【公開講座】幼児教育コーディネータ養成講座_スタートアップオンライン講座
目的・概要
幼児教育コーディネータは、地域・学校園における幼児教育の研修及び専門的指導のための研修講座の計画立案実践能力、組織化、および地域課題解決への具体的対応力を身につけることにより、地域、学校園における保幼こ小連携などの幼児教育をコーディネートできる人材の育成や、その能力の向上を図ることを目的とするものです。
原則的に、幼稚園教諭2種免許状所持者で、基礎資格となる免許状を取得した後、幼稚園(特別支援学校の幼稚部及び幼保連携型認定こども園を含む)における教員として在職年数が、12年以上の方を対象とし、幼稚園教諭1種免許状所持者でスキルアップを目指す方や幼稚園教諭としてお勤めで、管理職・マネジメントの職務についている方を対象とします。
また、本講座を受講・修了した後、免許管理者(都道府県教育委員会)に申請することにより2種免許状を1種免許状に上進することが可能となります。
受講対象者
次の(1)~(3)に該当する方とします。
(1)幼稚園教諭2種免許状所持者で、基礎資格となる免許状を取得した後、幼稚園(特別支援学校の幼稚部及び幼
保連携型認定こども園を含む)における教員として在職年数が、12年以上の方。( (1)に該当する方につきまし
ては、2種免許状を1種免許状に上進が可能となります。)
(2)幼稚園教諭1種免許状所持者でスキルアップを目指す方。
(3)幼稚園教諭としてお勤めで、管理職・マネジメントの職務についている方。
科目数並びに総時間数
7科目(10単位)
コース終了条件
各講習における試験またはレポートによる最終試験を全て合格すること。
定 員
第1期〜第3期(100名定員/期)
受講料
30,000円 (3,000円/単位×10単位)
学習環境
本養成講座は基本的に「e-learning」で行いますので、受講には、各自カメラ付きのパソコンやノートパソコン・タブレットPC・スマートフォン並びにインターネットの通信環境が必要になります。
スタートアップオンライン講座
幼児教育コーディネータとは
- 幼児教育コーディネータとは、幼児期の子供たちの教育に関する計画やプログラムを立案し、実施する役割を担う専門家です。彼らは、保育園や幼稚園、学校、地域センターなど、幼児教育施設や関連する組織で働くことが一般的です。
幼児教育コーディネータは、幼児の発達段階や教育ニーズを理解し、それに基づいて教育プログラムを計画します。彼らは、子供たちの認知、言語、身体運動、社会的・情緒的発達を促進するための教育活動や遊びを設計し、教材や資源を選定します。
また、幼児教育コーディネータは、教育スタッフや保護者と連携し、教育目標の達成や子供たちの成長をサポートします。彼らは、教育プログラムの実施状況をモニタリングし、評価を行い、必要な調整や改善を提案します。
さらに、幼児教育コーディネータは、地域の教育関係者や専門家と協力し、最新の教育トレンドや研究成果を把握し、教育プログラムの品質向上に努めます。また、保護者や地域のコミュニティとの関係構築も重要な役割です。
総合的に言えば、幼児教育コーディネータは、子供たちの幼児期における学びや成長を支援するための教育環境を構築し、教育プログラムを適切に運営する責任を担っています。
幼児教育コーディネータ概論
Ⅰ はじめに
今般の子ども・子育て支援関係の人材に対する需要の増加等を受け,私立施設を中心として,幼稚園において幼児教育の質を支える優秀な教員の確保が喫緊の課題となっている.また,平成19年度の岐阜県の幼稚園教諭免許状授与件数の77.9%は二種免許状であり,一種免許状への上進の必要性が高まっている.また,教育再生実行会議第十二次提言では,一人一人の多様な幸せと社会全体の幸せ(ウェルビーイング)の実現を目指し,学習者主体の教育に転換することを提言している.そのために,教師の質の向上や多様な人材の活用のための方策や「教学マネジメント指針」に基づく密度の高い組織的な大学教育の展開が求められている.
社会,特に子どもを取り巻く環境が多様化し,幼稚園や認定こども園で幼児教育に携わる教員にもこうした状況に対応する資質・能力の向上が求められる.とりわけ,幼児教育の現場で中心的な役割を担う中堅層(ミドルリーダー)の果たすべき役割は大きい.
しかし,中堅層の多くは二種免許状所有者であり,その専門性を向上させるためには教育委員会の研修で学ぶ教育の最新事情とともに,理論と実践を往還する内容が必要といえる.そのために,教員養成大学においても免許法認定講習等で,二種免許状保有者の専門性の向上を図り,上進を推進することが求められている.
そこで,教員自身が時代や社会,環境の変化を的確につかみ取り,その時々の状況に応じた適切な教育・保育の提供を行うためには,個々の教員が自ら課題を持って,主体的に研修に参加する研修体制の確立が必要である.その際,受講者のニーズに応じて柔軟に研修内容を組み合わせたり,ワークショップ型研修方法を取り入れたりして,受講者が主体的に学ぶ講座の場を考えていく必要がある.
ここでは,幼稚園教諭の資質向上を目指すキャリアステージにおける講座の在り方を研究し,幼児教育の新たなキャリアである幼児教育コーディネータの養成について考える.
Ⅱ 授業の目的・ねらい
・幼稚園教諭の資質向上を目指すキャリアステージにおける講座の在り方を研究し,幼児教育の新たなキャリアである幼児教育コーディネータの養成について考える.
Ⅲ 授業の教育目標
幼児教育コーディネータ養成コースは,「地域・学校園における幼児教育の研修及び専門的指導」のための研修講座の計画立案実践能力,組織化,および地域課題解決への具体的対応力を身につけることにより,地域,学校園における保幼こ小連携などの幼児教育をコーディネートできる人材の育成や,その能力の向上を図ることを目標とする.
映像資料
学習の進め方
- テキストと e-Learning は,事前にテキストと動画で学習する自律的なオンライン研修の教材です.
- 講習の内容は,まず,テキストと e-Learning との両方を活用して学びます.
- 講義では,始めに各講で講義の目的と学習到達目標についての説明を行います.
- 講義内容について,受講者による自己研修を行います.
- 各講の終わりに課題を示します.自分の学習の深度に従って,考えてみましょう.
プレゼン資料
映像資料
遊びと文化Ⅰ・Ⅱ
講習内容
- 「自から知識を構成する」学習観である構成主義の学びと創造的に学ぶ(クリエイティブ・ラーニング)教育について事例を挙げ、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと共同的な学びの実現にためのオンライン学習における教材開発について理解する。
- 幼児期に遊ぶ「折り紙」や身近にある「紙コップ」や「紙皿」などを使い,オンライン学習における動くおもちゃの教材を作る。その過程を通して,幼児に身に付けさせる力を考え,それを指導するための方法を考案する。さらには幼児が安定した確かな作品ができるか等の視点を定め,幼児の学びのプロセスを評価し改善・指導できる力の深化を図る。
映像資料
保育内容(表現)
講習内容
- 山形の東根長瀞小学校の「想画教育」や「レッジョ・エミリア・アプローチ」における子どもの表現力やコミュニケーション能力、探究心、考える力の養成研究を考える。また、子どもによる紙芝居の創作(クリエイティブ・ラーニング)を通じて表現方法を考える。
映像資料
教師論
講習内容
- 教師は、学習者がその成長・発達に必要な「生きる力」を身に付けることができるよう、学習内容や学習活動の特質、幼児児童生徒の実態に応じた適切な指導ができなければならない。そのために、幼児教育における教師の役割と責務について理解を深め、教育者としての資質・能力を考える。
映像資料
教育の方法・技術
講習内容
- 21 世紀の知識基盤社会における「学力」は「他者と協働しつつ創造的に 生きていく」ための資質・能⼒の育成である。そのために、学習活動では、他者と共に新たな知識を生み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を、数多く積ませることが重要である。また、情報化や国際化が進み、社会が⼤きく変化する中で、学校、そして教師は様々な変化に直面している。児童に求められる学力の変化や授業でのICT活用など、教師はどう対応していけばよいのだろうか。本講座では「インストラクショナルデザイン」を手がかりに、幼児教育の基礎としてのインストラクショナルデザインについて考える。
プレゼン資料
映像資料
教育相談Ⅰ
講習内容
- 教育相談や発達相談,子育て支援を行う意義について理解し,教育相談を推進することができるような組織づくりや計画・評価について振り返り、幼児・児童生徒が抱える課題を理解し,個に応じた支援及び環境調整への配慮を考える。
映像資料
幼児理解
講習内容
- 幼児も他者であることを前提に、他者の心を理解する枠組みを理解するとともに、幼児理解についての知識を身に付け、考え方や基礎的態度を理解する。また、ケーススタディにより幼児理解の方法を具体的に提供し、様々な問題解決を通じてから理解の深化を図る。
映像資料
資料
令和5年度 岐阜県私立大学地方創生推進事業
【公開講座】社会人のための準デジタルアーキビスト資格取得講座2023
1.【特別講義】デジタルアーカイブin岐阜2023 「AI時代のデジタルアーカイブ」
日 時:2024年2月11日(日) 9:00~12:00
会 場:オンライン講座(Zoomを使用)
主 催:岐阜女子大学デジタルアーカイブ研究所
後 援:デジタルアーキビスト資格認定機構、日本教育情報学会、公益財団法人学習情報研究センター
受講対象:社会人(デジタルアーカイブと教育に興味がある社会人)
趣 旨:デジタルアーカイブは機械学習をはじめとしたAI技術の基盤となるものであり、AI技術の深化により、人間の学びなどの人間の知的活動に、AIが大きな役割を果たしつつある。このAIにおける様々な処理には,デジタルアーカイブがその基礎にあり、AI時代のデジタルアーカイブは、情報の保全・活用、知識の蓄積・再利用、文化遺産の保存・伝承、予測と未来への展望といった面で多様な価値を持つ。今年のデジタルアーカイブin岐阜は、「AI時代のデジタルアーカイブ」をテーマにして、AI時代のデジタルアーカイブの在り方と、人間の学びの変革について考えます。
定 員:100名 (実施済)
募集期間:令和5年11月1日(水)~ 令和6年1月31日(水)
受 講 料:20,000円
プログラム:
1.「AIと人間の学び」(9:10~10:00)
赤堀侃司(東京工業大学名誉教授)
動画資料
資 料
1.プレゼン資料(赤堀先生)
2.AIと人間の学び 壁の向こうで答えているのはAIか人か? (単行本)発売日 : 2022/3/31
2.「人とAIの学習研究から考えるこれからの教育」(10:10~11:00)
益川弘如(聖心女子大学教授)
動画資料
資料
3.「人工知能(AI)とデジタルアーカイブの現状と未来」(11:10~12:00)
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
動画資料
資料
コーディネータ
久世均(デジタルアーカイブ研究所長)
申し込み先
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeWLEsg0CE1TI92e4ytZOh-kCf2_TNZZ-Oma7AoQq87ln4-lQ/viewform
※講師の関係で講演の順番について変更させていただきました。(2024.1.23)
資料
2.e-Learning講座
第1講 デジタルアーカイブの基礎
1.目 的
デジタルアーカイブは、「デジタル」と「アーカイブ」という言葉からできた和製英語と言われています。デジタルアーカイブとは何か? デジタルアーキビストに必要な能力は何か?ここでは、言葉の意味と発展の歴史から、基本的な考え方を理解し、今後のデジタルアーカイブの方向性を考えます。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブとは何か説明できる。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたかについて具体例をあげ説明できる。
③ デジタルアーキビストに求められている能力について具体的に説明できる。
3.課 題
① デジタルアーカイブとは何か自身の立場で説明しなさい。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたか説明しなさい。
③ デジタルアーキビストに求められている能力は何か自身の立場で説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの基礎
5.動画資料
第2講 デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
1.目 的
デジタルアーカイブの利用は、資料の提示や提供から始まり、課題解決、知的創造等の処理へと進みます。またデジタルアーカイブを活用し、新しい「知」の創造を求め、さらに新しい「知」と人々の経験を付加し、新たな知的活動へと発展します。ここでは、デジタルアーカイブの開発と活用プロセスについて考えます。
2.学習到達目標
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明できる
②資料の選定評価について説明できる。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明できる。
3.課 題
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明してください。
②資料の選定評価の課題について説明してください。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明してください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
5.動画資料
第3講 デジタルアーカイブの評価とメタデータ
1.目 的
デジタルアーカイブは、対象とする資料(情報資源)の分野も多岐にわたり、プロジェクト規模なども異なるため、それぞれにあわせた評価手法が求められます。そこで、本講では、デジタルアーカイブの自己点検ツールとして考案された「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容を把握し、その評価項目の中でも重視されているメタデータについて、記述のための国際標準、国際指針として制定されている事例から学びます。
2.学習到達目標
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容について説明できる。
② 記述のための国際標準、国際指針などの事例について説明できる。
③ 資料(情報資源)のメタデータ記述ができる。
3.課 題
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の評価項目の内、あなたが重要だと思う項目について、なぜそう思うかを含めて説明してください。
② 具体的に何か資料(情報資源)を一つ取り上げ、その資料のメタデータ記述項目を設定した上で実際の記述を行ってください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの評価とメタデータ
5.動画資料
第4講 デジタルアーカイブの利活用
1.目 的
デジタルアーカイブは、1990年代の初期から、過去から現在の資料をデジタル化し、次の世代への伝承と現状での利活用を目指して開発が進められてきた。デジタルアーカイブの基本は、過去~現在の資料の収集・保管、デジタル化、さらに現状での利活用と次の世代への伝承である。
過去~現在の各種資料を収集・保管し、次のように使われる。
①次世代へのデジタルコンテンツの確かな伝承
②国内外のデジタルコンテンツの流通と利活用
ここでは、図書館や博物館等におけるデジタルアーカイブの利活用について考える。
2.学習到達目標
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明できる。
3.課 題
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの利活用
5.動画資料
第5講 デジタルアーカイブによる地域活性化
1.目 的
知識基盤社会においてデジタルアーカイブを有効的に活用し,新たな知を創造するという本学独自の「知の増殖型サイクル」の手法により,地域課題に実践的な解決方法を確立するために,地域に開かれた地域資源デジタルアーカイブによる知の拠点形成をする。このことにより,地域課題に主体的に取り組む人材を養成する大学として,伝統文化産業の振興と新たな観光資源の発掘並びにデジタルアーカイブ研究による地方創成イノベーションの創出について具体的に考える。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブと地域課題解決について説明できる。
② 地方創成イノベーションの創出について具体的に説明できる。
3.課 題
① 飛騨高山匠の技デジタルアーカイブにより,地域の文化産業を振興するための方策を3つ挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブによる地域活性化
5.動画資料
※本映像は本学の学部の授業(情報の管理と流通)の内容の一部を利用して提供しています。
6.テキスト資料
デジタルアーカイブによる地域活性化
第6講 デジタルアーカイブと知的財産権(1)
1.目 的
デジタルアーキビストとして、アーカイブを計画し、そして資料収集し、そして構築し、そして利用許諾し、また運用していくという、こういったときに必要な権利処理について説明する。
2.学習到達目標
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明ができる。
