【授業】英語科教育法Ⅰ
Ⅰ はじめに
本科目を学ぶことで、英語教育法に関する基本的・理論的な知識を得て、英語教員として学習者に英語を教えることができるようになる。なお、この科目「英語科教育法Ⅰ」は理論的な側面を重視しており、「英語科教育法Ⅱ」では、実践的な側面を重視している。これら二つの科目を履修することで、英語教育法を理論と実践の両分野から理解することができるようになる。
Ⅱ 授業の目的・ねらい
世界の英語、異文化理解、言語習得論、各種教授法、テストや評価などの基本項目を理解すると同時に、教育基本法や学校教育法の中で英語教育がどのように位置づけられるか考えてゆく。さらに、学習指導要領に示された目標をどのように授業で、どの教科書を用いるかを議論して検証して行く。各テーマの終了後に課題提出を行い、受講者の理解が確実に深まるようにしたい。
Ⅲ 授業の教育目標
英語教育の基軸となる学習指導要領及び教科用図書 (教科書) について理解し、学習到達目標及び年間指導計画、単元計画、各時間の指導計画について理解する。また、5つの領域(「聞くこと」「読むこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」及び「書くこと」)の指導及び各領域を支える音声、文字、語彙・表現、文法の指導について基本的な知識と技能を身に付けるとともに、複数の領域を統合した言語活動の指導方法を身に付ける。
テーマ1 英語教育の目的
1 何を学ぶか
国際化時代の英語教育の在り方は従来と大幅に異なるものであり、その進歩の過程を理解して十分に納得できるようになる必要がある。さらには、英語教育の目的が教養英語から実用英語へと変遷した様子を理解して、実用英語教育の一環としての資格英語の教え方を学ぶ。
2 学習到達目標
英語教育の目的は何であるか説明できる。
初等教育、中等教育のそれぞれにおいて必要な英語教育の内容を説明できる。
日本における英語教育の歴史を説明できる。
3 課題
自分の考える英語教育の目的をレポートにまとめる。
日本における語学教育の歴史をレポートにまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ2 英語教師論
1 何を学ぶか
教師、教員、教官、教諭などの類似の名称の違いを調べることで、英語を教える人材がどのような社会的な役割や期待を背負っているか理解してゆく。さらには、理想的な英語教師の人物像、英語運用能力、授業を運営する能力について考察する。そして、英語に関する免許状を種類に沿って理解してゆく。
2 学習到達目標
教師という名称について説明できる。
理想的な教師はどのような人か説明できる。
ALT, 教員免許状について説明できる。
3 課題
自分を担当した先生方がどのような素質を持っていたかレポートにまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ3 英語の学習者
1 何を学ぶか
英語学習に向いている素質とは何であるか考える。学習者の特性(年齢、知能、適性、認知スタイル、動機付け)について、それぞれに対応した教授法はどのようなものか考察する。また、学習者の認知スタイルと教材の理解の仕方の関係も考察する。
2 学習到達目標
学習者の持っている特質を説明できる。
学習者の認知スタイルを説明できる。
学習者の性格や動機付けについて説明できる。
3 課題
英語学習と動機付けの関係についてレポートにまとめる。
場面独立型と場面依存型という二つの認知スタイルの違いをレポートにまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ4 言語習得論
1 何を学ぶか
言語習得における行動主義理論と生得説理論を比較して、それぞれの教授法がどちらの理論に影響を受けているか考察する。関連して、オーディオリンガルメッソードと行動主義理論の関係を調べる。また、Krashen の言語生得理論を調べる。そして、言語習得の過程における一語文から二語文、複語文への発達を調べ、どちらの理論が妥当であるか考える。
2 学習到達目標
子どもの言語発達の段階について説明できる。
ジャン・ピアジェの考えを説明できる。
行動主義理論と言語生得説理論の特質を説明できる。
3 課題
言語習得の臨界期の説明をレポートにまとめる。
行動主義理論と言語生得説理論の違いを表にまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ5 英語教授法
1 何を学ぶか
様々な英語教授法の概要を知ることで、自分が想定する学習者(小、中、高レベル)に相応しい教授法を考える。すぐれた指導法の動画を見る。それらを参考にしながら、コミュニケーション主体の模擬授業を行う。さらにディクテーションやシャドーイングの指導法を訓練する。
2 学習到達目標
英語教授における演繹法と帰納法の違いを説明する。
様々な英語教授法を説明できる。
コミュニケーション主体とは何かを説明できる。
3 課題
自分の関心を持った教授法を一つ選び、概要をレポートにまとめる。
ディクテーションを自分に課して、その様子をレポートにまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ6 学習指導要領
1 何を学ぶか
日本の学習指導要領の歴史について調べる。10年ごとの改訂において、どのような時代背景を反映していたかを考える。また最新の学習指導要領の内容を分析する。諸外国における学習指導要領の特徴を対比して考える。
2 学習到達目標
学習指導要領とは何か説明できる。
学習指導要領の持つ法的拘束力を説明できる。
学習到達目標及び年間指導計画、単元計画、各時間の指導計画について説明できる。
3 課題
各国の学習指導要領の事例を集めて、日本の学習指導要領と比較して報告する。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ7 聴くことの指導
1 何を学ぶか
4技能の指導の中で聴くことの位置づけを考える。関連して、すぐれた指導法の動画を見る。また、ディクテーションとシャドーイングの練習を行うこと、さらに日本人が聞き分けに苦手な音の訓練法を知ることで、初等教育、中等教育レベルでの聴くことの指導法を理解してゆきたい。
2 学習到達目標
4技能の中で「聞くこと」の意味を説明できる。
