与那原の産業 セーイカ
セーイカとはソデイカの沖縄方言での呼び方であり、最初にソデイカ漁業が始まった久米島で、「せー(エビ)」に似た味がすることからこの名がついたといわれている。寿命は1年程度、外套長1m、体重は20kgにも達する巨大なカで、世界に一属一種の生物である。昼間は水深400~600mの深海で過ごし、夜間は餌を追って海面付近にまで浮上する。通常2個体ずつで遊泳する習性をもっている。撮影日には、当添漁港に600杯のセーイカがあがった。多い時には800~1000杯あがることもある。
イカは足が早いため、水揚げしてすぐに船の上で頭と足とにさばき、それぞれをひとつずつ包んで冷凍庫で保管しながら漁港に戻る。そのため、漁港につくと冷凍されたセーイカがベルトコンベアを渡して水産物荷さばき施設に移される。水産物荷さばき施設では、ベルトコンベアからおろされたセーイカを1包み毎に目方にのせて重さを記録する。その後、大きなコンテナにまとめて入れ、さらにコンテナごと大きな計りで総重量をはかり、二つ重ねてトラックへ運ぶ。
セーイカの身の繊維は柔らかいため調理もしやすく、刺身や寿司ネタだけでなく、最近はソーセージやチキアギ(沖縄の揚げかまぼこ)などの加工品も開発されている。ファーマーズマーケット与那原あがりはま市場などで購入することができる。
資料(メタデータ)
与那原町の漁業_セーイカ
平和への願い 白梅之塔
白梅之塔は高嶺村真栄里(現在の糸満市真栄里)にある、沖縄県立第二高等女学校の慰霊塔である。沖縄戦で戦没した校長・職員・生徒および同窓会員、他の場所で戦死した学校関係者合わせて149名を合祀している。
八重瀬岳の第24師団第1野戦病院解散後、白梅学徒隊16人の学徒が戦地をさまよった末にたどり着いたのが、上の壕(眞山之塔裏)、下の壕(白梅之塔側)とよばれた真栄里の自然壕である。上の壕は食糧弾薬倉庫、下の壕は傷病兵の看護場所で、学徒らは負傷兵の手当てを手伝った。6月21日に下の壕が、翌22日に上の壕が米軍の激しい攻撃を受けた。
敗戦後の1948年1月に自然石の小さな碑を建立し、第1回の慰霊祭が執り行われた。「塔」とされているが、実物は琉球石灰岩でできた高さ数十センチの石碑である。その後、1951年8月に建て替えられ、再度、1992年6月に現在の慰霊塔に改修された。白梅同窓会が維持管理を行っている。現在も毎年6月23日の慰霊の日に例祭が執り行われている。
資料(メタデータ)
沖縄の怖い話『仲西ヘーイ』
潮渡橋は、泊と那覇の間を流れる潮渡(すーわたい)川にかかる橋で、塩田潟原(かたばる)の上に明治42(1909年)に架けられた、長さ7間(約13m)の木橋だった(東恩納寛惇『南島風土記』)。
潟原は干潮時に徒歩で横断すると泊から若狭・那覇方面への近道になることから、人の往来の多かったようだ。現在の潮渡橋は那覇市前島のリッチモンドホテルのそばに移され、橋の上を国道58号線が通っている(位置は当時よりも南に移動)。
*潮渡川は安里川が崇元寺付近から分かれて久茂地川となり、その先の美栄橋付近から海に向かって別れて流れる川である。
【怖い話】
仲西は那覇市に伝わる妖怪で、夜になって那覇と泊の間にある塩田潟原にかかった潮渡橋で「仲西ヘーイ(仲西やーい)」とよぶと、「ヘーイ」と返事が返ってきて現れる。現在、潮渡橋はかつてあった場所から移動しており、昔のように呼んでも現れなくなったようである。
*違う内容の話がいくつか伝わっている。
資料(メタデータ)
沖縄の有用植物 沖縄の薬草文化
沖縄は気候による温暖さや降水量の多さから多様な植物が生育しやすい環境であり、独特の生態系を育んでいる。特に、沖縄本島北部のヤンバル(山原)は「生物の宝庫」、八重山(諸島)は「東洋のガラパゴス」といわれている。また、琉球列島は地理的に日本本土と東南アジアの中央に位置している。日本本土、台湾、中国大陸、フィリピン、東南アジア、オーストラリアなど、様々な地域の植物が混ざり合った植物相で、約150種類の薬草が自生していることから「薬草の宝庫」ともいわれている。