② 著作者の権利について具体的に説明できる。
③ 著作権の契約書を作成できる。
3.課 題
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明しなさい。
② 著作者の権利について具体的に説明しなさい。
③ 著作権の契約書を作成しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(1)
第7講 デジタルアーカイブと知的財産権(2)
1.目 的
著作権について、自分の立ち位置とは関係ない形で第三者的に実践の試みの良い部分と課題について理解を深め、基本的な理解を図った後に、実践の中から法律など制度的な課題について考えます
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明できる。
② 著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて
説明できる。
3.課 題
1.デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明しなさい。
2.著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(2)
5.動画資料
第8講 ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
国立情報学研究所名誉教授 高野明彦氏
➝ プレゼン資料:ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
第9講 世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
東京大学大学院情報学環 時実象一氏
➝ プレゼン資料:世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
第10講 デジタルアーカイブと法制度の現在地点
骨董通り法律事務所パートナー弁護士 福井健策氏
➝ プレゼン資料:デジタルアーカイブと法制度の現在地点
テキスト
【テキスト】
3.準デジタルアーキビスト資格試験
■認定試験の方法
1.認定試験問題を下記に提示いたしますので、試験問題を回答いただき、2月25日(日)17時(時間厳守)までに下記のメールアドレスに送付してください。
pfe01173@nifty.com
2.下記振込期限までに講座に受講料(資格試験料含む)を振り込んでください。
なお、請求書や領収書が必要な場合は、宛先を明記の上下記まで申し込んでください。
pfe01173@nifty.com (担当:久世)
※なお、事前に資格を希望された方には、E-Mailにて課題をお送りさせていただいております。
新たに資格を希望される方は、下記の課題を提出いただき、資格試験料を振り込んでいただければ資格証をお送りいたします。
■認定試験問題
1.R5社会人のための準デジタルアーカイブ資格取得講座課題(Ward版)
2.R5社会人のための準デジタルアーカイブ資格取得講座課題(PDF版)
資格試験料振込口座
資格試験料については、下記の口座に振り込みをお願いいたします。
資格試験料 20,000円
振込期限:令和6年2月29日(木)17:00(時間厳守)
銀行名 十六銀行
支店名 高富支店
預金種目 普通預金
口座番号 1526285
口座名義 学校法人華陽学園(ガッコウホウジンカヨウガクエン)
尚、請求書や領収書が必要な場合については pfe01173@nifty.com まで申し込んでください。
※準DA資格証の発行については、課題提出後2ヶ月後となります。
資料
令和5年度 岐阜県私立大学地方創生推進事業
デジタルアーカイブin岐阜2023
「AI時代のデジタルアーカイブ」
日 時:2024年2月11日(日) 9:00~12:00
会 場:オンライン講座(Zoomを使用)
主 催:岐阜女子大学デジタルアーカイブ研究所
後 援:デジタルアーキビスト資格認定機構、日本教育情報学会、公益財団法人学習情報研究センター
受講対象:社会人(デジタルアーカイブと教育に興味がある社会人)
趣 旨:デジタルアーカイブは機械学習をはじめとしたAI技術の基盤となるものであり、AI技術の深化により、人間の学びなどの人間の知的活動に、AIが大きな役割を果たしつつある。このAIにおける様々な処理には,デジタルアーカイブがその基礎にあり、AI時代のデジタルアーカイブは、情報の保全・活用、知識の蓄積・再利用、文化遺産の保存・伝承、予測と未来への展望といった面で多様な価値を持つ。今年のデジタルアーカイブin岐阜は、「AI時代のデジタルアーカイブ」をテーマにして、AI時代のデジタルアーカイブの在り方と、人間の学びの変革について考えます。
定 員:100名 (実施済)
募集期間:令和5年11月1日(水)~ 令和6年1月31日(水)
受 講 料:無 料
Zoom:
プログラム:
1.「AIと人間の学び」(9:10~10:00)
赤堀侃司(東京工業大学名誉教授)
動画資料
資 料
1.プレゼン資料(赤堀先生)
2.AIと人間の学び 壁の向こうで答えているのはAIか人か? (単行本)発売日 : 2022/3/31
2.「人とAIの学習研究から考えるこれからの教育」(10:10~11:00)
益川弘如(聖心女子大学教授)
動画資料
資料
3.「人工知能(AI)とデジタルアーカイブの現状と未来」(11:10~12:00)
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
動画資料
資料
コーディネータ 久世均(デジタルアーカイブ研究所長)
※講師の関係で講演の順番について変更させていただきました。(2024.1.23)
資料
【公開講座】社会人のための準デジタルアーキビスト資格取得講座2023 (希望者)
➝ 社会人のための準デジタルアーキビスト資格取得講座2023
参加申し込み
参加申し込みはここから ➝ デジタルアーカイブin岐阜2023
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeWLEsg0CE1TI92e4ytZOh-kCf2_TNZZ-Oma7AoQq87ln4-lQ/viewform
資料
2.新聞広告_原稿
【高大連携研究】ICTを活用した「主体的・対話的で深い学び」の実現
研究目標 :
(1)授業改善
(2)ICTを効果的に活用
目標達成に向けた取組:
(1)効果的な問や課題で,系統的な学びの機会を創出する・させる
(2)「個」の考えや「気づき」を深めさせるために,学びの「視覚化」「言語化」「構造化」を伴う対話的な活動を導入して授業改善
(3)指導助言者や職員間のアドバイスを受け入れ専門的多角的に授業改善
(4)全職員が情報収集・発信を意識して多面的に授業改善
発問・学習方略
・効果的な問いや課題で,系統的な学びの機会を創出する・させる
ICT・アクティブラーニング
・「個」の考えや「きづき」をより深めさせるために,学びの「視覚化」「言語化」「構造化」を伴う対話的活動を導入する
発問・アクティブラーニング・ICT・学習方略
・思考を活性化させ,他者と共に新たな「きづき」を生み出し,「知識」「理解」が「構造化」され,学びを深めていく経験ができるように,「インストラクショナル・デザイン」を意識する
【講演】知識の構造化とインストラクショナル・デザイン
Ⅰ はじめに
21 世紀の知識基盤社会における「学力」は「他者と協働しつつ創造的に 生きていく」ための資質・能⼒の育成である。そのために、授業では、他者と共に新たな知識を⽣み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を、数多く積ませることが重要である。また、情報化や国際化が進み、社会が⼤きく変化する中で、学校、そして教師は様々な変化に直⾯している。児童・生徒に求められる学⼒の変化や授業でのICT活⽤など、教師はどう対応していけばよいのだろうか。本講座では「インストラクショナルデザイン」を⼿がかりに、教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインについて考えていく。
Ⅱ 授業の目的・ねらい
高度情報社会は新しい課題を世界にもたらし、新しい解を生み出せる人間を求める社会である。つまり、これからの社会は、一部の専門家があらかじめ有する「正解」を適用するだけで解決できるものではなく、問題を共有する者が知識やアイデアを出し合い、不完全にせよ解を出して実行する。そして、その結果を見ながら解とゴールを見直すことが求められている。このような課題に対して、社会全体が応えようとしている表れが、知識基盤社会、コミュニティ基盤社会への転換と進展、ICTの利活用である。知識基盤社会とは、新しい知識やアイデア、技術のイノベーションがほかの何よりも重視される社会である。そのイノベーションのために、他者とのコミュニケーションやコラボレーション(協働、協調)が重視され、 それらが効果的・建設的に行えるように、人と人を繋ぐコミュニティやICTの役割に注目が集まっている。
つまり、現在決まった答えのないグローバルな課題に対して、大人も子 供も含めた重層的なコミュニティの中で、ICT を駆使して一人ひとりが自分の考えや知識を持ち寄り、交換して考えを深め、統合することで解を見出し、その先の課題を見据える社会へと、社会全体が転換しようとしている。ここでは、その高度情報社会とそれに応じて求められる資質や能力について考える。
Ⅲ 授業の教育目標
教育情報とは、検索利用可能な形で集積され、流通される情報を第一義的なものと考え、狭義には学資教材情報を、広義には、教育研究情報や教育の管理経営の情報その他を含めて考えることが情報管理論的に妥当である。こうした教育情報のシステムは、すでに学術的には開発され、試行されているものがあるので、これを基準に、教育情報について体系的に考察する。
(1)「イ ンストラクショナルデザイン」を⼿がかりに、効果的・効率的・魅⼒的な授業づくりや教材開発について考える。
(2)21 世紀に求められる学⼒を育む新たな授業と評価を、背景や実践事例を紹介しながら考える。
(3)⽬標を分析して構造がわかると、評価規準ができる。⽬標の構造がわかるというのは、評価規準のなかで、重要度を決定することを考える。
(4)企業の教材開発の視点を考える。
(5)協働学習の⼿法の⼀つである「ジグソー学習法」を経験し、学習者⾃⾝で知識を統合して答えを出す学習活動過程について理 解を深め、その効⽤を考える。
1. インストラクショナルデザイン
1. 何を学ぶか
情報化や国際化が進み、社会が⼤きく変化する中で、学校、そして教師は様々な変化に直⾯している。⼦供達に求められる学⼒の変 化や授業でのICT活⽤など、教師はどう対応していけばよいのだろうか。ここでは「イ ンストラクショナルデザイン」を⼿がかりに、効果的・効率的・魅⼒的な授業づくりや教材開発について考える。
2. 学習到達目標
① インストラクショナルデザインとは何か説明できる。
② ADDIEモデルについて事例をあげて説明できる。
3. 研究課題
① ADDIEのプロセスを検討し、折り紙を折れるようになる教材を作成しなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
2. 21世紀に求められる学⼒と学習環境
1. 何を学ぶか
21 世紀にふさわしい主体的・協働的な授業をいかに設計し、評価していくべきだろうか。21 世紀の知識基盤社会における「確かな学⼒」は「他者と協働しつつ創造的に⽣きていく」資質・能⼒の育成であるため、授業では、他者と共に新たな知識を⽣み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を、数多く積ませることが重要である。ここでは、21 世紀に求められる学⼒を育む新たな授業と評価を、背景や実践事例を紹介しながら考える。
2. 学習到達目標
① 21 世紀に求められる学⼒について説明できる。
② 資質・能⼒を引き出す授業の条件を説明できる。
3. 研究課題
① 知識習得モデルと知識創造モデルの違いを説明しなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
3. 教材の分析と設計
1. 何を学ぶか
⽬標分析をできないと評価規準をつくるのは難しいと⾔われる。「⽬標分析をする」とは、⽬標の構造を捉えることである。つまり、 ⽬標は平⾯的で、それだけでは構造はわからない。しかし、⽬標を分析して構造がわかると、評価規準ができる。⽬標の構造がわかるというのは、評価規準のなかで、重要度を決定することである。「この単元で何をしたいのか、何を教えたいか、何を指導したいか、どのような順序で教えるのか」を決定する。そして、「それを指導するために、何がいるのか」を考える。
2. 学習到達目標
① 何を教えるのか、そのための教材作成のあり⽅について説明できる。
② システム的な教材設計・開発の⼿順を5 つに分けて説明できる。
3. 研究課題
① あなたは、どのような場⾯でメディアの影響を強く受けていると思うか、また、どのような場⾯でメディアの影響をあまり受けていないと思うかグループで話し合って発表しなさい。
② テレビなどのCM は、専⾨家がなんとか視聴者をひきつけようとして創作した作品である。どんなCM が印象に残っているか。それは何故か。メディアの特性をどのように使っているか。グループで話し合って発表しなさい。
③ インターネットで、いくつかの教材を調べて、その教材の有効性を5段階で判定しなさい。そして、どのような要因でその判定結果になったかを、書きなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
4. 学習⽬標のデザイン
1. 何を学ぶか
授業づくりは、まず学習⽬標を適切かつ明確にすることからスタートする。学習⽬標とは、学習者が、わかるようになること、できるようになること、⾝に付けることなど、教師が授業でねらいとすることを、より具体的な形で表し、どのようにわかったか、どのようにできるようになったか、どのように⾝に付いたかについて考える。
2. 学習到達目標
① ブルームの教育⽬標分類について、⾏動⽬標による例を取り上げて説明できる。
② ガニェの学習成果の5 分類について、具体例を挙げて説明できる。
③ 明確な学習⽬標について、具体的な単元において説明できる。
3. 研究課題
① ガニェの学習成果の5分類をもとに、各教科や単元を例にとって、グループで明確な学習⽬標を設定して発表しなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
5. 協働的な学びをデザインする
1. 何を学ぶか
⽇本において「協働学習(Collaboration Learning)」という⾔葉や概念は教育⼯学・認知科学の分野において使⽤され始め、ICT環境の整備とテクノロジによる学習⽀援が実現されていくのと共に広く知られるようになった。もともと「協働」とは⾃らが属する組織や⽂化の異なる他者と⼀つの⽬標に向けて互いにパートナーとして働くことである。従って「協働学習」は、単に「問題を⼀緒に解く」というような抽象的な活動のことではない。問題を解く場⾯で「どうしても他⼈がいないと起きない活動」を通じて「他⼈がいると⾃分⼀⼈で解くより答えの質が上がる」ことを繰り返し経験することで柔軟に解決できる“使えるスキル“の育成について考える。
2. 学習到達目標
① 協働学習の考え⽅を理解し実際に授業デザインできる。
② ワークショップの⼿法を5種類説明できる。
③ ジグソー学習について説明できる。
3. 研究課題
① 協働学習の⼿法の⼀つである「ジグソー学習法」を経験し、学習者⾃⾝で知識を統合して答えを出す学習活動過程について理解を深め、その効⽤を検討してみましょう。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
6.教授・学習の理論と教育実践
1. 何を学ぶか
⼈が「学ぶ」ということについて、古くからいろいろな領域での研究がなされてきた。教授と学習という概念は、⼀般に教育者の⾏う教授活動と、学習者の⾏う学習活動という意味で理解されている。しかしながら、現実の多くの教育においては、「教授と無関係に成り⽴っている学習」もあれば、「教授が学習を導けない場合」もある。また、「教師がいないで⾏われている学習」であっても「教師からいかなる指⽰も影響も受けずに学習者が学習を⾏う場合」もあれば、「教師から前もっての指⽰のもとに、⼀⼈で学習する場合」もある。さらには、「教師の指⽰に反する⽅法で学習を⾏うような学習者」もいる。このように、現実の教育の場においては、教授と学習は必ずしもひとつの教育過程を構成しているとはいえない場合がある。ここでは、このような教授・学習の理論の変遷について考える。
2. 学習到達目標
① 教授学習に関する基本的な理論を具体的に説明できる。
② ⾏動主義と認知主義の2つの学習論の区別を説明できること。
3. 研究課題
① ⾏動主義的学習論と認知主義的学習論、構成主義的学習論に対応した教材や課題(問題)を作成し、グループで協議をしなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成
5.映像
テキスト
1. 教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザイン (テキスト)
2.教育情報研究
タキソノミーテーブル(教育目標の分類体系:タキソノミー)
1. タキソノミーテーブル(教育目標の分類体系:タキソノミー)インストラクショナルデザイン
講演のレジュメ
【講演】ICTを活用した「主体的・対話的で深い学び」の実現
【学習到達目標】
・21世紀に求められる資質能力について説明できる.
・新学習指導要領改訂の視点について説明できる。
・新たな学びの視点について具体例を示して説明できる.
