
○基礎的・基本的な知識・技能
○知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断
力・表現力等
○主体的に学習に取り組む態度
2020年には,児童生徒一人1台のタブレットPCが導入され,アクティブ・ラーニングなどの新しい学習の方法が導入されてくる.現在,学力観は現在大きな転換点を迎えているといえる.
3.学習目標と学習到達目標
21世紀型能力のような新しい学びには,新しい評価方法が必要である.学習結果の到達点を測る評価ではなく,学習の進み具合を捉え,次の段階に進むために今やっていることをどう変えたらよいか判断するための評価である.このような評価を学習の進行に合わせて行うためには,学習プロセスの記録を取り,分析・共有して次のステップを検討する強力なICT基盤が必要である.ICT基盤が強力であれば,教員はそのICT環境の維持や新しい評価方法に翻弄されることなく「新しい学びの構築」に集中することができる.
4.パフォーマンス評価と変容的評価
「パフォーマンス評価」とは,「パフォーマンス課題」によって学力をパフォーマンスへと可視化し,学力を解釈する評価法である.パフォーマンス評価は,「パフォーマンス課題」に取り組ませることで,子どもの学力を「見える」ようにし,「ルーブリック」という評価基準を使って評価する.したがって,パフォーマンス課題は,評価したいと思う学力ができるだけ直接的に表れるものにする必要がある.
また,「パフォーマンス評価」の利点として,従来のテストでは見えにくい「思考力」「表現力」などを具体的な表れとして見られることが挙げられる.例えば,算数で,思考の過程を表現させる課題を出し,式や言葉,図,絵などさまざまな方法を用いてもよいとすれば,子どもは自分なりに考え,表現しようとする.パフォーマンス評価では一つとして同じ答案はなく,子どもの思考や表現は実に多様だと実感できる.子どもの思考を理解するのに役立ち,子どもは「書く」経験を積むことができる.答案を発表し合えば,友だちの考えへの理解や,個性の自覚にもつながる.しかし,「パフォーマンス評価」は有効な方法であるが,「思考力」「表現力」を丸ごと測れるわけではない.あくまでも一つの課題に対する結果と考えることが重要である.「思考力」や「表現力」という力そのものを把握できる方法はないので,パフォーマンスから,その背後にある子どもの思考や表現の特徴を把握しようと努めることが大切である.
【課題】
(1) 知識・技能と資質・能力の違いについてグループで協議をして発表しなさい.
(2)各自の授業を取り上げ,パフォーマンス課題とルーブリックを作成してみなさい.
(3)ルーブリックを児童生徒に作成させることのメリットをグループで協議しなさい。
資料
動画資料
7.ワークショップ
8.学校における情報セキュリティ及びICT環境整備等に関する研修会
1.教職員対象版
2.教育委員会対象版
9.令和5年度あいちラーニング推進事業 公開授業並びに第1回研究協議会
令和5年11月17日(金)
資料
1.あいちラーニング推進事業プレゼン(PDF)
2.あいちラーニング推進事業プレゼン(PPTX)
10.令和5年度あいちラーニング推進事業 第2回連絡協議会
令和6年1月25日(木)
資料
1.令和5年度あいちラーニング推進事業第2回連絡協議会プレゼン(PDF)
2.令和5年度あいちラーニング推進事業第2回連絡協議会プレゼン(PPTx)
3.学びの構造化
【高大連携公開講座】総合的な探究の時間【伊那西高等学校】
目 的
総合的な探究の時間として、伊那市の歴史を学び、伊那市の良さを実感し、それらをデジタルアーカイブすることにより、伊那市文化資源を再発見する。また、伊那市の地域課題を RESAS(地域経済分析システム)で調査し、
エビデンスを元に地域課題を分析し、これらの地域課題を解決する方法を探り、そのためにデジタルアーカイブを活用しシティプロモーションビデオを新たに創造する。
デジタルアーカイブとは
① 文化はどのように記録するの
② 地域文化とデジタルアーカイブ
③ 沖縄おうらい
e-Learning講座
第1講 デジタルアーカイブの基礎
1.目 的
デジタルアーカイブは、「デジタル」と「アーカイブ」という言葉からできた和製英語と言われています。デジタルアーカイブとは何か? デジタルアーキビストに必要な能力は何か?ここでは、言葉の意味と発展の歴史から、基本的な考え方を理解し、今後のデジタルアーカイブの方向性を考えます。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブとは何か説明できる。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたかについて具体例をあげ説明できる。
③ デジタルアーキビストに求められている能力について具体的に説明できる。
3.課 題
① デジタルアーカイブとは何か自身の立場で説明しなさい。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたか説明しなさい。
③ デジタルアーキビストに求められている能力は何か自身の立場で説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの基礎
5.動画資料
第2講 デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
1.目 的
デジタルアーカイブの利用は、資料の提示や提供から始まり、課題解決、知的創造等の処理へと進みます。またデジタルアーカイブを活用し、新しい「知」の創造を求め、さらに新しい「知」と人々の経験を付加し、新たな知的活動へと発展します。ここでは、デジタルアーカイブの開発と活用プロセスについて考えます。
2.学習到達目標
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明できる
②資料の選定評価について説明できる。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明できる。
3.課 題
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明してください。
②資料の選定評価の課題について説明してください。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明してください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
5.動画資料
第3講 デジタルアーカイブの評価とメタデータ
1.目 的
デジタルアーカイブは、対象とする資料(情報資源)の分野も多岐にわたり、プロジェクト規模なども異なるため、それぞれにあわせた評価手法が求められます。そこで、本講では、デジタルアーカイブの自己点検ツールとして考案された「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容を把握し、その評価項目の中でも重視されているメタデータについて、記述のための国際標準、国際指針として制定されている事例から学びます。
2.学習到達目標
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容について説明できる。
② 記述のための国際標準、国際指針などの事例について説明できる。
③ 資料(情報資源)のメタデータ記述ができる。
3.課 題
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の評価項目の内、あなたが重要だと思う項目について、なぜそう思うかを含めて説明してください。
② 具体的に何か資料(情報資源)を一つ取り上げ、その資料のメタデータ記述項目を設定した上で実際の記述を行ってください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの評価とメタデータ
5.動画資料
第4講 デジタルアーカイブの利活用
1.目 的
デジタルアーカイブは、1990年代の初期から、過去から現在の資料をデジタル化し、次の世代への伝承と現状での利活用を目指して開発が進められてきた。デジタルアーカイブの基本は、過去~現在の資料の収集・保管、デジタル化、さらに現状での利活用と次の世代への伝承である。
過去~現在の各種資料を収集・保管し、次のように使われる。
①次世代へのデジタルコンテンツの確かな伝承
②国内外のデジタルコンテンツの流通と利活用
ここでは、図書館や博物館等におけるデジタルアーカイブの利活用について考える。
2.学習到達目標
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明できる。
3.課 題
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの利活用
5.動画資料
第5講 デジタルアーカイブによる地域活性化
1.目 的
知識基盤社会においてデジタルアーカイブを有効的に活用し,新たな知を創造するという本学独自の「知の増殖型サイクル」の手法により,地域課題に実践的な解決方法を確立するために,地域に開かれた地域資源デジタルアーカイブによる知の拠点形成をする。このことにより,地域課題に主体的に取り組む人材を養成する大学として,伝統文化産業の振興と新たな観光資源の発掘並びにデジタルアーカイブ研究による地方創成イノベーションの創出について具体的に考える。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブと地域課題解決について説明できる。
② 地方創成イノベーションの創出について具体的に説明できる。
3.課 題
① 飛騨高山匠の技デジタルアーカイブにより,地域の文化産業を振興するための方策を3つ挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブによる地域活性化
5.動画資料
※本映像は本学の学部の授業(情報の管理と流通)の内容の一部を利用して提供しています。
6.テキスト資料
デジタルアーカイブによる地域活性化
第6講 デジタルアーカイブと知的財産権(1)
1.目 的
デジタルアーキビストとして、アーカイブを計画し、そして資料収集し、そして構築し、そして利用許諾し、また運用していくという、こういったときに必要な権利処理について説明する。
2.学習到達目標
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明ができる。
② 著作者の権利について具体的に説明できる。
③ 著作権の契約書を作成できる。
3.課 題
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明しなさい。
② 著作者の権利について具体的に説明しなさい。
③ 著作権の契約書を作成しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(1)
第7講 デジタルアーカイブと知的財産権(2)
1.目 的
著作権について、自分の立ち位置とは関係ない形で第三者的に実践の試みの良い部分と課題について理解を深め、基本的な理解を図った後に、実践の中から法律など制度的な課題について考えます
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明できる。
② 著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて
説明できる。
3.課 題
1.デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明しなさい。
2.著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(2)
5.動画資料
6.テキスト
【テキスト】デジタルアーカイブ概論
7.資料
① 文化資料はどのように管理流通するの?
② 文化はどのように記録するの
③ 地域文化とデジタルアーカイブ
④ 情報の発信と伝達
⑤ 個人情報の保護と知的財産権
⑥ 【参考文献】デジタルアーキビスト入門:デジタルアーカイブの基礎 岐阜女子大学デジタルアーカイブ研究所 | 2019/5/16
⑦ 【参考文献】地域文化とデジタルアーカイブ 岐阜女子大学デジタルアーカイブ研究所 | 2019/5/16
8.動画資料
第8講 文化(対象)の理解
1.伊那市の文化を探り、伊那市の文化について理解する。
【目的】
・伊那市の地域文化のビデオを視聴し、伊那市の文化を分析する。
・伊那の地域の再発見
【講演】伊那の歴史をデジタルアーカイブする
【講師】高遠町歴史博物館館長 塚田博之先生
資料
2.伊那市文化遺産デジタルアーカイブ
② 建福寺
③ 桂泉院
⑤ 深妙寺
⑥ 小出城跡
3.動画資料
4.資料
① 伊那市の文化遺産
② 【研究】デジタルアーカイブにおける地域文化遺産の伝承に関する研究 ~高遠石工のデジタルアーカイブ~
第9講 伊那市の地域の課題から地域課題の解決方法を探る
1. RESAS の使い方説明
2. RESAS による地域の課題を抽出
3. 地域の課題の解決方法を探る
4.伊那市のプロモーションビデオのコンセプトの企画
5.資料
① RESAS(地域経済分析システム)
② 総合的な探究の時間(例)
③ 伊那市活性化プロジェクト(PPT)・・・ダウンロードして活用してください。
④ 伊那市活性化プロジェクト(PDF)
6.動画資料
第10講 プロモーションビデオ制作
学校の施設をデジタルアーカイブして学校
紹介プロモーションビデオを制作してみよう。
第11講 シティプロモーションビデオの企画
1. シティプロモーションビデオとは
2. 絵コンテ・構成表の制作
3.制作計画の作成
4.資料
① 伊那市活性化プロジェクト
第12講 シティプロモーションビデオの制作
(例)【講義】企業とデジタルアーカイブ
第12講 シティプロモーションビデオを発表してみよう
① 審査票(Excel)
第13講 シティプロモーションビデオの評価・改善
資料
① 高・大生のための利活用入門テキスト①
② 高・大生のための利活用入門テキスト②
報道
第14講 シティプロモーションビデオ作品(2023年度)
第15講 発展講座
■ ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
国立情報学研究所名誉教授 高野明彦氏
➝ プレゼン資料:ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
■ 世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
東京大学大学院情報学環 時実象一氏
➝ プレゼン資料:世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
■ デジタルアーカイブと法制度の現在地点
骨董通り法律事務所パートナー弁護士 福井健策氏
➝ プレゼン資料:デジタルアーカイブと法制度の現在地点
伊那西高校と郡上北高校のオンライン接続による発表会
日 時:2024年1月29日(月)
伊那西高校1時限目~3時限目実施
(①9:25~10:15 ②10:25~11:15 ③11:25~12:15)
※特別時間のため、休憩時間等はフレキシブルに対応可
【伊那西高校】・・・7グループ 【郡上北高校】・・・4グループ
各グループ 準備1分 説明1分 動画3~4分 評価用紙記入3分
→ 10分回しで設定
———————————————————————-
1月29日(月)日程(案)
9:25~ 接続確認
9:50~ 開会の辞(伊那西高等学校)
10:00~ 伊那西高校発表①
10:10~ 伊那西高校発表②
10:20~ 伊那西高校発表③
10:30~ 各校代表挨拶
10:40~ 郡上北高校発表①
10:50~ 郡上北高校発表②
11:00~ 郡上北高校発表③
11:10~ 郡上北高校発表④
11:20~ 伊那西高校発表④
11:30~ 伊那西高校発表⑤
11:40~ 伊那西高校発表⑥
11:50~ 伊那西高校発表⑦
12:00~ まとめ・講評
12:10~ 閉会の辞(郡上北高等学校)
伊那西高校と郡上北高校のオンライン接続による発表会
時刻: 2024年1月29日 09:00 AM 大阪、札幌、東京
参加 Zoom ミーティング
https://us02web.zoom.us/j/85786605327?pwd=ZVFUalUyaG1WdVNtY1R4cFlCdkprQT09
ミーティング ID: 857 8660 5327
パスコードを設定する: 863467
評価用紙
R5年度 伊那西高校と郡上北高校のオンライン接続による発表会 評価用紙
令和5年度 伊那市シティプロモーション作品
【報告会】令和4年度文部科学省委託事業 幼児教育における人材確保・キャリアアップ支援事業報告会
Reborn infant education
〜幼児教育から小・中・高等学校までの教育をReborn(リボーン)する〜
本成果報告会では,幼児教育から小・中・高等学校での教育において,校種を貫く,子供が身に付ける資質能力の柱となっている「主体的・対話的で深い学び」。この「主体的・対話的で深い学び」の実現に向け,学びのデザインやそのために必要な教員に求められる資質能力はどのようなものであるのかについて,考えていきます。
また,教員がその資質能力を身に付けるためには,どのように学び続けることが必要であるのかについて,本学が「インストラクショナルデザイン理論」を軸に開発した「自律的なオンライン講座のデザイン」や「教えないで学べる学習環境」の成果を報告することで,考えを深めていきます。
学長挨拶
基調講演
・主体的・対話的で深い学びを実現するために
講師:文部科学省初等中等教育局 幼児教育課長 藤岡謙一 氏
映像資料
講演資料
➝ 【プレゼン資料】主体的・対話的で深い学びを実現するために
成果報告
・インストラクショナルデザインと学習環境
講師:岐阜女子大学 教授 久世 均
映像資料
講演資料
➝【プレゼン資料】インストラクショナルデザインと学習環境
➝【e-Learning】教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザイン
➝【e-Learning】幼児教育コーディネータ概論
➝【e-Learning】小中連携教育コーディネータ概論
令和5年度の取り組み
・「幼児教育コーディネータ」養成講座並びに「小中連携教育コーディネータ」養成講座について
講師:岐阜女子大学 准教授 齋藤陽子
映像資料
講演資料
➝【プレゼン資料】幼児教育コーディネータ」養成講座並びに「小中連携教育コーディネータ」養成講座について
➝【研究開発事業】現職教員の新たな免許状取得を促進する講習等開発事業
➝【研究開発事業】幼稚園教諭免許法認定講習等の在り方に関する調査研究
R4 成果報告会チラシ
資 料
1.幼児教育コーディネータ概論_テキスト完成版最終(第2版)
2.小中連携教育コーディネータ概論_テキスト(第1版)
3.幼児教育コーディネータ概論 e-Learning
4.小中連携教育コーディネータ概論 e-Learning
デジタルアーカイブin岐阜2022
~ 地域の文化資源を守り、知識基盤社会を支える人材の育成 ~
■ 日 時:令和5年2月11日(土) 9:00~12:00
■ 講 座:デジタルアーカイブ映像
■ 対 象:社会人
■ 募集期間:令和4年11月1日(火)~ 令和5年1月31日(火)(申し込みは終了いたしました。)
■ 趣 旨
社会のDX化が進展しており、デジタルアーカイブを通じた地域情報の収集と発信による地域活性化やGIGAスクールによる学校での活用が広がっています。
国は内閣府が中心となってデジタルアーカイブ社会を実現するため、全国のデジタルアーカイブをリンクするジャパンサーチの運用を2020年に開始し、地域の情報が続々提供され、活用の可能性が拡大しています。
今年のデジタルアーカイブin岐阜では、日本のデジタルアーカイブを牽引する3人から変貌する現状を紹介し、自治体、教育機関、博物館、図書館で取り組まれているDX化に、デジタルアーカイブを通じて取り組む際のアイデアを提供していただきます。
■ プログラム
■9:00~9:10
デジタルアーカイブ研究所長(岐阜女子大学教授) 久世均
➝ プレゼン資料:デジタルアーカイブin岐阜2022
ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
国立情報学研究所名誉教授 高野明彦氏
➝ プレゼン資料:ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
内 容
1.ジャパンサーチとは
ジャパンサーチというのは国の真ん中辺でやっているサービスなのですが、企画は内閣府の知的財産戦略推進事務局に、推進委員会及び実務者検討委員会というのが置かれまして、大体7年ほど今は活動しています。
ここでデジタルアーカイブという新しい仕掛けを日本の中にどういうふうに根づかせていくのかという議論をしております。私はこの実務者検討委員会というものの座長です。
実際のサービスがジャパンサーチという名前の検索サービスが上がっているのですけども、これについてはNDL、国立国会図書館というところが責任を持って運営しているという形になっています。
ただ、国会図書館が美術館、博物館のデータをいろいろ集めたりするというのはなかなかやりにくい面もありますので、直接だとやりにくい面もあるので、この委員会でそういう活動をするということになっています。
国の中のいろんなところでデジタルアーカイブというのが小さいものも大きいものも構築が進んでいるわけですが、それらを一覧できるような場所をつくろうということがまず、第一の目的です。
ポンチ絵を描いてありますけども、アーカイブ機関というのがあって、これは何をアーカイブと捉えるかっていうことによって随分違うのですが、デジタルアーカイブというのにとらわれずに考えていけば、博物館、美術館っていうのは大体物をためて置いておく場所ですからアーカイブの機関だろうし、文書館みたいな公文書館に代表されるような文書館はもちろん名前のとおりアーカイブすることが目的の機関なわけです。
あるいは大学とか研究機関っていうのは、一義の目的は教育ですけども、教育の中にはいろんな資料を活用したり、それを集めて初めて分かることについて深めていったりするということが含まれますから、大学の研究を進めていくとそこに何かが集まってくると。これをある人はアーカイブと呼ぶという形なわけです。
これまでアーカイブっていうのはそういう物理的なフィジカルなコレクションっていう場合が多かったわけなので、なかなか遠くからは使いにくくて、研究者っていうのは大体そういう物があるところ、資料があるところを全国あるいは海外まで出向いて、それを調べるっていうのが普通のスタイルだったのですが、これだけデジタル化が進んで、当たり前にデジタルの技術を使えるということになりましたので、だったら貴重な資料であってもみんなと共有したい、世界と共有しても構わないというようなものであればどんどん公開して、それを相互に利用し合うというような形が理想的というふうになってきております。