日本では薬草は『古事記』や『日本書紀』にも登場し、古くから健康を支える存在として治療や儀式に利用されてきた。沖縄の薬草文化は、干ばつや台風などの自然災害にたびたび見舞われてきた沖縄において、厳しい環境と上手く付き合う知恵のひとつとして、野菜や薬草を巧みに取り入れて薬餌効果を優先する「養生食」のなかで育まれてきたと考えられる。
沖縄には、グァバ(蕃石榴〔ばんじろう〕、沖縄の方言で ばんしるー)、ウコン(鬱金〔うこん〕、沖縄の方言で うっちん)、クミスクチン(別名ねこのひげ)の三大薬草があり、葉や茎などを乾燥させ、煎じて服用する。現在ではグァバはジュースとしても販売されており、南国のフルーツジュースとして馴染みがある。またウコンはウコン茶(ウッチン茶)としてペットボトルや缶での販売がある。
資料(メタデータ)
沖縄の生活文化 花ブロック
■沖縄独自の建築資材 花ブロック
花ブロックとは沖縄の建築に使用される装飾的なコンクリートブロックをさし、沖縄独自の建築材料である。主に外壁に用いられ、透かし模様が施されている。これにより通気性を保ちながら沖縄の強い日差しを遮る機能があり、また、その透かし部分から朝昼夕と時々の光が差し込み、夜は内側からの光の陰影を楽しめるというデザイン性ももちわせている。
周囲の自然や環境を大切にさりげなく生活に取り込む沖縄のあたたかさが感じられる。
沖縄県のある初期の花ブロックを利用した有名な建築としては、1958年に建築された聖クララ修道院(与那原町与那原)、1981年に建築された名護市市役所(名護市港)などがある。
資料(メタデータ)
沖縄の有用植物 サトウキビ
サトウキビは、琉球王朝時代、儀間真常(1557-1644)により中国福建省からその栽培方法と製糖方法が伝えられた。現在では沖縄県の全耕地面積の約5割がその栽培に使われており、県内農家の約7割が栽培に従事している(令和4年度 沖縄県農林水産部調査)。サトウキビは強風や日照りに強く高温多湿を好むため、台風の多い沖縄でも栽培することができる。
栽培・製糖・加工・販売による雇用機会の確保など、沖縄の地域経済を支える主要農産物である。
サトウキビは沖縄方言でウージとよばれ、沖縄の特産品でもある黒糖は、郷土料理や菓子、土産品など、幅広く使われており、古くからの沖縄の慣習や生活文化に深く根付いている。
野外博物館である琉球村(沖縄県恩納村)には、サーター車(砂糖車)が展示されている。サーター車は牛や馬に砂糖車を引かせてサトウキビを絞る歯車のことで、古くから黒砂糖を作る製糖方法であり、儀間真常によって中国から伝えられたもののひとつである。
近年では、サトウキビのしぼり汁から取り除かれた糖蜜はバイオエタノールの原料や家畜のエサに、搾りかす(バガス)は製糖工場の燃料や次のサトウキビ栽培の肥料に使用されるなど、持続可能なエネルギーや資源として注目されている。
資料(メタデータ)
【公開講座】第4回 未来の教育講演会
幼児教育から小・中・高等学校までの教育を再生する
子どもを取り巻く社会のへ変化の中で,子どもたち自身が身に付ける資質能力や教育が抱える諸課題が大きく変化しています。その中で,幼児教育,又,幼児教育と初等・中等教育をつなぐ専門職としての「幼児教育コーディネータ」・「小中連携教育コーディネータ」が求められるようになっています。
そこで,本講演会では,これからの教育を切り拓く鍵として「教育DX」を据え,こらからの教育の創造やその時に教育者に求められる資質能力についてご講演いただくと共に,実践を通して学ぶことで共通理解を図り,認識を深めていきます。
1.日 時
2025年2月22日(土) 9:30~12:30(受付 9:00~)
2.実施方法
対面とオンライン(zoom)両方法での開催
3.対面会場
沖縄女子短期大学・1階 大教室
〒901-1304 沖縄県島尻郡与那原町東浜1番地
4.内 容
(1)基調講演
教育DXで拓く未来の学び
久世 均 氏(文部科学省学校DX戦略アドバイザー・岐阜女子大学教授)
動画資料
資料
教育DXで拓く未来の学び (PDF)
(2)特別講演
あと伸びする力を支えるコーディネーターの役割