1.21世紀に求められる資質能力と学習環境
21 世紀の知識基盤社会における「学⼒」は「他者と協働しつつ創造的に⽣きていく」ための資質・能⼒の育成である.そのため,授業では,他者と共に新たな知識を⽣み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を,数多く積ませることが重要である.ここでは,21世紀に求められる学力と学習環境について述べる.
(1)21世紀型スキル
「21世紀型スキル」とは,世界の教育関係者らが立ち上げた国際団体「ATC21s」が提唱する概念で,これからのグローバル社会を生き抜くために求められる一般的な能力を指している.批判的思考力,問題解決能力,コミュニケーション能力,コラボレーション能力,情報リテラシーなど,次代を担う人材が身に付けるべきスキルを規定したもので,各国政府も知識重視の伝統的な教育から21世紀型スキルを養い伸ばす教育への転換に取り組み始めている.「21世紀型スキル」の定義については,ATC21Sプロジェクトの「21世紀のスキルに関する作業グループ」で検討されており,以下のように書かれている.
①思考の方法(創造性と革新性,批判的思考・問題解決・意思決定,
学習能力・メタ認知)
②仕事の方法(コミュニケーション,コラボレーション(チームワーク))
③学習ツール(情報リテラシー,情報コミュニケーション技術
(ICTリテラシー)
④社会生活(市民権(地域および地球規模),生活と職業,個人的責任お
よび社会的責任(文化的差異の認識および受容能力を含む))
(2) 21世紀型能力
国立教育政策研究所では,教育課程の編成に関する基礎的研究報告書5(2013.3:研究代表者 勝野頼彦)において,前述の21世紀型スキルを踏まえて,21世紀を生き抜く力を「21世紀型能力」と名付け,その試案を次のように提案している.21 世紀型能力は,「21 世紀を生き抜く力をもった市民」としての日本人に求められる能力であり「思考力」,「基礎力」,「実践力」から構成されている.
第1に,21世紀型能力の中核に,「一人ひとりが自ら学び判断し自分の考えを持って,他者と話し合い,考えを比較吟味して統合し,よりよい解や新しい知識を創り出し,さらに次の問いを見つける力」としての「思考力」を位置づけている.
「思考力」は,問題の解決や発見,アイデアの生成に関わる問題解決・発見力・創造力,その過程で発揮され続ける論理的・批判的思考力,自分の問題の解き方や学び方を振り返るメタ認知,そこから次に学ぶべきことを探す適応的学習力等から構成される.
第2に,思考力を支えるのが「基礎力」,すなわち,「言語,数,情報(ICT)を目的に応じて道具として使いこなすスキル」である.技術革新を背景にICT 化が著しく進む今日において,社会に効果的に参加するためには,読み書き計算などの基礎的な知識・技能とともに,情報のスキルが不可欠である.情報スキルは,計算や記憶の代行など,読み書き計算の不足を補償する可能性すらある.その支援力の大きさを使って,思考力を助けるのが,この基礎力の一つの役割と考えることもできる.
第3に,思考力の使い方を方向づける「実践力」を位置づけている.「実践力」とは,「日常生活や社会,環境の中に問題を見つけ出し,自分の知識を総動員して,自分やコミュニティ,社会にとって価値のある解を導くことができる力,さらに解を社会に発信し協調的に吟味することを通して他者や社会の重要性を感得できる力」のことである.
そこには,自分の行動を調整し,生き方を主体的に選択できるキャリア設計力,他者と効果的なコミュニケーションをとる力,協力して社会づくりに参画する力,倫理や市民的責任を自覚して行動する力などが含まれる.
(3)教育用メディア環境
21 世紀にふさわしい主体的・対話的な深い学びのためのどのように教育用メディア環境の設計していくべきだろうか.現在,情報通信技術の急速な汎化が進み,Web情報も重要なデジタルアーカイブの情報源として選択保存の必要性が出てきた.これらの,研究・教育の結果として,デジタルアーカイブ開発として新しい観点で実践・研究を展開されている.従来のデジタルアーカイブは,現物のみを対象として考えてきたが,現在の多様なメディアの実用化にともない,メディアを次の4領域に分けメディア環境として構成することが必要となった.
① 実物・体験・文化活動
② 印刷メディア(記述・印刷の紙などのメディア)
③ 通信メディア(通信でWeb情報として収集可能な資料の選択・保存)
④ デジタルメディア(マルチメディア機能をもつメディア)
新しい教育用メディア環境は,かつての現物としていた対象物を最近の通信メディアの発達により,多様な情報が流通する中から,デジタルアーカイブとして記録・保管すべき情報を選定評価し,必要に応じて保管し,組み合わせて表現することを示す.また,各メディア間では相互に変換し利用が進み,新しい資料活用が始まろうとしている.例えば,書籍や教科書をデジタル化し,紙の印刷物と同じ内容の資料がデジタル教科書として図書の二次利用が既に始まっている.教育用メディア環境では,学習者が,電子黒板や教育用メディア端末,印刷メディアである従来の教科書等必要なメディアを主体的に選択し,あるいは組み合わせて利用を可能にすることが重要である.
(4)デジタル学習材
教育用メディア環境としての4領域の大きなカテゴリー化は,教育用のメディア利用の枠組みとして,適用できるかが課題となる.一般に,デジタル学習材と一括して表現されているものには,ネットワーク型もあり,DVD等の学習材,また,印刷物との複合学習材,教育用メディア端末の学習材等,様々な学習材をもデジタル教材と表現している.前述のように,学習者に対する教育用メディア環境も大きく変化している中で,教師が授業で活用する教材とメディアの特性を活かすデジタル学習材に再分類し,メディアの特性を生かし,学習者が主体的に活用でき,一人ひとりの学習者の特性に対応した学習材のあり方を検討している.このため,今後,このメディアの特性について,組み合わせを含めて資料活用上の実践・研究を進め,その適否の評価をすることが必要である.新しい教育用メディア環境としては,前述の4つの領域に分類し,これらを単独として考えるのではなく,これらを組み合わせたものとしてデジタル学習材を考えることが必要となる.
2.新学習指導要領の視点
新学習指導要領では,図2-2のように,次の「3つの視点」でとらえることができる.
新学習指導要領では,第1は,知識・技能を「何を理解しているか,何ができるか」と捉えなおしていることである.知識基盤社会においては,知識はばらばらにあっても使えるものにならない.個別の知識はすぐに忘れてしまう.またその知識を新たな学習により絶えず再編していくことにより活かすことができる.第2に,思考力・判断力・表現力等について,「理解していること・できることをどう使うか」としている.つまり,これからの視点として問題を発見し,定義し,解決の方向性を決め,解決方法を探し,計画を立て,結果を予測しつつ実行し,そのプロセスを振り返って,次の問題発見・解決につなげていくことが重要となる. 第3に,主体的に学習する態度を「どのように社
会・世界と関わり,よりよい人生を送るか」として概念化している.ここには,情意や態度が含まれ,生きる力の根底に関わるところである.
3.アクティブ・ラーニング
アクティブ・ラーニングについては,図3に示す3つの「新たな学びの視点」としてまとめている.
第1が「深い学びの過程」である.習得・活用・探究という学習プロセスの中で,問題発見・解決を念頭に置いた深い学びが実現できているかどうかということである.これは知識・技能の高度化であり,それらが互いに関連づけられ,体系化されていくことにより,思考力を発揮する問題解決過程を通して主体的に学んでいくことで可能にする.学習者が既に学んできたことと新たに学ぶことをつなげ,体系化された知識として保持し,教科としての体系的な見方を身に付ける中で,それを問題解決過程に使えるということを目指している.
第2が「対話的な学びの過程」である.他者との対話を通じて外界との相互作用を通じて,自らの考えを広げ深める.対話とは,物事の複眼的で深い理解に達するために,様々な考えに触れ,やりとりを通していく.教師と子ども,子ども同士がやりとりすることとともに,外界の出来事やものや表現とのやりとりも重要となる.学習者である子どもが教材を前にその探究と理解に向かい,それを助ける教師がいて,また仲間同士がいる中で,ともに考える.
第3が「主体的な学びの過程」である.子どもたちが見通しを持って粘り強く取り組み,自らの学習活動を振り返って次につなげる.積極的に意欲を持って学習に取り組むことから始まり,難しい点に会ってもすぐにあきらめることなく,複眼的で多視点でものを考え,解決法を工夫し,課題をやり遂げていく.他の学習者や教師と考えの共有を図りつつ,自分の間違いを捉え,また自分と他者の良さを自覚し,多面的な理解を深めていく.意欲から意志へ,そして自覚する学習者へと育てていくのである.
【課題】
(1)新たな学びの視点を入れた授業をデザインし,その指導の概要をまとめてみなさい.
(2)新学習指導要領について,その背景,教育の課題,改訂のポイントという視点で,それぞれ4つキーワードを出して説明しなさい.
【参考文献】
1.林徳治他:教学改善のすすめ ぎょうせい 平成28年4月15日
2.P.グリフィン;21世紀型スキル 北大路書房 2014.4.20
資料
【講座】21世紀に求められる資質能力と学習環境
1.21世紀に求められる資質能力と学習環境
1. 何を学ぶか
21 世紀にふさわしい主体的・協働的な授業をいかに設計し、評価していくべきだろうか。21 世紀の知識基盤社会における「確かな学⼒」は「他者と協働しつつ創造的に⽣きていく」資質・能⼒の育成であるため、授業では、他者と共に新たな知識を⽣み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を、数多く積ませることが重要である。ここでは、21 世紀に求められる学⼒を育む新たな授業と評価を、背景や実践事例を紹介しながら考える。
2. 学習到達目標
① 21 世紀に求められる学⼒について説明できる。
② 資質・能⼒を引き出す授業の条件を説明できる。
3. 研究課題
① 知識習得モデルと知識創造モデルの違いを説明しなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成(第3講)
5.映像
2.主体的・対話的な深い学びと学習理論
【学習到達目標】
・主体的・対話的で深い学びについて具体例を挙げて説明できる.
・アクティブ・ラーニングと主体的・対話的な深い学びについて説明できる.
・主体的・対話的な学びについて学習理論を示して説明できる.
1.主体的・対話的で深い学びの視点
アクティブ・ラーニングについては,平成24年8月中央教育審議会の「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」の中に,能動的学修(アクティブ・ラーニング)と括弧書きで記載されている.「能動」の対義語は「受動」であるため,大きなとらえとしては「受動的にならない学習」であるが,先述の諮問文では「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」とされている. 一方で「アクティブ」という言葉から,活動性をイメージさせてしまい,授業中に子どもたちが活動する,ダイナミックに動きまわる,何か体験をたくさんさせなければならない,といった誤解を持たれる傾向がある.確かに体が活動的であるということも大事ではあるが,一番活性化してほしいのは子どもたちの頭の中「深い学び」である.
つまり,「子どもたちの思考が活性化し,深い学び」が授業の中で起きているかどうかが重要になる.
例えば活用の場面で「より積極的に自分の考えを他者に伝える」,習得の場面で「何のために習得するのか,自身にどのような成長があるかを自覚的に習得する」さらには「個別ではなく子ども同士で教え合う,教えてもらう」といった場面でも,子どもの思考は活性化している.このような学習の状況を授業場面の中に作っていくことがアクティブ・ラーニングにつながる.
そうすると,これまで国内で積極的に行われてきた授業改善の取り組みは,まさにアクティブ・ラーニングであると言える.特に小学校の先生方は熱心に取り組まれており,例えば問題解決的な学習や発見学習,体験活動やグループ・ディスカッション,ディベートなどさまざまにある.そういったものもアクティブ・ラーニングに含まれる.
しかし,小・中・高等学校,大学と校種が上がるにつれて,より受動的になる傾向がある.これからは,これらをすべての校種の教室で実施し,質的にも担保していくことが求められてくる.さらに,授業の質の向上には,これまで行われていなかった新しい学習・指導方法を考えていくことも必要である.例えばジグソー法や思考ツールを使ったディスカッション,あるいはICTなどを積極的に授業に取り入れ,子どもたちがよりアクティブに学ぶ授業を考えることも求められる.アクティブ・ラーニングについては,前述の答申では,「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称.学修者が能動的に学修することによって,認知的,倫理的,社会的能力,教養,知識,経験を含めた汎用的能力の育成を図る.発見学習,問題解決学習,体験学習,調査学習等が含まれるが,教室内でのグループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である.」と定義されている.
2.主体的・対話的で深い学びと学習理論
人が「学ぶ」ということについて,古くからいろいろな領域での研究がなされてきた.教授と学習という概念は,一般に教育者の行う教授活動と,学習者の行う学習活動という意味で理解されている.しかしながら,現実の多くの教育においては,「教授と無関係に成り立っている学習」もあれば,「教授が学習を導けない場合」もある.また,「教師がいないで行われている学習」であっても「教師からいかなる指示も影響も受けずに学習者が学習を行う場合」もあれば,「教師から前もっての指示のもとに,一人で学習する場合」もある.さらには,「教師の指示に反する方法で学習を行うような学習者」もいる.このように,現実の教育の場においては,教授と学習は必ずしもひとつの教育過程を構成しているとはいえない場合がある.教授・学習の理論とは,「一定の教材を教師が教授し,学習者がその教授のもとで学習する活動を言い表す概念である.」と定義されるように,本来,教授と学習は一体化して行わなければならない.
3.教授・学習の理論
教授・学習の理論の歴史的な変遷とその課題について考えてみる.1960年代に,世界中で,それまでの学校教育のあり方の見直しが行われた.この動きはカリキュラム改革運動としてアメリカに端を発し,およそ20年間続いた.このカリキュラム改革運動期では多くの教育プロジェクトが出現した.その基礎理論は既存の心理学理論であった.この既存の心理学理論には,大別すると行動主義と認知心理学がある.ここでは,行動主義の代表としてはバラス・スキナー(B.F.Skinner),認知主義の代表としてはピアジェ(J,Piaget)の理論を取り上げ,カリキュラム改革運動期における教授・学習論について考える.さらに,構成主義的学習論から社会的構成主義に至る経緯を述べる.
4.行動主義的学習論
人がどのように思考しているかを研究する学問,心理学が学問として成立したのは19世紀後半のことである.このころ,意識や思考のプロセスを探るには,その人に直接たずねるという「内観法」とよばれる方法に頼っていた.この「内観法」の主観性を問題視し,客観的な心理学を求めて提唱されたのが「行動主義」による心理学である.「行動主義」により学習を定義すると「行動が変わること」となる.つまり,行動主義的学習論では,客観的に示す方法がない頭の中の出来事は全てブラックボックスとみなしてしまい,科学的に扱える「行動」のみを対象に評価や研究を行うのが「行動主義」である.すなわち,「学習者の刺激に対する反応のみに注目し,学習成立の有無を判断しようとするもので,学習者の心的なプロセスは分析の対象としない学習論」といえる.行動主義的学習論では,学習者の行動から学習の成立を考える.例えば,授業が終わった直後に「よくわかりました」と言っている児童生徒がいたとする.しかし,行動主義的学習論では,この時点では学習したとはいわない.学習したかどうかはすべて学習者の行動が変わることによって示されるからである.従って,「わかったならやって見せなさい」というのが行動主義的な考え方といえる.