それをジャパンサーチでは加速したいというのがもともとの願いです。また、片側に活用者がいて、アーカイブ機関というのを、自分のホームのアーカイブもあるかもしれないですが、大体はアウエーといいますか、知り合いを頼ってそういうところにたどり着いて調べさせてくれということでこれまでやってきたと思うのですけども、そういう人間を介さなくても資料と出会う機会というのを提供したいというのがジャパンサーチの目的です。
ですから活用者とそのアーカイブ機関の間に立って、何かうまく探せる仕組みを提供しようと。探すっていうのが、グーグルがはやって以来、何か研究自身は探すことみたいに思われるかもしれないですが、探した先のことをするのが多分活用者にとっての本当に重要なことですから、どこにどんなものがあるよっていうことを一覧できるということが、そういうアイデアを生み出す一つのきっかけにもなるということで、この真ん中をやりたいということです。
しかし、ちょっと考えれば分かるのですが、ここが、アーカイブ機関が例えば1000館ほどがあって、それをじゃあ束ねましょうといいますか、そこにどこがどういうものを持っているのかを総覧できるようにしましょうとなりますと、この真ん中のサービスはその1000館と直に付き合わなきゃいけないことになるわけです。そうすると例えば契約書を一つ交わそうとすると、1000部の組織とやり取りをするということで、この真ん中のこうサービスを上げるより前に疲弊してしまうというようなことが起きます。そこで工夫として考えたのがこのつなぎ役という場所です。すなわち似たような組織は似たような契約をして、似たようなメタデータを集めよう。あるいは集める前に、メタデータの流儀みたいなものがちょっとぶれていたら分野ごとに整理をしていただいて、分野でまとめたものを頂く。そこと一発契約を交わして提供いただくほうが合理的だねということをジャパンサーチの立ち上げ時には考えました。
これは我々のアイデアというわけじゃなくて、後で多分、時実さんがお話しされると思いますけど、ヨーロピアーナ(Europeana)というヨーロッパを中心に進めているこういう同種の取組があるのですが、そこではアグリゲーターと呼んで、何かを集めてきてアグリゲーションして提供するというような形で、ヨーロピアーナはアグリゲーターとだけ付き合っていけば、その先の何千という組織とデータをやり取りできるよっていうような形をつくられて、割とうまくいっているというのを我々は知っていたので、僕たちもジャパンサーチを上げるときにそれに類したことをやろうということで。ただ、アグリゲーターというと片仮名だっていうこともありますけど、日本語でいうと何なのか分からないですが、何か収奪されるような気がすると。アグリゲーションビジネスなどというビジネス書が本屋に行くといっぱい並んでいますけども、並んでいた時期でしたが、大体割とアグレッシブといいますか、えっ、そんな言葉にされちゃうの?というような話が多いので、アーカイブ機関がそれで警戒されては元も子もないので、そうじゃなくて柔らかく日本的に、つなぎ役をするんですという形で名前もつけました。
そこで、この3つの構成、活用者がいて、アーカイブ機関がいて、それをジャパンサーチに取り次いでいくつなぎ役がいる。場合によっては活用者からの要望に応じて、このつなぎ役が整理の仕方なども工夫していくということで、この3つはそれなりに関係づいているという形になります。具体的にはこのスライドは後でダウンロードできるようにすると思いますが、この辺のリンクをたどっていただけると、政府のいろんなものが見えると。ちょっとクリックします。こんな報告書とか、取りまとめサイトみたいなものにたどり着けると思います。こんな名前で引くと、大体7年分の資料が出てくると思います。
次に行きますと、そうやって立ち上げたサイトがあると。僕は割とこういう話をするときはライブデモをする。スライドを一枚も作らずにやるっていうのが好きなんですけども、そうやると大体どこかに引っかかって時間を取られて最後までたどり着けないっていうことが多いので、今日はちょっと自制して、最後の最後で少しデモをするかもしれないですが、スライドで頑張っていこうと思っています。
ちょっと調べてみますとジャパンサーチというのは2019年2月に試行公開したんですね。仕組み自身が大体動くのかとか、こんなでこぼこ感のあるデータの集め方でうまく役に立つかしら? フィードバックを頂こう、ということでこれをやりました。1年半後ぐらいですかね、1年半後ぐらいにちょうどコロナ真っ盛りの夏、8月25日だったかに正式版公開ということにいたしました。ここでデータベースとして、データベースっていっても大もあれば小もあるんですけど、何十万も入っているデータベースからほんの数百しか入っていないデータベースまで108ぐらいのところからデータが集まって、メタデータの件数でいうと2000万件を突破するぐらいになったと。2000万件といっても本のカタログだとか、それから公文書館のように、タイトルだけは見せられるけども、公文書の本文は公文書館に来ないと見せられませんというような、そういうものも含めてのものなので、それほどリッチな感じでは当初はなかったですけども、それでも2000万件を突破したっていうのは一つ大きいメルクマールになったということで、ここで正式公開というふうにしました。
公開当日とかは何万も何十万も来たのですけども、大体平均すると6000件ぐらい。もうちょっと行ってもいいかなっていうのが当初感じたところですが。そして2年半ぐらいたっているのですが、昨日調べで見ると197データベースと。データベース、今度はどちらかというと小さいものが増えたのですけども、地域の発信のようなデータベース、今日の多分セミナーの全体のテーマはその辺にあるのかなと思っていますが、地域に埋もれているような資料を整理して上げてくるというような特徴的なものをどんどん入れましょうということで、ここ1~2年ぐらいは、地域発信においては、デジタルアーカイブを優先的に入れているので、件数はかなり増えて197データベースということになっています。
サイトに行くとどういう197かっていうのが一覧できるようなページがありますので、ぜひ、興味があればそういうところをご確認ください。メタデータはそれほど増えてなくて、大口でないというところで、それでも600万件ぐらい、700万件かな、そのぐらいは増えて、アクセス数も倍以上にはなっているというような状況です。もう一桁ぐらい行ってもいいかなというふうにつくっている側というか、運営している側は感じていますけども、まだちょっとリーチできていない部分が多いかなというふうに感じています。今日こういう機会をいただいたことで、非常にこの辺を盛り上げていくのに役に立つかと期待しておりますので、ぜひ皆様も触ってみてください。
このポンチ絵ですけども、こういう活用者、アーカイブ機関、つなぎ役っていう三者一体で、これがぐるぐる回り出すと、成果物がいろいろな活動、社会的な意義のある、防災に役に立つとか、もちろん教育に役に立つとか、学術研究。今日ここにお集まりの方々は、まずはこの辺が一番のセンターなのかもしれませんが、恐らく社会人で入られている方などは、多分もう一つ地域活性したいよとか、防災に役立てたいとか、深い中長期の目的があってこういうところに、デジタルアーキビストになってみようかなということで入られているんだと思いますけども、そういうところにつなげていくというのが僕たちの目的でもありますので、ぜひ使ったり、ちょっと眺めてみて、こういうところが足りないんじゃないかというようなことがあればフィードバックをお願いしたいと思います。
連携と一言で言いますけども、なかなか一筋縄ではいかないですね。190もいろんな組織があって、歴史的な経緯があってためてきたものですから、整理の仕方も無手勝流といいますか、自分たちがこれまで紙の帳簿でやってきたことをそのままエクセルに置き換えて、エクセルでずっとやっているとか、あるいはシステムを導入したとしても金額的な折り合いから非常に単純なことしかできないシステムしか入れられなくて、それに合わせてデータ自身もつくられるということで、もうちょっといろんな情報を入れたいのだけども、なかなか整理がついていませんというようなところが非常に多いわけですけど、それをまとめ上げる過程で少し底上げするといいますか、割とうまくいっているところに合わせて、この機会に頑張ってじゃあメタデータ、あるいは関連情報みたいなものを整備しながら上げていきましょう、あるいはつないだ後でどんどん充実させていこうというようなことにつながることを目指してやっているので、模範役が何かそうでもない人に合わせてデータがどんどん、たまっていっちゃうといいますか、整理された状態が未整理の状態に引きずられていくっていうことはしたくないですね。
そこで、このつなぎ役っていうのが模範演技の人は模範演技のままつながっていただいて、あとはまだちょっと準備が整っていない人たちも、そこに順次倣っていくような仕組みっていうのをちょっと考えたいわけです。というので、まずはその模範演技ができそうなところ、国立国会図書館自身だとかですね。これは本の分野では模範演技をしているので入っていただくとか、文化庁の文化遺産オンライン。これも僕は立ち上げ時から関わっていますけども、これはそれなりに多くの博物館、美術館の情報を入れていると。少なくとも国指定文化財は全部ここで総覧できるようにしてありますので、そういう意味では一つの模範的な文化財の整理の方法と考えられるわけです。他には、科博などはサイエンスミュージアムネットという科博だけじゃなくて科学館、科学博物館のネットワークというのがありまして、そこで非常に専門的な標本データの収集みたいなことを整理されておりますので、そういうところとか、こういう模範的なところにまずは立っていただいて、そこがもう既に持っているものを入れていただく。大抵は1館の情報ではなくて、その先に何十館、何百館というものを控えているようなところになっています。
ところが分野によってはこういう図書でもないし文化財、指定文化財とも言えるようなものではないし、科学者が専門的に使う標本などでもないという場合はどこにも引っかからないわけですよね。そうすると、つなぎ役不在ということがほとんどの場合ここになるわけです。
あるいは文化財は文化財なんだけども、文化庁のこういう整理にちょっとなじまない、学術的なデータベースになじまないっていうような人は、やはり文化遺産オンライン経由っていうのはちょっと無理で、直接そういう専門的な仲間同士くっついて入れていきたいというようなことがありますので、そういう状況で、下ではそういう個々の状況に合わせてどうやったらうまく、データのこだわりは生かした上で、発見性はそれなりに担保されていくというようなことをしたいということを考えています。
個々のデータのこだわりを生かすと、大抵の場合は細かく分かれて、項目が例えば何とか名称、発掘場所、発掘時期、発掘方法とかって、埋蔵文化財を掘った記録を残すためには非常に必要な項目なわけですけど、そうじゃない掘られたものを整理するには、必ずしもそれは必要じゃないかもしれない。あるいはこの辺の工房でつくられた工芸を整理する枠組みとはちょっと違うわけですよね。ですから同じ文化財といっても、大分こだわりが深くなると言葉が通じなくなるということをよく経験するわけですが、ここを何とかうまく勘案しながら集めていくという苦労がありました。
現在はこれもいろんなパターンがありますと書いて、それなりに実例もあるんですけども、こういうデータベースを同分野でうまくまとめられる、これはかなり理想形ですが。あるいは同じ組織だけども、こだわりの違うものをもう既に持っているので、それをうまく集めていくとかですね。それから同じ分野、テーマの資料を様々な団体・個人から収集してっていって、ちょっとずつみんなが持っているようなものを収集して、割とボリュームとして意味のあるようなものにしていくというような、収集すること自身がまた一つの活動になるようなつなぎ役の立ち方とか、それからデータベースは持っていないのだけども、これはかなり、件数として本当は多いわけですね。
我々の連携しているのは200弱ですけども、多分、1000とか2000とか国全体を眺めればいろんなものがあるはずで、研究者が1人いれば昔はデータベースが一つできるというようなことを言っていた時代もありますので、たくさんあるわけですが、これを何とかうまく入れていきたい。だけどそういうときにデータベースを個々の施設が持っていない。データだけあるという、データベースって言っても発信するようなデータベースを持っていないっていうようなケースもあるので、そういうときには、逆に言うとジャパンサーチ自身がそういう初めてみんなが触ることができる発信のプラットフォームになるような形で、データのやり取りを工夫するというようなことを考えたりもしています。
これは今後状況に合わせて、さらに柔軟な対応を迫られるかもしれません。でもこういうきめ細やかな対応を国会図書館、本当に頭が下がるぐらいなんですけども対応していただいていて増えてきたということになります。
つなぎ役として、今の何パターンかあるつなぎ役のいろんなパターンとして、こういう31機関ですかね、ここはそんなに増やさないように、先ほど言った契約の件数がこれに縛られますので、ここが何百になっちゃうともうそれだけで事務手続が大変になってくるので、できるだけ抑えながら参加データベースは増やしていくっていう努力をしているんですけども、こういうところは立っていただいて進めていると。多分かなり名のある、もちろんジャパンサーチなどよりも随分前からこういう活動の意義を見いだして、実際に進めておられたような組織になっています。
2.活⽤基盤としてのジャパンサーチ
紙とか実資料を集めるだけじゃなくて、部分的にはカタログの公開も既に行われているような組織というのがここになっています。こういう人たちが味方になってくれたっていうことが、今回ジャパンサーチ、それなりに成功っていうのもおこがましいですけども、それなりにうまくできて、日本ではほかにライバルがいないようなサービスになったというふうに思っていますが、こういう方々の蓄積を我々にちゃんと出していただいたといいますか、連携していただいたということになります。
ちょっと余談になりますけども、国のこういう委員会っていうのは、大抵は有識者会議とか、僕も有識者であんまりないかもしれないですけど、有識者会議という名前のところがいっぱい出ていますけども、大抵そういうところは言いっ放しで、コメントいただいたということが役人にとっての一つの言い訳になるといいますか。だからこのまま進めますねっていう承認のための一つのステップぐらいにしか考えられていなくて、なかなかそこで意思決定するっていうことは難しいわけですけど、今回は先ほどの実務者検討委員会だったかな、何をやるのか分からないような名前にしていただいて、そこには本当に実務者だけを集めていただいたんですね。だけをっていうのはおかしいけど、各組織のうち館長とか副館長が来ても現場のことはほぼ分かっていないので、そういう方々で議論しようっていってもなかなか本当の議論にならないわけです。データを出してくださいって言ってもどうやって出したらいいか分からない人が、じゃあ出しましょうって返事をしても実際に現場は動かないっていうことが僕らはいろいろ経験していたので、そうじゃなくて本当にデータをグリップしていて、館の方針などもこういう目的に合わせて改善していく、改定していく意欲もあるような方々に集まっていただいて。その代わり個々の職場が抱えているいろいろな実情、こういうものは博物館の分野ではちょっと無理ですよとか、写真の分野だとこういうところをクレジットしていないと、もうとても一枚も見せられませんとか、そういう個々のドメインの実情とかについてみんなが一つのテーブルで話せるような場所っていうのを目指して。
だから最近は割とルーチン化しているので、それほど腹を割った本音の議論というのが出ているかどうかちょっと怪しいですけども、最初のほうは何ができるのかちょっと分からないっていう状況だったこともあり、各分野の実情を聞きましょう、あるいは委員じゃない人も呼び込んで毎回毎回そういうもっと深い実情について報告いただいて、それについて皆さんは自分たちの館を顧みながらどうやっていったらいいかっていう相場を考えていくっていうようなことをしました。
そういう枠組みというのが結構重要で、だからこれ、データベースでデジタルアーカイブだから人が大していなくてもコンピューター同士がつながればうまくいくでしょうとか、ファイルだけ送っとけばいくでしょっていう話ではやっぱりないんですね。それを支えて、そこにそれなりの情熱をつぎ込んでいる人たちが、じゃあ手を携えましょうと。それは面白いかもしれない、自分たちにとってもプラスになるし、間違いなく集まったところでは我々のサービスだけじゃないプラスアルファが得られそうだねと、新しい広場ができそうだっていう期待で皆さんご協力いただいているのだと思います。というので、その輪を広げていきたいので、ぜひ今日集まった皆様でそういうものがちょっと思いついたりする方は、何でジャパンサーチにこれは入っていないんですか?というようなことを呼びかけていただいて、利用者の立場から、あるいは運営に関わる立場からぜひ後押ししていただければと思います。
これがさっきの数とちょっと違うのですけど、ちょっと探したらこういう表になっているのはこれしかなかったので、ちょっと2年前ぐらいですけど、1年半ぐらい前ですが、141データベースのときのブレークダウンを出しています。これ、分野って書いてあるのはそれほど厳密ではないです。国会図書館サーチで持ってきたから書籍関連だねとか、そんなふうになっていますが。書籍っていう一般書籍みたいにして集められているもの。でも、よく見ると青森県立図書館デジタルアーカイブとか。図書館だからいいのかな。この中に県史が入っていたりするのかな。地域資料はちょっと切り出していますね。図書館とか役所が管理しているような本でも、地域資料ということでそれなりの追加情報がついて、データベースでまとめられているものはこういう、青森県史デジタルアーカイブみたいな形で切り出されているとか、こういうデータベースの単位で何かラベルというか分野を規定するとすればこんな感じかなと。これは、美術と人文は完全に別とかそういうわけではなくて、美術、データベースと言われる中に入っているものが、実は書籍でも関係しているとかその逆とか、いろいろあるわけですけども、こんな観点で集められ、つくられたデータベース、デジタルアーカイブが集約されつつあるということになります。
かなり広がりがあるということは見ていただいて分かるかなと。どうしてもこういうデータベースとかデジタルアーカイブっていうと、写真がきれいなものとか、そういうところが自慢をするので、そういうコンテンツで例示してこういう新しいものができましたっていう話をするので、どうしてもビジュアルなものが何枚入っているかとかに引きずられがちで、文化財なら文化財がいっぱい集まっているんだろうなと。それ以外の分野はあんまり関係ないのかなって思われるかもしれないですが、ジャパンサーチに限って言えば、あまり、画像が必ずなきゃいけないというようなことは要請していません。
いや、ぜひ入れてもらいたいっていうのは実はあるんですけども、例えばサイエンスミュージアムネットっていう、これは先ほど言った科博を中心とするネットワークですが、ここは世界の標本のネットワーク、標本コレクションのネットワークにも参画しているジャパンのノードなわけですが、そうするとラテン名とか非常に専門的な情報がついている標本の一覧だったりするんですけど、カブトムシだけで何千もエントリーがあるような。ところが写真が一枚も、これ、ジャパンサーチには提供されていないんですね。向こうに飛んでいってもほぼほぼ写真はないんじゃないかと思うのですが。専門家同士は写真が見えるような関係っていうのを築かれているようですけど、この分野ではまだそういうものは一般的でないということで、ラテン名の公開という専門家情報の公開にとどまっているわけです。
こういうのは素人から見ると、その辺で見つけた珍しそうなカブトムシをこれは一体何なんだろうっていうのを判定したりする情報にこの辺が役に立つといいのにというふうに思いますから、写真の1枚も2枚も入っていたらいいのにとは思いますが、なかなかそれは実現していないところです。
それぞれに分野に事情がありますので、仕方がないといえば仕方がないですが。舞台芸術みたいなものも、これはenpakuですかね、早稲田の演劇博物館等から演劇系のものもいっぱい入ってきます。ですから演劇系っていうのは当然まだ著作権が生きているものが非常に多いですし、そういうもののデータっていうのがこういうところでさっと見えるかっていうと、ビジュアルなものが見えるかっていうとそうでもないということです。ただ、舞台芸術などは今日もお話しされる福井さんなどが中心になって、舞台芸術のデジタルアーカイブ化っていうのはずっと進んでおりますので、福井さんの話に出てくるかどうかはちょっと分からないですが、分野ごとにかなり予算もついて国が応援すればそういうものも進むんだなっていうのを今まさに実証してもらっているところですので、そういうのはいずれここに充実して入ってくるんじゃないかと期待しているところです。福井さんなどとはそういう話もよくしているわけです。
3.メタデータの連携⽅法
次ですが、じゃあいろんなところで集まってくるものをどういうふうに、どの範囲をジャパンサーチはじゃあ集めているのかっていう話をちょっとします。コンテンツ、これが個々の博物館、美術館がデジタル化して持っている実態だとします。高精度の写真だとか、3Dの最近だったらデータだとか、いろんなものを持っているのだと思うのですが、修復のためだけにも役に立ちそうな、ピクセルの写真とか、そういうものも入っていると思うのですが、それを全部ジャパンサーチに上げられても大変なことになっちゃう。上げたいっていうところもあるんですけど、僕たちが消さずに国会図書館がそういう写真を未来永劫お預かりしますっていうのはなかなかできそうでできない約束なので、コンテンツについてはちょっと預かることをためらうわけですね。
とはいえ、ビジュアルな、例えば浮世絵っていうのがタイトルだけでサムネイルの一枚もないと、どんな浮世絵か分からないし、果たしてその館まで見に行って、デジタル的であれ見に行って、大きい画像を出してくださいって言って出してもらう手間といいますか、そこ、この作品を見てみたいっていうふうに思うセレクションのときに役に立たないだろうということで、できたらこのサムネイル、プレビューといいますか、ある程度の大きさのものは出していただきたい。ここもでも、あんまりルールを決めるとじゃあそれだけの大きさがあればいいんですねって言って、逆に縮めてそれに合わせてくるっていうようなところが当然あるので、できるだけあまりこっちでサイズ等は指定せずに、できるだけベストエフォートで出してくださいっていうような話をしております。さっき言ったように分野によっては一切出さないというようなところもあるということになります。