鈴木みゆき 氏(幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会委員・國學院大學教授)
動画資料
資料
(3)ワークショップ
接続期におけるカリキュラム作成
平中理恵 氏(滋賀県彦根市立城東小学校教諭(前滋賀県教育委員会指導主事))
動画資料
【ワークショップ】接続期におけるカリキュラム作成で公開しております。(パスワード必要)
資料
5.資料
1.講演会チラシ
以前の講演会
【公開講座】第3回 未来の教育講演会
【公開講座】第2回 未来の教育講演会
【公開講座】第1回 未来の教育講演会
沖縄の伝統菓子 あまがし
あまがしとは押し麦・緑豆・黒砂糖で作る沖縄のぜんざいの一種で、旧暦5月4日、5日の沖縄の年中行事「ユッカヌヒー」や「グングヮチグニチ」に食べられる伝統菓子である。
押し麦から出るとろみが独特の味わいを生み、緑豆は口の渇きを抑える作用や清涼感があり、暑い沖縄の夏によく合った菓子である。現在は黒砂糖などの甘みを使用するが、以前は麦粥に米麹を入れ、2~3日発酵させた甘酸っぱい発酵食であった。
ユッカヌヒー(四日の日)とは、昭和初期ごろまでは年に一度那覇市首里で大規模なおもちゃ市が開かれ、子どもたちが好きなおもちゃを買ってもらえる日であった。グングヮチグニチ(5月5日)は、現在の子どもの日(端午の節句)にあたる。
ユッカヌヒーやグングヮチグニチには子どもたちの健康を祈願してあまがしが作られ、昔は「疫病を払う」と言い伝えられてきた菖蒲の茎や葉を添え、箸やスプーン代わりに食べられていた。
資料(メタデータ)
沖縄の伝統菓子_あまがし
「沖縄おぅらい」デジタルアーカイブ
「沖縄おぅらい」は、岐阜女子大学の地域資源デジタルアーカイブを用いた、高校生のための沖縄への修学旅行に特化した学習材です。
沖縄県外の高校生が多様な沖縄の文化を8つのカテゴリーから知ることができるよう、構成しています。WEBコンテンツとリフレットがあり、リフレットのQRコードからもWEBコンテンツにアクセスできます。
URL:http://www.gijodai-okinawa.jp/ohrai/index.html
「沖縄おぅらい」デジタルアーカイブ 目次
カテゴリー1沖縄の観光
▶ Contents1 沖縄美ら海水族館
▶ Contents2 国際通り
▶ Contents3 道の駅かでな
▶ Contents4 玉泉洞
▶ Contents5 アメリカンビレッジ
▶ Contents6 海中道路
カテゴリー2平和への願い
▶ Contents1 平和祈念公園
▶ Contents2 ひめゆりの塔・ひめゆり平和祈念資料館
▶ Contents3 旧海軍司令部壕
カテゴリー3沖縄の世界遺産
▶ Contents1 今帰仁城跡
▶ Contents2 座喜味城跡
▶ Contents3 勝連城跡
▶ Contents4 中城城跡
▶ Contents5 首里城跡
▶ Contents6 園比屋武御嶽
▶ Contents7 玉陵
▶ Contents8 識名園
▶ Contents9 斎場御嶽
カテゴリー4沖縄の生活文化
[衣]▶ Contents1 芭蕉布
[衣]▶ Contents2 花織
[衣]▶ Contents3 琉球絣
[衣]▶ Contents4 ミンサー
[衣]▶ Contents5 紅型
[食]▶ Contents1 料理
[食]▶ Contents2 食材
[食]▶ Contents3 菓子
[食]▶ Contents4 果物
[住]▶ Contents1 琉球村
[住]▶ Contents2 中村家
カテゴリー5沖縄の自然
▶ Contents1 万座毛
▶ Contents2 古宇利島
▶ Contents5 辺戸岬
▶ Contents6 大石林山
▶ Contents7 八重山諸島
カテゴリー6沖縄の伝統文化
▶ Contents1 琉球舞踊
▶ Contents2 組踊
▶ Contents3 エイサー
▶ Contents4 獅子舞
▶ Contents5 琉球音楽