行動主義的学習論の基本的な理論は,1938年に代表的な行動主義心理学者のひとりであるバラス・スキナー(B.F.Skinner)が考えた.スキナー箱というものを使ってマウスやハトを用いて有名な研究を開始した.このスキナー箱とは,マウスが,餌が出るレバーを押すように自発的に行動(operate)するようになることを観察する代表的な実験装置である.この実験により,報酬や罰などの刺激に反応して,自発的にある行動を行うように,学習することを,オペラント条件づけと呼んだ.すなわち,「オペランド条件づけ」とは,偶発的行動に正の強化を与えるとその行動が生起しやすくなることを研究し,その結果,学習は訓練によってだれにでも身につけさせることできることを理論化したのである.スキナーは,さらにこの「オペラント条件づけ」の理論に基づき,1960年代に「プログラム学習」を開発した.開発のきっかけとなったのは,愛娘の授業参観に行ったスキナーが,授業方法のひどさに呆れ,「これはネズミの訓練以下の教育だ」と憤慨し,その結果開発されたのがプログラム学習だったという話がある.
一般に教育の世界では, 常にものごとの 「基礎・基本」を身につけることの重要性が叫ばれる.そのような「基礎・基本」を身につける手段には,必ずといってよいほど,やさしい問題から順に難しい問題に進む.階段を上がるように一歩一歩,練習問題を解いでいくコースが設定され,それぞれの段階での「反復練習」が強調される.このようにして獲得された反応が,新しい課題状況でも発揮されることにより,基礎技能が「活用」 できるようになるのだときれてきた.学習というものがこのようにあとで役に立つ行動様式の積み重ねで構成されるという考え方を支えてきたのが行動主義的学習論である.しかし,行動主義的学習論には,いくつかの課題があった.それは,動物や頭を使わない訓練の場合はうまくいくが,人間の場合には,報酬にたいする価値観や知的好奇心等複雑な心的な条件が関わってくるため,必ずしも,行動主義的学習論のみでは学習できない.また,学習のプロセスを評価することの是非についても課題となってきた.
5.認知主義的学習論
このような行動主義に対して,ピアジェ(J,Piaget)は,認知主義的学習論として学習者の学習の成立を発達段階に応じた新たなシェマ(Schema)の獲得と位置づけて説明した.シェマとは,学習者が発達していく段階で外部事象を取り入れるために既有の心的構造である.すなわち,学習を,学習のプロセスも含む頭の中での変化を対象とする学習論としてとらえた.ピアジェは,このシェマによって外部事象をそのまま受け入れることを「同化」といい,既有のシェマによる受け入れが困難な場合にはシェマの修正を行い,新たなシェマを獲得することを「調節」といった.また,場面に応じてシェマを適切に運用する人間の心的行為を「操作」と呼んだ.このように,ピアジェは行動主義ではブラックボックスとされた人間の内観をこの「同化」「調節」「操作」という概念でもって説明しようとした.
行動主義的学習論に対して,認知主義的学習論では,学習は,頭の中での変化を含む変容,学習のプロセスも含むと定義しており,学習者が発達していく段階で外部の事象を取り入れるために,既にある心的構造を用いている.ピアジェは人間には,もともと好奇心があり,外に働きかける学びはその関わりの中で生じるといっている.
このようにカリキュラム改革運動期における学習論は,学習者の内観を重視するピアジェの認知主義的学習論と,学習者の行動から学習の成立を検証するスキナーの理論の行動主義的学習論が位置付いていた.
6.構成主義的学習論
認知主義的学習論の次に提唱された学習論として,「構成主義的学習論」がある.ここで,従来の学習論と構成主義的学習論の最も大きな違いは,学習者を受動的な存在と見るか,能動的な存在と見るかという点になる.前者においては学習者を,知識を流し込まれる器のような存在ととらえ,また後者においては学習者を自ら外部に働きかけ知識をつかみとる力を持つ存在ととらえている.この違いに着目して,構成主義的学習論を考える.構成主義とは,学習者たち一人ひとりが主体的に教えられている対象の概念を組み立てていくように教えるという考えである.そこでは学習者自身が能動的に知識を構築していくという考え方があり,その結果,学習プロセスの中で質的な変化が学習者自身に起こると考えた.このように,「行動主義」における教える側からの受動的な学習観に対して,学習者側からの能動的な学習観を提唱するのが「構成主義」による心理学である.構成主義はピアジェ(J,Piaget)の認知主義に基づき「人が,自分がすでに持っている知識構造(シェマ)を通して外界と相互作用しながら,新しい知識を得,新しい知識構造を構成すること」を学習の定義としています.もう少しわかりやすく表現すると構成主義は,「人は自らのいる環境で回りにある材料を使って行動する過程で自らさまざまな概念や知識を主体的に学び取るのである.」といった主体的・積極的な学習観を示す.また,「学習は個人の活動であり,学習の効果は個人の能力として評価される.」という学習観である.
さらに,この構成主義的学習論を進化したのが,ヴィゴツキー(Vygotsky,LS)である.このヴィゴツキーの理論を具現化したのが「社会構成主義的学習論」である.すなわち,学校における学習は,学習者である現在の児童生徒のみでできることではなく,教師の協力や仲間との協働によって可能なことを学ぶのであるという考え方である.言い換えれば,学習者が成長していく過程で,その周りの人たちが果たす役割の重要性について言及したものである.彼はこの考えの中で,知的な能力は他人との関わり合いの中から発達するということを主張した.つまり,彼は学習者が成長するときに,家族や大人,仲間と協働にやることが重要であるということを提示した.ヴィゴツキーはこれを発達の最近接領域と命名した.すなわち,ヴィゴツキーは,発達の最近接領域における「協働学習」の有効性を強調したのである.それは,「協働の中では,学習者は自分一人でする作業のときよりも強力になり,有能になる.かれは,自分が解く知的難問の水準を高く引き上げる.」という言葉に表れている.このようにして,子どもの学習が,「教室における集団」「教師やクラスメイトとの対話」「観察や実験などの事実」「教科書などから得られる情報」等を通じて成立することを理論化したのである.すなわち,このことにより社会的構成主義学習論の基礎が築かれた.
従来の学習論と社会的構成主義の違いについて,今,テストを例に考えてみる.通常,人の手を借りてテストを受けるのはカンニングと言われる.通常の学校教育の現場では,学習者は,「他者の助けなし」で有能であることが求められている.すなわち,学校では,学習はあくまで個人のものであるというようにとらえている.しかし,通常の日常生活を考えてみると,ある研究によると,我々が,仕事場で行う90%以上の仕事は,個人が一人で取り組むのではなく,他人に知恵を借りたり,お互いにできない部分を補いあったり,得意な部分を活かしあったりして,仕事を達成している.これは,先ほどの学校と違って,日常においては,我々は,一人で「有能」であるわけではない.様々な人々と一緒に,彼らとともに「生きる」ことで,有能に振る舞っている.このように日常生活では,学習者は,他の人々とコミュニケーションをとりながら,知的に振る舞う.そしてそこで実施される学習も,決して,個人の中だけに閉じているものではない.わからないときは,教師や有識者の知恵を聞く.より有能な友人から,手助けを得て,知恵をもらいつつ,学習者は,日々生きている.同じくらい有能な同級生との対話によっても,人は,学べる.例えば,あなたは今,Aということをよく知っている.そして同級生はBを知っている.Aについてよく知っているあなたと,Bについてよく知っている同級生が対話をすれば,Cという新しい価値,新しい知識が生まれる可能性がある.もちろん,お互いに「行き着くところは同じではない」かもしれないが,あなたはAについて「より知ること」ができる.同級生はBについて,新たな見方ができるようになる.人が集まり,何かについて話し合えば,必然的に説明をする必要に迫られる.こうして,相互に学びが深まる可能性がある.社会的構成主義は,このような事例に典型的にあらわれている.ここでも,行動主義と社会的構成主義を捉えるうえでのポイントは,学習を「受動的なもの」から「能動的(主体的)なもの」として捉え直すということである.
最後に,基礎的な学習論である行動主義的学習論と認知主義的学習論をまとめると次のようになる.「行動主義」がそのブームを終え,「構成主義」もさらに新たな展開を見せている現在でも,従来の学習論は,プログラム学習に基づく自学自習教材や,「構成主義」に基づく問題解決学習など,伝統的な学習理論は領域に応じて適用され,効果をあげている.また,これらの理論は,現在でもドリル学習や発見学習,協働学習,ジグソー学習,遠隔学習等.また,e-Learning等様々な学習方法の基礎となっている.教育や学習の目的も価値も時代の流れとともに変わり,普遍的なものではない.教える側にとっても学ぶ側にとっても,課題と状況に応じて新旧いろいろな理論からのアプローチを試みながら,均衡点を常に探し続ける柔軟で動的な学習観を持つことが期待されている.
【課題】
(1)主体的・対話的な深い学びの授業をデザインするために必要なことを纏めて説明しなさい.
(2)学習理論から主体的な学びと対話的な学びについて説明しなさい.
【参考文献】
1.R.A.リーサー他:インストラクショナルデザインとテクノロジ
北大路書房、2013.9.20
2.近藤他;教育メディアの開発と活用 ミネルヴァ書房 2015.3.20
資料
5.資料
【講座】 教授・学習の理論と教育実践
1. 何を学ぶか
⼈が「学ぶ」ということについて、古くからいろいろな領域での研究がなされてきた。教授と学習という概念は、⼀般に教育者の⾏う教授活動と、学習者の⾏う学習活動という意味で理解されている。しかしながら、現実の多くの教育においては、「教授と無関係に成り⽴っている学習」もあれば、「教授が学習を導けない場合」もある。また、「教師がいないで⾏われている学習」であっても「教師からいかなる指⽰も影響も受けずに学習者が学習を⾏う場合」もあれば、「教師から前もっての指⽰のもとに、⼀⼈で学習する場合」もある。さらには、「教師の指⽰に反する⽅法で学習を⾏うような学習者」もいる。このように、現実の教育の場においては、教授と学習は必ずしもひとつの教育過程を構成しているとはいえない場合がある。ここでは、このような教授・学習の理論の変遷について考える。
2. 学習到達目標
① 教授学習に関する基本的な理論を具体的に説明できる。
② ⾏動主義と認知主義の2つの学習論の区別を説明できること。
3. 研究課題
① ⾏動主義的学習論と認知主義的学習論、構成主義的学習論に対応した教材や課題(問題)を作成し、グループで協議をしなさい。
4.教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザインプレゼン構成(第13講)
5.映像
1.主体的・対話的な深い学びとその評価
【学習到達目標】
・学力の定義の変遷について説明できる.
・パフォーマンス評価とルーブリックの関係を説明できる.
1.知識基盤社会と資質・能力
高度情報社会は新しい課題を世界にもたらし,新しい解を生み出せる人間を求める社会である.つまり,これからの社会は,一部の専門家があらかじめ有する「正解」を適用するだけで解決できるものではなく,問題を共有する者が知識やアイデアを出し合い,不完全にせよ解を出して実行する.そして,その結果を見ながら解とゴールを見直すことが求められている.このような課題に対して,社会全体が応えようとしている表れが,知識基盤社会,コミュニティ基盤社会への転換と進展,ICTの利活用である.
知識基盤社会とは,新しい知識やアイデア,技術のイノベーションがほかの何よりも重視される社会である.そのイノベーションのために,他者とのコミュニケーションやコラボレーション(協働,協調)が重視され,それらが効果的・建設的に行えるように,人と人を繋ぐコミュニティやICTの役割に注目が集まっている.
つまり,現在決まった答えのないグローバルな課題に対して,大人も子供も含めた重層的なコミュニティの中で,ICTを駆使して一人ひとりが自分の考えや知識を持ち寄り,交換して考えを深め,統合することで解を見出し,その先の課題を見据える社会へと,社会全体が転換しようとしている.ここでは,その情報社会とそれに応じて求められる資質や能力について考える.
2.目標分析
「目標分析」とは,目標の構造をとらえることで,目標分析をできないと評価規準をつくるのは困難である.つまり,目標自体は平面的で,それだけでは構造はわかりませんが,目標を分析して全体の構造がわかると,評価規準を作成することができる.
目標の構造がわかるというのは,評価規準のなかで,重要度を決定することである.つまり,教材の目標分析とは,「この単元で何を,どのように教えたいか,いつ指導したいのか,どのような順序で教えるのか,どのような方法で教えるのか,そのためにどのような教材を利用するのか」を決定することといえる.
次に,「それを指導するために,何がいるのか」を考え,そしてそれらを分類する事が重要となる.このように,これを教えるためには何が必要かを考えことを,「目標の構造化」という.目標の構造化をすることにより,教材の流れが出てくる.抽象的な教科全体のことを「目標分析」,教材単元のことを「目標分類」と分けて考えると,「目標分類」によって構造とともに授業の流れがわかる.
それぞれの学校や学級によって目標は変わらないが,目標の構造は,子どもの実態によって変わる.子どもの実態,教師の指導方法・指導力,学習環境など,そういうことを含めた授業研究がなされて初めて目標分析ができる.
2.教育目標の分類
日本で目標分析が行われるようになったのは,B.S.ブルーム(B.S.Bloom)の「教育目標の分類」の研究以降である.B.S.ブルームらが開発した手法は,教育目標を構造化し,マトリックス上に表現したものである.
具体的には,学習の「内容」を縦軸にとり,そこで目指される「学習行動(能力)」を横軸にすえたマトリックスを作成し,学習目標をその枠の中に割り付けていくという手法である.このうち,横軸に並べる学習行動(能力)については3つの領域,すなわち認知的領域,情意的領域,精神運動的領域が枠組みとして設定され,それぞれの領域においては目標に段階性があることを意識しながら目標を割り付けていくことが目指された.
B.S.ブルームによる提案が行われて以降,学習行動(能力)の段階性に関する研究が積み重ねられ,各教科で適用可能な形式へと発展していった.また,各国の教育の実情や文化・風土にあったタキソノミー(Taxonomy)を作ることが推奨され,日本の教育文化にあったタキソノミーづくりの試みも実際になされている(梶田,2002).
この教育目標の分類学という目標分析の手法は,あいまいになりがちな授業の目標を明確化し,子どもの学習の評価観点を明確化するという意義がある.また,教師にとっては,その授業の中で何を教えればよいのかが明確に意識化され,子どもの学習評価を,印象論ではなく,明確な観点を持って行うことができるというメリットもある.さらに,教育目標の高度化の方向も示すこともでき,そのための授業改善の方法を探ることもできる.
例えば,深い学びに授業に改善することは,B.S.ブルームの「教育目標の分類」における認知的領域の「内容」を豊富に含むことであり,そのための授業内容や方法を改善することが必要となる.
4.学 力
学生の学力が低下しているといった報道をよく耳にする.そもそも,学力とはどのようなものか.ここでは,まず学力について考えてみる.
授業を実施した場合に,学んだ内容が学生にしっかり身についているかどうか,最終的に評価しなければならない.その評価で測る対象が学力である.
学校ではどのような学力をつけるべきかを問う際に,その基本構造について合意形成していくことが有効である.ここでは柴田の提示している学力構造と相互関係から考えてみる.(柴田1994)
柴田(1994)は,学力を「学んだ力(基礎的知識・技能)」と「学ぶ力(自ら学ぶ力,学び方)」,そして「学ぼうとする力(学習意欲)」の3つの要素で構成されるとしている.「学んだ力」は学習の結果として身に着けた知識や技能を指し,それらを学ぶための必要な学び方,問題解決の方法を「学ぶ力」と表現している.さらに,それらを支える学習意欲を「学ぼうとする力」としている.