メタデータは逆に言うと必須で、これは本でいえば書誌情報のようなものです。タイトル、著者、出版社、出版年みたいな、そういう基本情報はぜひとも入れてください。これは福井さんの話でいずれ出てくると思いますけど、メタデータのそういうものは大体著作権がないというふうに認められていて、自由に流通することに適していると。最近はサムネイルも一部は入れられるというふうに、著作権を主張できないというふうになっていますけども、大きいサムネイルは少なくともその範疇から外れるので、日本の法律ではサムネイルについてはやっぱりその提供館なり権利者がそれを出しても構わないよっていうことを認めるような仕組み、あるいは権利制限が加わったような状況でしかこれは追加できないというふうになりますが、この青い部分というのをジャパンサーチは集めています。
ですからタイトルとかその他の基本情報で調べることができて、その調べた結果がサムネイル等で一覧できる。場合によってはサムネイルつながりで、この山が書いてあるやつは何だろう?っていって探しにいくというようなこともできるようになっているということです。この辺をどういうふうに整理したらいいのかっていうのは、やっぱりガイドラインみたいなものをこの委員会としてはつくって、リバイズもここは今ちょっと古い版が上がっていますけど、何年かに一回はリバイズしながらこれを提供しているというところです。少し専門的な話に興味がある方はこの辺を見ていただければと思います。
もう一つのこだわりは、その利用の区分といいますか権利区分です。特にサムネイル等で、これは多分行った先でどういう形で利用できるものがぶら下がっているのかっていうことも含めての表示ですけども、少なくともサムネイルをどういうふうに扱えるよっていうようなことについて、ここに権利情報を表示するように、できるだけ表示してくださいということにしています。表示がないときは、あるいは該当なしとかって一番厳しめにしちゃっているときは、排除はしていないのでそれでも可能ですけども、できれば個々の作品について個別にできるだけ権利状況が緩いもの、できるだけ活用ができるものっていうのを挙げていただきたいということで、個別に、作品なら作品個別にこれを振ってくださいということをお願いしています。これは非常に重要なことで、これまでですとデータベース全体でこのデータベースに入っている画像はこういう権利状態でやりますという、だから商用利用は駄目ですとか、これに限っては利用できますっていうことをうたうっていうのが従来のプラクティスだったんですけども、データベース全体で1つルールを考えようとすると、当然その中の一番厳しい、まだ著作権が生きているものが例えば1000件のうちの3件あるから、その3件は駄目だから1000件全部駄目にしましょうっていうふうに悪いほうに引きずられちゃうんですね。
悪いっていうのもおかしいけど、厳しいほうに合わせちゃうっていうことが、これは不思議なものでデジタル情報屋さんが悪いんじゃない?と僕は思っているんだけども、その権利を決めるなどというのは面倒くさいから、そういうところは一番安全サイドに振りましょうっていうのが大抵の場合の判断だったわけです。その結果、これまでは美術館のデータベースっていうのはほとんど、画像は個別に、もう著作権が切れている江戸時代のものでも使えませんっていうふうな形ですね。個別にお問い合わせくださいなどとなっていて、聞けばこれは切れているからいいですよっていう、答えが返っているのですけど、そこの手間を払いながら検索結果を見るっていうのはあり得ないことなので、結局は簡便には見ることができないというところになっていたわけですが、今回このジャパンサーチにせっかくばらばらに集める、個々のものが個々のものとして見える形でデータを集めますので、それぞれに権利の情報を付与してもらうということをお願いしています。
最初はエイヤッで一番安全サイドに全てを振るかもしれないですが、これとかこれとかこれはほかの館ではオーケーが出ているのに何でおたくの館は駄目なんですか?っていうような話でプレッシャーをかけることもできますし、その提供館に気づきを与えるということができるので、少しずつよい方向に動いていくというふうに期待しているわけです。
そういうことでジャパンサーチの2次利用条件っていうのはこんな感じでその条件によって絞り込むこともできるし、個々の作品のページに行くと割と分かりやすい表示がありますので、ああ、じゃあ安心して使いましょうっていうような形で利用が進むと期待されます。
結構時間がたってしまいましたが、活用基盤としてのジャパンサーチ。これ、じゃあ何のためにつくったかというと、先ほど言った活用者がどれだけうまく使って、上に書いてあった社会的な課題の解決につなげていくっていうのが、大上段の目的なわけですが、少なくとも活用者が面白がってもらえるようなものにならないと駄目だろうということで、幾つか、最初はあんまりこういうものは国会図書館が提供するサービスにはなじまない的な、これまでの国会図書館のサービスを知っていれば大体想像がつきますけども、サービスしているものが厳密な意味で正確な情報が提供されていて、いつでも同じ振る舞いをして、淡々といい仕事をするっていうのが国会図書館的なスタイルなわけですね、まあ美意識なわけですけど、ウェブサイトにもそれが反映されていて割とこう、取りつく島がないといいますか、サービスが多かったわけですけど、ジャパンサーチはやっぱり国会図書館が主たる運営者でないということと、これまで国会図書館が付き合っていたのではないコミュニティーの人たちとうまく付き合って、そこの利用を盛り上げることが重要だから、もう少し柔らかいところに行きましょうよということをさんざん言って、最初はそんなのはどうかしら?とかいうのが多かったのですが、大分今では国会図書館の関係者、担当者は積極的にこういうものを、取り組んでいただいています。
4.ジャパンサーチAPIの活⽤例
活用っていうのは探す、検索するのはまず一番の機能としてもあるでしょう。ただ、この探すのも従来の書誌検索のようにタイトルはここの箱に入れてくださいとか、説明文の一部はここに入れてください、時代はここに入れてくださいみたいなフィールドが分かれていて、それぞれにそれぞれの対応するものを入れないとそれなりにうまいものが出てこないっていうのはちょっとしんど過ぎるので、少なくともグーグル的な1つの窓にぽんと何でも入れるとそれなりに出てくるとか、それからそういうメタデータで引くだけじゃなくて、画像つながりで画像の近さで引いてくるというような、探すっていうようなこともできたらいいだろうと。
精度はそれほど高くはないかもしれないですけど、気づいていない手がかりを与えられるというようなことでは役に立つかもしれないということです。見つけたものをいきなり仕事に生かすっていうのはありますけど、まずそれを楽しめる、何人かで楽しむとか、面白いのを見つけたよっていうことが共有できるような仕組みというのをつくっていこうということで、楽しむという軸を入れて。
そして「探す・楽しむ・活かす」ということで、だんだん生(活)かす、何らかの割と真面目な役にも立つよっていうようなことにしていこう。これがぐるぐる回るというのを目指そうじゃないかということで、検索機能を面白くするとか、楽しむっていうのを、模範演技をしてやろうというところで、ギャラリーっていうのを運営者側がいろんな専門家に頼んで、和食っていうテーマで一つギャラリーをつくってくださいとか、刀剣乱舞で刀剣がはやっているから、刀剣っていうのはこんなにいっぱい入っているんですよ、見つかるんですよっていうことで、ちょっとショーケースみたいなのをつくってくださいっていうようなことで、幾つか軸をつくってギャラリーをつくっています。
これは自分たちがギャラリーと同じものをつくることもできるように提供していますので、マイノートっていうので大体同じものをつくっていくっていうことはできますから、あ、こういうふうに集めていけばいいのかと。この、ここに集められている刀剣をネタにもっと文書のほうまで膨らましていこうというようなことで、江戸時代の和書をいっぱい集めていくなどということもできるように、こちらのほうではさらに活用できるものっていうのを提供しています。
1人で使って仲間にちょっと見せるぐらいはマイノートでできるのですけども、一般公開というのはなかなかできないので、グループの中であらかじめ決められたメンバーで共有するとか、あるいはそこに自分たちだったら見てもいいものを、ジャパンナレッジにはまだ入っていないけども、自分たちの研究の仲間では共有できるようなものを追加して、ラボのようなものをつくるというような仕組みも、プロジェクトといいますけど、提供しています。
従って、皆さんが何か課題をやったり、今後どうなのか分からないですが自分たちの周りでそういう活動されるときに、ジャパンサーチに入っているものは一部役に立つようなシチュエーションがありましたら、ぜひこの辺の機能を使ってみていただければと思います。
ちょっと書いてありますけどもこういう感じですね。つくった側のこだわりは、これはカワシマさんっていうNDLの、NDLに最近ハッカーがいるんですけど、ハッカーが何人もいるのですが、コンピューターのプロですけど、彼がつくったときのこだわりなのですが、検索窓を普通の窓で普通に引けば、普通に全部のものが引けるのですが、これを裏でチューンすることができて、あらかじめこのデータベースしか見ませんとか、ここに入れられたテキストはフィールドでいえばこの件名と何とかだけにぶち当てて引いてくださいとか、そういう検索のファセットといいますけど、ファセッティングをあらかじめフィルター条件みたいにして与えて。そうするとどんな文字を入れても結構ピンポイントでその分野だけの検索にできるというので、検索エンジンをカスタマイズするというようなことができるような感じになっているのもあります。これも別の方はこだわっているんですけど、画像検索ということで、アオキさんという方がこだわっていますけど、面白いものが見つかってくると。思いがけない、模様として似ている。土偶は土偶って大体名前がついているから面白くないですけど、形が似ているとか模様が似ているとか、そういうものが見つかってくると、なるほどと思うわけです。
ギャラリーもいろいろあります。少しこだわりはトリプルアイエフ(IIIF)に対応していて、これは画像公開のためのデファクトのようなものです。デファクトスタンダードのようなものになりつつありますけど、大きな画像をネットワーク越しに公開したり、利用したりするというとき、当然大分ネットが太くはなったものの、サーバー側にはかなりの負荷がかかるので、例えば高精細な画像を何十万点も公開していて、みんながそれをちらっと見るだけでも全体をダウンロードしなきゃいけないっていうふうになると、とてつもなくサーバーに負担がかかってうまく動かなくなるわけです。
ところがよく考えると高精細な画像を今こういうデジタルな環境で取り寄せて見るときっていうのは、いっときにはほんの一部分しか見ないわけですね。その画面の部分しか見えないわけだから。あるいは画面全体に絵全体がフィットするように見たい場合は、どちらかといえば高解像度の絵は必要ないわけです。このフィットするぐらいの解像度があれば十分ということを考えると、今ユーザーの環境が本当にどこをどのくらいの解像度で求めているのかっていうことのやり取りをして、その必要最小限のものだけを送り込むようにすれば、そんなにサーバーにも負荷がかからないし、見ている側もそんなに待つことはないということが起きますので、そこのルールをつくりましょうということです。
サーバーを、データを発信する人と、イメージサーバーといいますが、それから見る側、ビューアーといいますけど、ビューアーの技術と、これがうまくかみ合ったらうまくいくよということで、それを規格化といいますか、国際規格になっているわけではないのですけども、IIIFのコンソーシアムっていうところは世界中の主要なそういう発信者を仲間に入れて、ルールを決めている。みんなのフィードバックによって、それをどんどんリバイズしていくというようなことをやっています。これに準拠しておりますので、この辺の写真はズイズイってやると大きくなるようなものがかなり含まれています。
マイノート。こんなものですが、後でちょっと眺めておいていただければ、ちょっと使ってみようかなっていうふうに。これはちょっと申込みが必要のようですけど、あまりビジネスにすぐ役に立てるみたいな、商用が表に立っているとちょっと許諾を出しにくいですけども、学術的な興味でやられるというような活動であれば止めることはないと思われますので、ぜひ手続をしてご利用いただければと思います。
ですので、ジャパンサーチはデータベースやギャラリーっていうのは公開レベルに入っていて、プロジェクトはプライベートな空間で、これは参画、提案して利用しているメンバーだけで共有されていくというような形になります。実はこれ、海外の進んだ図書館などは大抵こういう仕組みを持っています。だから僕はスタンフォード大学の図書館っていうところに出入りしていますけども、そこなどは研究者がやっぱりプロジェクトをライブラリーに対して提案して、あ、いいですよっていうことになると、ライブラリー側に専門家、その分野の専門家はいっぱいああいう図書館だと雇っているんですけど、サブジェクトライブラリアンと呼ばれる専門家が担当となって、研究者の要望に合わせてどういうデータを集めてきたらいいかっていうことを考えて、こういうカスタムなデジタル利用環境をつくります。それはクローズドですので、公開だとなかなかできない権利上できないようなものも、クローズドだと相当できる範囲が広がりますから、そういう形で研究を進めるというので。この分野では必須の機能になっているということを聞いております。ですので、国会図書館でも少し試してみようということですね。
5.ジャパンサーチが⽬指すもの
最後にちょっと駆け足になりますが、ジャパンサーチのメタデータ連携と活用。メタデータを集めてきて引けるようにしますっていう話なんですけど、これ、提供者のところはさっきもちょっと言ったようにこだわりの項目がいっぱい入っているので、それを全部引けるようにするっていうのはなかなか大変です。かつ統一感もなくなっちゃうわけです。なのでジャパンサーチでは、大抵こういう類の項目はあるでしょうっていう共通項目ラベルっていうのだけ用意して、そこに、それはフィールドを指定して引ける。後のものは割とどれでも検索には多少利用しますけども、基本はそこのこだわりは引き継がないと。だけど、もともとのところにどういうふうに書いてあったかは調べようと思えば調べられる、見ようと思えば見られるという状況にしています。上の情報を使って検索とかマイノートとか、この辺はつくられます。下の情報、深い情報を使ってAPIを経由して深い情報を出そうと、取ろうと思えば取ることもできるというようなことにしています。
ここはAPIというのはプログラムで呼ぶこのサービスを、別のサービスから裏のシステムとして、裏のデータベースのようにして呼んで利用すると。検索をこっちのプログラムが検索して、結果をこっちのユーザーに返すというようなときに使うわけですけど、一ついろんなサービスをつくっていくコンポーネントとしてジャパンサーチを使うこともできるような形で工夫しています。
ここの共通ラベルに絞るっていうのは、次のページにたしかよく書いておきましたが、例えばAっていうデータベースはこんなフィールドになっている。Bっていうデータベースはちょっと取ってあるものが違うので、材質とか技法とか、ちょっとフィールドの名前も違う。これは作品名と言っているけど、本のほうは書名って言っているとか、作者と言っているがこっちは著者と言うとかって、そういうふうに名前の呼び方が違ったりするのですが、これも大体基本的にはこのタイトルとか作成者とかもう少し取ると思いますが、そういうところについては共通だねといって、こういう対応を取るわけですね。
で、ここの赤い部分だけを利用して、実際のサービスがつくられるという形にしています。マッピングといいますか、こういうふうに全部焼き直しちゃって、元のデータは全部潰してその他に入れるっていうのが、これは従来のマッピングの方法なんですけど、僕たちはこの必要そうなものをコピーして、デュープしてタイトル、作成者という情報もつくります。だけども大元の、これは実は作品名でしたとか、これは実は作者でしたっていう情報はそのまま保ち続けるというこだわりが。そうすると例えば映画だったりすると、映画の監督なのかラインディレクターなのか何とかなのかっていう貢献がいろいろ違いますので。原作者なのか。そういうようなものも、こちらの紫のところにはいっぱい書かれていて、それは映画を専門的に見ていくときには非常に重要な情報なので、それを捨てたりはしないということになります。
そういうのをユーザーが自分でこうやって登録するような仕組みをつくってあります。何かちょっと試したい方がおられたら、ぜひ問い合わせしてみてください。誰でも受け付けるっていうわけにはなっていないですけども、どういう形で整理したらいいかの参考の情報っていうのは少なくとも得られますし、それから適切なつなぎ役を紹介していたりして、接続につながっていくという感じです。
さっき言ったプログラマーがジャパンサーチをデータベースのようにして使うことができるよ、そういうAPIっていうのがありますけど、この仕組みを使って、これは実は僕が入っている5人、6人ぐらいのフラットなチームでつくったんですけど、カルチュラルジャパンっていうのを試しにつくってみました。ここにジャパンサーチっていうのが入っています。ジャパンサーチに入っているものを整理したやつが、このジャパンサーチRDFストアっていうのに入っています。これは外からたたいたら返事をしてくれるものですが、そういうものがあります。この後、時実さんが多分お話しするヨーロピアーナとかDPLAっていう、これはヨーロッパを束ねているもの、これは北米を束ねているものですけど、そういうものも同じようにAPIを提供しているので、そこからRDFストアっていうのをジャパンサーチと同じ乗りでつくることができます。同じ乗りでこうやってつくると、これはレジストリといいますか、データベースと呼んでもいいのですけども、いろんなクエリに答えてくれるデータの入れ物ができます。
これは皆さん知っている方はリンクトオープンデータ(Linked Open Data)とかRDFトリプルとか、そういう形で整理したもので、RDBと同じようなクエリを書いてここから取り出すことができるというような仕組みなんですけども、ここにまず入れます。そうするとこれとこれを合わせたものをデータとする新しいサービスをつくることができます。
これは僕らカルチュラルジャパンと、何かおこがましいですけど、文化的な日本の情報が入っていると。ここはビジュアルにこだわって、絵がきれいなものしか仲間に入れないということを僕たちがプライベートにやっている、プライベートにっておかしいね、ボランタリーにやっているプロジェクトなのでどういう制約も受けないということで、ちょっと勝手に取捨選択させてもらってサービスをしているというようなものになります。
ちょっとこのつくり方が実は自慢なのでこういう絵を描いてありますが、ヨーロピアーナの先にぶら下がっている3000館ぐらいものとかDPLAもかなりの館数がありますけど。あとはIIIF対応であれば個々の館がばらばらでも集めてくることはそんなに難しくないので、そういうメトロポリタンだとか、モマ(MoMA)とかブリティッシュミュージアム(British Museum)とかそういうところからも集めてここに投入しています。全部投入しちゃうと世界中のものを集めちゃうことになって無理なので、カルチュラルジャパンって切ったのは、ジャパンとかジャパニーズとかジャポネとか現地の言葉で引くと引っかかってくるような項目をここから取捨選択して集めてきて、これをつくったということになります。
これもこの辺をクリックすると実際のサービスに行って、結構面白いことができるという感じです。表示したもの、調べたものをいきなりミュージアムにするなどという仕組みもあって、ここのエクスポートってやってこの箱をクリックすると、今の検索結果が全部展示室に分かれて3Dのミュージアムができるっていう。
皆さん手元で動いているかちょっと分かりませんが、それで3Dでウオークスルーできるという、なかなかな活用といえば活用ができるようになっています。検索の結果のあれでもいいですし、自分で拾ったマイボックスっていうようなところにお気に入りを集めて、それをミュージアム仕立てで眺めるなんていうこともできるようになっています。ちょっと試していただければと思います。
最後、ジャパンサーチが目指すもので。時間になっちゃいましたね。一応、ジャパンサーチはサービスとしていろいろやっていくのだけども、そもそもどういうところを目指していくんだっけと。デジタルアーカイブっていうのをどう社会に位置づけて、僕たちの生活の中で当たり前のものにしていくのかっていうことをちょっと掲げて、5年間の戦略方針っていうような形で書き物をちょっと出しました。
ここで3つの価値が重要だと。デジタルアーカイブっていうのは、別にジャパンサーチに関わりがなくても、この3つの軸が重要だろう、価値が重要だろうということをちょっとうたいました。記録・記憶を継承していって、またその整理の仕方を新しく変えていくっていうようなことは当然重要だろうし、それからコミュニティーを支える共通知識基盤というのはそこから生まれてくるんじゃないか。これが今のキャンセルカルチャーですか、知らない間にある種の情報が全く見えなくなっているとか、それで利益が誘導されたり、僕たちの認識自身がコントロールされちゃうっていうようなことが起きつつあるわけですけど、デジタルアーカイブに価値があるとすると、もう何十年、百年前の情報が割と包み隠さず今は見えている。
それから今今(いまいま)の情報も、どうしてこの辺は欠落しているんだろう?っていうことにユーザーが気づいたりするというようなところまで行けば、こういう知識基盤は非常に重要だと。知識基盤自身がキャンセルカルチャーの総本山になってしまっては意味がないんですけど、そういうところ。こういうのもあって、みんなが草の根でつくること、つくったものが集まって全体ができるっていうことの価値っていうのがそこにあるんですけど。それからそういうものが新たな社会ネットワークの形成になると。個々でそれなりのこだわりで小さくつくっているものが、遠くのもの、同じようにつくられているものとジャパンサーチとかそういうサービスを通じて出会うことによって、お互いがお互いを知ることによって、実は違う立場があるとか、実は同じ立場で別のところで頑張っている人たちがいるとか、そういうところに気づいて新たな人と人のネットワーク、活動と活動のネットワークが生まれていくっていうところが価値なんじゃないかということで、この辺、ちょっと僕らがかなり議論したので熱いのですが、何でデジタルアーカイブなんかやるんだろう?っていうときには、少しこの辺に帰っていただければと思います。