▶ Contents6 わらべ歌
▶ Contents7 沖縄空手
カテゴリー7沖縄の産業
▶ Contents1 焼物
▶ Contents2 琉球漆器
▶ Contents3 琉球ガラス
▶ Contents4 三線
▶ Contents5 織物
▶ Contents6 農業
▶ Contents7 水産業
カテゴリー8沖縄の離島
▶ Contents1 川平湾
▶ Contents2 唐人墓
▶ Contents3 アンガマ
▶ Contents4 竹富島伝統的建造物群保存地区
▶ Contents5 離島をつなぐ橋
▶ Contents6 ふばかり石(人頭税石)
沖縄の離島[石垣島] アンガマ
石垣島地方に受け継がれるお盆の行事。あの世から面を被ったウシュマイ(お爺)とンミー(お婆)が花子(ファーマー)とよばれる子孫と現れ、新築の家など招かれた家々を訪れる。仏壇の前で、八重山方言による問答やニンブジャー(念仏踊り)、家人を含めたモーヤー(カチャーシー〔手踊り〕)を踊り、祖先の霊を供養する。
「沖縄おぅらい」とは
岐阜女子大学の地域資源デジタルアーカイブを用いた、高校生のための沖縄への修学旅行に特化した学習材です。
沖縄県外の高校生が多様な沖縄の文化を8つのカテゴリーから知ることができるよう、構成しています。WEBコンテンツとリフレットがあり、リフレットのQRコードからWEBコンテンツにアクセスできます。
URL:http://www.gijodai-okinawa.jp/ohrai/index.html
【研究論文】教育DX時代における教育リソース並びにe-Learningの構成(2)
教育DX(Digital Transformation)時代における“新たな学び”とは,教師がデジタル技術を活用し,学びのあり方やカリキュラムを革新させると同時に,教職員の業務や組織,プロセス,学校文化を革新し,時代に対応した教育を確立することである.
また,学びという側面から考えてみると教育DXの目的は,「個別最適な学びという“新たな学び”の実現」である.20世紀の学習観は,行動主義・認知主義の学習観を採用していた.しかし,21世紀に入り,学習観は「主体的・対話的な深い学びの実現」という構成主義・社会構成主義の学習観に移行した.この変化から分かるように,教育が「全員に同じ教育」から「個々が持つ能力を最大限活かす教育」に変化している.また,デジタルツールを学びに活用することで,さらなるクリエイティブな学びの実現もDX時代における“新たな学び”の目的とされている.ここでは,これらの教育のDX時代における “e-Learningの構成”の在り方について考える.
<キーワード>教育DX,GIGAスクール構想,e-Learningシステム,教育リソース
1.はじめに
「DX(Digital Transformation)」は,2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念である.その内容は「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」というもので,“進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること”と解釈できる.
ただし,教育DXが及ぼすのは単なる「変革」ではなく,デジタル技術による破壊的な変革を意味する「デジタル・ディスラプション」.すなわち,既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすものであると捉えられている.
文部科学省も,この教育DX時代に対応して令和2年12月23日に文部科学省デジタル化推進本部から「文部科学省におけるデジタル化推進プラン」を報告している.ここでは,「・・・ポスト・コロナ期のニューノーマルに的確に対応していくために必要なDXに係る取組を早急かつ一体的に推進していかなければならない局面を迎えている.」とし,次のように4つの具体的な方針を掲げている.
①GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想による1人1台端末の活用をはじめとした学校 教育の充実
②大学におけるデジタル活用の推進
③生涯学習・社会教育におけるデジタル化の推進
④教育データの利活用による,個人の学び,教師の指導・支援の充実, EBPM等の推進
特に,①のGIGAスクール構想については,令和3年3月12日の「GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について(通知)」において,「文部科学省では,Society 5.0 時代を生きる全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びを実現するためには,学校現場における ICT の積極的な活用が不可欠との観点から「GIGA スクール構想」を推進しているところであり,関係各位の御尽力により,本年4月から,全国のほとんどの義務教育段階の学校において,児童生徒の「1人1台端末」及び「高速大容量の通信環境」の下での新しい学びが本格的にスタートする見込みとなっている.」と述べている.また,“新たな学び”について,文部科学大臣がメッセージで,「1人1台端末環境は,もはや令和の時代における学校の「スタンダード」であり,特別なことではない.これまでの我が国の 150 年に及ぶ教育実践の蓄積の上に,最先端の ICT 教育を取り入れ,これまでの実践と ICT とのベストミックスを図っていくことにより,これからの学校教育は劇的に変わる.この“新たな学び”の技術革新は,多様な子供たちを誰一人取り残すことのない公正に個別最適化された学びや創造性を育む学びにも寄与するものであり,特別な支援が必要な子供たちの可能性も大きく広げるものである.」と子供たち一人一人に個別最適化され,創造性を育む教育 ICT 環境の実現を求めている.ここでは,子供たち一人一人に個別最適化され,創造性を育む学びとは何か,その実現のための“新たな学び”とはどのような学びで,従来の学びとどのように異なるのかについて考える.
2.教育DX時代における新たな学び
教育DX(Digital Transformation)時代における“新たな学び”とは,教師がデジタル技術を活用し,学びのあり方やカリキュラムを革新させると同時に,教職員の業務や組織,プロセス,学校文化を革新し,時代に対応した教育を確立することである.
また,学びという側面から考えてみると教育DXの目的は,「個別最適な学びという“新たな学び”の実現」である.20世紀の学習観は,行動主義・認知主義の学習観を採用していた.しかし,21世紀に入り,学習観は「主体的・対話的な深い学びの実現」という構成主義・社会構成主義の学習観に移行した.
この変化から分かるように,教育が「全員に同じ教育」から「個々が持つ能力を最大限活かす教育」に変化している.また,デジタルツールを学びに活用することで,さらなるクリエイティブな学びの実現もDX時代における“新たな学び”の目的とされている.
政府が設置する教育再生実行会議が2021年6月3日に発表した第12次提言は,教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)を鮮明に打ち出した.この提言「ポスト・コロナ期における新たな学びの在り方について」の中で「データ駆動型の教育への転換」が必要とし,教育データの利活用や対面授業とオンライン授業のハイブリッド化などを促している.
ここでは,これらの教育のDX時代における “新たな学びにおけるe-Learningの構成”の在り方について述べる.
3.e-Learningという学習
e-Learningのイメージはどのようなものであるか?2000年頃にe-Learningブームが起きて,人材育成や各種講座にe-Learningに期待したが,長くe-Learningのブームは続かなかった.
あれから20年経過し,e-Learningはずいぶん定着したが,ただ単に垂れ流し型のe-Learningではなく,e-Learningと対面授業やオンライン授業を組み合わせたハイブリット型授業が一般的となった.
香取(2001)によるとe-Learningは,ただ単にe-Learningでの“研修で学ぶ”のみではなくて,“情報で学ぶ”,“経験して学ぶ”,“仲間から学ぶ”を取り入れたより幅の広いものだと捉えている.
ローゼンバーグ(2002)は,“情報で学ぶ”とは,e-Learningの両輪として,オンライン研修とナレッジマネジメントシステム(KMS)の2つを重視したe-Learning論を展開している.
また,“経験して学ぶ”とは,ゲリー(Gery.1991)によると,他人からの最小限のサポートで,高いレベルの職務パフォーマンスを可能にするための,統合された情報へのオンデマンドアクセス・道具・方法を提供する電子的業務遂行支援システム(EPSS)を提唱している.
“仲間から学ぶ”は,仲間から学ぶコミュニティであった.職場での学習(ワークプレースワーキング),あるいはインフォーマル学習などの用語で,“仲間から学ぶ”機能に注目されている.
ローゼンバーグ(Rosenberg.2006)は,e-Learningを再定義し,「e-Learningとは豊かな学習環境を創造し届けるためのインターネット技術の利用であり,広範囲のインストラクションと教育リソースとソリューションが含まれる.その目的は,個人と組織のパフォーマンスを高めることにある」と言っている.
e-Learningの目指す方向は,「教えない」授業であり,その目的は,教えなくても自分で学ぶ人を育てることである.鈴木(2015)は,研修設計マニュアルで,教えない研修への提案として次の5点を挙げている.