その上で,特に「学ぶ力(学び方)」を中心とした学力構成の重要性を述べ,「学び方の論理的側面」としての基本的な思考様式(推論的思考様式,実験的思考様式等)と「学び方の技術的側面」としての実践的知識(辞書の使い方,発表の仕方,情報機器の使用法等)という方法を教育内容として系統的にきちんと位置付ける必要性を強調している.
学力は児童生徒が社会人になっても役に立つ力であってほしいものである.別の見方でいえば,社会が変化すれば,必要な学力も変化することを意味する.
国際的な学力調査PISAを実施しているOECD(経済協力開発機構)は,これからの社会を知識基盤社会だとして,教育の成果と影響に関する情報への関心が高まり,「キー・コンピテンシー(主要能力)」の特定と分析に伴うコンセプトを各国共通にする必要性を強調した.そのために,OECDではプログラム「コンピテンシーの定義と選択」(DeSeCo)をスタートし,その後「キー・コンピテンシー」の概念を提唱した.ここで,提唱された「コンピテンシー(能力)」とは,単なる知識や技能だけではなく,技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して,特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力としている.
つまり,「キー・コンピテンシー」とは,日常生活のあらゆる場面で必要なコンピテンシーをすべて列挙するのではなく,コンピテンシーの中で,特に,①人生の成功や社会の発展にとって有益,②さまざまな文脈の中でも重要な要求(課題)に対応するために必要,③特定の専門家ではなくすべての個人にとって重要,といった性質を持つとして選択されたものと定義できる.
今後,このような個人の能力開発に十分な投資を行うことが社会経済の持続可能な発展と世界的な生活水準の向上にとって唯一の戦略であるとしている.そこで,OECD(経済協力開発機構)は,12か国の間で議論し「キー・コンピテンシー」として次の3つを提唱した.
○社会・文化的,技術的道具を相互作用的に活用する力
○自律的に行動する力
○社会的に異質な集団で交流する力
一方,日本の学校では,学習指導要領に教育内容が規定されている.学習指導要領が目指す学力は,1998年以降「生きる力」が掲げられ,次の3つの力の育成が重要とされた.
①基礎・基本を確実に身に付け,いかに社会が変化しようと,自ら課題を見
つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を
解決する資質や能力
②自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心な
どの豊かな人間性
③たくましく生きるための健康や体力
さらに,幅広い学力を育成するためには,どんな要素から成り立っているかをさらに詳しく把握する必要がある.1989年(平成元年)の学習指導要領では,全ての教科は「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」などの4観点に分けられている(国語のみ5観点,それ以外の教科は4観点).
教師はそれぞれの観点ごとに目標を設定し,学習者がその目標に対してどれだけ実現できたかを分析し,評価している.この評価方法は絶対評価で行われ,観点別評価とも言われている.学年末には,各必修教科,選択教科の観点別評価が,観点別学習状況として評定とともに指導要録にも記録されている.
○関心・意欲・態度
○思考・判断・表現
○技能
○知識・理解
ところが,2008年(平成20年)の学習指導要領では,学力について従来の4観点から次の3要素に再編された.特に,学校教育法第30条に,学力について次のように示された.
第三十条 小学校における教育は,前条に規定する目的を実現するために必要な程度において第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする.
○2 前項の場合においては,生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない.
ここで,第2項に示してある次の3項目を「学力の3要素」と呼んでいる.
○基礎的・基本的な知識・技能
○知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断
力・表現力等
○主体的に学習に取り組む態度
2020年には,児童生徒一人1台のタブレットPCが導入され,アクティブ・ラーニングなどの新しい学習の方法が導入されてくる.現在,学力観は現在大きな転換点を迎えているといえる.
5.新しい評価方法
21世紀型能力のような新しい学びには,新しい評価方法が必要である.学習結果の到達点を測る評価ではなく,学習の進み具合を捉え,次の段階に進むために今やっていることをどう変えたらよいか判断するための評価である.このような評価を学習の進行に合わせて行うためには,学習プロセスの記録を取り,分析・共有して次のステップを検討する強力なICT基盤が必要である.ICT基盤が強力であれば,教員はそのICT環境の維持や新しい評価方法に翻弄されることなく「新しい学びの構築」に集中することができる.
6.パフォーマンス評価と変容的評価
「パフォーマンス評価」とは,「パフォーマンス課題」によって学力をパフォーマンスへと可視化し,学力を解釈する評価法である.パフォーマンス評価は,「パフォーマンス課題」に取り組ませることで,子どもの学力を「見える」ようにし,「ルーブリック」という評価基準を使って評価する.したがって,パフォーマンス課題は,評価したいと思う学力ができるだけ直接的に表れるものにする必要がある.
また,「パフォーマンス評価」の利点として,従来のテストでは見えにくい「思考力」「表現力」などを具体的な表れとして見られることが挙げられる.例えば,算数で,思考の過程を表現させる課題を出し,式や言葉,図,絵などさまざまな方法を用いてもよいとすれば,子どもは自分なりに考え,表現しようとする.パフォーマンス評価では一つとして同じ答案はなく,子どもの思考や表現は実に多様だと実感できる.子どもの思考を理解するのに役立ち,子どもは「書く」経験を積むことができる.答案を発表し合えば,友だちの考えへの理解や,個性の自覚にもつながる.しかし,「パフォーマンス評価」は有効な方法であるが,「思考力」「表現力」を丸ごと測れるわけではない.あくまでも一つの課題に対する結果と考えることが重要である.「思考力」や「表現力」という力そのものを把握できる方法はないので,パフォーマンスから,その背後にある子どもの思考や表現の特徴を把握しようと努めることが大切である.
【課 題】
(1) 知識・技能と資質・能力の違いについて説明しなさい.
(2)パフォーマンス評価とルーブリックについて具体例を示して,説明しなさい.
(3)ルーブリックを児童生徒に作成させることのメリットをグループで解説しなさい.
【参考文献】
1.鈴木:教材設計マニュアル 北大路書房 2013.9.20
2.稲垣・鈴木;授業設計マニュアル 北大路書房 2013.6.20
資料
2.主体的・対話的な深い学びとICT
【学習到達目標】
・主体的・対話的な深い学びを不断の授業改善の視点から説明できる.
・不断の授業改善におけるICTの役割を説明できる.
1.不断の授業改善の視点としての主体的・対話的な深い学び
既に前章までに触れられてきているように,子供たちが成人して社会で活躍する頃には,生産年齢人口の減少,グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により,社会や職業の在り方そのものが大きく変化する可能性が指摘されている.そうした厳しい挑戦の時代を乗り越えていくためには,伝統や文化に立脚しながら,他者と協働し価値の創造に挑み,未来を切り開いていく力が必要とされている.そのためには,学ぶことと社会とのつながりを意識し,「何を教えるか」という知識の質・量の改善に加え,「どのように学ぶか」という学びの質や深まりを重視することが必要とされている.
そこに向けた取組の視点として「アクティブ・ラーニングの視点からの不断の授業改善」が言われている.より具体的には,①学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか,②子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか,③習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか,といった「3つの学び」の視点が掲げられている.
このように質の高い深い学びを目指す中で,教員が,指導方法を工夫して必要な知識・技能を教授しながら,それに加えて,子供たちの思考を深め発言を促したり,気付いていない視点を提示したりするなど,学びに必要な指導の在り方を追究し,必要な学習環境を積極的に設定していくことが求められてきている.
ここでは,習得・活用・探究のプロセスにおいて、習得された知識・技能が思考・判断・表現において活用されるだけでなく,思考・判断・表現を経て知識・技能が生きて働くものとして習得されたり,思考・判断・表現の中で知識・技能が更新されたりすることなども述べられている。このように「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業改善を行うことで,学校教育における質の高い学びを実現し,子供たちが学習内容を深く理解し,期待されている資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けるようにすることが,求められてきている.
2.主体的・対話的な深い学びを導く教育・学習環境としてのICT
上記のような授業の絶えざる改善を進めていくためには,一方で学習環境の改善及びその効果的な利用法にも目を向けていく必要がある.
例えば,対話的な学びと関わるグループワークでは、なかなか全員が参加する活動にならないという悩みがよく言われている.また活発に話し合ってはいるがそこに深まりが見られないなどの悩みが言われている.しかし目に見える活発な話し合いの姿は見せないが、人の意見をよく聞いてまた読んで自己の学びを構成していく潜在的対話的な学びをしている児童生徒も実際にいる場合がある.このような潜在的対話的学びをしている児童生徒を生かし,一方で顕在的対話的な学びをリードし自信をもっている児童生徒により他の子の意見を丁寧に見てさらなる熟考を促していくために,ICTなどテクノロジーが有効となる.たとえば,児童生徒のタブレットがネットワークにつながっていることで,顕在的に話し合わなくても,各自が考えていることが互いに見える.教員はこの機能を生かし,従来の机間指導で見取れなかった子供の姿,埋もれがちな子どものよい意見を取り上げたり,全員の意見を等しく見て,限られた授業時間を有効に使いながら議論を組むことも可能となる.もちろんそのための課題設定や発問の質が重要となるが,それぞれの児童生徒の学習スタイルや発達課題を考慮しながら,授業で教員が顕在的な対話と潜在的な対話を適切に組み立てることが,人の考えを参考にして自分の考えの検討をつけたり、新たな考えを創出したり,自分の考えを掘り下げたりすることを促す可能性を作る.発言が苦手な子にはこの取り組みを通じて話す機会を作って自信を持たせ,一方で話し合いには参加しているがじっくり自分の考えを持つことが苦手な子には,熟考できる機会を作る.このようにICTなどのテクノロジーを,教育の原理と絡めて授業の絶えざる改善に向けて使うことが重要となる.
また平成30年から実施される学習指導要領で期待されている資質・能力の育成においては,その成長をいかに見取り,評価するのかが大きな課題である.その点に関しても,コンピュータを使うと難しいといわれている思考のプロセスを残せるようになる.児童生徒の学びの履歴をもとに,授業の改善を考えることができ,長い目で見ると,単元レベルの授業の改善,学年単位レベル,さらには学校全体の教育課程レベルで授業改善を考えていく根拠資料として,その記録が有効となる.このように評価情報を収集し授業の改善につなげていく道具としてICTを用いていく,つまりアセスメントツールとしてICTの活用をより意識すると,「授業の絶えざる改善」をより効果的に進めることができ,さらに言えば,カリキュラム・マネジメントの取り組みにもつながっていく可能性がある.
3.主体的・対話的な深い学びの授業デザインの目を磨くためには
授業にアクティブ・ラーニングの視点を取り入れる際には、「ゴールの姿」と「方法・環境」の両方をしっかりおさえておく必要がある。例えば、「方法・環境」しか見ていない場合は、アクティブ・ラーニングの「型」をなぞるだけとなり、どのような力が育つのかという「ゴール」が分からない授業となってしまう。一方、「ゴールの姿」だけを設定しても、「方法・環境」が十分練られていないと、授業づくりが難しくなる。
これからの授業のデザインは、教員がその授業で身につけさせたい教科の内容と資質・能力を子供の姿のアセスメント情報からより明確にし、学習の内容や方法を検討することがさらに重要となる。当然ながら「本単元に入るために必要な前提となる力をこのクラスの子供がどれくらい持っているかを見定める.そしてこの単元や授業では、ここから入り,この資質・能力のこの部分を伸ばす」といったゴールを明確にすることは行われると思われる.しかし授業にアクティブ・ラーニングの視点を取り入れ,例えば「学ぶ力」や「学びに向かう力」等より意識して指導していくためには,そこに向けて、ここでは思考を広げたいとか、ここでは振り返りをさせたいなど、子どもの学びの姿をイメージしながら、ダイナミックな活動の流れのもつ効果を見定めていく小さな目標(学習活動やそれが持つ効果を見るチェックポイント)を設定する必要がある.図4-1は,「問題解決・発見力」を子供に培っていく際の学習プロセスやそこでのICTなどを生かした学習活動の組み合わせのバリエーションをイメージとして提供してくれている.このように単元デザインを”学びの連続体”としてとらえ、入り口と出口の子供の姿を明確にし,そこでの学びが確かで豊かになる学習活動の組み合わせを考え,どの場面でどのように学びの姿の成果を見るか(形成的評価につながるチェックポイント)を計画し,授業全体をデザインしていく目がより求められてくる.
4.主体的・対話的な深い学びを確かなものとしていくために
一口にアクティブ・ラーニングといっても,いろいろなレベルがある.子どもに気づきを促したいのか,思考を深めさせたいのか,興味・関心を引き出して学びに向かわせたいのかなどによって,議論,探究,表現活動など,行うべき学習活動は異なる.またなかなか自ら学びに向かうことができない子どもたちには,自尊感情を高めることを意図した協働的な学びも考えられる.子どもの状況や目的に応じて,それに適した活動を取り入れることが重要である.
そして子どもが主体的になるために,先にも触れたが,ずっと問いを持ち続けられるような工夫が必要になる.課題の内容やレベルにより,子どもの思考は大きく左右される.例えば、とにかく多くのアイデアを出させたい場面では,子どもの気づきに任せて話し合わせるのもよい.一方、グループワークを通して思考を深めさせたい対話的深い学びの場面では,多様な考え方ができ,すぐには答えにたどり着けない深い課題が必要となる.この場合は,子どもの気づきだけに任せると浅い思考で終わってしまうことが多いため,教員が課題を設定することが必要となる.また子どもの思考は,子どもにとって面白い課題でないと活性化されないことに留意する必要がある.子ども自身が知りたい,解決したいと思うからこそ,そのために何を調べればよいのか,どうまとめると伝わるのかなどを真剣に考えるようになる当事者意識をどう持たせるかが「学びに向かう力」を育てる上では重要となる.
また主体的で深い学びには,振り返りの支援が重要である.子どもが自分で学びを進めるためには,「学びに向かう力」が不可欠であり,振り返りの視点,いわゆるメタ認知の力が欠かせない.自分が今どういう状況にあるのかをモニタリングしたり,何が好きかなど自己認識をしたり,次に何をしたらよいのかを考えたりするなど,自分自身を振り返って高めていく仕組みが必要となる.自分にとって必要な学習を考え,次の一歩を踏み出すことの繰り返しで,学びはつくられていくと考えられるからである.
不断の授業改善に向けて子どもの姿から学びをとらえる姿勢が重要となる.
【課題】
(1) 不断の授業改善の視点として言われている「主体的・対話的な深い学び」で想定されている学びの姿を他の人にわかりやすく伝えることを意識してまとめなさい.
(2) 不断の授業改善におけるICTの活用可能性について,「主体的・対話的な深い学び」と関連付けて説明しなさい.