これで終わるのですが、イサム・ノグチっていう人がこんな言葉を言っていて、ちょっと好きなんですけど。我々っていうのは、我々人間は僕たちが何をこれまで見て生きてきたかということの一つのランドスケープにすぎない。僕たち個々の人間は一人ずつが一つの景色だっていうことを言っているっていうのはなかなかいいかなというので、その景色が共通部分を持ったり、お互い同じものをいいねと思っているっていうような別の景色とつながっていったりするっていうのが重要かと思います。では時間が超過しましたけど、これで終わります。どうもありがとうございました。
(文責:久世)
世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
東京大学大学院情報学環 時実象一氏
➝ プレゼン資料:世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
内 容
デジタルアーカイブの種類っていうふうに考えていったときに、ここにあるようないろんなものがあるだろうと。書籍、文書、新聞それからテレビ・放送、映画、音楽・音声、舞台芸術、写真、それから美術品です。この辺が典型的な文化遺産なわけですけども。
それとかあとはウェブページ、ゲーム、ソフトウェア、その他というようなのがあるというふうに考えます。
ここでまずポータルサイトっていう、今日も今、高野先生にお話しいただいたジャパンサーチ、それからカルチュラルジャパン、こういうのはポータルサイトと呼ばれるものですけれども、世界的に有名なものとしてはヨーロピアーナとDPLAがあると。あるいは国立国会図書館でやっていただいている東日本大震災アーカイブというのがあると。
それと違ってデジタルアーカイブサイトっていっているのは、これは実際に物を集めているところです。ここではインターネットアーカイブとウィキペディアについてちょっとご紹介したいと思います。
1.書籍
本ですけれども、本のデジタル化っていうのは国立国会図書館さんが随分やっていて、今日はちょっと世界ということで国立国会図書館の話はちょっと割愛させていただいているのですけども、古いところでインターネットアーカイブというところが、2002年、今から20年前にミリオンブックプロジェクトというのを始めて、そこがこの本のデジタル化っていうことでは最初なのかなというふうに思います。
これはインドにこういう機械を切って、インドでやってもらったと。当時インドは正直言ってお給料が安かったものですから、インドでやるのがいいだろうというようなことで始めたというような話があります。これは自動的に本をめくるKirtasという装置なんですけれども、これと似たようなものは今でもありますけれども、結構いいお値段がして2000万円とか、こういうお値段がするとなかなか普及はしなかった。
それからこれはインターネットアーカイブって今でも基本的に使っている手めくりの、ですからちょっと分かるかと思いますけどV字型になっておりまして、上から本をガラス板で本を押さえて写真を撮るんですね。スキャナーって言っていますけど、実際は写真を撮影します。ですからカメラの解像度っていう関係もありまして、当時は300dpiが限度だったんですけど、今はもっとカメラが良くなっていますからもっときれいなのが撮れます。
こういうので図書館と今は協力しておりまして、これもちょっと2~3年前の数字なのでちょっと今は違っていますけども、特にボストンの公共図書館とはかなり一生懸命やっております。最近、中国とも協力して浙江大学で、やっている。
これはボストン図書館にある、スキャンをやっている様子。御覧のようにテントみたいなのを作って、その中で撮影をしているというものです。この集めた本をどうするかっていうと、実はオープンライブラリーっていう電子図書館をやっておりまして、この電子図書館は誰でも読めると。著作権が切れている本は誰でも読めると。これは国立国会図書館でもそうですけど、生きている本については、所蔵図書館のメンバー、図書館っていうのはみんな図書館のメンバーになれば本は読めるわけですよね。
それは日本でも同じですけども、同時に1名だけ読めるということなんですけれども、これは勝手に電子化しているものですから著作権侵害っていうことを訴えられておりまして、現在係争中ということです。これはオープンライブラリーの画像です。
日本で結構有名になったのはグーグルブックスっていう、ちょっと若い方は御存じないぐらいの話になっちゃったんですけど、グーグルがブックサーチというのを始めまして。これは図書館から本を借りて電子化していると。この進行状況っていうのは本当に何冊持っているかっていうのは、データがありませんで、2008年というもう大分前の数字になっているんですけども、その当時で700万冊あると。恐らく今は、1500万冊以上は電子化しているだろうと思っているんですけれども、グーグルっていうのはそもそもある意味じゃポータルですよね。自分でデータを持っていなくて、ほかの人のデータを検索できるっていう検索エンジンになるわけですけれども、自分でもデータを持とうということで始めたプロジェクトなんです。
これが2004年に始まってもう20年前になっちゃうのですけども、こういうアメリカとイギリスの主要な大学と提携して始めたということです。これも2005年に訴訟が起きていろいろあったわけです。
それでこれは最終的にはアメリカの裁判所で、要するにスキャンしてデジタル化して、それの一部分だけ、本当に、スニペットといいますけれども、短い文章を検索のために提供するっていうことは合法であると、フェアユースであるということで決着をしまして、これは今でもやっている。ただ、デジタル化のほうはいろんな事情でもう追加のデジタル化はやらないということになっております。
こういうデジタル化して検索に提供するのはいいっていうのは、日本の著作権制度も、数年、また福井先生からお話があると思いますけど、日本の著作権制度もそうなっておりまして、皆さん、デジタル化するのは何でも許諾を得なきゃいけないと思っていらっしゃるかもしれないけどそれは間違いで、デジタル化して検索に提供するのは勝手にやっていいんですよね。許諾を得ないでですね。アメリカでもそういう判決が出ているということです。
このグーグルブックスでデジタル化した書籍データをHathi Trustっていうところで管理しております。共同管理しています。CADAL(カダル)っていうのは先ほど言いました浙江大学でやっているプロジェクトで、杭州市で、ここでデジタル化を進めている。これは先ほど言いましたインターネットアーカイブが支援しているプロジェクトです。
2.写真
今、本の話をしましたけど、写真の話をしたいと思います。写真につきましてはどこのデジタルアーカイブに行っても写真はやたらいっぱいあるわけですから特に珍しいものではないのですけど、ここでは商業的に成功しているっていう上でゲッティイメージ(Getty Images)っていうのをご紹介したいと思います。
これは皆さんテレビなんかを見ていますと、テレビの、例えば有名人が死にましたと。すると写真のところ右下とか左下のところにゲッティイメージって書いてあるんですよ。気をつけてテレビを見ていてください。そうするとこれはゲッティイメージから写真を借りて使っているんですよね。これはもちろん有料で借りているわけですけど、ここで使う分には合法ですから、ものすごくたくさんの写真がありますので、マスコミはもうゲッティ様、ゲッティ様で、非常に多用されております。
これはゲッティのホームページですかね。いろんなスポーツの写真とか何でもあるというわけです。
あとは写真で有名なのはウィキメディア・コモンズっていうのがあって、これはウィキペディアに基本は掲載された画像を収録しているっていう考え方なんですけれども、必ずしもウィキペディアに載ってなくてもいいんですけれども、これのすごくいいところは、撮影者の情報と権利情報が明記してあって、これが自由に使えるというのが基本です。
ですから一番下に書いてありますデジタルアーカイブのバックアップとしても利用されているということで、日本でもいろんな方が使っています。これは岐阜女子大学の写真で、このウィキメディア・コモンズに載っている写真ですけど、右下に「CC BY-SA 3.0」って見えますかね。書いてあって、それで要するにCC BYですから誰でも使っていいっていうことで、これはMonamiさんという方が写真撮影した写真ということで、皆さん自由に使えるということであります。ここに書いてありますね。こんな感じで非常に安心して使える画像がありますので、便利なものです。
3.新聞
新聞の話をしたいと思います。新聞につきましては、日本については朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、あるいは日経さんと皆さんアーカイブを持っていらっしゃるんですけども、アメリカではもっと古いところ、17世紀から新聞をアーカイブしています。アメリカという国は新聞ってすごく大事で、町ができると新聞ができるわけですよね。それで映画でなんか時々出ますけれども、自分たちの町の新聞っていうのをみんな持っていました。
持っていましたっていうのは、今、それがだんだん潰れちゃっていて、ちょっとこれは問題なんですけれども、そういうことで。その記事に何が載っているかというと、もちろん町の出来事が書いてあるんですけど、冠婚葬祭が載っているんですね。だから誰それが結婚しました、誰それが亡くなりましたっていうのが必ず載っているので、これが自分のルーツ探しに使えるということで、大変これ自身が商売になっているということですね。ここにありますように、これは比較的新しい1942年の新聞ですけれど、こういうふうに掲載されている名前で検索できるというようになっております。
イギリスでも新聞のアーカイブがありますけれども、イギリスの場合はこういう草の根の新聞もありますけれど、どちらかというとやっぱり重要なブリティッシュニュースペーパーなんかですと、主要な新聞って、イギリスも随分古いですから、ここあるように1600年からのアーカイブがあります。
こういうところで、例えばこれはオックスフォードガゼットっていう新聞ですけれども、これはちょっと時間がないのでちゃんと読めないですけどいろんな記事が載っておりまして、例えばこういうふうにこれは同じ新聞かな、切り裂きジャックっていうジャックザリッパーという有名な殺人鬼がいて、捕まらなかったわけですけれども、これの記事が載っております。当然ながら新聞に初めて出たときは切り裂きジャックっていう名前じゃなくて、ホワイトチャペルマーダーズ、ホワイトチャペルっていうところで殺されたのでそういう名前がつきました。
4.映画
映画の話。映画っていうのは古いものっていうのは全部テープ、フィルムで撮影していたわけですよね。これは幾つかのフィルムの種類があるんですけれども、物理的にやっぱり劣化するんですよね。こういうふうにぐしゃぐしゃになって縮んじゃっていると。ここまできちゃうとちょっともう見ることが困難ですよね。見ることができたものにつきましては、こういうスキャナーっていうのがあって、これでデジタル化できます。
これはみんぱく(国立民族学博物館)にある機械の写真を撮らせていただいたんですけど。ただ、撮っただけではなかなか汚いということで、画像修復とかカラーコレクション、こういうことをやることが望ましい。これは例えばデジタル修復版っていうのはテレビで時々やっておりますけども、“男はつらいよ”の下と上とを見ていただいて、ほぼ同じシーンなんですけれども、全然色の鮮明さが違うし、それから傷の修復はちょっとないですけど、これは色ですね。どちらかというと色の修復をやっていると。顔の色なんかも全然違いますよね。こういうことが、やっぱりやらないとなかなか商業用のものはできないので、大変手間がかかるということです。
こういう007とか、こういうもうかるものは皆さんやられますけど、なかなかもうからないものをやるのは大変ですよね、お金がかかるから。フィルムアーカイブっていうことについては、ヨーロッパのフィルムアーカイブをちょっといろいろ聞いたり、調査に行ったりしたのですけども、これはドイツのフィルムアーカイブで、これを見るとどこにもフィルムアーカイブって書いていないですけども、こういう倉庫が後ろにあって、前は家具屋さんなんですよね。家具屋さんの裏の倉庫を使っているとか、そういう。これはフランスのシネマテークフランセーズっていうのですけど、これ、は要塞の、フランスが第1次世界大戦の頃にいっぱい要塞を造っているんですよね。そういう要塞の地下っていうのは恒温恒湿、光が安定しているのでそういうところにフィルムを保存しているとかですね。こういうのが、ちょっとここは飛ばしますけど。
それでオーストリアのフィルムアーカイブというのがあるのですけども、ここはこういう地域のフィルムを集めて、それでデジタル化するというプロジェクトをやっておりまして、これは日本でも紹介されたので御覧になった方もいると思いますけど、ちょっと詳細は割愛しますけど、興味のある方はオーストリアのフィルムアーカイブということで検索していただくと文献、常石(史子)さんという方が書かれている文献があります。
5.テレビ
テレビなんですけれど、テレビのデジタルアーカイブとして割と有名なのは、アンダースタンディングナインイレブン(Understanding 9/11)っていうことで、ナインイレブンって言っても、これも若い方は御存じないと思うのですけども、2001年の9月11日にアメリカの世界貿易センタービルに飛行機が突っ込んだと。そのときの世界中のテレビを全部こうやって集めてデジタル化して、ここに保存しております。
ですからこんなフィルムですね。これはNHKのそのときのニュースがここに保存されているということで、飛行機がちょうど突っ込んだところの画像が、実際のこういうニュースの様子も見ることができます。その続きとして、インターネットアーカイブでは、このTVニュースアーカイブっていうのを今やっておりまして、これは2012年から、このナインイレブンからもう10年たっていますけども、主要なテレビのニュース番組をアーカイブしている。これはアメリカの著作権法で、アーカイブすることが、図書館なんかがアーカイブすることは合法ですので、これで全部保存している。
それからもう一つアメリカのテレビ番組については、各番組には聴覚障害者のための字幕情報をつけるということは、これも法律で決まっているので、それも一緒に入手して表示しているということであります。
そうしますと、これは例えばBBCニュースでジャパンランドスライド(Japan Landslide)。これは熱海の実は、あれは2年前かな、3年前かな、熱海の土石流のニュースで、BBCでこういうものが保存されておりますので、もちろん日本に関するテレビニュースはいっぱいありますので、大変調べると役に立ちます。
6.新型コロナ感染症 (COVID-19) 下の社会デジタルアーカイブ
最近、これはちょっと全然特殊なものなんですけれども、新型コロナ感染症っていうのはそろそろこう収束(終息)に向かっているというふうに言われていますけれども、これでデジタルアーカイブというのがあると。
これは実際ネットに載っているのを見ると、アメリカのが一番多いですけども、この辺がどういうお国柄なのかっていうところまでちょっと分析できていないのですけれども、かなりいろんなものがある。機関別に見ると、アメリカの場合は歴史協会っていうのがありまして、ヒストリーソサエティーみたいなのが各地域にあって、そういう地域がやっぱり新型コロナで皆さんロックダウンということで家から出られなくなってしまった。
そういう非常に特殊な状況ってやっぱり記録しなきゃいけないっていうことで、そういうことが始まったということです。いろんなのがありますけど、写真だったり、こういう自宅でこれはトランポリンをやっているんだか、トランポリンっぽいようなことをやっている写真とか、それとかマスクの写真とか、こういうもの。
あるいは体験記、実際に地域の方に書いていただいたこういうものは全部保存されております。それから家でこもってやることがないから、こんな絵を描きましたとか、そういうのも保存されているところがあります。これはなかなかやっぱり新型コロナという特殊な条件というものをデジタルアーカイブしようという試みですね。
7.ウェブサイト
それから非常に重要なのというのはウェブサイトで、ウェブサイトについては皆さん御存じだと思うのですけど、ウェイバックマシン(Wayback Machine)というのがありまして、ウェイバックマシンというのは、これはもともとこの空飛ぶロッキーっていう昔テレビ漫画があって、そこに出てくるこういうタイムマシンのことなんですね。それの名前を取っております。
インターネットっていうのはどのくらいで始まったかっていうことなんですけれども、大体1995年頃から商業利用が始まったということで、岐阜女子大学さんでも1998年頃からウェブサイトをつくっていると。インターネットを開始したって、ちょっと言葉はよくないですね。ウェブサイトを開始したと。これは岐阜女子大っていう上のほうに、ここのとこに、カーソルは見えるのかな、URLが入っていると思うのですけどgijodai.ac.jpで、これで検索しますとこういうふうに1998年からずっと保存されているということが分かります。これは保存されているもののうち、1998年12月12日のサイトと、こんな感じで保存されています。
あるいはこれが、これも同じ日かな。リンクで、あ、違いますね。1999年1月25日ですね。これでこういうふうに保存されています。これは世界中のウェブサイトがこういうふうに保存されているので、もう非常に貴重なリソースだということが言えます。
8.ゲーム
ゲーム。ゲームっていうのはなかなか保存が難しいのですけど、これはやっぱりインターネットアーカイブというところでアーケードゲームの保存をやっています。アーケードゲームっていっても、これも今は死後になっちゃっているわけですけれども、いわゆるゲームセンターというのが街角にあって、そういうところでゲーム機が置いてあって、そのゲーム機で流れていたゲームです。
100円を入れると何分間かゲームができると。こういうもので、これは有名なインベーダーゲームですけども、こういうものが実際に動く状態で保存されています。
以上がいろんな、このほかにもいろんなものがあって、さっきの舞台芸術とかいろんなものがありますけども、時間の関係でちょっと飛ばしたいと思います。
9.ネットワークポータル
(1)ヨーロピアーナ
それでネットワークポータルということについてお話ししたいと思いますけれども、先ほど高野先生からも何回も話がありましたけど、ヨーロピアーナというのがあります。これは欧州のデジタルアーカイブコレクション、例えば高野先生のカルチュラルジャパンの話でも出てきましたけども、欧州、アメリカも日本の文化資産っていうのをかなりいっぱい持っていらっしゃるんですね。博物館とか美術館で持っている。そういうものもデジタル化されているものがありますので、こんな感じで、これはUtamaroって書いてありますけど、歌麿の絵と、こういうものがデジタル化されて見ることができます。ここ、日本語が書いてありますのは、これはどこだったかな、National Library of Franceって書いてあります。フランスの国立図書館ですけれども、ここでは日本語のタイトルをつけていると。日本人もいるんでしょうかね。でも全部が全部ついているわけではなくて、ローマ字とか英語になっちゃっているものもあるというわけです。
これはどういうものかっていうと、そもそもデジタルアーカイブのネットワークで、ジャパンサーチのモデルとなったということで、そもそも欧州委員会というところが運営しております。欧州各国のコンテンツプロバイダーを結合。ヨーロッパの場合、もともと各国にコンテンツプロバイダーって、要するにデジタルアーカイブを提供する機関っていうのがある程度はあったわけです。
ただ、そういうところもまだ本格的にやっていない。これがどんどん統合しましょうということでいます。アグリゲーターっていうのはジャパンサーチではつなぎ役って言っていますけども、図書館とか美術館、博物館、文書館、こういうところがつなぎ役になってヨーロピアーナをつくると。この後で出てきますけど、アメリカのデジタル公共図書館、Digital Public Library of America、DPLA、こういうものとも連携しているということです。
このデータ提供者の分布っていうのを見てみますと、国別のアグリゲーターっていうののデータ数、これはメタデータ数になっております。ですから件数ですけど1200万と。それから館種別のアグリゲーターっていうのが900万。館種別っていうのは、例えばオランダの国立美術館、ライクスミュージアムって、ここなんかは自分で直接ヨーロピアーナにデータを提携しているのでこういうのが入ってる。
それからこのヨーロッパの場合はEUプロジェクトというのがあって、これは特徴的なんですけれども、EUで、ECでお金を出しているわけですよね。初めからデジタル化をやらないっていうことで、このヨーロピアーナを通じてお金を出している。
だからヨーロピアーナっていうのはある意味で、デジタルアーカイブの助成機関になっているんですよね。年間20億近いお金を持っていて、これをいろんなところにばらまくって言葉は悪いですけれども、配分して、それでデジタル化をやらせているという、こういうことがありますので、EUプロジェクトの件数が結構大きいというようなことであります。
データの種類としてはやっぱりイメージ、写真ですね。写真が圧倒的に多くて、それから文字、これは本です。新聞もあります。本とか新聞です。それからあとサウンド、ビデオ。これはちょっとデータが2015年で古いのですけれども、なかなかこの辺の新しい数字が手に入らなくてちょっと古い数字になっております。
国別ですが、これも2015年でちょっと古くて申し訳ないですけれども、フランス、ドイツ、スウェーデン、イタリアというのがあって、この大体EUを引っ張っているのはやっぱりフランスとドイツですからね。フランスとドイツが大変多いということです。
意外と少ないのはユナイテッドキングダムっていう真ん中の右のほうにありますけど、イギリスっていうのは今回EUから離脱しちゃいましたけども、なかなかやっぱり独自路線ということで、やや貢献が少ないということであります。やっぱりヨーロピアーナの特徴っていうのは、ヨーロッパのEUに加盟している、あるいは加盟していない国も含めて、ヨーロッパの非常に多くの国を網羅しておりますので、そこがやっぱり非常にダイバーシティーというか多様性を担保しているっていうことが一つはすごいのかなと思っています。
DPLAですけど、アメリカのデジタルアーカイブコレクションで、ちょっと数字が隠れちゃっていて申し訳ないですけど、そこの下に2200万と書いてありますが、これもちょっともう古くなった数字なんですけれども、ごめんなさい、ヨーロピアーナもDPLAもそうですけど、こういう数字ってなかなか難しくて、例えば時々ごみ掃除をやるんですよね。本当にどうでもいいっていったら言葉は悪いけど、非常に汚いデータなんかも紛れ込んでいますので、こういうのを捨てたりすると時々減ったりするんですよね。