聞くという「能動的な」行動について説明できる。
音声学の基本的な知識を説明できる。
国際音声記号を説明できる。
3 課題
日本人が聞き分けに苦労する音声をレポートにまとめる。。
能動的に「聞くこと」の意味をレポートにまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ8 話すことの指導
1 何を学ぶか
Public Speakingでは、自分が興味を持った話題ならば積極的に話すことにつながるので、学習者の関心のある話す話題の見つけ方、その提示の仕方を考える。とりわけ、小学校においてスピーキングの指導法を考える。学習指導要領で示されたコミュニケーション能力の育成の意味を考える。
2 学習到達目標
話すことの2つの領域(Conversation, Public Speaking)の違いを説明できる。
CEFRで示された「話す力」を説明できる。
Classroom English の大切さを説明できる。
3 課題
Classroom Englishを用いた授業案を作成する。
CEFRの概要をレポートにまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ9 読むことの指導
1 何を学ぶか
読み方の二つの重要な方法である速読と精読を比較する。それぞれの指導の時の留意点を考える。読むことの指導において重要なプレーリーディング活動を調べる。また、読み書きの活動において、文法知識の重要性を考えて、その問題点を考える。加えて、適切な語彙指導法を考える。
2 学習到達目標
歴史的文脈において、文法訳読法が果たした枠割りを説明できる。
ボトムアップとトップダウンの2つの読み方について説明できる。
読むときのスキーマの意味を説明できる。
3 課題
文法の理解とリーディングの関係をレポートにまとめる。
語彙の教え方をレポートにまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ10 書くことの指導
1 何を学ぶか
伝統的な英作文、課題英作文、自由英作文などの特質とその指導法を考える。結束性と一貫性を意識した英文を書く。さらに、パラグラフリーディングを意識した英文の指導法を考える。機械翻訳の活用法について考えて、書くことを指導する際の問題点と活用法を考える。
2 学習到達目標
ライティングへの関心の高める方法を説明できる。
初等教育において、どの程度まで書き言葉の指導を行うか説明できる。
3 課題
子どもたちの書いた英作文を実際に訂正してみる。
各種の機械翻訳を比較してレポートにまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ11 評価と言語テスト
1 何を学ぶか
評価が英語教授の上で果たすべき役割を考える。テストの様々な種類、例えば、主観テストと客観テスト、正誤問題と穴埋め問題などの特質を考える。さまざまな評価、例えば、診断的評価、形成的評価、総括的評価を考える。また、絶対的評価と相対的評価を考える。現在、普及しつつあるCEFRの評価の基本概念を調べる。
2 学習到達目標
色々なテストの種類を説明できる。
評価の視点を説明できる。
テストを信頼性、妥当性、実用性の概念で説明できる。
3 課題
自分が過去に於いて受けてきたテストを、様々な視点で解説する。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ12 世界の英語
1 何を学ぶか
英語の歴史から世界への英語の広がりを考える。その歴史的な広がりの中で、地理的な分類、例えば、カチルによる英語の区分け(ENL, ESL, EFL)が生まれてきた経緯を考える。英語教育における英語の規範を考える。
2 学習到達目標
世界の英語の種類を説明できる。
英米英語から国際英語へというパラダイムシフトを説明できる。
アメリカ英語とイギリス英語の違いを説明できる。
3 課題
日本人の英語の特徴をレポートにまとめる。
英語学習における英語の基準は何かレポートにまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ13 小学校の英語教育
1 何を学ぶか
小学校、中学校、高校のぞれぞれのレベルでの英語教育の実態を知ることで、一貫した英語教育の在り方を構想する。早期英語教育における音声教育の可能性を探る。関連した様々な指導法(ライム、早口言葉、歌、ゲーム)などの実践法を理解する。
2 学習到達目標
日本における小学校での英語教育のおこりを説明できる。
小学校での英語音声の指導法を説明できる。
3 課題
学習指導要領では、小学校での英語教育はどのように記されているかレポートにまとめる。
言語の気づきとは何かレポートにまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ14 異文化理解に関する指導
1 何を学ぶか
学習指導要領に異文化理解の必要性が記されていることの意味を考える。英語教育の場で提示すべき多文化共生社会とはどのような社会であるか調べる。言語相対説(サピア=ウオーフの仮説)を考察して、その実例をいくつか調べる。高コンテキスト文化と低コンテキスト文化の違いを考える。さらに、日本特有の文化社会と言語の関係を考察する。
2 学習到達目標
伝統的な西洋と東洋との二限対立の分類から、多次元化しつつある現代文化を説明できる。
文化と言語の関係について説明できる。
言語相対論について説明できる。
3 課題
世界に多発する民族問題と言語の事例を収集してレポートにまとめる。
学習指導要領では異文化理解はどのように扱われているかレポートにまとめる。
4 動画資料
5 プレゼン資料
テーマ15 教材及びICTの活用
1 何を学ぶか
英語教育における英語教材の進歩について考察して、英語教師として今後留意すべき点を考える。AIを用いた英会話の練習の可能性について説明する。生徒達の間に利用が広がりつつある機械翻訳の利点と欠点を考察して、英語教育の場での活用を考える。
2 学習到達目標
英語教材を用途によって、分類できる。
デジタル教材の利点を説明できる。
教材としてのICTを活用できる。
3 課題
小学校での英語教育教材として望ましいものを提示する。
Google 翻訳、DeepL翻訳、ChatGPT翻訳を比較して、レポートにまとめる。