資料
3.主体的・対話的な深い学びとコミュニケーション
【学習到達目標】
・コミュニケーション能力を構成する3要素について説明できる
・教育的コミュニケーションについて説明できる
・現代のコミュニケーション活動の特徴を知り日常生活面で改善できる
1.コミュニケーション能力の構造(3つの要素)
人を育てる職業である教師にとって,学習者間での相互理解を深めるためのコミュニケーション能力は,極めて重要です。
コミュニケーション(communication)とは,「特定の刺激によって互いにある意味内容を交換すること。人間社会においては,言語・文字・身震いなど種々のシンボルを仲立ちとして複雑かつ頻繁な伝達,交換が行われ,これによって共同生活が成り立っている。」(国語大辞典,小学館)と記されています。すなわちコミュニケーションは,複数の人の間で記号を媒体とする相互作用と定義できます。人間は,社会において共同生活を営み,コミュニケーション活動により様々な課題を克服し,新たなものを創造し,さらに豊かなコミュニティを構築する協創・協働活動を行っています。
次に,相互理解のためのコミュニケーション能力の構造図を図1に示します。
図1よりコミュニケーション能力は,3つの要素から成り立っているのがわかります。
一つ目は,コミュニケーション能力の頂点となる「論理的に考える力(critical thinking, logical thinking)」です。これは,1.問題を発見し情報を収集する力,2.情報を読みとり考察する力,3.問題を明快に分析する力,4.解決策を提案する力,5.道徳的に判断する力を含みます。
二つ目は,「受け止める力(assertion)」です。受け止める力では,一方的な提案や主張(アグレッシブ)にならないよう,相手の気持ちや言い分を受容することで,双方が納得できる関係を構築するための1.受容的に聴く力,2.相手の気持ちを理解する力,3.相手を意欲的する力を含みます。
三つ目は,「伝える力(presentation)」です。伝える力では,1.的確な指示を行う力,2.自分の魅力を伝える力,3.話に刺激があり記憶に残す力,4.身振りで伝える力,5.相手の立場を知り共感される力,6.自己の考えを主張できる力,7.情報を論理的に構造化する力,8.自分の情報を整理する力,9.プレゼンテーションの筋書きを作る力,10.議論に負けない力などがあります。これらは,相手の納得する提案や主張を,効果的・効率的に構築し,伝えるためのさまざまなプレゼンテーションの知識・技能です。
2.3方向の教育的コミュニケーション
授業でのコミュニケーションは,①教授者の情報提示(指示,説明,発問など),②学習者のお返し(回答,意見など),③教授者の働き返し(正解,ほめるなど)の3つの過程が基本的な考えです。この学習理論をもとにした教育的コミュニケーションを図2に示します。
授業は,教授者と学習者,学習者相互間において,上記の教育的コミュニケーションの過程を繰り返すことにより営まれています。授業では,教科書,プリント,黒板,AV,PC,タブレットなど学習を支援する媒体としての教育メディアを活用し,教育的コミュニケーションの改善を図ります。また,図2において教授者からの働き返しをKR(knowledge of results)と言います。これには,正誤を知らせる知的KRと,受容やほめたり励ますなどの情的KRがあり,教授学習過程では重要な役割を果たします。知的KRは,学習者の発言や発表に対して正誤を知らせる認知面にかかわる情報です。情的KRは,学習者の発言や行動に対してほめる,認めるといった情意面にかかわる情報です。教授者の知的KRと情的KRの使い方によって,学習者の理解や意欲が大きく違ってきます。
学校では,学習者の知識や技能のレベルがさまざまな状態にあります。教師は,それぞれの学習者の既習度や特性に応じて適切な情報を抽出し,わかりやすくかみ砕き説明,発問して適切なKR情報を与えることできる能力が求められます。
3.コミュニケーションの分類
(1)言語コミュニケーション(verbal communication)
言語とは,人間社会において,コミュニケーション活動の基盤となる字音的表現であり,人間が創作した人為的な記号体系や音声による記号体系により,人間の感情や思想,意思などを表現したり,相互に伝え合うことができます。言語の目的は,言うまでもなく情報を他者に伝えることです。それでは,言語を音声言語(話し言葉)と文字言語(文字言葉)に分類し考えてみましょう。
音声言語とは,オーラルコミュニケーション(oral communication)が一般的で,聴覚を利用した口頭での意思伝達です。音声言語は一過性による人と人との直接的なコミュニケーションであり,人それぞれに独特の音声の高低や強弱,音質,ポーズ(間)などの特徴が付加されます。同時に,話し手の意思や意味を聴き手が解釈することで話の内容があいまいになるケースもあり,聴き手の既有知識,し好,経験,信頼,感情,立場などの特性によって,多様に解釈され理解されることがあります。また,話し手,聴き手相互間で,「~を言った」,「言っていない」,といった相互の主張によるトラブルがあります。これを補うツールとしてビデオやボイスレコーダなどのメディアがあります。
文字言語は,人間の視覚を利用した文字による意思伝達です。文字言語は記録・保存により,さまざまな用法によって独特の性質をもたらすことができます。そこで,紙や電子媒体を用いて表現,保存することで,伝達の範囲を時間的・空間的に拡大できます。
(2)非言語コミュニケーション(nonverbal communication)
非言語コミュニケーションは,言葉で記号化できるもの以外で,視聴覚など五感を通して収集できるものを言います。たとえば,人の表情や身振り,アイコンタクトをはじめ,髪型,服装,におい,身に着けるアクセサリー,化粧に至るすべてを含みます。現代では,グローバル化が進み,他の国の人々との異文化接触の機会が増えました。その結果,異文化間での言語の違いはもとより彼らの風習や習慣や思想の違いで,非言語コミュニケーションによる誤解や齟齬が生じ,相互理解が困難な場合があります。たとえば,タイ国では子どもを含み人の頭をむやみに撫でたり触れたりしてはいけません。日本でよく見かける,教師が子どもをほめる時に行う頭を撫でることはタイ国では見られません。異文化コミュニケーションを考えるとき,言語コミュニケーションにばかり注目する傾向がありますが,他国の文化や思想を理解する他者理解の視点から非言語コミュニケーションを見直すことが大切です。
最近のコミュニケーション活動は,スマートフォンや電子タブレットなどの普及により表現や伝達方法,内容がますます多様化する傾向にあります。ICTの進展により,映像を介した非言語コミュニケーションも可能になりました。そのため私たちは,普段なにげなく使っている非言語コミュニケーションの特徴を学び意識し,相互理解のためのコミュニケーションについて再考察することが大切でしょう。
次に,非言語コミュニケーションに関する有名な研究があります。アメリカの心理学者アルバート・メラビアン(A. Mehrabian)は,コミュニケーションにおいて話し手が聴き手に与える影響は,7%が言語コミュニケーション(言語情報:言葉そのもの)であり,残りの93%が非言語コミュニケーション(55%が視覚情報:見た目・表情・しぐさ・視線,38%が聴覚情報:声の質・速さ・大きさ・口調)であるとし,非言語コミュニケーションの重要性を述べています。この法則は,メラビアンの法則と呼ばれ広く知られています。
また,非言語コミュニケーションの研究者であるアーガイル(M. Argyll)によると,聴き手の70%以上が話し手の話を聞いているときに目を見ている,会話をしているときは,約60%が相手を見ていると報告されています。他にもエクマン(P. Ekman)は,顔の表情各部分の比率より,基本的感情表出度を表していることを示しています。
以上のように,多くの研究がなされていることからも非言語コミュニケーションの重要性が高いことがわかります。
4.現代社会でのコミュニケーションの光と影
スマートフォン,インターネット,Wi-Fiのインフラの充実に加え,LINE,Skype,Facebookなどコミュニケーションツールの無料アプリが普及した現代では,私たちは日々メディアを利用したコミュニケーションを行うようになりました。ここで言うメディア“media”とは,ミディアム“medium”の複数形であり,声や文字などの情報を伝達する媒体のことです。
マーシャル・マクルーハン(M. McLuhan)は,その著書『人間拡張の原理』で「すべてのメディアは,われわれ人間の感覚の拡張である。メディアはメッセージである。すべてのメディアの内容は常にもう一つのメディアである。」と述べています。つまり,メディアを人間のもつ感覚まで含めているのです。たとえば,衣服は皮膚の拡張,車輪は脚の拡張,電話は耳の拡張などといったことです。
ICTが発展・普及した現代では,社会システムの合理化や効率化に伴い,人と人との直接的なコミュニケーションの機会がますます減少する方向に進んでいるのは事実です。前述したように,今日ではいつでも(時間),どこでも(場所),だれとでも(人)を意識せず,メディアを介した間接的なコミュニケーション活動が容易な時代になりました。現代では,ICTの恩恵や利益など光の部分が先行し,通信メーカによるCMなどの影響で便利な生活が誇張されています。しかし,従来の直接対話に比べ,メディアを介した間接対話は,私たちが予期できなかった想定外の事故や事件,犯罪を招いたり,人間の価値観や判断,活力,究極的には生命まで脅かす影響を与えたりするケースが生じるようになってきました。ICT恩恵の背後には,個人情報や犯罪利用など多くの問題や悪い影響につながる影の部分が多々あることに大きな社会事件を通して気づきます。そのため,一人ひとりが情報・メディアとつきあう教養やコミュニケーション能力(言語・非言語・メディア)を養う必要性を自覚し,日々の生活で実践・向上させる心構えが最も大切です。
【課題】コミュニケーション実践のためのデジタルWeb教材を行ってレポートにまとめなさい。
http://www.hayashi-tokuji.com/td-ict/index.html
【参考・引用文献】
・林徳治・藤本光司・若杉祥太『主体的に学び意欲を育てる教学改善のすすめ』ぎょうせい,2016
・林徳治・奥野雅和・藤本光司『元気がでる学び』ぎょうせい,2011
・沖裕貴・林徳治 他7名『必携!相互理解を深めるコミュニケーション実践学(改訂版)』ぎょうせい,2010
資料
4.学習指導要領とアクティブ・ラーニング
【学習到達目標】
・21世紀に求められる資質能力について説明できる.
・次期学習指導要領改訂の視点について説明できる.
・アクティブ・ラーニングとICTの活用ついて説明できる.
1.21世紀に求められる資質能力と学習環境
21 世紀の知識基盤社会における「学⼒」は「他者と協働しつつ創造的に⽣きていく」ための資質・能⼒の育成である.そのため,授業では,他者と共に新たな知識を⽣み出す活動を引き出しつつ深い知識を創造させていく経験を,数多く積ませることが重要である.ここでは,21世紀に求められる学力と学習環境について述べる.
(1)21世紀型スキル
「21世紀型スキル」とは,世界の教育関係者らが立ち上げた国際団体「ATC21s」が提唱する概念で,これからのグローバル社会を生き抜くために求められる一般的な能力を指している.批判的思考力,問題解決能力,コミュニケーション能力,コラボレーション能力,情報リテラシーなど,次代を担う人材が身に付けるべきスキルを規定したもので,各国政府も知識重視の伝統的な教育から21世紀型スキルを養い伸ばす教育への転換に取り組み始めている.「21世紀型スキル」の定義については,ATC21Sプロジェクトの「21世紀のスキルに関する作業グループ」で検討されており,以下のように書かれている.
①思考の方法(創造性と革新性,批判的思考・問題解決・意思決定,
学習能力・メタ認知)
②仕事の方法(コミュニケーション,コラボレーション(チームワーク))
③学習ツール(情報リテラシー,情報コミュニケーション技術
(ICTリテラシー)
④社会生活(市民権(地域および地球規模),生活と職業,個人的責任お
よび社会的責任(文化的差異の認識および受容能力を含む))
(2) 21世紀型能力
国立教育政策研究所では,教育課程の編成に関する基礎的研究報告書5(2013.3:研究代表者 勝野頼彦)において,前述の21世紀型スキルを踏まえて,21世紀を生き抜く力を「21世紀型能力」と名付け,その試案を次のように提案している.21 世紀型能力は,「21 世紀を生き抜く力をもった市民」としての日本人に求められる能力であり「思考力」,「基礎力」,「実践力」から構成されている.
第1に,21世紀型能力の中核に,「一人ひとりが自ら学び判断し自分の考えを持って,他者と話し合い,考えを比較吟味して統合し,よりよい解や新しい知識を創り出し,さらに次の問いを見つける力」としての「思考力」を位置づけている.
「思考力」は,問題の解決や発見,アイデアの生成に関わる問題解決・発見力・創造力,その過程で発揮され続ける論理的・批判的思考力,自分の問題の解き方や学び方を振り返るメタ認知,そこから次に学ぶべきことを探す適応的学習力等から構成される.
第2に,思考力を支えるのが「基礎力」,すなわち,「言語,数,情報(ICT)を目的に応じて道具として使いこなすスキル」である.技術革新を背景にICT 化が著しく進む今日において,社会に効果的に参加するためには,読み書き計算などの基礎的な知識・技能とともに,情報のスキルが不可欠である.情報スキルは,計算や記憶の代行など,読み書き計算の不足を補償する可能性すらある.その支援力の大きさを使って,思考力を助けるのが,この基礎力の一つの役割と考えることもできる.
第3に,思考力の使い方を方向づける「実践力」を位置づけている.「実践力」とは,「日常生活や社会,環境の中に問題を見つけ出し,自分の知識を総動員して,自分やコミュニティ,社会にとって価値のある解を導くことができる力,さらに解を社会に発信し協調的に吟味することを通して他者や社会の重要性を感得できる力」のことである.
そこには,自分の行動を調整し,生き方を主体的に選択できるキャリア設計力,他者と効果的なコミュニケーションをとる力,協力して社会づくりに参画する力,倫理や市民的責任を自覚して行動する力などが含まれる.
(3)教育用メディア環境
21 世紀にふさわしい主体的・対話的な深い学びのためのどのように教育用メディア環境の設計していくべきだろうか.現在,情報通信技術の急速な汎化が進み,Web情報も重要なデジタルアーカイブの情報源として選択保存の必要性が出てきた.これらの,研究・教育の結果として,デジタルアーカイブ開発として新しい観点で実践・研究を展開されている.従来のデジタルアーカイブは,現物のみを対象として考えてきたが,現在の多様なメディアの実用化にともない,メディアを次の4領域に分けメディア環境として構成することが必要となった.
① 実物・体験・文化活動
② 印刷メディア(記述・印刷の紙などのメディア)
③ 通信メディア(通信でWeb情報として収集可能な資料の選択・保存)
④ デジタルメディア(マルチメディア機能をもつメディア)
新しい教育用メディア環境は,かつての現物としていた対象物を最近の通信メディアの発達により,多様な情報が流通する中から,デジタルアーカイブとして記録・保管すべき情報を選定評価し,必要に応じて保管し,組み合わせて表現することを示す.また,各メディア間では相互に変換し利用が進み,新しい資料活用が始まろうとしている.例えば,書籍や教科書をデジタル化し,紙の印刷物と同じ内容の資料がデジタル教科書として図書の二次利用が既に始まっている.教育用メディア環境では,学習者が,電子黒板や教育用メディア端末,印刷メディアである従来の教科書等必要なメディアを主体的に選択し,あるいは組み合わせて利用を可能にすることが重要である.