だからこういう数字っていうのはあくまで目安として見ていただいて、また先ほどヨーロピアーナっていうのは4000万ぐらい、こっちは2000万ぐらいってちょっと少ないということが言えます。これもアメリカも先ほど言いましたように、大変日本の文化資産っていうのはありますし、これもたまたま歌麿ですけれどもこういうものを見ることができます。
(2)米国デジタル公共図書館(Digital Public Library of America)
これはDigital Public Library of Americaということでヨーロピアーナが非常に成功しているので、ぜひアメリカでもやりたいと。ただ、そのアメリカというのは特定の機関を除いて国っていうのがこういう文化事業に関与するっていう伝統がないんですよ。
確かに公文書館とか議会図書館とかありますけれども、例えば国立美術館っていうのはないんじゃないかな。あるかもしれないけど、そういうところはやっぱり違うんですよね。だからどうしたかっていうと、図書館なんかが話し合って、私たちでつくりましょうという、ある意味では草の根でつくったというところが大変違います。
したがって、これが2013年4月に始まって、2019年4月にはこういうふうにアメリカ中に広がったと。まだ一部参加していない国がある。これも2019年の数字ですけども、この後コロナになっちゃって、DPLAの総会っていうのがちょっとなくなっちゃったものですからその後の数字がちょっと手に入らないのですけれども、大体今はこんな状態になっています。
何を言いたかったかっていうと、ここで図書館の連合体ですから、基本的に国の支援っていうのはないわけです。図書館なんかは、会費を出しても知れているので、これは基本的にいろんなところの補助金を取って運営しています。
ですからちょっとヨーロピアーナと比べて財政的にはかなり苦しいっていうか、どうやって維持していくかっていう問題がある。もちろんスタッフもそんなに多くないというのですけども、一応かなりこう、システムとして確立している。
そういう意味では日本のモデル、ジャパンサーチっていうのは、これは完全に日本の国のお金でやっていますから大変ある意味じゃ安定している、財政的に安定しているっていうことでヨーロピアーナに近いというようなモデルになっています。
ちょっと特筆したのはウィキペディアとの連携ということで、ウィキペDPLAっていうのですけど、これはどういうのかというと、一つはDPLA、横浜っていうこれはウィキペディアの英語版ですけど、検索してみますとこういうふうにDPLAのリンクが出てくると。こういうような機能があります。
これはクロームの、グーグルクロームのアドオンみたいな形で実現できます。それからもう一つは、これをやりますと、ここをクリックしますと、この場合はニューヨークパブリックライブラリーのデジタルコレクションから横浜の横浜吉田町より馬車道を臨むという、こういう色つき写真ですね。カラー写真ではなくて後から色をつけた絵はがきですけど、こういうものを見ることができます。
(3)ジャパンサーチ
で、ジャパンサーチについてはもう既に詳しく説明がありましたのでこれは飛ばしますけど、連携機関とここにありますように、こういうようなところが現在協力関係を結んでいるということがホームページに掲載されていますので、見ていただければよろしいかと思います。
カルチュラルジャパンについても先ほどご紹介ありましたので先に行きたいと思います。
(4)東日本大震災アーカイブ (ひなぎく)
特にここでご紹介しておきたいのはポータルとしてテーマ別のポータルっていう、必ずしも多くないですけど、東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)というのがあって、これは2011年3月11日ですか、ここに東日本大震災っていうのが発生したわけですけども、これをやっぱりデジタルアーカイブとして保存しましょうということで、いろいろ議論があって最終的に国立国会図書館が引き受けて総務省のプロジェクトということで始まったんですけど、国立国会図書館が引き受けて運営をしております。
ここにありますようにユーチューブとかそういうところにも全部リンクされていまして、これを見てもちょっと分かりにくいと思うんですけど、車が津波に流されたところですね。それを被災者の方が建物の屋上から何かからスマホで撮っているわけですよね。そういうものが記録されているというわけであります。ここにありますように、動画とかいろんな資料とか、それから写真とかが載っているというわけです。
(5)インターネットアーカイブ
ここでちょっと、これが少し実際にアーカイブをやっている機関の紹介ですけど、インターネットアーカイブにつきましては、さっきから何回も出ていますけども、もともとこれはアメリカのサンフランシスコにありまして、プレシディオというところに最初はあったんですよね。これは御覧のとおりゴールデンゲートブリッジが見えるすごく風光明媚な場所に、こんな感じですけども。ここにこういう建物があって、これがインターネットアーカイブの本部だったわけです。ここですとかなり小さいですから、20人、30人ぐらいいたらもう満杯というようなところでやっていた。
ここにあるのはただで場所を借りられたのでここに落ち着いたというわけであります。現在はここから車で20~30分でそんなに遠くないんですけど同じサンフランシスコの中でここが本部になっております。これはもともとアメリカのどっちかというと新興宗教の教会だったところを買って、それで本部にしています。こんな感じで皆さん仕事をしていると。これはどういうところかというと、まず非営利団体で、ブリュースター・ケールっていう人が創設した。
名前を読むとカールって読みたくなるんですけどケールというふうに呼んでおります。1996年にウェブサイトの収集を開始したということで、細かい経緯は書いてありませんけど、最近「カナダに支部(?)を」ってクエスチョンしているのはちょっと法的にはカナダに独立したインターネットアーカイブのブランチ機関っていうのをつくったわけですよね。
そこになぜつくったかっていうと、実はトランプが大統領になってもう6年になりますかね。6年前になったときに、もしかして言論統制が起きるかもしれないっていうことを非常にブリュースター・ケールが危惧しまして、やっぱり避難、バックアップをつくろうと。で、カナダにつくろうということで支部をつくるということを。こちらにはサンフランスコにある本部のデータをコピーして置いておくというようなことをやっております。
ここでやっている主なプロジェクトとしては、さっき言いましたウェイバックマシン、それからTVアーカイブ、それから書籍。この辺はもう既にご紹介いたしました。そのほか動画とか音声と画像、ソフトウェア。最後のソフトウェアも紹介されております。こういう多方面のものを、実際にコンテンツを集めて実際に保存しているというところが、これは博物館と一緒で、自分たちではインターネットアーカイブというのは図書館だというふうに言ってるわけですけれども、そういう機関であります。
(6)フィジカルアーカイブ
ちょっと一つだけご紹介しておきたいのは、フィジカルアーカイブというのがあって、これは本の電子化ってやっているわけですけども、この電子化した本っていうのはどうするかということです。
例えば先ほど紹介しましたアメリカの……、あれは細かく紹介していなくて、アメリカの議会図書館ですね。ライブラリー・オブ・コングレスでも新聞の電子化プロジェクトっていうのをやっているのですけども、ここでは実はもともとの新聞っていうのはもうないんですよ。それでマイクロ化しちゃって、マイクロフィルムにしたものがあると。それをデジタル化する。そうすると元のマイクロフィルム、あれはもともとの紙の新聞はどうするかっていうと大体捨てちゃうんですよね。
どこの図書館も、日本に限らず大変場所がないので、デジタル化するっていうのは書庫を整理するためにデジタル化するんだっていう考えもあるわけです。ちょっとそれはいかがなものかっていうのがこのフィジカルアーカイブの考えで、そういうものを集めて、もうとにかく捨てないで倉庫に保管しましょうと。
これはすぐに見るわけじゃないので、取りあえずとにかく保管しましょうということで、このフィジカルアーカイブというのを始める。
これはフィジカルアーカイブが始まったときのお披露目のときの写真ですけど、真ん中に立っている茶色いジャケットを着ているのはブリュースター・ケールです。後ろにあるすごいコンテナ、これが本を入れたコンテナなわけです。こんなコンテナで、この人が立っているのでサイズは分かりますけど、コンテナの中にこういうふうに段ボールをただ積んでいるわけですね。
この中に本が詰まっています。これ、めったに出すことはないわけですけど、取りあえず取っておこうと。こういうふうにラップをかけて、それから一応空調も入っておりますので恒温恒湿にして、それから虫が入らないようにして、それで保存しておく。各本については全部カタログしていますので、何かの拍子で例えばデジタル化したのにこのページ全部飛んでいるじゃないかと、これは非常に貴重な本でぜひ読みたいっていうことがあれば、ここから取り出してもう一回デジタル化すると。あるいはそういうことができるわけで、とにかく捨てないで、そういうのをやめましょうということでやっているわけです。
ブリュースター・ケールは、これは先ほどのプレシディオのところでお伝えしているんですけど、こういう人ですけれども、これはどういう人かというと、もともと人工知能といいますか知識データベースの開発者で、そこでいろいろやったものをアマゾンに売ったりして大分お金を稼いだんですね。そのお金をアメリカでは起業者っていうのはものすごくお金を稼ぐ、何億、何十億って稼げるわけですけども、そのお金を自分でリタイアして何かカリブ海か何か行ってやるっていうんじゃなくて、この人はインターネットアーカイブを始めたと。それで自分のお金で始めたというようなことであります。
(7)ウィキペディア
最後にウィキペディアの話をしたいと思います。ウィキペディアっていうのは皆さん誰でも御存じだと思いますけど、御覧のようにフリーエンサイクロペディア、フリーというのは無料だっていうことですね。お金の取られないエンサイクロペディアっていうことで、英語が620万件、これは1年ぐらい前の数字だと思うのですけど、日本語が120万件とこういうような数で、多いところでいうと日本は必ずしも上じゃないですけどトップ10には入っているのかなというふうに思います。
これはジミー・ウェルズっていう人が2001年に始めたものですけれども、ですからこれはもう20年以上ですね。もともとインターネット百科事典ということで、百科事典だから内容をやっぱり詳しくちゃんとチェックして載せるべきだっていうふうに誰でもそう思うわけです。だけど、そうすると記事が集まらないっていうか、やっぱりチェックに時間がかかるわけですよね。当たり前のことで。それをもうやめようと。要するにとにかく書いたものは全部公開して、それをみんなが訂正するような仕組みをつくった。
これがやっぱりインターネットの、一応クラウドという考えですけれども、誰でも訂正できるっていうところが大きかったですね。それで急激に記事が増加して現在に至っているということです。この絵はジミー・ウェルズですけども。先ほど言いましたようにウィキメディア・コモンズというのが姉妹プロジェクトとして、これはデジタルアーカイブの保管庫になっているということで、これはもう紹介いたしました。
(8)ウィキペディアタウン
ここでウィキペディアタウンについてちょっとご紹介したいと思いますけど、これは世界的なプロジェクトですけど、日本では結構盛んに行われています。これは地域の有志が集まって地域に関するウィキペディアの項目をつくる、あるいは項目を編集するということでイベントとして実施していると。これで集めた写真とかそういうデータをウィキメディア・コモンズに搭載して、これをギャラリーとして閲覧できるような仕組みになっています。
例えばこれは岐阜県岐阜市弥八町にある地蔵の弥八地蔵っていうんですけど、私がちょっと現物を見たことがないのですけども、こういうふうにページがある。このページはこのウィキペディアタウンっていうのでページを、ゼロからつくったのではないと思うのですけれども、編集している。ここに一番上にギャラリーがありますね。
こういう写真は新しく撮ったりして、それで編集すると。こういうことをやっているわけですね。これがその写真の一つですけれども、ここに、これはウィキメディア・コモンズに載っている写真ですので、右下に「CC 表示・継承 4.0」と書いてありますけれども、荒川宏さんという方が撮影して投稿しているわけです。
ですからこれはCC BYですので、自由に皆さん使うことができます。こういうふうにいろんなウィキペディアタウンがあって、これは函館市中央図書館のウィキペディアタウン、これは和束町っていうのですけど、どこだったかな。忘れちゃいましたけど、そういうのがある。ちょっと調べてみたんですけれども、このコロナの中でこういう人が集まるというのはなかなか難しいんじゃないかと思ったら、去年だけでもすごくたくさんやったんですね。ざっと50~60は、2022年の1年間だけれども日本中でこういうのが行われています。
そういうことでデジタルアーカイブというのはいろんな種類がありますよと。デジタルアーカイブのポータルサイトとか、その他のデジタルアーカイブにはこういうものがありますということをご紹介いたしました。 (文責:久世)
デジタルアーカイブと法制度の現在地点
骨董通り法律事務所パートナー弁護士 福井健策氏
➝ プレゼン資料:デジタルアーカイブと法制度の現在地点
内 容
1.デジタルアーカイブと著作権
「デジタルアーカイブと法制度の現在地点」ということで、法制度の中でも特にまずは大体権利のお話から始めることが多いですね。
この御覧いただいている表は、デジタルアーカイブに関わる、どんな作品利用も大体共通なんですけれども、著作権回りの権利を1枚の表にしたという比較的お値打ちなものなんですけども、大体いつもここからスタートすることにしています。もう見たことあるよという方もいらっしゃるかもしれませんが、まあ復習は何度してもいいものですので、お付き合いいただければというふうに思います。表をどういうふうに見るかというと、まず一番上のこの行を御覧ください。左から2番目です。著作権と書いてあって、いろんな文芸とか講演、映像などの要素があります。これが大体著作物の例になります。代表的な例ですね。例えば映像のアーカイブを行おうというときに、映像だって言っているだけだと、まだ権利のことっていうのは見えてこないわけです。それを要素ごとに分解する必要があります。例えば映像自体も1個の著作物ですけれども、そこには例えばシナリオがあるかもしれません。そうするとシナリオもその映像の中に要素として含まれておりますから、これも同じく著作物で著作権が働くよと。もしそこに原作があるなら、原作の文芸も著作物で著作権が働くし、映像音楽が使われているなら、この作詞作曲も著作権があるよということを意味しています。で、左側のこの列を御覧いただければなんですけれども、皆さんが行いたい利用が記載されています。例えばデジタルアーカイブにするときっていうのは、大体撮影をするとか、あるいはスキャンしてデジタル化するとか、それをサーバーに蓄積するというようなことをやるわけですが、これは全部複製です。それからデジタルアーカイブ公開を行うときには、例えばネットで人々が見られるようにする。これは広くネット配信というふうにくくっていまして、3つ下にありますね。あるいは会場に来れば、館に来ればスクリーン越しに見ることができるよっていう状態はこれ上映でして、上から2つ目のところに記載がされています。行いたい理由を決めて使いたい要素が決まりますと、その交点のところを御覧いただければなんですけれども、赤丸がついておりますね。これは何を意味するかというと、権利者に権利がある、つまり権利が働いているよと。よって、許可が要るよということを意味します。さすが著作権は権利の王様というだけあって、大体どの利用も全部権利者の許可がないとできない。だからデジタルアーカイブと言われるような行為は、原則としては許可が要るよというところからスタートになります。
これだけではまだないですね。著作物に当たらないような要素にも、別の権利が働くことがある。例えばもう一つ右側に移動していただくと、俳優・ダンサー・演奏家等というふうに括弧内に書いてあって、著作隣接権と一番上に書いてあるんですよね。これは俳優の演技とかダンサーのダンス、それ自体は著作物ではないけれども著作隣接権というちょっともうちょっと狭い権利があるよと。そして今日詳細は省きますけれども下を御覧いただくと、権利が働く場合があるよということで赤い三角が書いてあるんですね。だからやっぱりデジタル化をするとか、あるいはそれを配信するというときには、一定の場合を除いて許可が必要だと。これがなかなか大変で、映像作品なんかだと、これで一気に権利者の数が倍ぐらいに増えるわけですよね。さらに音源。レコードなどの、あるいはダウンロード音源でもいいんですけど、この音源には大体レコード会社が別な著作隣接権を持っています。原盤権とよく言われる音源の権利です。これもやっぱり丸印がデジタル化とネット配信のところに記載されていて、要するにデジタルアーカイブっていうのはかなり権利に関わる部分が多いなあということになる。で、この原則どおりにやっていると、世の中あまりうまく回らないことが多いわけですよね。よって例外規定というのが著作権法にはあって、今のどの権利についても共通なんですけれども、こういう場合には許可なく使っていいよ。こういう場合は権利者の許諾がなくても、連絡がつかなくても、場合によっては反対されていても使っていいよと、こういう例外規定が置かれています。これが緑字で一番右側に記載されているのですけれども、利用類型ごとに一番上にはどんな利用にもこういう場合は使えるよということで、写り込みと、今日詳細は話しませんけれども引用とか。皆さんにも身近な引用とかね。あとは建築物なんかだとかなり幅広に自由に使えるよっていう例外規定がありますので、こういうのは全部の利用に適用される例外規定。それに対して一つ、一番右を1つ下に下りますと、例えば私的複製という有名な例外がありまして、個人的に楽しんだり勉強するためだったらコピーは構わないよ、ダウンロードも構わないよという規定がある。これがあるから皆さん例えばホームページのプリントアウトとかができるんですね。あれって複製のうちですから、これがなければプリントアウト一つ自由にはできないということになるわけですけれども。この中に検索・解析用のアーカイブというのが書いてあって、これが非常に関わってくるので後でお話ししましょう。もう一つ下の非営利の上映なんて書いてありますから、例えば映画の非営利、入場無料の上映会なんかはこれがあるので自由に行えるという、そういう例外規定だったりします。この両方の組合せで著作権の問題というのは解消するというお話を今日の前半ではするのですけれども、赤字で書いてあるところ、つまり許可を取らなきゃいけないという原則の当てはまる部分はもちろん権利者を探し出して許可をもらう。これを許諾といいます。赤字で許諾と一番下に書いてありますね。一方でこういう場合は許可がなくてもできるよ、これが非許諾。緑字の非許諾。この両方をうまく使いこなしてデジタルアーカイブっていうのは何とか構築できる、また活用できるという場面が多いし、今は鍵になっているよというお話です。
2.所在検索サービス規定の射程
1つ先に行きましょう。この中の所在検索のためのアーカイブ化という気になる例外規定があって、これを少し紹介します。世の中にはもう膨大な作品があるわけです。そしてアーカイブっていうのは特に膨大な作品を扱うわけですけれども、この膨大な作品、世の中のどこに存在するかというのは簡単には分からないわけです。例えば書籍なんて世界中には過去1億冊以上の書籍、図書が出版されていると言われていますけれども、そのどれが一体どこに存在しているのか、どの図書館に行ったら見られるのか、どの本屋さんで売っているのかなどということは容易には分からない。我々は検索をする必要があるわけです。そこでこういう、ある情報とか作品を特定したり、その所在を調べるための所在検索サービス、これは著作権の心配はせずに行うことができます。それを行うためには特に全文検索と言われるものを行うためには、作品自体を全部デジタル化してアーカイブしておきたいわけですね。デジタル化してアーカイブしておかないと全文検索というのはなかなかできない。これをやっていいよという例外規定があります。検索サービスのために、例えば過去に出版されたどんな書籍でも、図書館から借りてこようが、あるいは購入してこようが、それをデジタル化して構いませんよ。データベースにして構いませんよ。で、ユーザーにそれを提供して、提供っていうのは検索のために提供して、ユーザーが検索して、あっ、その書籍はここにありますよという結果を得ることをやって構いませんよという規定です。これは書籍だけじゃありませんで、例えば映画だろうが音楽だろうが放送番組だろうが、どれでも行えます。ちなみにこの今、御覧いただいているイラストは文化庁の資料に載っているイラストで、文化庁自身がこういうもので自由に使ってくださいねということを発表しているわけです。ただ、これだけだと検索結果って、例えばタイトルが載っていて、いつ発行された書籍であるか、著者の名前等が出ている、いわゆるメタデータが出ている。メタデータは著作物ではないケースが大半ですから、こういうものを表示することはできるんだけど、これだけだと自分が探している本かどうかよく分からないっていう問題が生まれるわけですよね。例えば「福井健策」で全文検索すると、まあまあさすがに100冊以上多分ヒットするでしょう。もっとかもしれません、ヒットするでしょう。その中のどれが自分の探している本なのかって書籍名と著者名では分からないわけですよね。そこで、この著作権の例外規定は、抜粋の表示までしていいよというふうに言っています。抜粋。例えば福井健策が登場する箇所の前後2~3行の本文を表示していいよ。そんな大層な話じゃなくてグーグル検索なんかでふだんやっていることですけれどもね。この抜粋の2~3行っていうと、これは著作物の一部を映していることになりますから著作権の心配があるのですけれども、いや、それはやっていいよと。それどころかその書籍の場合には書影のサムネイルぐらいまでは映していいよと。これ、正面切って著作権法が認めたのは2018年の改正で初めてでありまして、まだほんの4年、施行からでいうと4年ちょっとしかたっていないわけですけれども、これ、大きいわけですね。これができると相当デジタルアーカイブというのは、権利処理なしにできるということが分かります。全文をデジタル化して、OCRをかけて、全文検索できるようにして、そして検索結果のメタデータとそれから一部の抜粋を表示することができるとなると、これはかなりいいねということになるわけです。つまり膨大な作品が流通する現代社会で、権利の壁というのはとっても高くて厚いわけですけれども、この権利の壁を乗り越えるための恐らく最重要の法改正が2018年、この今紹介している法改正ということになりそうです。誤解のないように言うと、全文読ませちゃ駄目なんですよ、デジタルで。検索結果が、はい、出ました。じゃあその書籍、全文読みましょうねって言って全文読ませちゃうと、これは無断ではできない。当たり前ですけど、それを無断でできるようだったら電子書籍サービスはみんな無断でできることになりますけど、そんなことはないわけで、それは許可を取らなきゃいけない。私の言っているのはメタデータと抜粋の表示まではできるよ、そのためのデジタルアーカイブ化、データベースづくりまではできるよという話でした。