(1)子供扱いせずに大人の学びを支援するためのアンドラゴジーを採用する.
(2)研修ではなく自己啓発とOJTを能力開発の基礎と位置付ける.
(3)集合研修でもバラバラな課題に取り組む時間を設ける.
(4)熟達化に応じて,「教えない」割合を増やす.
(5)成長する学びに誘うきっかけとなる研修を考える.
つまり,教えない授業を実現するためには,自律的な学習者となることが重要であり,自律的な学習者であれば自律的なオンライン授業が実現する.ここでは,自律的なオンライン授業の分析と設計について考える.
4.自律的なオンライン授業
授業の目的は「教えること」ではない.それは学習者が「自ら学ぶ」ことを手助けし,学習者に「行動変容」が起こることである.
「教えない」授業が主体的な学び手を前提として,よりフレキシブルな学習環境を提供すると共に,成人学習学の原則を踏まえる必要がある.
ノールズ(M, Knowles,1980)は,『成人教育の現代的実践 ペダゴジーからアンドラゴジーへ』により,ノールズが良い成人教育者か否かを判断する方法として引用した成人教育プログラムによって開発された以下の6つの判断基準を提唱している.
①指導者は,学習内容と技能に関する知識を身につけているだけでなく,そこで成功した実践者でなければならない.
②指導者は,その学習内容に対して,またそれを他者に教えることに対して,情熱的であるべきである.
③指導者は,人びとに対して,理解と寛容の態度をもつ(あるいはそれらを学ぶことができる人間である)べきである.彼らは,親しみやすさ,ユーモア,謙虚さ,そして人々に対する興味・関心といったパーソナリティ特性をも身に付けているべきである.これらは,成人を指導する上で効果的である.
④指導者は,教授法に関して,創造的に考えるべきである.彼らは,変化しつづける成人のニーズや関心に対応するために,新しい方法を進んで試みるべきである.
また,事実を提示することよりも個人の成長により関心を示すべきである.
⑤地域社会や職業集団における地位,過去の教育経験など一般的に求められるものは,上記の特性と適合したときのみ意味をもつのである.
⑥指導者は,成人が,学習者としては子供とは異なっているという考えに,関心を示すべきである.また,成人の指導に関する現職訓練のプログラムに参加できることに対して積極的に喜びを表現すべきである
また,M.ノールズは,成人学習のための7つの原理を報告している.
1)雰囲気作り
2)相互的計画化
3)学習ニーズの自己診断
4)学習速度のコントロール
5)学習資源の見つけだし
6)教師の支持的な役割
7)学習結果の自己評価
さらに,成⼈学習者の特徴として次の3つをあげている.
• 自己決定学習ができる
• 生活経験が豊富である
• 実用重視である
1つ目の特徴は,自己決定学習に示されるように,まず何を学ぶかを自分が決めるということである.大人になるとフォーマル・ラーニング,つまり学校教育の枠組みがないので,そこにおいては自分でこれを学びたいと決心して何かを学ぶという行為ができる.従って自己決定学習ができる.
2つ目の特徴は,生活経験が豊富であるということである.つまり人生上の経験が学習のための資源になりうるということである.これも子供の学習とは大きく違う点である.大人は,いろいろな人生上の体験が,今学んでいることとどういう関係にあるのかを考えることができる.いわゆる机上の空論(理論だけ学んで実際には使えない)というのは起こりにくい.理論を学べば自分の体験からどういうふうに継承されるか,照らし合わせて「ここは理論的に説明できるけれどここは少し違うな」というような判断ができる.このようにして体験そのものが理論のための資源になる.
3つ目の特徴は,実用重視ということである.もともと自己決定学習で何を学ぶかという時に,自分のニーズが判断基準となる.今,目前に何か学ぶことがあるとすれば,それが自分の人生や仕事上何か役に立つのかということで判断する.従って現場の問題を解決することができるかどうかで学んだり学ばなかったりする.つまり実用重視の判断をするということである.
5.授業の効果分析
(1)授業の効果測定
授業によっては,例えば「知識習得」や「スキル開発」などは,ある程度効果を測定しやすいが,「意識変革」や「行動革新」「価値観醸成」といったものは,効果が抽象的になりがちで効果測定しにくい.