(4)デジタル学習材
教育用メディア環境としての4領域の大きなカテゴリー化は,教育用のメディア利用の枠組みとして,適用できるかが課題となる.一般に,デジタル学習材と一括して表現されているものには,ネットワーク型もあり,DVD等の学習材,また,印刷物との複合学習材,教育用メディア端末の学習材等,様々な学習材をもデジタル教材と表現している.前述のように,学習者に対する教育用メディア環境も大きく変化している中で,教師が授業で活用する教材とメディアの特性を活かすデジタル学習材に再分類し,メディアの特性を生かし,学習者が主体的に活用でき,一人ひとりの学習者の特性に対応した学習材のあり方を検討している.このため,今後,このメディアの特性について,組み合わせを含めて資料活用上の実践・研究を進め,その適否の評価をすることが必要である.新しい教育用メディア環境としては,前述の4つの領域に分類し,これらを単独として考えるのではなく,これらを組み合わせたものとしてデジタル学習材を考えることが必要となる.
2.学習指導要領の視点
学習指導要領では,図2-2のように,次の「3つの視点」でとらえることができる.
次期学習指導要領では,第1は,知識・技能を「何を理解しているか,何ができるか」と捉えなおしていることである.知識基盤社会においては,知識はばらばらにあっても使えるものにならない.個別の知識はすぐに忘れてしまう.またその知識を新たな学習により絶えず再編していくことにより活かすことができる.第2に,思考力・判断力・表現力等について,「理解していること・できることをどう使うか」としている.つまり,これからの視点として問題を発見し,定義し,解決の方向性を決め,解決方法を探し,計画を立て,結果を予測しつつ実行し,そのプロセスを振り返って,次の問題発見・解決につなげていくことが重要となる. 第3に,主体的に学習する態度を「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか」として概念化している.ここには,情意や態度が含まれ,生きる力の根底に関わるところである.
3.アクティブ・ラーニング
アクティブ・ラーニングについては,図2-3に示す3つの「新たな学びの視点」としてまとめている.
第1が「深い学びの過程」である.習得・活用・探究という学習プロセスの中で,問題発見・解決を念頭に置いた深い学びが実現できているかどうかということである.これは知識・技能の高度化であり,それらが互いに関連づけられ,体系化されていくことにより,思考力を発揮する問題解決過程を通して主体的に学んでいくことで可能にする.学習者が既に学んできたことと新たに学ぶことをつなげ,体系化された知識として保持し,教科としての体系的な見方を身に付ける中で,それを問題解決過程に使えるということを目指している.
第2が「対話的な学びの過程」である.他者との対話を通じて外界との相互作用を通じて,自らの考えを広げ深める.対話とは,物事の複眼的で深い理解に達するために,様々な考えに触れ,やりとりを通していく.教師と子ども,子ども同士がやりとりすることとともに,外界の出来事やものや表現とのやりとりも重要となる.学習者である子どもが教材を前にその探究と理解に向かい,それを助ける教師がいて,また仲間同士がいる中で,ともに考える.
第3が「主体的な学びの過程」である.子どもたちが見通しを持って粘り強く取り組み,自らの学習活動を振り返って次につなげる.積極的に意欲を持って学習に取り組むことから始まり,難しい点に会ってもすぐにあきらめることなく,複眼的で多視点でものを考え,解決法を工夫し,課題をやり遂げていく.他の学習者や教師と考えの共有を図りつつ,自分の間違いを捉え,また自分と他者の良さを自覚し,多面的な理解を深めていく.意欲から意志へ,そして自覚する学習者へと育てていくのである.
【課題】
(1)各自で,新たな学びの視点を入れた授業をデザインし,グループでそ の効果について協議しなさい.
(2)次期学習指導要領を背景,教育の課題,変更のポイントという視点で,それぞれ4つキーワードを出して,グループで協議をしなさい.
資料
動画資料
5.アクティブ・ラーニングとICTの活用
【学習到達目標】
・アクティブ・ラーニングについて具体例を挙げて説明できる.
・アクティブ・ラーニングとICTの活用について説明できる.
・J・B・キャロルの学校学習の時間モデルついて説明できる.
1.アクティブ・ラーニング
アクティブ・ラーニングについては,平成24年8月中央教育審議会の「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」の中に,能動的学修(アクティブ・ラーニング)と括弧書きで記載されている.「能動」の対義語は「受動」であるため,大きなとらえとしては「受動的にならない学習」であるが,先述の諮問文では「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」とされている.
一方で「アクティブ」という言葉から,活動性をイメージさせてしまい,授業中に子どもたちが活動する,ダイナミックに動きまわる,何か体験をたくさんさせなければならない,といった誤解を持たれる傾向がある.確かに体が活動的であるということも大事ではあるが,一番活性化してほしいのは子どもたちの頭の中「深い学び」である.
つまり,「子どもたちの思考が活性化し,深い学び」が授業の中で起きているかどうかが重要になる.
例えば活用の場面で「より積極的に自分の考えを他者に伝える」,習得の場面で「何のために習得するのか,自身にどのような成長があるかを自覚的に習得する」さらには「個別ではなく子ども同士で教え合う,教えてもらう」といった場面でも,子どもの思考は活性化している.このような学習の状況を授業場面の中に作っていくことがアクティブ・ラーニングにつながる.
そうすると,これまで国内で積極的に行われてきた授業改善の取り組みは,まさにアクティブ・ラーニングであると言える.特に小学校
の先生方は熱心に取り組まれており,例えば問題解決的な学習や発見学習,体験活動やグループ・ディスカッション,ディベートなどさまざまにある.そういったものもアクティブ・ラーニングに含まれる.
しかし,小・中・高等学校,大学と校種が上がるにつれて,より受動的になる傾向がある.これからは,これらをすべての校種の教室で実施し,質的にも担保していくことが求められてくる.さらに,授業の質の向上には,これまで行われていなかった新しい学習・指導方法を考えていくことも必要である.例えばジグソー法や思考ツールを使ったディスカッション,あるいはICTなどを積極的に授業に取り入れ,子どもたちがよりアクティブに学ぶ授業を考えることも求められる.アクティブ・ラーニングについては,前述の答申では,「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称.学修者が能動的に学修することによって,認知的,倫理的,社会的能力,教養,知識,経験を含めた汎用的能力の育成を図る.発見学習,問題解決学習,体験学習,調査学習等が含まれるが,教室内でのグループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である.」と定義されている.
2.ICTの効果的活用と学校学習の時間モデル
学習者には,それぞれに個性があり,知識の差や興味関心が違う.このような個人差について,教員はどのように考えたらいいか.
J・B・キャロル(Carroll)が1963年に提唱した学校学習の時間モデルでは,ある学習者は成功し,ある学習者は失敗を重ねてしまう現象が起こる原因を,子供の能力ではなく,図3-2の式で示すように学習目標を達成するための時間不足と考えた.このことにより,課題の達成に必要な時間をどのように確保し,どのような援助を工夫したらもっと短い時間で学ぶことができるかを検討することができる.つまり,キャロルは,「能力」から「時間」への発想の転換を行ったのである.
図3-2 J・B・キャロル(Carroll)の時間モデル(1)
また,J・B・キャロルは,図3-2の学習率に影響を与える変数を,5つの要素に分解して説明している.まず,「課題への適性」とは,ある課題を達成するのに必要な時間の長短によって表される学習者の特性を課題への適性とした.次に,「授業の質」とは,学習者が短時間のうちにある課題を学べる授業かどうかを授業の質として捉えている.質の高い授業の要件としては,少なくとも何をどう学習するかが学習者に伝わっていて,はっきりとした形で材料が提示され,授業同士が有機的に次につながっていて,授業を受ける学習者の特性に応じた配慮がなされていることが挙げられている.次に,授業の質の低さを克服する力を「授業理解力」と呼び,これが第3の要因としている.次に,学習に費やされる時間を左右する要因を次のように示している.
ある課題を学習するためにカリキュラムの中に用意されている授業時間を「学習機会」と呼び,学習に費やされる時間を左右する第一の要因と考えている.また,与えられた学習機会のうち,学習者が実際に学ぼうと努力して,学習に使われた時間の割合を「学習持続力」とする.以上の5つの変数を学習率の式にあてはめると図3-3のようになる.
図3-3 J・B・キャロル(Carroll)の時間モデル(2)
教員は,学習率を高めるためには,学習に必要な時間を分母の要因に注目して減らす工夫と,学習に費やされる時間を分子の要因に注目して増やす工夫ができる.J・B・キャロルの時間モデルに含まれている5つの変数は,教員として授業を工夫し,学習者一人ひとりが学習に費やす時間を確保し,また,学習に必要な時間を短縮していくためのチェックポイントと考えることができる.ICTの活用についても,どの変数に働きかけるのかという視点で考えると,ICT活用の発想が広がる.大規模公開オンライン講座のMOOCS(ムークス,Massive Open Online Courses)で代表される授業映像の場合は,授業時間外の利用によって,「学習機会」の拡大につながる可能性が大きいことがわかる.
【課題】
(1)アクティブ・ラーニングを授業の中に定着するためには,どのような
ICT環境が必要かグループで協議しなさい.
(2) J・B・キャロル(Carroll)が1963年に提唱した学校学習の時間モデルにおいて,学習率を高めるにはどのような授業改善が必要かグループで協議しなさい.
資料
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6.新たな評価とICT
【学習到達目標】
・学力の定義の変遷について説明できる.
・パフォーマンス評価とルーブリックの関係を説明できる.
情報社会は新しい課題を世界にもたらし,新しい解を生み出せる人間を求める.つまり,これからの社会は,一部の専門家があらかじめ有する「正解」を適用するだけで解決できるものではなく,問題を共有する者が知識やアイデアを出し合い,不完全にせよ解を出して実行する.そして,その結果を見ながら解とゴールを見直すことが求められている.このような課題に対して,社会全体が応えようとしている表れが,知識基盤社会,コミュニティ基盤社会への転換と進展,ICT の利活用である.
知識基盤社会とは,新しい知識やアイデア,技術のイノベーションがほかの何よりも重視される社会である.そのイノベーションのために,他者とのコミュニケーションやコラボレーション(協働,協調)が重視され,それらが効果的・建設的に行えるように,人と人を繋ぐコミュニティやICTの役割に注目が集まっている.
つまり,現在決まった答えのないグローバルな課題に対して,大人も子供も含めた重層的なコミュニティの中で,ICTを駆使して一人ひとりが自分の考えや知識を持ち寄り,交換して考えを深め,統合することで解を見出し,その先の課題を見据える社会へと,社会全体が転換しようとしている.ここでは,その情報社会とそれに応じて求められる資質や能力について考える.
1.目標分析
「目標分析」とは,目標の構造をとらえることで,目標分析をできないと評価規準をつくるのは困難である.つまり,目標自体は平面的で,それだけでは構造はわかりませんが,目標を分析して全体の構造がわかると,評価規準を作成することができる.
目標の構造がわかるというのは,評価規準のなかで,重要度を決定することである.つまり,教材の目標分析とは,「この単元で何を,どのように教えたいか,いつ指導したいのか,どのような順序で教えるのか,どのような方法で教えるのか,そのためにどのような教材を利用するのか」を決定することといえる.
次に,「それを指導するために,何がいるのか」を考え,そしてそれらを分類する事が重要となる.このように,これを教えるためには何が必要かを考えことを,「目標の構造化」という.目標の構造化をすることにより,教材の流れが出てくる.抽象的な教科全体のことを「目標分析」,教材単元のことを「目標分類」と分けて考えると,「目標分類」によって構造とともに授業の流れがわかる.
それぞれの学校や学級によって目標は変わらないが,目標の構造は,子どもの実態によって変わる.子どもの実態,教師の指導方法・指導力,学習環境など,そういうことを含めた授業研究がなされて初めて目標分析ができる.
2.教育目標の分類
日本で目標分析が行われるようになったのは,B.S.ブルーム(B.S.Bloom)の「教育目標の分類」の研究以降である.B.S.ブルームらが開発した手法は,教育目標を構造化し,マトリックス上に表現したものである.
具体的には,学習の「内容」を縦軸にとり,そこで目指される「学習行動(能力)」を横軸にすえたマトリックスを作成し,学習目標をその枠の中に割り付けていくという手法である.このうち,横軸に並べる学習行動(能力)については3つの領域,すなわち認知的領域,情意的領域,精神運動的領域が枠組みとして設定され,それぞれの領域においては目標に段階性があることを意識しながら目標を割り付けていくことが目指された.
B.S.ブルームによる提案が行われて以降,学習行動(能力)の段階性に関する研究が積み重ねられ,各教科で適用可能な形式へと発展していった.また,各国の教育の実情や文化・風土にあったタキソノミー(Taxonomy)を作ることが推奨され,日本の教育文化にあったタキソノミーづくりの試みも実際になされている(梶田,2002).
この教育目標の分類学という目標分析の手法は,あいまいになりがちな授業の目標を明確化し,子どもの学習の評価観点を明確化するという意義がある.また,教師にとっては,その授業の中で何を教えればよいのかが明確に意識化され,子どもの学習評価を,印象論ではなく,明確な観点を持って行うことができるというメリットもある.さらに,教育目標の高度化の方向も示すこともでき,そのための授業改善の方法を探ることもできる.
例えば,深い学びに授業に改善することは,B.S.ブルームの「教育目標の分類」における認知的領域の「内容」を豊富に含むことであり,そのための授業内容や方法を改善することが必要となる.
3.学 力
学生の学力が低下しているといった報道をよく耳にする.そもそも,学力とはどのようなものか.ここでは,まず学力について考えてみる.
授業を実施した場合に,学んだ内容が学生にしっかり身についているかどうか,最終的に評価しなければならない.その評価で測る対象が学力である.
学校ではどのような学力をつけるべきかを問う際に,その基本構造について合意形成していくことが有効である.ここでは柴田の提示している学力構造と相互関係から考えてみる.(柴田1994)
柴田(1994)は,学力を「学んだ力(基礎的知識・技能)」と「学ぶ力(自ら学ぶ力,学び方)」,そして「学ぼうとする力(学習意欲)」の3つの要素で構成されるとしている.「学んだ力」は学習の結果として身に着けた知識や技能を指し,それらを学ぶための必要な学び方,問題解決の方法を「学ぶ力」と表現している.さらに,それらを支える学習意欲を「学ぼうとする力」としている.
その上で,特に「学ぶ力(学び方)」を中心とした学力構成の重要性を述べ,「学び方の論理的側面」としての基本的な思考様式(推論的思考様式,実験的思考様式等)と「学び方の技術的側面」としての実践的知識(辞書の使い方,発表の仕方,情報機器の使用法等)という方法を教育内容として系統的にきちんと位置付ける必要性を強調している.
学力は児童生徒が社会人になっても役に立つ力であってほしいものである.別の見方でいえば,社会が変化すれば,必要な学力も変化することを意味する.
国際的な学力調査PISAを実施しているOECD(経済協力開発機構)は,これからの社会を知識基盤社会だとして,教育の成果と影響に関する情報への関心が高まり,「キー・コンピテンシー(主要能力)」の特定と分析に伴うコンセプトを各国共通にする必要性を強調した.そのために,OECDではプログラム「コンピテンシーの定義と選択」(DeSeCo)をスタートし,その後「キー・コンピテンシー」の概念を提唱した.ここで,提唱された「コンピテンシー(能力)」とは,単なる知識や技能だけではなく,技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して,特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力としている.
つまり,「キー・コンピテンシー」とは,日常生活のあらゆる場面で必要なコンピテンシーをすべて列挙するのではなく,コンピテンシーの中で,特に,①人生の成功や社会の発展にとって有益,②さまざまな文脈の中でも重要な要求(課題)に対応するために必要,③特定の専門家ではなくすべての個人にとって重要,といった性質を持つとして選択されたものと定義できる.