3.非許諾/許諾モデルの活用:舞台映像、戯曲
これを組み合わせて、現にこの4年の間にいろんなデジタルアーカイブが動き始めています。まだ動き始めたというところですけどね。というのはこの制度はそこまで十分認知されていなかったりしますので、動き始めたところですが、例えば舞台映像とか戯曲、私自身も理事で加わっているのでこれをご紹介すると、EPAD(イーパッド)と言われる文化庁事業があります。文化庁から委託を受けて行っているのですけれども、これですと舞台映像ってやっぱり失われたり、散逸、忘却されやすいんですね。しばしばほこりをかぶっていたりするわけです。でもとても貴重な文化資源ですので、これをコロナ禍で危機にあえぐ舞台界から収集した。収集対価を払うわけですけれども、収集した。大体1300本ぐらい第1期で収集しました、1年間で。これを早稲田大学の演劇博物館さんにデジタルで納めて恒久保存していただく。そして利用者が今、左上で御覧いただいているようなページにアクセスをして、例えば作品名とか、あるいは何かキーワードで検索等を行うと、舞台映像、作品がヒットします。そしてメタデータ、誰が作、演出。出演者は一体誰なんだというようなメタデータが表示されて、さらにはサムネイル的な画像を見ることもできる。これ、許諾なしでやっています。そうでないと1300本の権利者を全部探し出して許可をもらうっていうのは、これはちょっと至難なんですね。舞台映像っていうのは非常に権利者が多いので。1年間で1300本の権利処理を行うっていうのは到底無理なんですけれども、ここまでは非許諾でできるから行えた。加えて非営利の上映はできますっていう話をさっきしましたよね。よって早稲田の演劇博物館さんに行くと館内で、これは予約制なんですけれども非営利の全部の閲覧を行うことができる。これは映像全体の閲覧です。ここまで非許諾でできる。これだけでもまあまあ、大変褒めていただいたんですけれども、加えて権利処理が可能なものを300本ほどピックアップしまして、弁護士などの専従チームが朝から晩まで権利処理をサポートして、そして権利処理が済んだものはユーネクストなどで商用配信しています。これは許諾です。権利者を探し出して許可をもらい、当然だけど対価を還元する。ユーネクストの商用配信で、まあ追加分は幾らでもないですけれども、チャリンチャリンとお金が権利者に落ちるようになっている。この部分は赤字で許諾なんですよね。つまり非許諾と許諾を組み合わせることで、こんなのを行えた。その後もおかげさまで事業としては継続しておりまして、現在第3期が終わりつつありますけれども、作品数も配信数もどんどん増えています。併せて、同じEPAD事業の一環として戯曲のデジタルアーカイブ化っていうのも行ったんですけども、これが下のほうなんですけどね。右下のところにあるのが、これが日本劇作家協会にさらに再委託して運営していただいている戯曲デジタルアーカイブ。ここでは553本の過去の日本を代表するような戯曲をデジタルアーカイブ化して、そして検索、それだけじゃなくて全文をダウンロード、無料でできるようにしています。御覧いただいているのは松尾スズキさんの傑作ミュージカル「キレイ」という作品ですけれども、とても人気のある作品ですけれども、このとおりPDFですけれども全文無料でダウンロードできるんです。何で全文無料でダウンロードさせるんだっていうと、この作品の詳細ページを開くと、作品詳細を表示っていうページを開くと、わあっとメタデータが出るんですけれども、その下に上演許諾の申込みはこちらというボタンがある。それをクリックしていただくと、劇作家協会に届きまして、上演許諾の取次ぎをしてくれる。これは有料なんです、恐らくは。もちろん作家さんの考え次第ですけれど。つまり劇作家は戯曲なんて書籍で売ったところでいくらも売れるもんじゃない。それよりもやっぱり上演してもらって何ぼだから、上演してもらうためには読んでもらわなきゃいけない。だから無料でダウンロードさせる。全国の中高生でも構わない。もちろん市民劇団でも構わない。読んで、自分もやりたいなと思ったらどうぞ上演許諾の申込みをしてください。それが値打ちであり、場合によってはそこで上演の許諾料はもらいましょうと。恐らくビジネス的には極めて正しい考え方ではないかなというふうに思いますけれども、こんなことをやっている。これは許諾です。全文ダウンロードですからね。こんなふうに非許諾と許諾の組合せによって行っているデジタルアーカイブ、少しずつ増えてきています。
4.変わる国会図書館とデジタルアーカイブ
さあ、このさっきの47条の5ですよね、所在検索サービスを活用している存在としては、当の国もありまして国会図書館ですね。これはやっぱり非常にこのところ調子がいいというか、積極的に取り組んでいらっしゃるなと思いますけれども、一番真ん中の映像が、お使いの方も多いと思いますが国会図書館のデジタルコレクションと言われる、彼らが過去の蔵書でデジタル化したものの検索サービスを提供している。これ、今年から全文検索が可能になったんですよね、OCRから。そうすると御覧いただいているのは、例えば『不思議の国のアリス』の昭和9年の翻訳版で、アリスの不思議な冒険譚っていう、なかなか実はこっちのほうが原題に近かったりするんですけども、翻訳タイトルがついていますけれども、こういうOCRをかけてあるものは全文検索が可能なんです。そうすると、例えばアリスインワンダーランドっていう言葉で検索をかける、あるいはアリスとウサギって言葉で検索をかけると、恐らく100冊以上わあっと出るでしょうけど、それだけだと分かりませんね。自分が探しているのはどれなんだ?って。でもさっき言ったとおり抜粋表示が可能ですから、国会図書館は既に抜粋表示をするようにしていますから、そうすると自分が探しているこれがアリスの本であるのかどうかということを探しやすい。その上で著作権が切れているこういう作品だと、インターネットで全文を読ませる。物によっては全国の図書館等に行くと見ることができる。物によっては館内閲覧だけはすぐできるというふうに使い分けていますけれども、少なくとも全文検索はどんな本についても可能にしているわけです、可能な取組を始めているわけです。これはさっきの47条の5、所在検索サービスなわけですけれども、実を言うとインターネットで全部を読めるのは、そういう著作権が切れた古い作品だけではありません。例えば向かって右側ですね。これはディケンズの『クリスマス・キャロル』なんですけれども、村山英太郎さんの訳で1967年版なんです。これ著作権は、ディケンズはとっくに切れていますけど、村山さんの翻訳は切れていないです。だから著作権の切れた、いわゆるパブリックドメイン、PD作品じゃないんです。じゃあ何で国会図書館はこれを全文をみんなに読ませることができるんだ。全部権利処理、権利者の許可を取っているのかっていったら、そんなことは国会図書館にはできません。じゃああれか、著作権侵害をしているのか。全文を読ませちゃいけないってことを知らないのかっていうとそうではなくて、これはもう一つのさらに最近の著作権法の改正、2021年の著作権法の改正によって、市場で流通していない絶版などの書籍に関しては、もう個人向けで全文送信してよいという例外規定が新たに入ったんです。直近ほやほやの2021年改正。施行は昨年夏前。えっ、岩波少年文庫の『クリスマス・キャロル』は絶版じゃないだろう?と思うわけですけれども、これはもう新訳に変わっているんですよね。ですから村山英太郎訳は既に絶版であると。入手困難であるということで、このとおり全文が読めるようになっている。そうすると、懐かしくていいですよね。私が少年時代は図書室、図書館なんかに行きますと、岩波少年文庫と言えばこの表紙でした。今の表紙も好きですけど、まあこれも懐かしいなとか思いながら中を全文読むことができる。そのほかに書籍だけじゃなくて、このNDLイメージバンクという左下のものなんかは、古い時代の着物とか、あるいは紙の図版ですよね。こういうもので著作権が切れているものは皆さんどうぞ自由にダウンロードして、例えばブックカバーでも何でも自由に使ってくださいっていうことで国会図書館は公開しています。かなりデジタルアーカイブとしては、使ってもらうアーカイブっていうことに踏み出してきていますよね。
5.著作権の潮流:許諾利用+非許諾利用
ということで最近非常にネットの人気者になっている国会図書館さんの紹介でしたけれども、こんなふうに著作権の潮流をちょっとまとめますと、許諾利用と非許諾利用の組合せということでさらに激増した作品、そして激増した利活用の方法に対応するために、権利の問題をいかにスムーズに処理するかというところに今はフォーカスが当たっています。国も完全に、政府もその方針です。例えば御覧いただいているのは非許諾利用。緑字は非許諾利用でどう充実化させてきたか。21年に本格稼働した非営利の全国の教育機関でのオンライン講義のある意味での自由化、それから今ご紹介した国会図書館での絶版などの資料の個人向けの送信、さらに今年度稼働する予定の非常に大きい改正としては、国会図書館に限らず全国の図書館や博物館などでは、いわゆる資料の複写というものをやっておりますよね、資料の複写サービス。あれは従来は紙でもらうのがほとんどだったわけです。全体の半分以下ですね。ところが遠隔の方、これは郵送してもらうことは従来できていたんですけれども、いや、こんな時代だからメール送信をお願いできると便利だなと、利用者として。それ、できるという法改正を21年にしまして、関係者間協議を経て、今年の6月に稼働の予定です。これからは国会図書館に限らず図書館や博物館などにアクセスをして、この本の資料をメール送信してくださいとお願いすると、コピーをメール送信してくれるということになります。これ、特徴はというと、さっきの絶版等っていうような、絶版などというような条件がついていないので、例えば新刊本でも理論上できます。通常の資料複写がメール送信に変わるわけです。いや当たり前でしょ、この時代だからと思われる方もいるかもしれないが、作家や出版社からするとこれはかなり思い切った改定でして、なぜならばメール送信するっていうことはデジタル化されているってことです。電子書籍サービスと限りなく近似してくるんですよ。全体の半分かもしれないけども、言ってみれば電子書籍的なものが送られてきちゃうわけですから。ということで、これは無料ではありません。利用者は出版社や作家が電子書籍を無料で読まれたとしても損失がない程度の手数料を支払うことが想定されています。また全体の半分までです、恐らくね。この全体の半分っていうことについては、現時点では恐らくと申し上げておきますけれども、こんなサービスも始まるということで、非許諾でできることってどんどん拡充しています。で、恐らくですけれども非許諾での大幅な拡充はもうそろそろ打ち止めです。まだちょっとずつはやるでしょうけども、大幅なものっていうのはそろそろ多分打ち止めで、もうここから先は赤の許諾のところをもっと便利にしていくしか恐らくは突破できない。なぜなら国際条約がありますからね。著作権ってそんなに一国の意思だけでどんどんどんどん自由化できない。国際条約でかなりきつく縛られているので、ここから先は許諾を取りやすくする方向の改正を進めていくんだろうなということで、今年というか今年度か、私も委員で加わりましてずっと文化審議会ではこの議論をしていました。権利者を探しやすくするために権利情報のデータベースを分野横断で充実させていこう。そのために民間を支援しよう。それからジャスラック的な権利の集中管理をもっと促進しよう。ジャスラック的っていうと皆さんはちょっと不安な気持ちになる方もいるかもしれないですけども、やっぱり便利は便利なんです。ワンストップで権利の許可が取れますから。ということで、他の分野でもそうした集中管理をできる限り進めていこう、その後押しをしようじゃないか。さらには権利処理をしたい、権利者を探したいという利用者側は、大体権利のことはあまり詳しくないですよね。そうすると利用者のサポートがもっと要るだろうということで、一元的な利用窓口というものを立ち上げまして、権利者とのつなぎをしてあげよう。権利者探しの手伝いをするような利用窓口を公的支援でつくろうと。その上で、なお権利者が不明であるとか、あるいは連絡をしてもいつまでたっても返事がないとかいうような場合には、時限的な利用を可能にしよう。これはかなりデジタルアーカイブにとっても恐らく重要な規定になるでしょう。この時限利用の可能化の部分は、考えようによっては緑字とも言えるかもしれませんね。結局、許諾が取れない場合のことですから。いずれにしてもこういうことを行って、許諾利用ももっと便利に取れるようにしようというわけです。こうすることによって権利者とそれから利用したい側がうまくマッチングされて、デジタルライセンス市場をつくり上げていこうよというようなことを話し合い、また進めているところです。これは間もなく、現在開かれている通常国会で法案が恐らく審議されると思いますので、皆さんも注目いただければというふうに思います。
さあ、こうした権利の壁、これを取り払うための努力というのは政府、また著作権だけとは限りませんで、これから後半に入っていくのですけれども、肖像権。これは皆さんも聞かれたことがきっとおありだと思うのですけど、人の肖像が写り(映り)込んでいる資料、写真とか映像とかやっぱりすごく悩ましいんですよね。著作権だけの問題じゃない、この肖像権というものが写っている人にはあるだろう。これは考えようによっては著作権以上に厄介なんですよ。何でかというと、著作権というのは著作権法という法律があるわけです。曲がりなりにも法律がありますから、そこにこうどういう場合に権利が働くかとか、どういう場合に例外的に許可なく使えるかというようなことは全部書かれているんですよ。読むのは大変、理解するのはもっと大変だけど、でも書かれているわけです。例えば権利っていうのはどういう順番で考えるかっていう、ちょっと皆さんの復習代わりにフローチャートを書いてみたんですけど。これはどんな権利にでも及ぶ考え方なんだけど、特に著作権をここでは例に取りましょう。何で著作権の知識を、権利の知識を身につけるかっていえば、要するにどういう場合は許可がないと使えなくて、どういう場合は許可がなくても使えるかということを仕分けるためです。だから許可がなくても使えるなっていうならデジタルアーカイブにも活用しやすい。許可がないと使えないんだなっていうなら許可を取りに行くしというわけです。この検討のスタートは、1番辺りから考え始めるのが多いでしょう。つまり自分が今行いたい利用というのは、著作権なら著作権が及ぶ利用なのかな。私は人の作品からアイデアを得たいと思っています。そのアイデアに基づいて私自身が創作したいと思っていますっていうなら、アイデアに著作権は及びませんから、これは著作権の及ぶ利用じゃないんですよね。よってノーに行きます。そうしたら利用可能です。いや、私は書籍をデジタル化してアップロードしたいんですっていうと、これは当然権利が及びますのでイエスです。著作権に及びますからね。次に、その利用を許す例外規定はあるか。私は文芸評論をやっておりまして、その評論を自分の名前で発表するんですけど、その中で対象となっている文芸作品を、必要な箇所を引用で使いたいんです。そうしたら引用の例外規定がある。じゃあ条件をうまく満たせば利用可能になる。私はみんなに小説全部を読んでもらいたいんです、大好きだからっていうと、そんな例外規定はありませんのでノーに行きます。一般個人にはそんな例外規定はありませんのでノーに行きます。で、権利は続いていますか、パブリックドメインですかっていうのは次の問いです。紫式部という方でっていうと、もちろんそれは権利が切れているわけだから利用可能ですっていうか、そういう場合はそもそも3番から考えりゃいいだろうなと思いますけれども。村上春樹さんとおっしゃいますっていうと、もちろんイエスです。じゃあ権利者、管理者と連絡できますか。連絡できて条件協議はできますかっていうほうに行くわけですけれども、権利者が見つからないケースがあるんですよね。権利者が見つからない場合は、著作権の分野では従来は文化庁の利用裁定、さらには今現在検討している新制度によって使えるケースが出てくるでしょう。いやいや、ノーですと。権利者と連絡がついてはっきりノーって言われましたっていう場合、プロジェクトの見直しを検討するかなっていうような、そういうフローチャートで普通考える。著作権だとこれで結構いけるんです。
6.権利の考え方と「肖像権」
ところが肖像権です。肖像権法っていう法律はないんですね。あれは判例で、裁判の中でちょっとずつ認められてきた権利です。だからすごく曖昧なんです。すごく曖昧。最高裁が一番権威のある2005年の判決の中で言ったのは、それはね、肖像がちょっとでも写ったら使えないっていう誤解が世の中にあるようだけども、そうではないんだ。これは程度問題なんだっていうことを言っています。社会生活を営んでいる以上は、自分の肖像がそれは人目に触れることはあるでしょう。ある程度は我慢しなさい。しかし、いろんな要素を総合的に考慮して、一般的な我慢の限界を超えたら、これは受忍限度っていうのですけど、一般的な受忍限度を超えたらそれは肖像権侵害だよって言った。総合考慮による程度問題だよって言った。それはそうかもしれないけれども厄介ですよね。だって何百枚、何千枚っていう人の肖像が写っている写真をデジタルアーカイブにしようっていうときに、毎回毎回総合考慮できますか?ということで、このフローチャートに当てはめると肖像権っていうのは結構厄介なんです。つまり曖昧なんです。権利が及ぶ利用かどうかも総合考慮しないと分からないから曖昧なんです。それから権利が存続中かどうかも曖昧なんです。死亡と同時に肖像権は消滅するっていう意見が強いのですけれども、でも遺族の権利もある程度は守られるという裁判例もかつてはあって、よって死亡と同時にじゃあどこまで権利が弱くなるのかとかちょっと曖昧なんです。さらに権利者不明。アーカイブで使う肖像写真なんかでいうと、誰が写っているかよく分からないケースが多いので権利者不明なのですけれども、そういう場合に利用できる制度なんか存在しないです、法律がないですから。ということで、この厄介な肖像権。場合によっては著作権以上に厄介なもの。じゃあ肖像権法ができるのを待てるかっていうと、多分あと10年待ってもできないと思います。すごく人格権で深く関わりますからね。仮につくるとしたら、がっちがちのものができて、むしろ現場では使えないっていう結論を裏打ちするための法律だったらできるかもしれませんけれども、多分10年待ってもできない。
7.肖像権の指針を持つ試み
そこでデジタルアーカイブ学会、私も理事を務めておりますし、今日登壇の高野先生や時実先生も皆さん理事で、いつもご一緒に活動していますけれども、このデジタルアーカイブ学会の法制度部会というところでは民間ガイドラインをつくっていました。これが何度も何度も公開の会議を繰り返しまして皆さんの意見を取り入れながら、また同時に過去肖像権に関する裁判例って何十とあるんですけど、それを全部解析しました。総合考慮っていうけれども、一体どういう属性をその肖像写真が持っているときに肖像権侵害に当たりやすいんだよ。あるいはどういう属性を持っているときには肖像権侵害に当たりにくいんだよということを定型化・パターン化してみた。で、ポイント制にしてみた。ざっくりとしたことを言うと、例えば被写体の地位、写されている人の地位が公的人物、政治家などの場合には通常肖像権侵害に当たりにくいんです。パブリックフィギュア論ですね。よって、例えばそれにはマイナス10点をつける、ここでは点数は紹介しませんけど、ガイドライン、デジタルアーカイブ学会のホームページで公開されていますので御覧いただければもっとずっと詳しい説明が出ていますけれども、例えばマイナス10点がつく。マイナスになるんです。それに対して未成年、これは要保護性が高いからプラス10点などのプラス点がつくんです。さらには2番、何をやっているところを撮られた写真ですか。公開の行事だったら、それは肖像権侵害になりにくいからマイナスなんです。被災時、負傷時、病気療養時あるいは水着など高露出度のときには、それは肖像権侵害になりやすいからプラス点なんです。どこで撮った写真ですか。例えば道路とか公園みたいな公共空間ですっていうと、これは肖像権侵害になりにくいんです、過去の裁判例からすると。だからマイナス点。それに対して閉鎖的な空間、病院や店舗あるいは避難所、あるいは私的な空間、自宅などの場合だと肖像権侵害になりやすいのでプラス点。どうやって撮られたものですか、4番。撮影については黙示の同意がある。公開についてまで同意したかはよく分からないけど、撮影についてはこの写真から見て明らかに同意がある。なぜならば写真に向かってこうやっているから。これは撮影はどうやら了承しているねと。そうするとやっぱり肖像権侵害になりにくいのでマイナス点。逆に隠し撮りだったらプラス点になりやすい。群衆の中の顔はマイナス点。逆に大写しだったらプラス点。肖像権侵害になりやすい。長時間が経過したものはマイナス点。経過すればするほど恐らくマイナス点。利用の目的が報道とか研究とか教育とか学術的なアーカイブだっていうならマイナス点、なりにくい。商用。商用で利用しますよと、フォトストックですよなんていうとプラス点。というわけで、これらそれぞれポイントにも重みづけがされているんですけど、それを写真ごとに加算減算して、何点以上だったらじゃあマスキングなしの公開オーケーねというようなことを民間ガイドラインで提示しているというわけです。おかげさまで大分利用の場面が広がってまいりまして、アーカイブ機関だけじゃなくてメディアでかなり利用いただいているみたいです。一応ユースケースとしては非営利のデジタルアーカイブでの写真利用っていうふうに想定はしているのですけれども、確かに応用はほかのジャンルでも利きますから、新聞とかテレビ局さんなんかで割と検討の指針として使っていただいているというお話を当の団体から教えていただいたりしています。ありがたいことだなと思ったりしています。
さあ、こんなふうな民間の指針、これをさらに法制度、権利はおろか法制度も越えて広くデジタルアーカイブ全体の羅針盤をつくれないかという試みをデジタルアーカイブ学会では昨年から議論しています。これは時間があったら少し今の肖像権ガイドラインの実地をやってみたいと思ったんですけどちょっと恐らくスキップと書いてあるとおり、時間の関係でもし最後余ったら戻ってくるかな、にさせてください。
8.デジタルアーカイブ憲章の提案