最近の授業では,知識やスキルの習得よりも,意識変革・行動革新を促して成果を追求するものが増えてきている.教師は,効果測定しにくい授業で成果を出さなければならないというジレンマに陥る.企画力,論理的思考,戦略思考,創造性,意識変革,モチベーション,リーダーシップといった内容を扱った授業は,効果測定が極めて難しい.
知識習得を目的とした授業であれば,授業前後にテストを実施し,結果を比較することで効果の測定が可能である.しかし,例えば論理的思考等の効果測定となると定量的に測ることが難しく,また,いつ効果が表れるのかも分からない.このような定性的な効果をどのようにして測定するべきか今後の重要な課題になってくる.
授業の効果が上がらない要因は以下のようになる.
①授業の目的やねらいを明確にしていない
②効果測定として何を測るのか決めていない
③誰がいつ測定するか決めていない
(2)授業の効果測定のポイント
①授業の目的,学習者の行動変容を評価する
②評価することが目的ではなく,評価するに値する結果を出すことが目的
③学校の視点と教員の視点から授業を見直していく機会と捉える
④教育を通じて学校を成長させるツールと考える
⑤学習者を望ましい方向にマネジメントするために効果測定をする
授業を実施する前に授業の目的を明確にし,具体的な学習到達目標を立てなければ,効果測定はできない.まず,測定可能な学習到達目標の設定が大切である.
そして,カリキュラム・教材を検討し,授業を実施する.授業後に学んだスキルが,社会でどのように活用され,当初の学習到達目標が達成されたか,改善されたのかを測定するというステップを踏むことが重要である.
6.おわりに
児童生徒一人一台コンピュータを実現することで,これまでの我が国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図り,教師・児童生徒の力を最大限に引き出す.災害や感染症の発生等による学校の臨時休業等の緊急時における,児童生徒の学びの保障の観点からも,ICTを効果的にフル活用することが重要である.
GIGAスクール構想が推し進められた背景は,日本の学校のICT環境整備の遅れだった.GIGAスクール構想の発表当初,教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は全国平均で5.4人/台と1人1台には遠く及ばず,地域間格差も大きかった.また,その当時は世界的に見ても日本の学校におけるICT活用は遅れており,34カ国の先進諸国で構成されているOECDの中で,「学校の授業におけるデジタル機器の使用時間が最下位」という結果になっていた.こうした状況を打破するために,政府は校内通信ネットワークの整備と児童生徒1人1台端末の整備に補助金制度を導入し,GIGAスクール構想を推し進めることになった.
今後は授業や自宅学習での有効な利活用を進める,それを支える教員のスキルを向上させる,よりリッチなコンテンツを作るなど,端末や通信環境などのハードを活用したソフト側の高度化を進めることで,より質の高い教育が実現される.
生徒一人一人に端末を持たせることで,子供が互いの考えをリアルタイムで共有でき,双方向での意見交換が活発になると期待される.生徒どうしのみならず教員と生徒のコミュニケーションも行えるため,教員が生徒の学習状況や反応をより深く知ることができる.
従来の一斉型の授業では,手を挙げた子供だけが回答や意見を発表していたため,自ら表現できない子供も多かったが,GIGAスクール構想では,全ての子供の意見が情報端末を活用して共有されるなどして,コミュニケーションを活性化させることが期待される.
また,学びの機会は授業中の教員と生徒間でのコミュニケーション以外からも得ることができる.例えば,整備された端末を活用して子供たちが興味を持ったことを調べたり,写真や動画などでアウトプットしたり友達どうしで共有したりする過程で,創造性を育む学びにつながるとも言える.
プレゼン資料
1.教育DX時代における教育リソース並びにe-Learningの構成(2)(pptx版)
2.教育DX時代における教育リソース並びにe-Learningの構成(2)(PDF版)












































































































































































