今後,このような個人の能力開発に十分な投資を行うことが社会経済の持続可能な発展と世界的な生活水準の向上にとって唯一の戦略であるとしている.そこで,OECD(経済協力開発機構)は,12か国の間で議論し「キー・コンピテンシー」として次の3つを提唱した.
○社会・文化的,技術的道具を相互作用的に活用する力
○自律的に行動する力
○社会的に異質な集団で交流する力
一方,日本の学校では,学習指導要領に教育内容が規定されている.学習指導要領が目指す学力は,1998年以降「生きる力」が掲げられ,次の3つの力の育成が重要とされた.
①基礎・基本を確実に身に付け,いかに社会が変化しようと,自ら課題を見
つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を
解決する資質や能力
②自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心な
どの豊かな人間性
③たくましく生きるための健康や体力
さらに,幅広い学力を育成するためには,どんな要素から成り立っているかをさらに詳しく把握する必要がある.1989年(平成元年)の学習指導要領では,全ての教科は「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」などの4観点に分けられている(国語のみ5観点,それ以外の教科は4観点).
教師はそれぞれの観点ごとに目標を設定し,学習者がその目標に対してどれだけ実現できたかを分析し,評価している.この評価方法は絶対評価で行われ,観点別評価とも言われている.学年末には,各必修教科,選択教科の観点別評価が,観点別学習状況として評定とともに指導要録にも記録されている.
○関心・意欲・態度
○思考・判断・表現
○技能
○知識・理解
ところが,2008年(平成20年)の学習指導要領では,学力について従来の4観点から次の3要素に再編された.特に,学校教育法第30条に,学力について次のように示された.
第三十条 小学校における教育は,前条に規定する目的を実現するために必要な程度において第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする.
○2 前項の場合においては,生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない.
ここで,第2項に示してある次の3項目を「学力の3要素」と呼んでいる.
○基礎的・基本的な知識・技能
○知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断
力・表現力等
○主体的に学習に取り組む態度
2020年には,児童生徒一人1台のタブレットPCが導入され,アクティブ・ラーニングなどの新しい学習の方法が導入されてくる.現在,学力観は現在大きな転換点を迎えているといえる.
3.学習目標と学習到達目標
21世紀型能力のような新しい学びには,新しい評価方法が必要である.学習結果の到達点を測る評価ではなく,学習の進み具合を捉え,次の段階に進むために今やっていることをどう変えたらよいか判断するための評価である.このような評価を学習の進行に合わせて行うためには,学習プロセスの記録を取り,分析・共有して次のステップを検討する強力なICT基盤が必要である.ICT基盤が強力であれば,教員はそのICT環境の維持や新しい評価方法に翻弄されることなく「新しい学びの構築」に集中することができる.
4.パフォーマンス評価と変容的評価
「パフォーマンス評価」とは,「パフォーマンス課題」によって学力をパフォーマンスへと可視化し,学力を解釈する評価法である.パフォーマンス評価は,「パフォーマンス課題」に取り組ませることで,子どもの学力を「見える」ようにし,「ルーブリック」という評価基準を使って評価する.したがって,パフォーマンス課題は,評価したいと思う学力ができるだけ直接的に表れるものにする必要がある.
また,「パフォーマンス評価」の利点として,従来のテストでは見えにくい「思考力」「表現力」などを具体的な表れとして見られることが挙げられる.例えば,算数で,思考の過程を表現させる課題を出し,式や言葉,図,絵などさまざまな方法を用いてもよいとすれば,子どもは自分なりに考え,表現しようとする.パフォーマンス評価では一つとして同じ答案はなく,子どもの思考や表現は実に多様だと実感できる.子どもの思考を理解するのに役立ち,子どもは「書く」経験を積むことができる.答案を発表し合えば,友だちの考えへの理解や,個性の自覚にもつながる.しかし,「パフォーマンス評価」は有効な方法であるが,「思考力」「表現力」を丸ごと測れるわけではない.あくまでも一つの課題に対する結果と考えることが重要である.「思考力」や「表現力」という力そのものを把握できる方法はないので,パフォーマンスから,その背後にある子どもの思考や表現の特徴を把握しようと努めることが大切である.
【課題】
(1) 知識・技能と資質・能力の違いについてグループで協議をして発表しなさい.
(2)各自の授業を取り上げ,パフォーマンス課題とルーブリックを作成してみなさい.
(3)ルーブリックを児童生徒に作成させることのメリットをグループで協議しなさい。
資料
動画資料
7.ワークショップ
8.学校における情報セキュリティ及びICT環境整備等に関する研修会
1.教職員対象版
2.教育委員会対象版
9.令和5年度あいちラーニング推進事業 公開授業並びに第1回研究協議会
令和5年11月17日(金)
資料
1.あいちラーニング推進事業プレゼン(PDF)
2.あいちラーニング推進事業プレゼン(PPTX)
10.令和5年度あいちラーニング推進事業 第2回連絡協議会
令和6年1月25日(木)
資料
1.令和5年度あいちラーニング推進事業第2回連絡協議会プレゼン(PDF)
2.令和5年度あいちラーニング推進事業第2回連絡協議会プレゼン(PPTx)
3.学びの構造化
【高大連携公開講座】総合的な探究の時間【伊那西高等学校】
目 的
総合的な探究の時間として、伊那市の歴史を学び、伊那市の良さを実感し、それらをデジタルアーカイブすることにより、伊那市文化資源を再発見する。また、伊那市の地域課題を RESAS(地域経済分析システム)で調査し、
エビデンスを元に地域課題を分析し、これらの地域課題を解決する方法を探り、そのためにデジタルアーカイブを活用しシティプロモーションビデオを新たに創造する。
デジタルアーカイブとは
① 文化はどのように記録するの
② 地域文化とデジタルアーカイブ
③ 沖縄おうらい
e-Learning講座
第1講 デジタルアーカイブの基礎
1.目 的
デジタルアーカイブは、「デジタル」と「アーカイブ」という言葉からできた和製英語と言われています。デジタルアーカイブとは何か? デジタルアーキビストに必要な能力は何か?ここでは、言葉の意味と発展の歴史から、基本的な考え方を理解し、今後のデジタルアーカイブの方向性を考えます。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブとは何か説明できる。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたかについて具体例をあげ説明できる。
③ デジタルアーキビストに求められている能力について具体的に説明できる。
3.課 題
① デジタルアーカイブとは何か自身の立場で説明しなさい。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたか説明しなさい。
③ デジタルアーキビストに求められている能力は何か自身の立場で説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの基礎
5.動画資料
第2講 デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
1.目 的
デジタルアーカイブの利用は、資料の提示や提供から始まり、課題解決、知的創造等の処理へと進みます。またデジタルアーカイブを活用し、新しい「知」の創造を求め、さらに新しい「知」と人々の経験を付加し、新たな知的活動へと発展します。ここでは、デジタルアーカイブの開発と活用プロセスについて考えます。
2.学習到達目標
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明できる
②資料の選定評価について説明できる。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明できる。
3.課 題
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明してください。
②資料の選定評価の課題について説明してください。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明してください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
5.動画資料
第3講 デジタルアーカイブの評価とメタデータ
1.目 的
デジタルアーカイブは、対象とする資料(情報資源)の分野も多岐にわたり、プロジェクト規模なども異なるため、それぞれにあわせた評価手法が求められます。そこで、本講では、デジタルアーカイブの自己点検ツールとして考案された「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容を把握し、その評価項目の中でも重視されているメタデータについて、記述のための国際標準、国際指針として制定されている事例から学びます。
2.学習到達目標
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容について説明できる。
② 記述のための国際標準、国際指針などの事例について説明できる。
③ 資料(情報資源)のメタデータ記述ができる。
3.課 題
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の評価項目の内、あなたが重要だと思う項目について、なぜそう思うかを含めて説明してください。
② 具体的に何か資料(情報資源)を一つ取り上げ、その資料のメタデータ記述項目を設定した上で実際の記述を行ってください。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの評価とメタデータ
5.動画資料
第4講 デジタルアーカイブの利活用
1.目 的
デジタルアーカイブは、1990年代の初期から、過去から現在の資料をデジタル化し、次の世代への伝承と現状での利活用を目指して開発が進められてきた。デジタルアーカイブの基本は、過去~現在の資料の収集・保管、デジタル化、さらに現状での利活用と次の世代への伝承である。
過去~現在の各種資料を収集・保管し、次のように使われる。
①次世代へのデジタルコンテンツの確かな伝承
②国内外のデジタルコンテンツの流通と利活用
ここでは、図書館や博物館等におけるデジタルアーカイブの利活用について考える。
2.学習到達目標
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明できる。
3.課 題
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブの利活用
5.動画資料
第5講 デジタルアーカイブによる地域活性化
1.目 的
知識基盤社会においてデジタルアーカイブを有効的に活用し,新たな知を創造するという本学独自の「知の増殖型サイクル」の手法により,地域課題に実践的な解決方法を確立するために,地域に開かれた地域資源デジタルアーカイブによる知の拠点形成をする。このことにより,地域課題に主体的に取り組む人材を養成する大学として,伝統文化産業の振興と新たな観光資源の発掘並びにデジタルアーカイブ研究による地方創成イノベーションの創出について具体的に考える。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブと地域課題解決について説明できる。
② 地方創成イノベーションの創出について具体的に説明できる。
3.課 題
① 飛騨高山匠の技デジタルアーカイブにより,地域の文化産業を振興するための方策を3つ挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブによる地域活性化
5.動画資料
※本映像は本学の学部の授業(情報の管理と流通)の内容の一部を利用して提供しています。
6.テキスト資料
デジタルアーカイブによる地域活性化
第6講 デジタルアーカイブと知的財産権(1)
1.目 的
デジタルアーキビストとして、アーカイブを計画し、そして資料収集し、そして構築し、そして利用許諾し、また運用していくという、こういったときに必要な権利処理について説明する。
2.学習到達目標
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明ができる。
② 著作者の権利について具体的に説明できる。
③ 著作権の契約書を作成できる。
3.課 題
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明しなさい。
② 著作者の権利について具体的に説明しなさい。
③ 著作権の契約書を作成しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(1)
第7講 デジタルアーカイブと知的財産権(2)
1.目 的
著作権について、自分の立ち位置とは関係ない形で第三者的に実践の試みの良い部分と課題について理解を深め、基本的な理解を図った後に、実践の中から法律など制度的な課題について考えます
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明できる。
② 著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて
説明できる。
3.課 題
1.デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明しなさい。
2.著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
→ デジタルアーカイブと知的財産権(2)
5.動画資料
6.テキスト
【テキスト】デジタルアーカイブ概論
7.資料
① 文化資料はどのように管理流通するの?
② 文化はどのように記録するの
③ 地域文化とデジタルアーカイブ
④ 情報の発信と伝達
⑤ 個人情報の保護と知的財産権
⑥ 【参考文献】デジタルアーキビスト入門:デジタルアーカイブの基礎 岐阜女子大学デジタルアーカイブ研究所 | 2019/5/16
⑦ 【参考文献】地域文化とデジタルアーカイブ 岐阜女子大学デジタルアーカイブ研究所 | 2019/5/16
8.動画資料
第8講 文化(対象)の理解
1.伊那市の文化を探り、伊那市の文化について理解する。
【目的】
・伊那市の地域文化のビデオを視聴し、伊那市の文化を分析する。
・伊那の地域の再発見
【講演】伊那の歴史をデジタルアーカイブする
【講師】高遠町歴史博物館館長 塚田博之先生
資料
2.伊那市文化遺産デジタルアーカイブ
② 建福寺
③ 桂泉院
⑤ 深妙寺
⑥ 小出城跡
3.動画資料
4.資料
① 伊那市の文化遺産
② 【研究】デジタルアーカイブにおける地域文化遺産の伝承に関する研究 ~高遠石工のデジタルアーカイブ~
第9講 伊那市の地域の課題から地域課題の解決方法を探る
1. RESAS の使い方説明
2. RESAS による地域の課題を抽出
3. 地域の課題の解決方法を探る
4.伊那市のプロモーションビデオのコンセプトの企画
5.資料
① RESAS(地域経済分析システム)
② 総合的な探究の時間(例)
③ 伊那市活性化プロジェクト(PPT)・・・ダウンロードして活用してください。
④ 伊那市活性化プロジェクト(PDF)
6.動画資料
第10講 プロモーションビデオ制作
学校の施設をデジタルアーカイブして学校
紹介プロモーションビデオを制作してみよう。
第11講 シティプロモーションビデオの企画
1. シティプロモーションビデオとは
2. 絵コンテ・構成表の制作
3.制作計画の作成
4.資料
① 伊那市活性化プロジェクト
第12講 シティプロモーションビデオの制作
(例)【講義】企業とデジタルアーカイブ
第12講 シティプロモーションビデオを発表してみよう
① 審査票(Excel)
第13講 シティプロモーションビデオの評価・改善
資料
① 高・大生のための利活用入門テキスト①
② 高・大生のための利活用入門テキスト②
報道
第14講 シティプロモーションビデオ作品(2023年度)
第15講 発展講座
■ ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
国立情報学研究所名誉教授 高野明彦氏
➝ プレゼン資料:ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
■ 世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
東京大学大学院情報学環 時実象一氏
➝ プレゼン資料:世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
■ デジタルアーカイブと法制度の現在地点
骨董通り法律事務所パートナー弁護士 福井健策氏
➝ プレゼン資料:デジタルアーカイブと法制度の現在地点
伊那西高校と郡上北高校のオンライン接続による発表会
日 時:2024年1月29日(月)
伊那西高校1時限目~3時限目実施
(①9:25~10:15 ②10:25~11:15 ③11:25~12:15)
※特別時間のため、休憩時間等はフレキシブルに対応可
【伊那西高校】・・・7グループ 【郡上北高校】・・・4グループ
各グループ 準備1分 説明1分 動画3~4分 評価用紙記入3分
→ 10分回しで設定
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1月29日(月)日程(案)
9:25~ 接続確認
9:50~ 開会の辞(伊那西高等学校)
10:00~ 伊那西高校発表①
10:10~ 伊那西高校発表②
10:20~ 伊那西高校発表③
10:30~ 各校代表挨拶
10:40~ 郡上北高校発表①
10:50~ 郡上北高校発表②
11:00~ 郡上北高校発表③
11:10~ 郡上北高校発表④
11:20~ 伊那西高校発表④
11:30~ 伊那西高校発表⑤
11:40~ 伊那西高校発表⑥
11:50~ 伊那西高校発表⑦
12:00~ まとめ・講評
12:10~ 閉会の辞(郡上北高等学校)
伊那西高校と郡上北高校のオンライン接続による発表会
時刻: 2024年1月29日 09:00 AM 大阪、札幌、東京
参加 Zoom ミーティング
https://us02web.zoom.us/j/85786605327?pwd=ZVFUalUyaG1WdVNtY1R4cFlCdkprQT09
ミーティング ID: 857 8660 5327
パスコードを設定する: 863467
評価用紙
R5年度 伊那西高校と郡上北高校のオンライン接続による発表会 評価用紙
令和5年度 伊那市シティプロモーション作品