デジタルアーカイブ全体の指針の話に行きます。デジタルアーカイブには基本法がありません、御存じのとおり。博物館法にデジタルアーカイブという規定がやっと1文が入ったっていう段階です。そこで我々は全体の羅針盤になるようなデジタルアーカイブ憲章をつくれないかということをやはり法制度部会、そして理事会などの協力でつくり上げておりました。現在、3回のやはりオープンな公開の円卓会議を開きまして、各界を代表するような方々にご意見を頂きながら改定案をその都度公表するということをやっておりまして、現在第3回の会議終了後の改定案がアップロード準備中ですけども、これもリンクのところを御覧いただければと思いますけれども。全文ありまして、この憲章はデジタルアーカイブが社会にもたらしつつある変革が何を可能にするのか、またそのリスクはどこにあるか、そして21世紀のデジタルアーカイブが目指すべき理想の姿を提示した上で、その価値の浸透や実現に向けて私たちデジタルアーカイブ関係者が行うべきことを宣言するものである。私たちという主語は、デジタルアーカイブ関係者にしております。まだあるんですよ。前文が、吉見俊哉会長が元の原案を書いてくださった前文というのがありまして、そこでは公共的な知識基盤が今の我々の社会にはかつてないほど必要だよ。そして社会にとっては忘れられる権利ということも個人にとっては大事かもしれないが、社会にとっては記憶する権利も時に重要なんだよというようなことが記載されています。さらにデジタルアーカイブは一体何を目的とすべきなのか。人々の様々な活動の基盤、知識基盤を提示する。このこと自体も大きな目的である。さらにはあらゆる人々が障害なく情報にアクセスできるアクセス保障、情報保障ということも重要だ。文化の面で、それから学習にとっても、経済活動にとっても、研究開発にとっても、防災にとっても、そして国際化にとってもアーカイブというのは資するものであり目的とすべきものだろう、全体ではね。その上で行動指針。こうしたデジタルアーカイブつくりに、またその設計には多くの人々のオープンな参加を求めていくべきである。さらにデジタルアーカイブを支える社会制度を整備していくべきだ。先ほどのような議論ですね。さらにデータの信頼性を確保するため、デジタルアーカイブというのは設計していくべきだ。体系性の確保。恒常性の保障。ユニバーサル化。さっきのアクセス保障につながる行動指針ですね。様々な民間あるいは公的なネットワークの構築。活用の促進。そして人材の養成などなどの行動指針がそこでは記載されています。そしてこれを3年ごとに、デジタルアーカイブ憲章も見直し、またこれに即した政策提言を公表していくということまで記載されています。現在、次なるシンポジウムを恐らく3月14日に次なるデジタルアーカイブ憲章のシンポジウムを御茶ノ水ソラシティという会場で行います。ネット配信もしたいと思っておりまして、今回の登壇者が憲法学者の宍戸常寿東大教授、劇作家の平田オリザさん、シンガーソングライター、島唄の宮沢和史さん。彼は島唄の保存プロジェクトをやっていらっしゃいますね。それからクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの常務理事で弁護士の野口祐子さん。それから私、などなどが加わりましてシンポジウムを行いますので、ご興味があればぜひ御覧いただければというふうに思います。もちろん吉見会長も参加されます。
9.デジタルアーカイブ政策提言
さあ政策提言を3年ごとに公表するというので、あんまり文字ばっかり多いスライドを御覧いただくのも気が引けるのですが、もう一つ御覧いただきましょう。政策提言、先ほどの権利に限らず法制度というものとして、あるいは国の政策として、こういうことをデジタルアーカイブの振興のために行うべきじゃないんですかというものをデジタルアーカイブ学会内での特別委員会、さらには理事会での議論を経て、理事会承認を経て、こういう提言を行っているところです。「デジタル温故知新社会に向けた政策提言2022年」ということで、かなり気宇壮大なことも述べていますけれども、政府には相当に強く今働きかけも行っているところです。政府内にデジタルアーカイブ推進会議を立ち上げてくださいと。現在は高野先生が座長のデジタルアーカイブジャパン実務者協議会及び委員会が存在していますけれども、もっと幅広にあらゆる関係者を集めたデジタルアーカイブの推進会議が現在政府にないのが問題であると。これを立ち上げてください。さらに各地域のアーカイブは非常に様々な課題に直面して苦労していらっしゃる。これをサポートできるようなデジタルアーカイブ支援のためのサポートセンターを各都道府県に設置してください。そしてデジタルアーカイブの基本法がないのが問題なんだから、デジタルアーカイブ憲章なども参考に、デジタルアーカイブ振興法の制定を行ってください。公的助成や公的資金によって生じた情報はオープンデータ化を図るべきじゃないでしょうか。また国内でも様々な障害を持っている方、あるいは海外で日本語の読み書きに課題のある方のために、様々な言語での翻訳字幕や音声読み上げなどのユニバーサル化の支援を政府としてもっと行ってください。デジタルキュレーションのための教育プログラムが不足しています。パイロット的な教育プログラムを幾つかの教育機関で立ち上げてください。デジタルアーキビストなどの必要な人材の採用、育成、これまで井上(透)先生などが牽引していらっしゃったわけですけれども、この人材の育成等をもっと政府は支援してください。井上先生はもちろんですが、岐阜女子大の皆さん等が牽引していらっしゃったわけですけれども、もっと政府が支援してください。それから膨大なアウトオブコマース著作物、つまり市場で流通していない作品について活用促進の制度、今現在さらに議論しているわけですけれども、これを必ずつくってください。それからさっきの国会図書館からの絶版等資料の個人向け配信、これは現在漫画と雑誌が除かれている。それから書籍以外の資料は除かれているなどの事情がありますけど、この部分をもっと拡充できませんか。さらに言うと国立映画アーカイブとか他の国立機関にも拡充できませんかというようなことを提言しています。1つ飛ばして、デジタルアーカイブ関連の研究開発ですね。これはEUなんかだと本当に高額の研究資金をデジタルアーカイブ関連の研究、カルチュラルヘリテージなどに支援を行っていますけれども、日本はまだまだ不足している。デジタルアーカイブに特化した研究開発にもっと支援を行ってください。それからヨーロピアーナやユネスコの文化遺産保全など、時実先生の紹介があったところですけれども、国際的な諸活動ともっと連携を図る、そのサポートもしてくださいというようなことを政策としては提言しています。こんなふうに法制度の議論から民間のガイドラインに至るまで、官民あるいは地域、あるいはジャンルの横断した連携、これを進めることで課題を解決していこう。そんなことを考えてデジタルアーカイブ学会では幾つもの活動を展開しておりますし、また政府もかなりそれには呼応してくださっている現状はあるかなというふうに思うところです。
本日はデジタルアーカイブの法制度の現在地点ということで、まずは権利の壁、そして最近の法改正でどこまで可能になったのか、肖像権の壁を越えるための民間ガイドライン、さらにはデジタルアーカイブの羅針盤をつくる試み、政策提言などを紹介いたしました。皆さんの活動の少しでもご参考になれば大変幸いに思います。(文責:久世)
資 料
1.ポスター
2.市町村長依頼文
3.高等学校依頼文
4.DAin岐阜企画書
5.デジタルアーカイブ資格について
→【デジタルアーカイブin岐阜 2022】
社会人のための準デジタルアーキビスト資格取得講座
特別講義 デジタルアーカイブin岐阜2022
~ 地域の文化資源を守り、知識基盤社会を支える人材の育成 ~
■ 日 時:令和5年2月11日(土) 9:00~12:00
■ 講 座:オンライン講座(Zoom)
■ 趣 旨
社会のDX化が進展しており、デジタルアーカイブを通じた地域情報の収集と発信による地域活性化やGIGAスクールによる学校での活用が広がっています。
国は内閣府が中心となってデジタルアーカイブ社会を実現するため、全国のデジタルアーカイブをリンクするジャパンサーチの運用を2020年に開始し、地域の情報が続々提供され、活用の可能性が拡大しています。
今年のデジタルアーカイブin岐阜では、日本のデジタルアーカイブを牽引する3人から変貌する現状を紹介し、自治体、教育機関、博物館、図書館で取り組まれているDX化に、デジタルアーカイブを通じて取り組む際のアイデアを提供していただきます。
■ プログラム
■ ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
国立情報学研究所名誉教授 高野明彦氏
➝ プレゼン資料:ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
■ 世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
東京大学大学院情報学環 時実象一氏
➝ プレゼン資料:世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
■ デジタルアーカイブと法制度の現在地点
骨董通り法律事務所パートナー弁護士 福井健策氏
➝ プレゼン資料:デジタルアーカイブと法制度の現在地点
e-Learning講座
第1講 デジタルアーカイブの基礎
1.目 的
デジタルアーカイブは、「デジタル」と「アーカイブ」という言葉からできた和製英語と言われています。デジタルアーカイブとは何か? デジタルアーキビストに必要な能力は何か?ここでは、言葉の意味と発展の歴史から、基本的な考え方を理解し、今後のデジタルアーカイブの方向性を考えます。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブとは何か説明できる。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたかについて具体例をあげ説明できる。
③ デジタルアーキビストに求められている能力について具体的に説明できる。
3.課 題
① デジタルアーカイブとは何か自身の立場で説明しなさい。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたか説明しなさい。
③ デジタルアーキビストに求められている能力は何か自身の立場で説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの基礎
5.動画資料
第2講 デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
1.目 的
デジタルアーカイブの利用は、資料の提示や提供から始まり、課題解決、知的創造等の処理へと進みます。またデジタルアーカイブを活用し、新しい「知」の創造を求め、さらに新しい「知」と人々の経験を付加し、新たな知的活動へと発展します。ここでは、デジタルアーカイブの開発と活用プロセスについて考えます。
2.学習到達目標
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明できる
②資料の選定評価について説明できる。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明できる。
3.課 題
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明してください。
②資料の選定評価の課題について説明してください。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明してください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
5.動画資料
第3講 デジタルアーカイブの評価とメタデータ
1.目 的
デジタルアーカイブは、対象とする資料(情報資源)の分野も多岐にわたり、プロジェクト規模なども異なるため、それぞれにあわせた評価手法が求められます。そこで、本講では、デジタルアーカイブの自己点検ツールとして考案された「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容を把握し、その評価項目の中でも重視されているメタデータについて、記述のための国際標準、国際指針として制定されている事例から学びます。
2.学習到達目標
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容について説明できる。
② 記述のための国際標準、国際指針などの事例について説明できる。
③ 資料(情報資源)のメタデータ記述ができる。
3.課 題
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の評価項目の内、あなたが重要だと思う項目について、なぜそう思うかを含めて説明してください。
② 具体的に何か資料(情報資源)を一つ取り上げ、その資料のメタデータ記述項目を設定した上で実際の記述を行ってください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの評価とメタデータ
5.動画資料
第4講 デジタルアーカイブの利活用
1.目 的
デジタルアーカイブは、1990年代の初期から、過去から現在の資料をデジタル化し、次の世代への伝承と現状での利活用を目指して開発が進められてきた。デジタルアーカイブの基本は、過去~現在の資料の収集・保管、デジタル化、さらに現状での利活用と次の世代への伝承である。
過去~現在の各種資料を収集・保管し、次のように使われる。
①次世代へのデジタルコンテンツの確かな伝承
②国内外のデジタルコンテンツの流通と利活用
ここでは、図書館や博物館等におけるデジタルアーカイブの利活用について考える。
2.学習到達目標
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明できる。
3.課 題
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの利活用
5.動画資料
第5講 デジタルアーカイブによる地域活性化
1.目 的
知識基盤社会においてデジタルアーカイブを有効的に活用し,新たな知を創造するという本学独自の「知の増殖型サイクル」の手法により,地域課題に実践的な解決方法を確立するために,地域に開かれた地域資源デジタルアーカイブによる知の拠点形成をする。このことにより,地域課題に主体的に取り組む人材を養成する大学として,伝統文化産業の振興と新たな観光資源の発掘並びにデジタルアーカイブ研究による地方創成イノベーションの創出について具体的に考える。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブと地域課題解決について説明できる。
② 地方創成イノベーションの創出について具体的に説明できる。
3.課 題
① 飛騨高山匠の技デジタルアーカイブにより,地域の文化産業を振興するための方策を3つ挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブによる地域活性化
5.動画資料
※本映像は本学の学部の授業(情報の管理と流通)の内容の一部を利用して提供しています。
6.テキスト資料
デジタルアーカイブによる地域活性化
第6講 デジタルアーカイブと知的財産権(1)
1.目 的
デジタルアーキビストとして、アーカイブを計画し、そして資料収集し、そして構築し、そして利用許諾し、また運用していくという、こういったときに必要な権利処理について説明する。
2.学習到達目標
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明ができる。
② 著作者の権利について具体的に説明できる。
③ 著作権の契約書を作成できる。
3.課 題
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明しなさい。
② 著作者の権利について具体的に説明しなさい。
③ 著作権の契約書を作成しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(1)
第7講 デジタルアーカイブと知的財産権(2)
1.目 的
著作権について、自分の立ち位置とは関係ない形で第三者的に実践の試みの良い部分と課題について理解を深め、基本的な理解を図った後に、実践の中から法律など制度的な課題について考えます
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明できる。
② 著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて
説明できる。
3.課 題
1.デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明しなさい。
2.著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(2)
5.動画資料
テキスト
【テキスト】デジタルアーカイブ概論
準デジタルアーキビスト資格試験
■認定試験の方法
■認定試験問題
資格試験料振込口座
資格試験料については、下記の口座に振り込みをお願いいたします。
振込期限:令和5年2月28日(火)17:00(時間厳守)
銀行名 十六銀行
支店名 高富支店
預金種目 普通預金
口座番号 1526285
口座名義 学校法人華陽学園(ガッコウホウジンカヨウガクエン)
尚、請求書が必要な場合については pfe01173@nifty.com まで申し込んでください。
準DA資格賞の発行については、講座終了後2ヶ月後となります。
【公開講座】小中連携教育コーディネータ概論
1.はじめに
小中連携教育については,これまで全国的な取組の検証や支援の在り方等に関する検討はなされていない.児童が,小学校から中学校への進学において,新しい環境での学習や生活へ移行する段階で,不登校等が増加したりするいわゆる中1ギャップが指摘されている.各種調査によれば,「授業の理解度」「学校の楽しさ」「教科や活動の時間の好き嫌い」について,中学生になると肯定的回答をする生徒の割合が下がる傾向にあることや,「学習上の悩み」として「上手な勉強の仕方がわからない」と回答する児童生徒数や,暴力行為の加害児童生徒数,いじめの認知件数,不登校児童生徒数が中学校1年生になったときに大幅に増える実態が明らかになっている.
小・中学校が地域において小中連携,一貫教育をどのように展開していくか考えた場合,児童生徒の義務教育9年間におけるよりよい学びの実現や生徒指導上の様々な課題の解決のためには,小中連携,一貫教育と地域連携に併せて取り組むことで大きな効果が期待できる.
また,現行制度上,小学校教員は全教科を指導し,中学校教員は特定の教科を指導しているが,各学校段階の中で職能を高めることに加え,小中一貫教育を契機として,異なる学校段階の教科指導について学ぶことで教員の資質能力の幅を広げるとともに質を更に高め,義務教育段階の児童生徒のための教員となることで,義務教育の目的の実現,目標の達成をよりよく図っていく必要がある.
教員が学校種の枠を越えて義務教育段階の教員となるための工夫の在り方として,他校種における教育の在り方について早い段階から学習し,その良いところを吸収することができるよう,例えば,新規採用された教員を採用から数年以内に他校種で勤務させる等,小・中学校教員間の人事交流を促進していくことが考えられる.具体的には,都道府県の人事異動方針に小・中学校間の教職員の交流の促進を定めることが考えられ,その際市町村,都道府県間の連携を一層深め,対応していくことが必要である.
参 考
小中連携教育コーディネータとは何か?
小中連携教育コーディネータは、小学校と中学校の連携を図りながら教育を進める役割を担う教育関係者です。彼らは、小学校と中学校の教育内容や教育方針を調整し、スムーズな学習の継続を支援する役割を果たします。
小中連携教育コーディネータは、以下のような業務を担当することがあります。
①カリキュラムの連携: 小学校と中学校の間で、学習内容や教育目標の連携を図ります。これにより、学習の継続性や段階的な学習の進行が確保されます。
②教育相談の支援: 小学校の教師や中学校の教師、または生徒や保護者など、関係者の教育相談に対応します。連携教育コーディネータは、適切な情報やアドバイスを提供し、教育に関する問題や課題の解決を支援します。
③行事やイベントの企画: 小学校と中学校の連携を深めるために、さまざまな行事やイベントを企画・実施します。これにより、生徒たちが互いの学校や学年を知り、友情や協力関係を築く機会が提供されます。
④連携ミーティングの開催: 小学校と中学校の教職員や管理職が参加するミーティングを定期的に開催し、情報共有や連携を図ります。これにより、教育内容や教育方針の調整が円滑に行われます。
⑤小中連携教育コーディネータは、小学校と中学校の間で連携を促進し、教育の一貫性や質の向上を図るために重要な役割を果たしています。
小中連携教育コーディネータには、以下のような資質と能力が求められます。
①教育に関する専門知識: 教育カリキュラムや教育法などに関する深い知識が必要です。小学校と中学校の教育内容や進路指導について理解していることが重要です。
②コミュニケーション能力: 小学校の教師、中学校の教師、生徒、保護者、教育委員会など、さまざまな関係者と円滑にコミュニケーションを図る能力が必要です。情報を適切に伝えたり、相手の意見を理解し協力関係を築くことが求められます。
③プランニング能力: 教育の連携計画やイベントの企画、ミーティングの運営などを計画的に進める能力が必要です。時間管理や優先順位の設定、目標達成に向けた戦略的なアプローチが重要です。
④問題解決能力: 教育に関する問題や課題を発見し、解決策を見つける能力が求められます。柔軟な思考や創造性を活かし、関係者と協力して解決に向けて取り組むことが重要です。
⑤リーダーシップ能力: 小中連携の推進や関係者の指導、チームのまとめ役としてのリーダーシップを発揮する能力が必要です。ビジョンを持ち、他のメンバーを引っ張って目標に向かって進めることが求められます。
⑥柔軟性と協調性: 小学校と中学校の間で異なる教育環境やカリキュラムの特性を理解し、柔軟に対応する能力が求められます。また、関係者との協力や協調性を持ち、共通の目標に向けて努力することが重要です。
第1講 小中連携に関する社会的背景
小中連携教育,一貫教育に取り組む学校,市町村においては,小学校から中学校への進学において,新しい環境での学習や生活へ移行する段階で,不登校等の生徒指導上の諸問題につながっていく事態等(いわゆる中1ギャップ)に直面し,小学校から中学校への接続を円滑化する必要性を認識し,小中連携教育,一貫教育に取り組み始めたケースが見られる.特に,学校間の連携・接続に関する現状と課題認識においても述べたとおり,児童生徒の発達が早まっていることを踏まえ,小学校高学年から中学校入学後までの期間に着目し,当該期間に重点的な取組を行う例が見られる.
小中連携,一貫教育に取り組み始めた契機がいわゆる中1ギャップに直面したことであったとしても,学校,市町村においては,それぞれの取組にあたっての目的を明確化するとともに関係者で共有し,学校全体で組織的に取り組むことで,小中一貫教育の成果を上げることが期待される.
【学習到達目標】
・小中連携教育に関する社会的な課題について説明できる.
・小学校教員に求められる専門性について具体例を示して説明できる.
・小学校と中学校の円滑な接続の在り方について説明できる.
【課 題】
1.教員の資質向上についてその方策について説明しなさい.
2.小中連携教育に求められる専門性について,具体例を挙げて説明しなさい.
3.それぞれ地域の教員のキャリアステージにおける資質の向上に関する指標を説明しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第1講_小中連携に関する社会的背景)
【動画資料】
第2講 小中連携教育コーディネータ
本制度は,教員が新たに他校種の免許を取得する必要もなく,学校にとって活用しやすいものであると思われるが,小学校教諭の免許状を有していない中学校教員は,大学における養成課程において小学校における教科の指導法等について学修していないことから,小学校における指導に困難を伴うことがあるとの指摘もある.そこで,実際の小学校における指導に当たっては,小学校の養成課程の内容を学修するために,小中連携教育コーディネータという新たなキャリアを取得することにより,小中連携教育がスムーズに行うことができる.
【学習到達目標】
・小中連携教育コーディネータついて説明できる.
・小中連携教育コーディネータの活動について具体的に説明できる.
【課題】
1.小中連携教育コーディネータついて説明しなさい.
2.小中連携教育コーディネータの活動について具体的に説明しなさい.
3.ペダゴジー(pedagogy)とアンドラゴジー(andragogy)に違いについて具体例を挙げて説明しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第2講_小中連携教育コーディネータ)
【動画資料】
第3講 ハイブリッド型授業のデザイン
未来社会を見据えて育成すべき資質・能力を育むためのこれら3つの「新たな学び」やそれを実現していくための「新たな学びの空間」を形成するためにICTを効果的に活用することが重要である.さらに,ICTを活用することで,チームとしての学校の経営力を高め,教育の質の向上と教員が子供と向き合う時間的・精神的余裕を確保することにつながる.そこで,ここでは「新たな学び」の一つである遠隔授業の教育利用・研究での課題について考える.
【学習到達目標】
・ハイブリット型授業について具体的に説明できる.
・ハイブリット型授業について授業設計ができる.
【課題】
1.遠隔教育の変遷について説明しなさい.
2.ハイブリット型授業の3つのパターンについて,具体例を挙げて説明しなさい.
3.ハイブリット型授業を具体的に企画しなさい.
4.ハイブリット型授業の課題について具体例を挙げて説明しなさい.
5.遠隔教育の必要性について具体例を挙げて説明しなさい.
6.遠隔協働学習を企画し,実際に実践してみなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第3講_ハイブリッド型授業のデザイン)
【動画資料】
第4講 「教えないで学べる」という新たな学び
「インストラクショナルデザイン」や「教えないで学べる」学習環境は,キャロルの学校学習の時間モデルの授業の質を高め,授業理解力を助け,学習機会や学習持続力を高めるための手法であり,学習環境でもある.「教えないで学べる」ためには,これらの手法や学習環境を整備することによって実現するものであり,学習者の学ぶ意欲を促し,自律的に継続して学ぶ力をつけていくことが重要である.
【学習到達目標】
・「教えないで学べる」とはどのようなことは具体例を挙げて説明できる.
・「教えないで学べる」という新たな学びの設計ができる.
【課題】
1.J・B・キャロル(Carroll)の学校学習の時間モデルについて説明しなさい.
2.「教えないで学べる」学習環境について具体的に説明しなさい.
3.「教えないで学べる」研修を実現するための手立てを考えなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第4講_「教えないで学べる学習」という新たな学び)
【動画資料】
第5講 キャリアステージに対応した中学校教諭に求められる資質・能力の構造化
中学校教諭として不易とされる資質・能力と新たな課題に対応できる力並びに組織的・協働的に諸問題を解決する力を中心にキャリアステージに対応した中学校教諭の資質・能力を明確化し,講座の学習目標の分析と構造化を図り,資質・能力とのカリキュラムマップを作成するとともに各講座のタキソノミーテーブルについて考える.
【学習到達目標】
・キャリアステージに対応した中学校教諭に求められる資質・能力を説明できる.
【課題】
1.キャリアステージに対応した中学校教諭に求められる資質・能力を説明しなさい.
2.キャリアステージに対応した中学校教諭に求められる資質・能力は,どのような活動によって向上できるかについて具体例を挙げて説明しなさい.
3.キャリアステージに対応した中学校教諭に求められる資質・能力について,自己をメタ認知し,どの部分が不足し,その不足を補う方法を説明しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第5講_キャリアステージに対応した中学校教諭に求められる)
【動画資料】
第6講 小中連携教育コーディネータ養成カリキュラム
小中連携にまつわる社会的な課題である教員の質の向上は,特に資質向上期の教員を対象に教員免許の併有を推進すると共に,国内外における学校教育の重要性についての認識を高め,学校教育の量の拡充だけでなく,質の向上を求める声を高め,新たな学びを創造する資質が教員にも求められていることの再認識をすることが必要である.ここでは,小中連携教育コーディネータ養成カリキュラムについて考える.
【学習到達目標】
・小中連携教育コーディネータに求められる資質・能力を説明できる.
【課題】
1.小中連携教育コーディネータに求められる資質・能力を説明しなさい.
2.インストラクショナルデザイン指導力について具体例を挙げて説明しなさい.
3.インストラクショナルデザインを活用した授業改善について,具体例を挙げて説明しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第6講_小中連携教育コーディネータ養成カリキュラム)
【動画資料】
第7講 学習目標の分析と学習目標のデザイン
目標の構造は,子どもの実態によって変わる.子どもの実態,先生の指導方法・指導力,そういうことを含めた教材研究がなされて初めて目標分類ができる.ここでは,小中連携教育コーディネータの学習目標の分析を考える.
【学習到達目標】
・BS.ブルームの「教育目標の分類学」を説明できる.
【課題】
1.ブルームの教育目標分類について,行動目標による例を取り上げて説明しなさい.
2.ガニェの学習成果の5分類について,具体例を挙げて説明しなさい.
3.明確な学習目標について,具体的な単元において設定しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第7講_学習目標の分析と学習目標のデザイン)
【動画資料】
第8講 教育DX時代における新たな学び
子供たち一人一人に個別最適化され,創造性を育む学びとは何か,その実現のための“新たな学び”とはどのような学びで,従来の学びとどのように異なるのかについて考える.
【学習到達目標】
・教育DX時代の社会の変化について説明できる.
・教育DX時代における新たな学びについて具体例を示して説明できる.
・従来の学びと教育DX時代における“新たな学び”との関係について説明できる.
【課題】
1.教育DX(Digital Transformation)についてその効果と可能性について説明しなさい.
2.GIGAスクール構想について,具体例を挙げて説明しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第8講_教育DX時代における学び)
【動画資料】
第9講 21世紀に求められる学力と学習環境
21世紀に求められる学力を育む新たな授業と評価について,背景や実践事例を紹介しながら考える.
【学習到達目標】
・21世紀に求められる学力について説明できる.
・資質・能力を引き出す授業の条件を説明できる.
【課題】
1.知識基盤社会に求められる学力について説明しなさい.
2.21世紀型スキルについて,具体例を挙げて説明しなさい.
3.評価の方法について具体例を挙げて説明しなさい.
4.変容的評価を行う指導案を作成しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第9講_21世紀に求められる学力と学習環境)
【動画資料】
第10講 新たな学びと教育リソース
日本では1980年代から「自己教育力」が推奨され,「自ら学び自ら考える力」が重視されている.このことは,他律的でなく自律的な学習態度の教育が重要になっている.ここでは,この実践的資質・能力の向上と,反転授業での活用を想定した教育リソースの開発について考える.
【学習到達目標】
・反転授業について具体例を挙げて説明できる.
・反転授業について具体的に授業設計ができる.
【課題】
1.反転授業とその効果と可能性について説明しなさい.
2.反転授業の学習展開について具体的に説明しなさい.
3.反転授業の学習展開について具体的に指導案を作成しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第10講_新たな学びと教育リソース)
【動画資料】
第11講 教えて考えさせる授業の展開
小学校理科における児童の多視点映像教材を活用した実験支援方法に関する研究を通じて,教えて考えさせる授業の展開について考える.
【学習到達目標】
・多視点映像教材の処理方法について順を追って説明できる.
・多視点映像教材を使った“教えて考えさせる授業”への展開について説明できる.
【課題】
1.多視点映像教材の処理方法について順を追って説明しなさい.
2.多視点映像教材を使った,教えて考えさせる授業への展開について説明しなさい.
3.マルチアングル映像と多視点映像の違いと特徴を説明しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第11講_教えて考えさせる授業の展開)
【動画資料】
第12講 研修の目標とその評価方法
研修の設計の考え方において,1960年代に米国の教育工学研究者のロバート・メーガー (Robert F. Mager)は,次の3つの質問をすることで,研修の目標と評価方法を定めることの重要性について考える.
【学習到達目標】
・ロバート・メーガー (Robert F. Mager)の3つの質問について説明できる.
・研修目標の明確化について具体例を挙げて説明できる.
【課題】
1.ロバート・メーガー (Robert F. Mager)の3つの質問について説明しなさい.
2.研修目標の明確化について具体例を挙げて説明しなさい.
3.「知識習得モデル」と「知識創造モデル」の違いと特徴を説明しなさい.
4.変容的評価について説明をしなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第12講_研修の目標とその評価方法)
【動画資料】
第13講 自律的なオンライン研修の分析と設計
教えない研修が実現するためには,自律的な学習者となることが重要であり,自律的な学習者であれば自律的なオンライン研修が実現する.ここでは,自律的なオンライン研修の分析と設計について考える.
【学習到達目標】
・e-Learningという学習について説明できる.
・研修の効果分析について具体例を挙げて説明できる.
【課題】
1.自律的なオンライン研修について,具体的に企画しなさい.
2.研修の効果測定について具体例を挙げて説明しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第13講_自律的なオンライン研修の分析と設計)
【動画資料】
第14講 協働的な学びのデザイン
人は社会的な関わりの中で学び,柔軟な知識を育てていく.このベースとなる考えを知識の社会的構成主義モデル(三宅,2011)と呼んでいる.これは人がもともと持っている他人との相互作用を通して自分自身の考えを少しずつ向上させる能力を顕在化し,その試みを繰り返すことによって人は社会的に賢くなっていくという考え方 (Palincsar & Brown ,1984; Miyake,N ,1986)について考える.
【学習到達目標】
・協働学習の考え方を理解し実際に授業デザインできる.
・ワークショップの手法を5種類説明できる.
・ジグソー学習について説明できる.
【課題】
1.協働学習の必要性について具体例を挙げて説明しなさい.
2.知識構成型ジグソー法による指導案を作成しなさい.
3.大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)を参考に,知識構成型ジグソー法の教材を作成しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第14講_協働的な学びのデザイン)
【動画資料】
第15講 「教える」から「学ぶ」への変革
行動主義の代表としてはバラス・スキナー(B.F.Skinner),認知主義の代表としてはピアジェ(J,Piaget)の理論を取り上げ,カリキュラム改革運動期における教授・学習論について考える.さらに,構成主義的学習論から社会的構成主義に至る経緯を考える.
【学習到達目標】
・教授学習に関する基本的な理論を具体的に説明できる.
・行動主義と認知主義の2つの学習論の区別を説明できる.
【課題】
1.行動主義的学習論と認知主義的学習論,構成主義的学習論に対応した課題(問題)を作成しなさい.
2.社会人の学習方法の特徴について具体例を挙げて説明しなさい.
【プレゼン資料】
小中連携教育コーディネータ概論_プレゼン(第15講_「教える」から「学ぶ」への変革)
【動画資料】
テキスト
1.小中連携教育コーディネータ概論_テキスト_表紙
2.小中連携教育コーディネータ概論_テキスト
【高大連携公開講座】女子高校生のためのデジタルアーカイブクリエータ資格取得講座
第1講 デジタルアーカイブの基礎
1.目 的
デジタルアーカイブは、「デジタル」と「アーカイブ」という言葉からできた和製英語と言われています。デジタルアーカイブとは何か? デジタルアーキビストに必要な能力は何か?ここでは、言葉の意味と発展の歴史から、基本的な考え方を理解し、今後のデジタルアーカイブの方向性を考えます。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブとは何か説明できる。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたかについて具体例をあげ説明できる。
③ デジタルアーキビストに求められている能力について具体的に説明できる。
3.課 題
① デジタルアーカイブとは何か自身の立場で説明しなさい。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたか説明しなさい。
③ デジタルアーキビストに求められている能力は何か自身の立場で説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの基礎
5.動画資料
第2講 デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
1.目 的
デジタルアーカイブの利用は、資料の提示や提供から始まり、課題解決、知的創造等の処理へと進みます。またデジタルアーカイブを活用し、新しい「知」の創造を求め、さらに新しい「知」と人々の経験を付加し、新たな知的活動へと発展します。ここでは、デジタルアーカイブの開発と活用プロセスについて考えます。
2.学習到達目標
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明できる
②資料の選定評価について説明できる。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明できる。
3.課 題
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明してください。
②資料の選定評価の課題について説明してください。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明してください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
5.動画資料
第3講 デジタルアーカイブの評価とメタデータ
1.目 的
デジタルアーカイブは、対象とする資料(情報資源)の分野も多岐にわたり、プロジェクト規模なども異なるため、それぞれにあわせた評価手法が求められます。そこで、本講では、デジタルアーカイブの自己点検ツールとして考案された「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容を把握し、その評価項目の中でも重視されているメタデータについて、記述のための国際標準、国際指針として制定されている事例から学びます。
2.学習到達目標
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容について説明できる。
② 記述のための国際標準、国際指針などの事例について説明できる。
③ 資料(情報資源)のメタデータ記述ができる。
3.課 題
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の評価項目の内、あなたが重要だと思う項目について、なぜそう思うかを含めて説明してください。
② 具体的に何か資料(情報資源)を一つ取り上げ、その資料のメタデータ記述項目を設定した上で実際の記述を行ってください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの評価とメタデータ
5.動画資料
第4講 デジタルアーカイブの利活用
1.目 的
デジタルアーカイブは、1990年代の初期から、過去から現在の資料をデジタル化し、次の世代への伝承と現状での利活用を目指して開発が進められてきた。デジタルアーカイブの基本は、過去~現在の資料の収集・保管、デジタル化、さらに現状での利活用と次の世代への伝承である。
過去~現在の各種資料を収集・保管し、次のように使われる。
①次世代へのデジタルコンテンツの確かな伝承
②国内外のデジタルコンテンツの流通と利活用
ここでは、図書館や博物館等におけるデジタルアーカイブの利活用について考える。
2.学習到達目標
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明できる。
3.課 題
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの利活用
5.動画資料
第5講 デジタルアーカイブによる地域活性化
1.目 的
知識基盤社会においてデジタルアーカイブを有効的に活用し,新たな知を創造するという本学独自の「知の増殖型サイクル」の手法により,地域課題に実践的な解決方法を確立するために,地域に開かれた地域資源デジタルアーカイブによる知の拠点形成をする。このことにより,地域課題に主体的に取り組む人材を養成する大学として,伝統文化産業の振興と新たな観光資源の発掘並びにデジタルアーカイブ研究による地方創成イノベーションの創出について具体的に考える。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブと地域課題解決について説明できる。
② 地方創成イノベーションの創出について具体的に説明できる。
3.課 題
① 飛騨高山匠の技デジタルアーカイブにより,地域の文化産業を振興するための方策を3つ挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブによる地域活性化
5.動画資料
※本映像は本学の学部の授業(情報の管理と流通)の内容の一部を利用して提供しています。
6.テキスト資料
⇒ デジタルアーカイブによる地域活性化
第6講 デジタルアーカイブと知的財産権(1)
1.目 的
デジタルアーキビストとして、アーカイブを計画し、そして資料収集し、そして構築し、そして利用許諾し、また運用していくという、こういったときに必要な権利処理について説明する。
2.学習到達目標
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明ができる。
② 著作者の権利について具体的に説明できる。
③ 著作権の契約書を作成できる。
3.課 題
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明しなさい。
② 著作者の権利について具体的に説明しなさい。
③ 著作権の契約書を作成しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(1)
第7講 デジタルアーカイブと知的財産権(2)
1.目 的
著作権について、自分の立ち位置とは関係ない形で第三者的に実践の試みの良い部分と課題について理解を深め、基本的な理解を図った後に、実践の中から法律など制度的な課題について考えます
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明できる。
② 著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて
説明できる。
3.課 題
1.デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明しなさい。
2.著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(2)
5.動画資料
テキスト
第8講 デジタルアーカイブの歴史とその課題
1.何を学ぶか
デジタルアーカイブの日本にける歴史と本学のデジタルアーカイブの変遷を比較しながら,どのような点が明らかになり,新たにどのような課題が創出されたのかについて考える.
2.学修到達目標
・デジタルアーカイブの歴史について説明できる.
・知識基盤社会におけるデジタルアーカイブの必要性について事例をあげて説明できる.
3.研究課題
・デジタルアーカイブの歴史をまとめて,何が変化して何が課題になっているかを話し合ってみなさい.
4.プレゼン資料
⇒ デジタルアーカイブの歴史とその課題
5.映 像
6.関連資料
⇒ デジタルアーカイブ年表(岐阜女子大学)
第9講 文化はどのように記録するのか?
▼撮影の基礎知識/インタビュー技法等
1.プレゼン資料
2.動画資料
3.関連資料
① 文化はどのように記録するの
② 地域文化とデジタルアーカイブ
③ 沖縄おうらい
第10講 文化資料はどのように管理・流通するのか?
▼資料の登録/保存/管理/流通
1.プレゼン資料
2.動画資料
3.資料
① 文化資料はどのように管理流通するの?
② 情報の発信と伝達
第11講 文化資料の著作権処理はどうするのか?
▼知的財産権/肖像権に関する基本的知識等
1.目標
著作権法についてその目的を理解し、肖像権・個人情報保護・プライバシーについて基本的な知識を理解する。
2.学修到達目標
①著作権法の目的について説明できる。
②著作権法における権利について具体的に説明できる。
③肖像権について具体的事例を挙げて説明できる。
④肖像権・個人情報保護・プライバシーについてその違いについて説明できる。
3.プレゼン資料
①法と倫理
久世均(岐阜女子大学)
②個人情報の保護と知的財産権
久世均(岐阜女子大学)
4.動画資料
第12講 デジタルアーカイブと図書館
プレゼン資料
動画資料
第13講 博物館とデジタルアーカイブ
プレゼン資料
動画資料
第14講 アーカイブにおけるメタ情報の作成実習
▼地域文化のデジタルアーカイブ
【延年の舞】
① デジタルアーカイブ・コーディネータ試験表紙〔延年の舞」
② 延年の歴史(資料)
③ 撮影概要(縦書き)
④ メタデータ記入シート(試験用)
⑤ メタデータ記入シート(長滝の延年)
【郡上踊り】
① 郡上おどり「試験問題表紙」
② 郡上おどり「試験問題」
③ 郡上おどり「試験問題 撮影概要」
④ 郡上おどり「解答用紙(メタデータ記入シート)」
⑤ 郡上おどり「模範解答用紙」
資 料
高・大生のための利活用入門テキスト
資格認定料振込口座
銀行名 十六銀行
支店名 高富支店
預金種目 普通預金
口座番号 1526285
口座名義 学校法人華陽学園(ガッコウホウジンカヨウガクエン)
認定料:3000円
お問合せ:pfe01173@nifty.com